
【Event4】パン食い競争をしよう
(真新しさの象徴たる白がまぶしい、紺色のリブが襟と袖にあしらわれた半袖の体操着。その胸には『イサナ』と書かれたゼッケンが、秋晴れを背景に堂々と輝いている。そして頭には青い鉢巻。どうやら青組代表として選抜されたらしいのだ。場内に流れるアナウンスは次なる種目を告げている。──「続きまして、パン食い競争」)パン食い競争!?(思わずあげた大声は驚き半分喜色半分。夢にまで見たと言えば嘘だが、イサナが通っていた小学校にはそんな種目はなかったので。)ねえねえ、パン食い競争だって! 何パンがあるのかな? アンパン? メロンパン? チョココロネ? …は、勢いよく食べたら中身が飛び出ちゃうかも……。(だからこそ想像は豊かに広がる。連なるラインナップから子供らしい好みがうかがえるか。はしゃぎつつ、傍らの鉢巻の色を見て、)あ、ぼくのと違う……(そこでようやくトーンが落ちる。それもそのはず。二人きりの運動会で「競争」をするならば、おのずと仲間が”敵”となるに決まっているのだ。)じゃあぼくたちで勝負ってことかあ……走るの、得意?(もはや唐突に始まった運動会にツッコミはなく、ちらとうかがうような視線から走るのにさほど自信があるわけではないとわかるだろう。膝上の半ズボンから伸びる細い足はいつでも元気よく動くけれど、リレーの選手を勝ち取ったことは一度もなかった。)
* 8/1(Thu) 22:52 * No.149
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(白いシャツと共に纏う黒地に赤と白のラインが入ったジャージは、どこかの学校共通のデザインのものだろうか。同じく胸には『アイリーン』と記されたゼッケンが踊り、頭上ではリボンカチューシャのように結ばれた紫の鉢巻が、括られた髪と一緒に風に靡いていた。突如放り出された状況の中、場内に響くアナウンスが耳に届けば、)パン食い競争……?(と、あげた声が重なる。此方はあまり馴染みない文言と突飛さへの怪訝を乗せたものながら、傍らよりあがるはしゃぎ声には眦を下げた。)ふふふ、イサナちゃんは甘いパンが好き?お姉ちゃんもそういうのだと嬉しいなぁ。サンドウィッチも好きだけど、パン食い競争だと具材全部逃げちゃうわよねぇ。(なんて、呑気なパン談義に付随して、その瞳が頭上に向くのに気付く。見渡したところで運動場にはギャラリーの姿すらなく、ともすれば競争相手だってただ一人。)うーん、そうねぇ?お姉ちゃん、すっごく動ける気がするわ!(質問の返答としてはややズレたものだが、実際のところ走る種目といえども、どちらかといえば懸念は、)パンって吊るされてるものでしょう?お姉ちゃんとイサナちゃん、結構身長差あるけど大丈夫かしら〜……?(幾分か見下ろす姿勢となる程度の上背の差異による優位はあるものか。お姉ちゃんたるもの、勝敗よりも守るべきものがあるが――「位置について、」そんな声が何処からともなく聞こえる。スタートの合図だ。)
* 8/3(Sat) 13:02 * No.156
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うん! ぼく甘いパンが好き。アイリーンはサンドウィッチが好きなんだ? 具は何が好き? ぼくはたまごサンドかなあ。(なんて緊張感のないやりとりを経て、ようやく優しいお姉ちゃんが競争相手と知って瞬く。)あは、気合十分だね? アイリーンは足も長いし、ぼくよりずっと速そうだなあ。(ズレた回答を笑って受け止めたのは、やる気に満ちた彼女のすさまじいパワーを知っているから。そうして新たに発覚した事実にあ、と絶望の声。)そうだよ! どうしようアイリーン。アイリーンに合わせた紐ならぼく届きっこないじゃない。ぼくに合わせた紐ならアイリーンが腰痛になっちゃうし…(せっかくの勝負なら勝ってみたい気持ちもあってうーむ困ったの顔で眉を寄せるも、さっさとしろと言わんばかりにスタートの合図がカットイン。慌てて位置についたなら、よーいドン!)…………え、…エッー!?(ピストルの音に背を押されるよう、前へ前へと足を運べば次第にかけっこのフォームをとって。とはいえパン食い競争のメインは脚力よりも瞬発力やジャンプ力。あるいは顎の力。そして、) 紐が動いてる…!?(運。全長30メートルの中間に位置するパン食いゾーン。驚くことに、其処に吊るされたパンは二人の身長より30センチほど高い位置からちょうど口元のあたりまでを行ったり来たり。パンは全部で4つ。カレーパンにクロワッサン。チョココロネにアンパンとバリエーションは意外と豊か。)あ、袋に入っているから落としても安心だね? ってなにこれ…!(高らかなツッコミは青雲に吸い込まれていった。)
* 8/4(Sun) 13:14 * No.159
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(「お姉ちゃんもたまごサンド好きよぉ」そう共通項に頬を綻ばせたり、遅れて互いを競争相手と認識したりとちぐはぐな温度感の中、お姉ちゃんたる者は神妙な面持ちを見せる。)イサナちゃんに合わせた長さなら、頑張るだけだけど……お姉ちゃんに合わせてたら……だ、抱っことか、する?(残念ながら中学生男子を抱えられるだけの腕力は実際にないが、気概だけはある女である。なんて、そうしているうち、せっつかされるように突如ピストルの音が鳴り響き、)ひゃあっ、え〜っ!?(再び声が重なりつつ、追い立てられるよう走り出す形となったか。フォームはやや怪しくともそれなりのスピードが出ているのはコンパスによるものか或いはイデア・ルームの恩恵か。兎角脚を上げ腕を振り、幾許か走ったところで辿り着いたるはパンの吊るされたエリア。思わずと足を止めて見上げるは、上下に伸縮を繰り返す紐とされるがままに揺れるパンたちの姿だ。)あ、あら〜まぁまぁまぁ……すごいわぁ、イデア・ルームって公平ねぇ。(唖然とはすれども呑気なものだった。公平と平等は似て非なるものとはよく言ったものだが、力業の公平さに笑ってから、)あ、イサナちゃんどれがいーい?さっき言ってたし、あんパンかチョココロネ?(勝利よりも青組も紫組も頑張りましょうの心意気につき、お姉ちゃんはまず下の子に選択を譲る。かと言って始まったからには手を抜くつもりでもない。クロワッサンか、或いは彼が其方を望むならばあんパンの下へ移動して、自在に上下する袋目掛けてジャンプを試みるも――)あっ、あ〜……に、逃げられる〜……!(無作為に跳ねてみても無駄のよう。)
* 8/5(Mon) 19:35 * No.164
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だっこ、はさすがに恥ずかしいかも…(ならばあとは自らのジャンプ力に頼るのみ。──と思っていた時期もありました。)これって公平って言うのかなあ? でも、どっちも大変って意味では公平かも。(目の前に立ち塞がるは高さの壁のみならず。タイミングが合わなければぴょんぴょん地獄が待っている。そんなはちゃめちゃな公平に驚きは尽きないが、隣から投げかけられたお姉ちゃんの心配りに意識はどうしようかな、からどれにしようかなへと移り変わった。視線が次々と動くパンを順に捉え、)えっと、じゃあチョココロネ!(貝殻みたいな形のそれを選んで移動する。早くもジャンプを始めた彼女に負けぬよう、ぴょんぴょんぴょーん。しかしタイミングが合わぬよう。)ほんとだ、これ、意外とむずかしい…かも!(当然喋るとパンをくわえることはできず、その後はしばし気合に似た息遣いだけが続くだろう。それでも来た、と思ったタイミングで跳んでは遅すぎて、ならばと先んじて跳べば口元よりも高い位置。パン食い競争の道は険しい。──それは隣のレーンも同じことか。未だ彼女も苦戦している様子なら、この戦いは体力勝負となるだろう。)
* 8/6(Tue) 23:07 * No.168
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(パン食い競争に造詣が深いわけではないが流石にこれは理屈の外。忙しなく伸縮を繰り返すのを下から眺めたのち、彼の選択をにこにこと見守ってから「どうぞぉ」と温容な声とともにその下を譲ろう。ここまではよかった。明々たる声に愛らしさを呑気に感じていたものの、飛び跳ねてみるターンへと移ろえば、疲労よりも先に焦燥の汗が滲んだ。)う〜っ、手使いたい……!(翻弄されて元も子もないことを言い出しつつ、八の字になった眉を携えて揺れるクロワッサンを見上げた。)な、なんか、さっきまでは食べて食べて〜ってぴょんぴょんしてるように見えたけど、こうなると食べれるもんなら食べてみろ〜って意地悪されて感じるわぁ……。(嘆息混じりに零し、一度地に足を付け留まる。「で、でも不思議ワールドでも慣性はある筈だから……!」と思考整理するかのように呟き、紐の動きを読みながら狙いを定めるとしようか。ランダム性のために機運も絡みつつ、幾度目かの挑戦の末――袋が触れたのを逃さず、唇で挟み込んだまま着地したならば、ようやくと取得が叶った事だろう。)んっ!とれふぁ!(袋を咥えたままもごもごと歓声を上げ、然してそのまま走り出しはせずに、輝かせた面持ちで彼の方を見遣る辺りがこの女であった。)
* 8/7(Wed) 17:07 * No.170
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わかるわかる…! なんでかなあ、あと一歩ってところで口からこぼれちゃって……うーんぼくもエビスみたいにおっきな口だったらよかったのに。(隣からもれる嘆きに頷くも、ここまで来たら半ば意地。猫じゃらしに飛びかかる猫のごとく。しかしゲームみたいで面白いかもなんて前向きな気持ちは時間とともに疲労に変わり、やみくもに飛び跳ねることも減ってきた。数を打っても当たらぬならば、慎重な一発を極めたい。暫し休憩兼シンキングタイムと構えて深呼吸。周りの音がさっきよりもクリアに聞こえた。そんな時、不明瞭ながら歓喜に満ちた声がして、)アイリーン、成功したんだね…!(其処には万国旗を背景にした素敵な笑顔。クロワッサンをくわえたお姉さんの図はなかなかシュールで、しかしカメラマンなら間違いなくシャッターを切りたくなるだろう。とはいえ最高の被写体ごっこでもあるまい。すぐに走り出さない彼女の意図も伝わったなら、思わずつられて笑みがこぼれ、)よーし、ぼくもやってやる!(気力の灯が再び勢いを取り戻す。今度こそ。伸び縮みする紐の動きは不規則で、運ばかりに身を任せては上手く行かない。ならばパンを食らいつく場所を変えたらどうか。小さな口でパン全体を捉えることを諦めて、例えばそう、)……ぁうっ…!(袋の端を狙うとか。齧りつくように触れた其処を精一杯引っぱると、ぽろっと紐からパンが落ち。)…ふぁっふあ…!!(見事チョココロネをゲットしたなら彼女に負けじと満面の笑みでピースサイン。それから改めて位置につき、よーいドン! 雷管の代わりにアイコンタクトを使ったので若干イサナのフライング気味だが、足の長さを考慮してプラスマイナスゼロとしたい。さあさあ残り15メートル。残った力を振り絞ればぎりぎり駆け抜けられる距離。勝負の行方は果たして──。)
* 8/8(Thu) 22:26 * No.175
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(自身のペルソナのようであれば、を考えてみてもそもそも顔貌を知らなければ口があるかも知らず。ゆえに思案は一瞬で壁にぶつかって、結局見据えるは眼前のパンへと戻り、甲斐あってか無事ゲットが叶った後には当然みたいに応援に回ろう。もがもがと発声しにくそうにかけるのは“頑張って”“イサナちゃんなら出来る”だのと続き、袋入りのパンを咥えたまま息巻く女の姿はややシュールだった事だろうけれど。)わっ……んんん、やっふぁ〜!(やがて少年もまたパンへと届けば、口をまぁるく開きかけてから慌てて閉ざし、くぐもった歓声に添えて腕を上げよう。ピースサインには真似っこするように返して、身体いっぱいに達成感を表すもそれにはまだ早い。アイコンタクトを受け、あっ、と声をあげかけるも束の間。彼が走り出すのに合わせ慌てて追いかける形にはなったものの、此方には息を整える遑があった事も相俟って、その背に追いつくまではそうとかからず。白いゴールテープは目前。さて、結果は――体感はほぼ同時。互いにゴールラインを踏んで、減速に次いで足を止めながら今一度隣を見遣る。)い、今の……どっちが先だったの?(開いた唇から零れた袋をキャッチし、弾む息を飲む間隙。間もなく頭上からは先程と同じ声が聞こえて、それは淡々とした『同着』のアナウンスで。)あらぁ、やっぱり同時だった?走ってる時はちゃんと本気だったんだけどな〜!でもでもっ、二人で一位ってことだものね?(足を止めて待っていた時間こそあれど、これも本心。しかしさっさと走り出してしまうよりは今の方がずっと楽しかったと思うのだから、その面持ちは晴々としていた。)
* 8/9(Fri) 22:02 * No.180
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む、むぐ……!(端をくわえてしまったがゆえにパンの袋がゆらゆらゆら。けれど慌てて揺れた視線は一瞬のこと、躊躇いを捨てなければ勝てないだろうと決意に満ちた双眸で前だけを見つめた。そして背後に迫る気配に一層足を高く上げ、走る。走る。最後まで。──ふわり、祝福のゴールテープが体に触れた。)……!(やったー、と叫びかけ、しかしそれが巻きついたのは自分の体だけではないと知る。勝利は一体どちらの手に? 疑問は隣から上がった声に代弁されて。ごくり。荒い息を整えるよう軽く開いた口からチョココロネがぽとんと落ちる。両手を皿にして受け取ったのと、簡潔な答え合わせはほぼ同時。)ど、どうちゃく〜…!?(勝ちたいお年頃の子はがっくりと肩を落とした。なんなら彼女が待っていてくれた時間の分だけ負けていて、それを思えば肩に乗る落胆は一層大きくなるけれど、)…うん、それもそうだよね。同着ってことは、どっちも勝ちってことだもんね?(どんよりとした気分を呆気なく吹き飛ばすは彼女の笑顔。晴れやかな表情を見つめていたら空にかかった雲はあっという間に流れて行った。なにより負けて悔しいより初めてのパン食い競争がなんだかんだ楽しかったと思えたから。)じゃあ、ぼくたちの同時優勝をお祝いして食べよっか、これ! ……あ、あそこなんかいいんじゃない?(終わったと思うとどっと来る疲労に促され、指さした先は休憩所のテント。一休みには持ってこいの日陰には長机とパイプ椅子。ありがたいことにお茶のペットボトルが2本、仲良く寄り添っているのも見えた。)
* 8/10(Sat) 21:57 * No.184
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(誰が両端を摘まんでいるでもないゴールテープはふたりの身体を受け止めて役目を終えて地面に落ち、斯くしてたった二人でのパン食い競争は同着一位というマイルドな結果にて終幕だ。あがった息も落ち着く頃、晴々とした笑みはそのままに大きく頷いて見せて。)ええ!お姉ちゃんパン食い競争って初めてやったけど、イサナちゃんと一緒に勝てて嬉しいわ!……まぁかなりイレギュラーだったとは思うけどね?紐びよんびよん式パン食い競争が最初で最後になっちゃうかしら。(喜色を満面に表してから、ふと思い至れば眉をあげた。“運動会”というイベントでもなければ中々縁遠いと思われる競技は最早以降に出会いがあるとも思えず。まぁ、だとすれば、この清々しさと仲間と駆け抜けた思い出を大事にしまえばいい。パンを大切に胸元に抱き寄せるように抱えて、指し示す方へと一歩踏み出した。)あら、良い場所〜折角自分でゲットしたパンもあるんだもの、お祝いしなくっちゃね!じゃあ、行きましょっか。(二人並んで休憩所を目指せば、お誂え向きに用意されたその区画が疲労感を伴う両者を出迎えてくれる筈で。畳まれていたタオルを「汗冷やしちゃダメよ?」と渡し、彼の分のペットボトルを開けて、一通りのお節介ののちにパイプ椅子へと腰を下ろそう。)ふふっ、走ってお腹空かせて、すぐパン食べれて……って、頑張ったご褒美がすぐに味わえちゃうのがパン食い競争の醍醐味なのかもしれないわねぇ。(袋を開けてみればふんわりと香りが漂い、何故だか焼き立てのようなあたたかさを感じる。これもまた不思議空間の為せる技なのだろうか。)
* 8/11(Sun) 17:09 * No.189
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あはは、たしかに紐びよんびよん式パン食い競争はこれが最初で最後かも。絶対に忘れられない思い出になるね。(言いながら、でも、と思った。普通のパン食い競争だったとしても、きっと忘れられなかったに違いないと。運動会がこんなに楽しかったのは初めてだった。一緒に走って、一緒に苦労して、一緒に勝利を分かち合う相手が彼女だった幸運に感謝しながら、戦利品を手に祝勝のための会場に向かう。テントの中は不思議なことに少しひんやりとして心地よかった。)ふう、生き返る〜……(お姉ちゃんの世話焼きタオルでありがたく汗を拭き、親切なペットボトルで水分を得たのち、心の底から癒されたと言わんばかりの声が出る。パイプ椅子に背を預けてもひっくり返らない小柄さが今はありがたかった。大きく伸びをしてリラックス。)そうだね。こうやっておいしくパンをいただくための競争なら悪くないなあ。パン以外にもおいしい競争があったらいいのに。(「いただきます」と両手を合わせて礼をしてから端のギザギザに指を引っかけ、何処からでも切れますを信じて勢いよく袋を開けるとあら不思議。さんざん揺らされた袋の中でもなお、ふっくらと形のよい巻貝が手の中に。)わあ…!(ぱくりとかじると中のチョコレートがほどよくとろけて甘くておいしい。語彙力のないリポーターはひっくるめて「おいしい!」と微笑んで。)こうやってテントで休憩してると、お昼ごはんの気分になるね。ぼくんちのお弁当っておにぎりばっかりだったけど、ピクニックに持ってくみたいなバスケットにサンドウィッチが入ってるのにも憧れたなあ。(想像力が豊かなほど、願う心が強いほどこの世界はそれに応えてくれるのかもしれなかった。──ぽん、と現れたファンシーなバスケット。中にはイサナが好きなたまごサンドと彼女が好きなものが二つずつ。小さな二つの容器には食べやすいサイズに切られた果物が。一つはリンゴ、もう一つはなんだろう。開くたびに知るお互いの“好き”について語らうランチタイムは最高の思い出となるに違いなかった。)
* 8/12(Mon) 23:47 * No.192
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(初めての体験に不可思議な要素まで加わって、愛おしむ仲間と共に走り抜けたひとときを大切にしまいこんで。くすくすと柔い笑みを零しながら「お疲れさま」と同様の立場である筈の彼を労わり、自らもタオルで汗を拭い掌で顔を扇ぐ。ひんやりと喉を潤す冷たさもまた心地良い。)そういえばなんでパンが定番なのかしらね?他のおいしい競争もいいわよね!袋に入れておけるようなものなら何でも出来そうかしら……ドーナツとかぁ、おにぎり……は、保管が心配?(あれや、これやと、代替案なんて挙げ連ねてみながら開けた袋から、ひょこりとクロワッサンの端っこを覗かせる。「いただきます」彼に続いて唱えて、一口齧ってみればあたたかさと共に昇るバターの香りとさくさくとした食感とが五感ごと楽しませた。パッと輝かせた面持ちのままに眼差しは自然と隣へと向く。)んっ……!ええ、美味しいわね!(ほのかな疲労感を癒す美味とおんなじ反応にて微笑む少年の姿とで、頬なんて勝手に綻んでしまう。もう一口と齧って、舌鼓を打ちながら耳を傾け、思い出話に寄り添った。)ああ、確かにどっちかばっかりだとどっちかに憧れたりするかもしれないわねぇ。バスケットにサンドウィッチだと、それこそピクニックみたいで非日常的で特別な感じ。お姉ちゃんかわいいお弁当憧れたな〜キャラ弁……とまで言わなくっても、タコさんウィンナーとか!(語らううち、視界にぽんと姿を見せたバスケットに目を丸くして、中には彼の分と一緒に、スモークサーモンのサンドウィッチと小さな容器に納まった苺が見えた。更なるサプライズも味わいつくさねば損だ。たくさんのお喋りとたくさんの“好き”を分かち合い、目に、舌に、心に、今日という日が刻まれる。)
* 8/16(Fri) 03:10 * No.195
azulbox ver1.00 ( SALA de CGI ) / Alioth