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【Step3】10/16(火):夜 〇×公園

(中間試験期間中の平日の夜とあらば、スケジュールは決定事項。瑠璃浜鑑台駅付近に位置する予備校にて本日分の学習を終えたら即、帰宅する。そのはずだった。しかし今、秋の涼しさを孕む薄闇の中。正しき道筋を外れ、人気のない公園のブランコに身を落ち着けていた。頭上の街路灯の淡い光が、周囲の遊具や植え込みのシルエットをぼんやりと縁取って描いている。カーディガンのポケットから取り出したスマートフォンの画面の時刻表示を確認し、片足で地を小さく蹴った。微かに軋む音とともに、青年を乗せたブランコがきもち揺れる。)まだ帰るには早い。もう少し……。(予備校帰りの寄り道をもう少し続けようか。常日頃は寄り道を許さない口が矛盾を零す。スマートフォンに接続したイヤホンを耳に付けると、数えきれぬほど再生した動画の再生回数をまた増やす。本来は遊んでいる暇などない、自宅では決まりきった勉学の時間が優先される。それは周りからの期待であり、自分自身が課したことでもある。その正しさは理解しているのに、素行不良の学生さながらに夜に漂う己の現状に溜息を吐いた。矛盾していてもそれでも、まだこうしていたいから。液晶を片手にブランコを漕ぐ。鎖を鳴らし、憂いを引き摺って暫し揺れていた。)
* 8/9(Fri) 20:42 * No.160

(――お疲れ様です。夕飯も兼ねた長時間滞在の後、レジ対応の従業員に小さく挨拶をしてから退店した。夏季休暇が明けて初めての試験準備期間、気まぐれのようにシフトを減らして名の通り試験準備に備えた一週間が過ぎ、そうして試験初日を終えた今日。小休憩と明日の教科の暗記目的としてバイト先を利用し終え、瑠璃浜鑑台駅に辿り着いた足はなんとなくの気分で再び駅の外へと向いた。元より不慣れなことをし続けた一週間だ、明確な理由が無くともまっすぐ帰宅する気がない以上はその心に従うことにした。そうして通り掛かった公園で揺れるブランコに気が付いて、視線を向ける。何気ない、無意識な動作だった。)――……、(そこに友人が――寄り道をしないよう心がけていると、嘗て口にしていた彼が居ることに気が付いて、瞠目する。普段とはどこか纏う空気が異なる様子に、その場で声を掛けようとは思わなかった。立ち止まりはしない。ただ公園を通り過ぎる人間として、歩みを続ける。公園から離れた場所で迂回をして、再び駅に辿り着いた。)…帰るか。(言い聞かせるよう呟きを落とす。程なくして到着した電車に乗り込めば、吊り革に手を伸ばして目を瞑った。 次に彼と会うのはいつになるだろう。どんな切欠で。どんな場所で。その時、何を話すのだろうか。小さく息を吐き出して、窓の外、夜の空に目を向けた。)
* 8/11(Sun) 18:16 * No.161


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