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【Step2】8/4(土):午前 深那莫海浜公園(動物園)

(新しい友人との夏の思い出作りと称して取り付けた約束は、長いこと鵜飼に纏わりついているもやもやをしばらくの間だけ忘れさせた。そのもやもやは、妹が夏休みに入ったことにより家にいることが多くなった母の姿をしていたり、突然かかってきた電話で伝えられた内容であったりした。しかし、晴れた夏の日に普段見られない動物を友人と見ることを想像すると、心が少し軽くなったような心地がした。)……楽しみだな、動物園。(カレンダー眺めてこぼした独り言をきっかけに、いつ行くの誰と行くのねえねえみちくん教えて教えてと質問攻めに遭う羽目になったのは数日前のことだ。一つずつ返答していくうちに一緒に行く友人が同じ学年の女の子であることを知った母と妹の色めきたった様子といったらなかった。前に通っていた学校でバレンタインデー前にそわそわと内緒話交わす女の子たち見ているのと同じ気持ちになる。デートだの彼女だのとあれよあれよという間に決めつけられ、都度否定をしたものの彼女らの中で誤った認識は強固な真実となってしまったらしい。それなら新しい服を買いに行くべきだ、ちょうどいい機会だから散髪にも行ったほうがいいと指令が下され、小遣いが追加される。買ったものもチェックしなきゃと盛り上がる二人の高い声は、固い結託を示していた。ーそういう経緯で整えられた今日の服装は、量販店で買い求めたオーバーサイズのネイビーのTシャツと黒のストレートジーンズ、グレーのスニーカーの組み合わせに背面で斜めがけにした黒のボディバッグ。動物園の正門付近の木陰に佇み、待ち合わせ時間まではあと五分、そろそろ到着連絡入れようとポケットに入れたスマートフォンを取り出した。)
* 7/19(Fri) 16:21 * No.87

(8月3日、夜半の事。ベッドに寝そべり、映し出されたトーク画面を眺める。じんわりとあたたかくなる胸に掌を添えて、文字にすら出来ない“楽しみ”なんてささやかな情感の逃し先もわからずに、落ち着きのない爪先がぱたぱたと揺れていた。ちらと、姿見を横目に見遣る。間もなく零時。けれど今日ばかりは、ただ現実の少女が静かに灯りを消して、次第に聞こえはじめる寝息と共に一日は終わりゆく。――陽が昇り、玄関を目指すさなかに掛かる声に足を止めた。バイトの日と異なる時間に家を出ようとする娘へ、予定って今日だったかしらと問いかける母が、月に一度程度続けている用向きに幾分か思うところがあるとは理解している。)ううん。お父さんと会うのは月末。(端的に答えてスポーツサンダルへと足を通す。なら何処へと重ねて問われるのだって、束縛でなく案じられているのだとも、理解しているのだ。)……動物園。(意外そうに瞳を丸くする母に背を向け「……行ってきます」の声と共に、扉は閉ざされ、身体は夏の只中へと放り出されていく。足を向け慣れた海浜公園だが、このルートを辿るのは初めてだった。赤のクロップド丈ベアトップと黒いフレアパンツを合わせ、ゆったりと羽織ったオーバーサイズのサマーカーディガンに風を含みながら人波を往く。ショルダーバッグを肩へと掛け直し、動物園の正門が見えた頃に確認した時刻は待ち合わせの五分前。不意に周囲へと巡らせた視線の先を見止め、キャップのツバを押し上げればローツインに結んだ髪が緩く揺らめいた。)……あ、(小さく零すと同時、爪先はくるりと其方を向いた。傍まで歩みを寄せればわかることだが、ソールの厚みが平生よりも目線の高さを近付ける。)……え、と、……おはよ。ごめん、待たせた……?(待ち合わせよりも早く来るであろう人物像は考慮に入れるべき点だった筈。気まずげに窺う瞳が彼を見上げた。)
* 7/19(Fri) 22:30 * No.88

(昨年まで住んでいた地のように湿気を含んだ熱風が身にまとわりつくとまではいかないが、真夏とくればこちらも暑い。ここで長いこと待っているわけではないが、木陰のおかげで暑さが和らいでいるのが救いだった。「着いたよ」の四文字送信する前に、こちらに近付いてくる足音に気付く。視線上げれば、待ち合わせ相手の姿があった。緩く片手を上げる。)おはよ。いや、俺も今来たところだから待ってないよ。(口にして、創作物における待ち合わせの常套句だなと少しおかしくなる。自分の中に生まれた小さな笑いをそのまま共有する。)なんか、ドラマとかで見る待ち合わせの会話って感じがする。(だが、家族に否定した通りこれは新しい友人との交流に過ぎないので特に手を引いたりはしない。ただ、用意周到な母の準備により、チケットだけは二人分の用意があった。)チケットもう買ってあるから、そのまま入れるよ。行こうか。(シロクマの写真が印刷されたものとゾウの写真が印刷されたもの、二枚をババ抜きする時みたいに出して選んでもらい、入場ゲートに進む。もらった園内マップを広げては、)何から見る?午前に外攻めて、午後から屋内見たほうがいいのかな。佐々礼、好きな動物とかいるの?(様々な動物を好きに見学できる非日常にちょっとはしゃぎ気味。下見という名目を忘れかかっている。)
* 7/20(Sat) 17:07 * No.92

(ほんの少しの躊躇いののちに胸元で小さく手を振って返すも、夏空の下、長く待たせたとあっては申し訳が立たない。ゆえに柔い否定には安堵の息を零しつつ、小さな笑いにはきょとりと要領を得ない表情。それから、先んじた応酬を思い返しワンテンポ遅れて気付いたならば、)あー……そうかも?なんか、ベタなやり取りした感じ。……次あったら、鵜飼より早く着いて鵜飼の方から言わせよっかな。(なんて、恐らく冗談の類だろうが、笑みのひとつも見せないのだからわかりづらい性分である。しかし自然と“次”を望む形となったのは無意識の産物か。兎角、無事に待ち合わせに果たした後にはチケットの購入窓口に眼を向けるつもりであったのだけれど。)え、用意良い……あ、ありがと。お金……ああでも、後の方がいい……?(この場で留まるのもなんだろうと惑いつつ、一先ず差し出されるまま一枚を抜き取ってみれば手元にはゾウのチケットが渡る。「ゾウ、いるんだね」と些細な呟きと共に、入場ゲートを抜けた先で。)うん、正午過ぎとかだとまた気温上がるかもだしね。……んー……カピバラ。のそのそ歩く感じの動物、かわいくて好き。いるかな。(事前の下調べなどはしておらず、彼の手元で広げられたマップを覗き込んでいた視線を持ち上げる。)鵜飼は見たい動物、いる?(滅多に来ないような場へと寄せる期待感がほのかに胸に満ちて、動物たちへの関心に彼もひっくるめて問おう。)
* 7/21(Sun) 02:20 * No.94

ごめん、待った?って?そしたら、俺は次はちょっと遅れ気味で来たらいいのか。涼しい場所で待ち合わせにしないと。(気安い口調からして冗談だろうと判じ、そのまま話に乗っておく。自然と季節が変わる前の次回待ち合わせを想定した口振りとなった。次もこんなに準備万端とは限らないけれど。)後でいい、 というか、今日のはいいよ。俺から誘ったし、今日は出資者がいるから。(自分の懐を痛めていない(そもそも痛める懐自体も自分で稼いだわけではない)のを暗に示して、自分の手元に残ったシロクマに入場スタンプ押してもらう。言い忘れたどういたしましての後に続いた「これでゾウいなかったらちょっと面白いよね」は、些細な冗談として紡がれた。友人の答え聞いて、彼女が好む動物を思い浮かべる。実際に見たことはないけれど、脳裏に浮かんだ姿は確かにユーモラスでかわいらしい。)カピバラが実際にどんなこと考えて生きてるのかは知らないんだけど、のんきそうな顔と動き方の生き物って確かにいいよね。こっちもぼーっとしてていいんだなって気持ちになれそう。 ここにいそうじゃない?(言って指したのは屋外施設の一角だ。カピバラのイラストと共に、時間帯によっては餌やり体験が可能な表記があるのを見つける。)やる?餌やり。佐々礼が興味あったら俺もやりたい。(返答によっては最初の目的地をそこに定めるつもり。翻って自分について問われれば、ポケットに突っ込んだチケットから連想して)シロクマ見たいな。今日暑いし、でかい生き物が水の中泳いだりしてんの見るの気持ちよさそう。
* 7/21(Sun) 17:03 * No.98

(次、が交わって、手の届く未来の存在に弛ませた瞳を、今度はぱちりと瞬いて。)え、えー……んん……じゃあ、なんかの形で返す。出資者さんにも、お礼伝えといて。(当然遠慮の気持ちから目を逸らせず、かといってこんな場所でまごまごとしているのも躊躇われ、結局当人なりの折衷案。彼と、彼の出資者への謝意を添え、それから此方は神妙に「……その場合、この子は一体どこの……??」と写真のゾウとのにらめっこを経てから。)うん。そういう何考えてるかわかんない感じも好き。冬場とか、カピバラが温泉入ってる動画、よく見てる。時間がゆっくり流れてるみたいで、かわいいんだよ。(語る口振りはほんの少し饒舌だ。ここ、と指し示された先を見遣れば確かにカピバラのイラストと、そこに添う餌やりの文字。惹かれる胸中に彼の言葉がすとんと落ちれば、)……ん。やりたい。やろ。(平生よりもほんのりと熱を帯びた音吐を伴って頷いて見せた。期待感がどうしたって顔を覗かせる中。)涼しさもらえそうだね。シロクマ、あたしも見たい。寒いとこの生き物は一纏めかな。(マップ上に指を滑らせ探せば、やはり寒冷地の生物は近しいエリアに纏められているよう。此方も目標地点と定めて、マップから顔を上げ「行こ」と言少なに歩み出そう。入り口からそう遠くはないらしいカピバラエリアを目指す道中。鳥の住む檻がずらりと並ぶ区画を通ると、まじまじと眺めていたワシがタイミングよく真横で大きく翼を羽搏かせるものだから、びくりと驚嘆に肩を揺らしたのち。)……で、でっか……、(なんて、大分脳直な感想が思わずといった風に零れた。)
* 7/22(Mon) 01:36 * No.102

(「そしたら後で飲み物奢って」は、とりあえず今日で完結しそうな借りの返し方の提案だ。出資者への礼についてはゆるゆる頷き、実際に礼言うところ想像したら、なんてきちんとしたお嬢さん!とまた盛り上がるところが目に浮かんだ。)カピバラ温泉動画、いいな。こたつ入りながら見たらのんびりできて癒されそう。(口振りから好きが伝わる。脳裏に浮かんだカピバラたちは、頭にタオルを乗っけて気持ち良さそうに温泉に浸かっている。まるで露天風呂でくつろぐ人々のようで、微笑ましさで顔が緩んだ。促されて歩を進めつつ、話題は前に後ろに行ったり来たり。)カピバラにあげる餌ってなんなんだろ。草食?だよね? シロクマがザブザブ泳いでるとこ見たら、こっちも泳ぎたくなっちゃいそうだな。(動物にさして詳しいわけでもないので、ふわふわした話題が場に漂う。最初の目的地に向かう途中に足踏み入れた猛禽類の住処にて、ばさりと音立てて広げられた翼は、完全に開いたら自分の背丈以上の幅がありそうだった。思わず同じ感想が転がり落ちる。)でかっ、……びっくりした。(こちらは素直に驚きまで口にして、)ワシとタカは基本的に大きさで区別するって書いてあるけど、 そうするともしかしてワシの方がタカより強い?(独り言として呟かれた疑問は、スポーツチームからの連想だった。)
* 7/23(Tue) 13:51 * No.107

(提案には少し考えてから頷き応える。金額的な釣り合いの取れなさを感じつつも、彼が選んだ事に甘んじた形だ。今は、やたらに考え込むよりも、同調してくれる彼と共に動物たちの話題へと移ろっていくばかり。)うん、果物とかも食べてるの見たことある。でも餌やりなら、葉っぱとか野菜なのかな。……あー……気持ちよさそうだね。今、シロクマと泳いでる鵜飼想像した。鵜飼、泳げる?(現実ではそうはいかずとも、想像上だけならファンシーな絵面だ。着地点の無さそうな応酬は緩やかに続き、そんなささやかさすらこの娘には特別なものだ。――が、鋭い羽音が空を切れば殆ど同じようなリアクションがまろび出て、呼応するように「……あたしも」と素直に同意する。突然の事にどくどくと早鐘を鳴らす左胸に掌を置いて鎮め、彼が読み上げるのと同じ個所に目を通そう。)へえ……その程度の違いなんだ。そこがそのくらいの違いで、鳶は『鳶が鷹を産む』って言われちゃうくらい違うの、なんか不思議。(興味深げに読み進めるうち、ワシやタカの名を冠するチームを思い浮かべるより先に、スポーツには疎い此方は緩やかに首を傾ける。)……うーん?確かに身体がおっきいってアドバンテージ、無視は出来なそう。やっぱ今の見ちゃうと、こっちに勝ってほしい。(何せまんまとふたりして驚かされた生き物だ。別に鳥同士で戦わせるなんて話ではない筈だが、そんな些細な希望を口にして。)
* 7/23(Tue) 22:37 * No.110

あっ 確かにリンゴとか小松菜食べてるイメージある。あの顔とあの動きで実は肉食ですって言われたらギャップにびっくりするところだった。 泳げる。人並みには?ぐらいの感じだけど。だからシロクマと泳いだら途中で置いてかれちゃうのかも。(シロクマの泳ぐ速度は分からないが、特別泳ぎが得意とも言えないのでシロクマ側にはよっぽど手加減してもらわないと一緒に泳げないだろう。ファンタジーと現実の入り混じった回答はちょっとのおかしみ含んで紡がれる。ー先に驚き口にしたこちらの方がびっくり度合いとしては大したことがなかったらしい。ちらりと友人見やった視線には、小さじ半分ぐらいの心配も混じっている。が、特に言葉にはせず再び雑談へ。)鳶は身近にいる鳥だから、軽く見られやすいとかそういう感じなのかな。鷹ってその辺であんまり見ない気がする。(これまた特に根拠のないふわふわトーク。ワシとタカの勝敗についても殊更スポーツチームから思い付いた話だとは示さずに、)俺達二人ともびっくりさせたんだから、確かにワシが勝ちそう。でもタカが同じようにバサバサしてもびっくりしたかも。(そうなるとワシ>タカ>我々という構図になってしまうのには目をつぶるとして。会話続けつつ歩めば、前方にカピバラエリアが見えてきた。「カピバラのごはん 200円」の看板見つければ、「あれ」と指し示しつつ)どうする?半分こする?(二人で分けっこがまっさきに口をついて出た。妹相手じゃあるまいし、特にシェアする必要もないのに。)ごめん、別に普通に一人一個買えばよかった。(うっかりを恥じる気持ちから、いつもよりやや早口になる。)
* 7/24(Wed) 22:09 * No.115

(カピバラにシロクマ、そんな応酬の中、知らないことなんていくらでもある。動物の生態であったり、彼のことであったり。動物の展示みたいに彼のことなんて書いてやしないから、不意に得られる彼の側面には密やかな感興があった。)そうかも。この辺なんて海近いからか、公園いるとたまに遠くから鳶の鳴き声聞こえてくることある。ぴょろろ……みたいなの。(存外納得のいくふわふわ説に頷いた後、暫しの思案。)…………確かに。タカでも間違いなく驚いてたし、距離によっては全然スズメとかでもびっくりする。(見た目と態度のわりには気は小さい部類である。鳥類>自分とまで勢力図から蹴落とされていきつつ、目当ての区画に辿り着くのは間もなくの事。指し示す先に素直に応えていたけれど、謝罪が続けば怪訝そうに首を傾げて見せたか。ややあって、思い返して、その口振りに思い当たり「ああ、」と呟いて。)……慣れた言い方だ。(ふ、と口許を緩ませ微かに笑みを零す。その傍に在る存在がよぎって溢れた綻びであったが、それも一瞬。瞬きのうちにはその口許も平生の固さへ戻って、鞄から財布を手繰り寄せると、)いいよ。しよ、はんぶんこ。(取り出した100円玉は一枚。此方はあまり慣れていない言い方につき、そのまま「ん、」と硬貨を押し付けてしまおう。)一人っ子だから独り占めは飽きちゃうくらい慣れっこなの。……それとも、今日くらい独り占めしたいとか、ある?(“独り占め”なんて言い方は大袈裟なくらい、ささやかな事柄だからこそ。彼の選択に関心寄せて、じっとその反応を窺った。)
* 7/25(Thu) 01:28 * No.119

鳶ってさ、油揚げじゃないけど本当に食べ物攫っていくらしいね。クレープ食べてて取られちゃった人の映像、見たことある。……もしかして俺達、鳥に弱い?(二人をひっくるめて弱点タイプの判定を。LINKSで誘いかけた時の会話の流れ思い出し、少しの間ののち足された「びっくりにも弱い?」は、友人に向けた問いとなった。辿り着いた最初の目的地、お目当てのもの目前にして、こちらだけしか気まずいと認識していないだろう沈黙が落ちる。湿原を取り返したくて言葉を矢継ぎ早に続けたくなるのを制し、友人の表情が刹那でも緩めば安堵した。いつもの調子が戻ってくる。)ありがとう。(礼は子供っぽい半分こを受け入れてくれたことに対するものと、お金受け取る時の礼儀みたいなものと両方だ。硬貨を受け取り、そのまま自分の分も足して「お金はこちら」の表示に従って投入する。並べられた器からなんとなくリンゴと小松菜多めのものを選び取りつつ、問いかけにはゆるゆる首振った。)独り占めだとなんとなく落ち着かないから、半分こがいいな。妹が生まれるまでは俺も色んなものが独り占めだったはずなのに、もう半分この方が慣れっこになっちゃった。(会話の内容お構いなしに、こいつらは何か美味しいものを持っているぞ、しかもそれを自分達にくれそうだぞと気付いたのか、こちらに向かってのそのそと集まり始めたカピバラ達。餌の入った容器をお先にどうぞと友人に向かって差し出そう。障りがないようであれば、ご飯容器持ち係を務めるつもり。)
* 7/25(Thu) 22:16 * No.122

(鳶に食べ物を攫われていく瞬間を想像すればゾッとする。ともすれば弱点タイプの判定も間違ってはいまい。次いで問われれば、面持ちに苦みを滲ませつつ頷く筈だ。こうした面では素直なくせに、手向けられた謝意は金額分の方のみ受け取った気でいる辺り、面倒な性分である。)ああ……そっか、結構離れてるんだもんね。半分ことか……食べたものの感想、言い合うのとか。いつも妹さんとやってる?(彼の振る舞いの端々に感じられる都度、浮かぶ情感は憧憬とも呼べようか。餌に引き寄せられたカピバラたちが集まり始めれば視線は吸い寄せられ、差し出されるままにリンゴを二切れ頂いて、此方によってきたうちの一匹と相対する。世界最大のげっ歯類を冠するに相応しいサイズ感に「間近で見るとマジでおっきい……」なんて感想を零しつつ、おずおずと、そんな手付きでリンゴを口許へ運んでみる。すん、と鼻をひとつ鳴らして、それからのんびりとした動きで咀嚼し始めるだろう。)うわ……か、かわいー……しゃくしゃくいってる……りんごおいしい?(ぽつぽつ、というよりも、ぼそぼそ。殆ど無意識みたいに拙い音吐を洩らしながら、おっとりした挙動に釘付けだ。そのうち、成獣を思しきその個体よりも二回り以上も小柄なカピバラが、二匹で連れ添ってやってくるのが見えた。)鵜飼、鵜飼。ちっちゃいのきた。(すぐ傍に居る彼に手招きをして、其方の番とばかりに見守るつもりで。)
* 7/26(Fri) 06:08 * No.124

やってる。焼き芋半分ことか、みかんの半分ことか、ハンバーグもっと食べたいならにいちゃんのあげるから食べなとか。ご飯もおいしいねおいしいねこれあーちゃんの好きなのだ!って色々喋りながら食べさせてたから、その延長で感想言うようになったというか、……今はうっかり何も言わずにぼーっと食べてると妹に叱られる。(元々喋るのは不得手ではないが、妹のこととなると殊更饒舌になった。近寄ってくるカピバラを見ても頭の片隅で妹はちょっとこの光景を怖がるかもしれないと考えてしまうあたり、筋金入りだ。誘った名目である下見の役割を一応果たしているとも言える。近付いてきた存外大きな体躯に「ほんとだ」と相槌打ちつつ、最初の餌やりを見守る。カピバラの咀嚼に夢中になる様に目を細めた。そんなに好きならこのまま餌やりお手伝い係に徹しようと思ったのだが、)えっ、俺?(何事もいちばん美味しいところを譲るのは慣れっこになっているので、あなたがやりなさいと促されることの方が稀だ。そうそうない経験に瞬きひとつ分だけ反応が遅れる。動きが速い動物でないのが幸いしたのか、こちらの様子などお構いなしにのそのそと近寄ってくる二匹に匹数分の小松菜の葉を差し出した。)わ、食べてる食べてる。かわいいね、お口がもしゃもしゃしてる。もっと食べる?(動物に手から直に餌をやる経験はあまりない。いざやり始めると際限なくあげたくなってしまい、次はりんごをと一瞬だけ手が伸びそうになったがそれを止める。代わりにもう一度容器を差し出して、)佐々礼もこの子たちにあげる?
* 7/27(Sat) 07:50 * No.129

(その口から語られる様子は、彼の姿で容易く思い浮かべられる。そうした場合は叱られる側と聞き及べば「妹さん、しっかりしてる」なんて、其方の味方をしてみたりなんてして。お目当てが早々に叶ってみるといつまでもそうしていられそうなものだから、蓋を開けてみれば半分こくらいが丁度よかったのかもしれない。瞬く彼を他に誰がいるんだとばかりに見つめていれば、ゆったりとしたペースで寄って来たカピバラたちも同じように見上げてきて、六つの瞳が彼に向く。)ペット飼ったことないから、こういうの出来るのちょっと新鮮。鵜飼は動物にも懐かれそうだね。(何となくと湧いた感慨を素直に零して、差し出された容器に手を伸ばし「ん、」と短く答えてリンゴを手に取る。それぞれの口許に運べば、先程よりも小さい一口が懸命でまた可愛らしい。)ちっちゃいのも、かわいい……同じくらいのサイズ感だけど、きょうだいかな。(兄か、姉か、弟か、妹か、そんな見分けは流石につかないが、寄り添って行動している姿を見るにそのように思える。突然大きくかぶりついてきたため指ごと齧られそうになるのを寸でで避けて、「う、っわ……!」と小さく悲鳴を洩らす場面もあったか。またも逸る心音を抑え込んで、それから、その横顔を窺って。)ね、きょうだいいるのって、楽しい?(今更、愚問だったかもしれない。それでも今、彼に聞いてみたかった。)
* 7/28(Sun) 05:12 * No.131

(「自慢の妹なんだ」は、心の底からそう思っている鵜飼にとって当たり前のことだったので謙遜もなくさらりと語られる。一瞬の惑いの間にこちらを向いた六つの瞳は、みんながみんな同じようなはてなマークを宿しているようで、ふと口元が緩んだ。二匹の小松菜もりんごもお気に召した様子も微笑ましい。)俺も、ペット飼ったことないのも新鮮なのも佐々礼とおんなじ。動物が懐いてくれるのはどうかな、たまに散歩中にご機嫌そうな犬がこっち見てるなって思うこともあるけど。佐々礼はなんか、  猫にじーっと見られたりしてそう。(目元の印象から連想される動物挙げて勝手に一人と一匹を対峙させてみる。)確かにずっと一緒にいるし、きょうだいかも。仲良しだね。(寄り添い譲り合って餌を食べているようにも見える二匹は、たいそう仲睦まじく感じられた。控えめな驚きには一瞬だけ目を丸くしたのち、「大丈夫?」と心配にちょっとの面白がりを溶かし込んで問うただろう。ふいの疑問符には迷うことなく頷いた。)楽しい  し、俺は妹がいてありがたいなって思うことがよくある。すごくかわいいし、ずっと幸せに過ごしてほしい。(聞かれていない半ば父のような心境まで明かしつつ古びた腕時計に目をやれば、カピバラ達を満喫したおかげで早めのお昼なら食べられなくもない時間である。)シロクマ見てから昼か、昼食べてからシロクマかどっちがいい?(ちなみに、と前置きしてから見せるスマートフォンの画面には、ゾウやカピバラ、トラの形の可愛らしいパン達が表示されている。見せるラインナップが小一女子特化型になっている気もするが、同級生にも通用するだろうか。)園内のパン屋にこういうのも売ってるみたい。
* 7/28(Sun) 19:12 * No.134

(彼もまた同様というのには少し意外そうにしてから――猫? 吊り目がぱちりと瞬く。動物が身近であった経験に乏しく首を傾げるも、些細なアクシデントを経て、横合いから問われれば「……食べられると思った」なんて大袈裟に言ってみたりして。何事も無かった指をさすりつつ、間髪入れぬ答えに瞳を細めた。)そっか。……まぁ、鵜飼の様子見てれば、聞くまでもない事だったかもだけど。本当に、お父さんみたいだね?(以前に彼もまたそのような自認を語っていた事を思い出す。聞くまでもない事。それでも「……鵜飼に聞けてよかった」と感慨を零し、キャップを少し目深に被り直す。小さめの子たちはほんの少し贔屓しつつ、近寄ってくる様々なカピバラたちに餌を与えていくうち、半分このカップがからになる頃。時計を見遣る素振りに気付けば、此方はスマホのロック画面を確認する。)あー……昼時になると落ち着いて食べられるようなとこ、混みそうだし。今のうちに食べちゃってもいいかもね。(室内か、或いは屋根の下か木陰か。それすら弾かれてしまっては夏場には中々厳しいものがある。提案から片方を選び取り、差し向けられた画面を覗き込む。)あ、カピバラある。ゾウもかわいい……いいね。ここで食べようよ。(この手の施設ならばイートインスペースなりテラス席なりとあるだろう。もうないの?とばかりに見上げてくるカピバラたちに後ろ髪引かれつつ、小さく手を振って次なる目的地へ出立の姿勢を。)こういうの、見た目で選ぶか、味で選ぶか、ちょっと迷う。カピバラ、好きな感じの味だといいけど。(なんて、浮かぶ所感を添えながら。)
* 7/29(Mon) 06:39 * No.137

そう。父親代わりの面倒くさい兄貴だから、妹が会ってほしい人がいるって言ってろくでもない人間連れてきたら露骨に嫌な顔するし、そいつにお兄さんとか呼ばれたら「俺は君の兄ではないんだけど」って言ったきり一言も口きかなくなるかも。(はるか未来に思いを馳せたやや大仰な物言いには、本音と冗談が半分ずつ混ざり合う。何かしら意味のありそうな呟きにおや、と眉上げたものの、どうして自分に聞けてよかったのかを問うことまではしない。そこまで立ち入るべきでないと判断したからだった。話題はより気軽で、けれど今話す必要のあるものに移りゆく。)よし、そしたらもうパン屋行って、ご飯食べちゃおう。(同意得られて次の目的地が決まれば、カピバラ達に軽く手を振り歩き出す。園内地図で確認した限りでは、昼食場所までそう時間は掛からないはずだ。ポケットに突っ込んだ端末が表示してくれていた情報思い返しつつ、)なんか全体的に甘い味っぽい雰囲気だったな。カピバラも菓子パン系かも。何味だといけそう?もし見た目で買ってダメそうな味だったとしても、引き取り手がここに一応いるのでご安心ください。(胸に手を当て軽く会釈する仕草は即席バトラー気取り。見えてきた件のパン屋の店内は、時間が早いのが幸いしてまだ人もまばら、室内に席が確保できそうだ。焼き上がった動物パン達がお客の到着を待っている。一番人気の表示のあるカピバラパンはマンゴークリーム入りのよう。)
* 7/29(Mon) 23:05 * No.139

……頑固おやじだ。(空想は一足飛びで未来へと至り、先程までの“予想通り”から幾分かズレていくものだから、そこまで?とばかりの面持ちがあった。彼に訊ねられさえすればそれで満足で、今は直近の決定に頷き、目的地を定めたならばその道中に。)甘いのなら大体好き。辛い系は……苦手かも。カレーパンとか、好きか苦手か分かれる。……、お願いする事もあるかもだけど、あんたも好きなの選んだ上でだからね。鵜飼は何が好きなの。(普段妹の希望を優先させたチョイスをするのだろうと想像は出来たが、まさか自分に対してもそんな事をさせるわけにはいくまい。前もって念押しとして訊ねながら、足を踏み入れた店内にて。そこまでの空腹感ではなかった筈が、ふんわりと香るあたたかな匂いに食欲をほのかに刺激されて、園内の動物たちに比べお行儀よく並ぶパンを眺めた。)マンゴークリーム……?パンでは食べたことないタイプのだ。でも夏っぽくていいかも。んー、やっぱ全部かわいい……。(あちらへこちらへ、どれも愛らしい形をしたパンに目を惹かれ、時に「リカオンってなんだ……?」と馴染みない動物に怪訝そうにしてみせたりなどして。自身の腹と相談してみれば二つが限度なため、あと一つをゾウの親子にするか丸まった大きな尻尾の可愛らしいリスにするかと迷う中、パッ顔をと持ち上げる。)鵜飼、どれにする?
* 7/30(Tue) 14:15 * No.143

辛すぎるの、俺もあんまり得意じゃない。俺の好きなのはソーセージとかベーコンとか入ったやつ。でも甘いのも好き。カレーパンも激辛じゃなきゃいける。だから、佐々礼がうっかり苦手カレーパン取っても肩代わりできるよ。(せっかく鵜飼自身の好みを尋ねてくれたのに、結局どこまでも兄気質が抜けきらない答えになった。だが、口にしたどれもが事実ではある。店内で様々な動物パン達に囲まれ、またも頭に浮かぶは妹のこと。どれか土産に買って帰ろうかと思ったが、真夏の屋外にパン達を連れ回すのは得策ではないと考え直す。)同じパンでも、みんな微妙に顔が違うのがかわいいな。マンゴー、あんま食べたことないけどうまそう。(好き勝手に所感を漏らしつつ、空きっ腹と相談する。パンを眺める視線がそのまま友人へとスライドし、パチリと目が合った。)ソーセージのやつと、クリームパンと、あとしょっぱいのと甘いのもう一つずついこうかな。(言葉通りに、うさぎがソーセージを抱きしめている愛らしいパンをまっさきにトレイに乗せ、次に選んだのはレッサーパンダのクリームパン。さてしょっぱいのもう一つとゾウの形の塩パンを選んだところまでは順調であった。も一つ甘いのはどうしようか。つぶらな瞳でこちらを見つめる動物パンたちはどれもが自分を食べてと祈っているように見える。)ね、佐々礼がもしどっちにしようって迷ってるのあったら、俺がそれ買おうか?食べられそうなら半分あげるから。(人の希望を優先させるということは、自分で選択する必要がないということでもある。結局自分では何を最後の一つにするか決められなかったので、決断に友人の力借りるつもり。)
* 7/30(Tue) 23:19 * No.146

(ほんの少し考える素振りを見せ、そう、と短い返答に納得を混ぜ込んだ。「……激辛カレーパンなら、どっちもアウトだね」なんて想定も戯れ程度の一匙分。)ね。ぬいぐるみ選ぶ感じと似てる。ああいうのも、案外それぞれ顔違う。……これがかわいいかも。(覚えのある感慨に寄せて、他よりも気持ちポケッとした表情に見えるカピバラを選ぶまでは早かったが、その後が悩みどころ。ゆえに一旦彼に問いかけたわけだが、)……男の子はよく食べるね。(なんて、そのチョイスよりも其方に驚いたリアクションを見せ、兎角現状悩んでいるものとは被っていないと知れる。再度逡巡に耽ろうとした中、提案に一度黙したのは検討よりも“気を遣わせた”との懸念に因るものであったが――ややあって、こくりと首肯をひとつ。)んん、……うん。じゃあ……お願い。ねぇ、そしたら、あたしが買った他のもちょっと食べる?二個半食べれるか怪しいし……妹さんの好きそうなの、鵜飼ならわかるでしょ。(下見という名目に加え、事前に調べていたのも妹のためと見当を付けていた。そのために此方からも新たに手向けた提案を間に置いて、リスのシナモンロールを指差し「こっちでいい?」と彼にお願いする方を示す。そうして、各々のトレイに動物たちが並べば、会計時に「鵜飼、飲み物選んで」と呼びつけて最初の約束を果たしつつ。)……鵜飼は、優しいよね。(ぽつりと、浮かぶ感慨が零れる。彼にとっては些細な事だろうか。それでも、過ごす時間が増えるだけ思う本懐だ。)
* 7/31(Wed) 08:17 * No.148

実は結構カピバラ気になってたから、ちょっと分けてもらえるとうれしい。(妹が好きだろうというのもあるが、この「気になってた」は先程餌やりをしたのとマンゴー味と知ってから生まれた興味なので、兄としての自分ではなくても嬉しい申し出だった。指されたリスのシナモンロールの中で、なんとなくこの子がかわいいなと思ったものをトレイに迎えて会計へ。自分から言い出したくせ半ば忘れかかっていた飲み物奢ってが果たされるとなれば、オレンジジュース、と言葉にしかかってやめた。自分が飲みたいと思ったものを選んだわけではなく、メニューから無意識のうちに一番安価なものを選ぼうとしていることに気付いたからだった。)…この、クラフトジンジャエールっていうのにしてもいい?(フードコートなんかでよく見るソフトドリンク類よりもちょっとだけお高めのそれは、生姜が効いていてちょっぴり大人の味であるらしい。まるで都会のオシャレなカフェで出てきそうなドリンクは、子どもが飲むには刺激が強そうで、妹がいる時はまず頼まないものだった。これが気になるな飲んでみたいなの気持ちに従って遠慮がちに指さしてみたが、ちょっとでも困惑の色が見えればすぐに撤回するつもり。零れた感慨には、ひとまず「そう?」と反応返して、話の続きは店内の二人掛けのテーブルに着席してからになった。空調が心地良く効いた店内で、パン達に見つめられながら)優しいかな、それを言うなら佐々礼も優しくない?初めて会った時、苦手なのにちっちゃい子の相手してたし、さっきも自分の選んだパンちょっと食べる?って聞いてくれたし。(二人して困り果てた様子だった幼な子と女の子の姿を思い出す。リスのシナモンロールを首のところで半分に千切ろうと手を伸ばして、すんでのところで止める。「この子達の写真撮ったりする?」は空回りかもしれない気遣いのつもり。)
* 7/31(Wed) 22:13 * No.150

(互いの同意を経て、並ぶ会計時。促したドリンクメニューを共に眺めている中、彼の指し示す文字に視線は引き寄せられる。)へぇ……こんなのあるんだ。……うん、いいよ。あたしも同じのにしよっかな。(――察しなんて良い方ではない。だから、ほのかに漂って感じられた遠慮の気配も、勘違いだって構わない。彼の希望が聞けたならば、微かに表情をやわらげて同じものを選ぼう。二つのパンと二つのドリンクの会計を済ませ、二人着席した後には、以前のように泳ぐわけではない眼差しはただ愛らしい動物たちに惹かれている。クラフトジンジャエールの片割れを彼の方に置き、しかしその表情は次第にもにゃもにゃと複雑なものへと変じていった。)ん、ん〜……それ、は、そうした方がいいかなって、思っただけで……ていうか、あの時は結局あたし一人じゃ何も出来なかったし……。(過日の出来事は自身の部分のみ切り取ってしまえば“醜態”に他ならず、苦々しさがよぎるも、こほんと咳払いののちに。)……なんか……相手に気遣わせない気遣い方、みたいな感じあるでしょ、鵜飼って。あたし、勝手に色々考えちゃうんだけど……鵜飼と話してると、ぐるぐるすることあんまないの。(人付き合いを苦手とする所以の一部。交わらせることを避けたがる瞳だって彼のそれは気にならないから、キャップを脱いで「……撮る」と甘んじて提案を受け、スマホを翳そうか。食事の写真を残す習慣はあまりないが、可愛らしい状態で残せるのは今だけだ。彼の購入品含め数枚ほど写真に収めた後、カピバラと親子ゾウとをくるりと彼の方へと向け、撮る?とのアイコンタクトを。短い撮影会を経て、大層抵抗感のありそうなしかめっ面でパンの一部を千切って彼のトレイへと置いたなら、「……いただきます」とまずはカピバラから一口。)……ん、美味しい。夏に合う味、かも?(なんて、あの日の食レポに寄せて。)
* 7/31(Wed) 23:51 * No.151

(ストローさしたジンジャーエールをまずは一口。口の中でパチパチピリピリ弾けるそれは、ほろ苦さも相まって確かにちょっぴり大人の味だった。出会いの一日を思い出してか、変わりゆく表情を見守りながら)そうした方がいいって思って、それをちゃんと行動に移すのがまずすごいことだと俺は思うよ。佐々礼が立ち止まってなきゃ、俺も声掛けなかったかもしれないし、(そこで言葉切って、しばし黙考。やっぱり違うなと再び口開く。)いや、佐々礼が立ち止まってなくても多分はるとくんに声掛けたとは思うけど、…………俺達二人とも善人ってことにしとく?(褒め言葉を過剰に謙遜するのは時として失礼になると知っているが故のひとまとめ結論。目が合うと話しやすいし、嬉しくなるのが鵜飼の性である。貰った言葉達もこちらを嬉しくさせてくれるもので、飲み物をかき混ぜるストローは友人の言葉とは反対にぐるぐるぐるぐるした。)友達にそういうこと言ってもらえるの、嬉しい。これからもスマートな気遣いを目指します。(友の撮影が終わり、こちらを向いた二匹を含めた総勢六匹を雑な構図で写真に写す。分けっこの準備が終われば、手を合わせていただきます。初対面のあの日を思わせる感想に思わず小さく笑いが漏れた。こちらも一口目はカピバラから。)マンゴーの 爽やか甘さが 夏の味 秋には別の 味になるかな(指折り数えた食レポ短歌はちょっと字余り。視線合わせてちょっと首傾げたのは、採点どうですか?の意図だが通じただろうか。そんなちょっとした戯れや美味しいの共有を経て、昼食終えれば次の目的地は涼しげな寒冷地の動物ゾーン。ざぶざぶ泳ぐシロクマに目を細め、土産探しに付き合ってとショップ見物に誘い、穏やかに友人との夏の一日は過ぎていく。帰宅してから家族に見せたパンの写真に「パンじゃなくてお友達の写真撮ってきてよー!!」とじたばたどんどんされたのも夏の思い出の一ピースになるだろう。)
* 8/2(Fri) 23:18 * No.156

(もしも。当時、彼がいなければ、は想像に容易いが、自分がいなければ、ともなると。その口をついた仮定の違和は同様だったらしく、此方は間を置かずに異議を唱えよう。)うん。鵜飼は間違いなく声掛ける。(明白に断言して、然して矛先が自身にも向くと困ったように眉を下げた。)……ん〜……うん、鵜飼もって言うなら……まぁ。(己の性質を悪辣とは思っちゃいないが、どうしたって賛辞を受け取るのは不慣れだ。彼も含むならばと納得して、ジンジャーエールに差し込んだストローへと唇を寄せる。友達、と。彼から紡がれる度に胸奥より湧くあたたかな情感と、喉を通って伝う冷たさとが混ざって、なんだかちぐはぐな心地だ。)なんか……自分で宣誓すると変な響き。や、あたしも思ってるけどさ、スマートな気遣い。……けど、あの、……と、ともだちが喜んでくれんなら、伝えてよかった……かな。(これもまた不慣れば言葉なものだから、口にしてみるとじわじわと熱の昇る感覚を覚える。ほんのりと赤みの差し込む頬なんて夏のせいにして、キャップで顔を扇いでいると、先日のように食レポをするものだろうかと待てば、突然の一首。交わる視線の意味合いを感じ取ったならば、)……えっ。あっ、んーと……疑問形の「かな」と詠嘆法の「かな」がかかってる感じで、いいんじゃない……?(採点は食レポに対してというよりも短歌に対するものとなったか。アドリブの弱さを露呈させながらひとつひとつと美味しさを分かち合って、腹を満たした後には再び園内を楽しむ事となろう。まず目当てのシロクマよりも先に彼の横顔を窺って、それからその涼しさを気持ち分けてもらおうか。誘いに応じたショップ内では土産を決めあぐねて相談したりして、夏の一日は彼の色で彩られていく。別れ際にはきっと、少し面映ゆくって目を逸らしたまま、ありふれた言葉で締めくくろう。)今日……楽しかった。……またね。
* 8/4(Sun) 00:03 * No.158


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