ちょっと失礼。いいかなヒカリ。

＞！
＞少女の背後から新たに男が現れた。
＞シルクハットにマント、それからステッキ。こういう格好、テレビで見たことがあるような……

そう、私はマジシャン。マンゲツと言うんだ。以後お見知りおきを。

＞芝居がかった一礼とともに名乗った男はにっこりと笑った。

ヒカリの説明じゃわかりにくいだろうから、説明役を変わらせてもらうよ。

ペルソナっていうのはね、君たちが君たちの外側の物事と向き合った時、表に出てくる“人格”……様々な困難に立ち向かって行く為の“仮面の鎧”と言ってもいい。
心当たりがあるだろう？　先ほど謎の怪物から君たちを救ってくれた不思議な存在さ。

＞！
＞気を失う前の出来事を思い出した。

そして君たちを襲った“怪物”……私たちは“シャドウ”と呼んでる。シャドウは、“ラビリンス”……そこに聳える謎の迷宮のことだが、あの迷宮の中に現れる怪物で、シャドウ以外の存在を襲うんだ。普段はラビリンスの外に出てくることは滅多にないんだけどね、先ほどはどうしてか、はぐれのシャドウが8体も……決して開くことのないマイ・ルームの扉に向かっていったんでびっくりだ。

＞シャドウ……謎の部屋から出てすぐ、襲いかかってきた怪物。
＞ラビリンス……広々とした空間の中央に聳える巨大な塔。
＞そして、マイ・ルーム……？

ああ、マイ・ルームというのは君たちが最初に目覚めた部屋のことさ。
ここはイデア・ルーム。誰もが自分の理想の姿になれるこの世界のことを、私たちは理想の世界≪イデア・ルーム≫と呼んでいるんだ。
だが、大抵の人間は各々に与えられたマイ・ルーム、自分だけの理想空間の中で幸せな夢を見る。だからこのエントランスに出てくることは決してないはず……だったんだけどね。
驚いたよ。私以外にも、マイ・ルームの扉を開けてこちら側に来る者がいるなんて。

でも、先ほどの戦闘を見て確信したよ。君たちがまさしく天の使い！　……じゃあないかもしれないが、少なくとも私たちの力になってくれる選ばれし者だとね。

＞…？

君たちは、このところ騒がれている“無気力多眠症”を知っているかい？　
シャドウは“精神”を喰らう。襲われれば、たちまち“生きた屍”だ。おそらく無気力多眠症も、やつらの仕業だろうね。マイ・ルームから現実に帰ることを拒み、イデア・ルームに長くとどまった者はシャドウに襲われ、精神を喰われる……その結果、眠りについたまま目覚めず、日に日に体が衰弱していく。そんなところかな。

＞…！

なんてね。あくまでヒカリの話を聞いた私の憶測だが、あながち間違っていないと思うよ。

そして、ここからが本題なんだが、……そのシャドウと戦える力が“ペルソナ”。先ほど、君たちが使ってみせた力さ。シャドウはペルソナ能力に目覚めた“ペルソナ使い”にしか倒せない。つまりやつらと戦えるのは君たちだけなんだ。

要するに、君たちに仲間になって欲しいんだ。
私は君たちより一足先にペルソナ能力に目覚め、ラビリンスに巣食うシャドウの存在を知った。しかしながら、君たちのようにペルソナを使ってシャドウを屠ることはできなくてね。

少々事情があってね、私は無気力多眠症で苦しむ人々の力になりたいんだ。
君たちにとっては他人事。ラビリンスの謎もシャドウもどうだっていいことかもしれない。
だが、この世界を訪れたからには君たちにもイデア・ルームを求める心があるはずだ。

ペルソナ能力に目覚めた君たちはこの世界では異質。シャドウの格好の的だろう。なら、この世界で自分たちが過ごしやすいよう共闘するって建前はどうだろう？　善意ばかりを求めることはしないよ。

＞…
＞……
＞………

返事は急がないが、もし私に協力してくれる気があるのなら……否、単なる暇つぶしでも興味本位でもいいけどね。
……そうだな、次の土曜日。6月16日に此処≪エントランス≫に来てほしい。

一度イデア・ルームを訪れたなら、今後は午前0時以降、鏡に姿を映せばいつでもこの世界にやって来れるはずだ。
ああ、ただし午前3時を過ぎたらアウト。1日3時間だけの秘密の時間。どうか君たちが私とあの迷宮に挑んでくれることを願うよ。