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9/20(木):放課後 双鏡学園敷地内【7】

(委員会活動の一環で赴いた体育館から戻る道中、終わり次第直帰を許可されていたため、部活動の面々の邪魔にならぬようにと人気の無いルートを通り校舎奥から戻ろうとしている折だった。歩み進める視界の端で、何かふさふさとしたものがもぞもぞと動く。――犬? いや、まさか。敷地内にそんなものがいよう筈がない。そう断じて進行方向から外した視線を傍らへ流し、よくよく見てみれば其処にいたのは――犬だった。)え……犬だ……。(あまりにも飾り気のない言葉が零れ落ちる。マロ眉のような模様が可愛らしい黒柴だが、首輪をしている辺り野犬ではないようだ。迷い犬か、と、思案するも束の間。突然振り返ったくりくりとした瞳と視線がかち合った途端、四つの脚が勢いよく地面を蹴り、此方に突撃してくるではないか。)う゛、(びくりと身構えるも、ローファーにすりつくように地面を転がり始めてしまえば警戒が解かれるのも一瞬。野生など知らぬとでも語るように腹を見せごろごろと呑気に舌を出しているものだから、なんだかつい脱力してしまう。)……懐っこいんだね。なに、ごはんとか持ってないよ。……どうしようこの子……。(愛嬌を振り撒いてくれているというのに撫でてやる事も出来ぬまま、ただ立ち尽くす娘が一人と朗らかな犬が一匹、九月の空の下に在った。)
* 8/6(Tue) 06:46 * No.17

(本日の予定、特になし。委員会活動があるからとシフトを外していたものの、思いの外あっさりと役目を終えたその結果、男は暇を持て余していた。体育祭を控えた学園内はどこか活気に満ちていて、特に運動部に所属する者は個人差こそあれ活躍を目指して張り切っている様子である。帰宅部として人気を避ける道を選んだのはそれらの顔見知りと接触を避けるためでもあって、意図せず見えぬ背中を追った先、捉えたのは佇む女生徒と、その足元で何やら動く黒いかたまり。)……。犬?(一瞥の後に立ち止まる。思わず二度見した。)犬だ……。(校内ではまずお目に掛からないその姿を少し遠巻きに眺める。立ち尽くした女生徒の足元にじゃれつく首輪付きの犬。その光景から、彼女が飼い主なのだと状況を把握したつもりになる。)着いて来ちゃったんですか? この子。(愛嬌のある姿を眺めはするが、ある一定の距離は保ったまま。「どこから侵入したんだろうな…」独り言を挟みながらも、人見知りをしない気安さで干渉するのは彼女が困惑している様子にも見えたから。)先生に見つからないよう、騒がれないよう帰る方法を考えてる?(徐に告げた推理は的外れやもしれないけれど、力になれそうであれば協力は惜しまないつもりである。どこか好奇心が先行した表情で、窺うように瞳を見た。)
* 8/12(Mon) 16:00 * No.22

(舌を出したまま零れる断続的な呼気の狭間、立ち尽くす娘の嘆息が一度だけ混ざる。放っておいても他の誰かが見つけるなりして何とかなりそうな気もしているが、それもなんだか憚られて立ち去る事も出来ぬまま。眉を寄せて途方に暮れていると、掛かる声に大袈裟に肩を揺らし振り返る。)……え、いや……、(その姿を見止めては“確か二年の”というところまで委員会の後輩の姿を思い出すも、どうしたって多い人数に阻まれ思考は中断。続く推理と併せて何やら勘違いされているのだと判ずれば、ふるふると首を横に振って応えよう。)っあ、違……あたしの家の犬じゃない。多分、どっかから入り込んだんだと思うけど……知らない子。(振り返った姿勢のままであった視線が交われば、咄嗟に逸らしてしまってその瞳は足元へ。ご主人様がゆえの愛嬌ではなく、可愛がってくれそうな気配があれば誰でもよいものか、その証左のようにむくりと立ち上がった黒柴は今度は彼の方へ尻尾を振り身を寄せ始める始末だ。)……どうしたらいいかって、意味では……考えてたっていうのは、合ってる。……知ってる子だったり、しない?(少なからずご近所の愛犬であって欲しいところだが、一先ず見覚えがないかと伺おうか。)
* 8/13(Tue) 20:38 * No.23

(肩を大きく揺らした姿を見て、「すいません、急に声かけて」と軽く謝罪を添えながら。知らない子。紡がれた言葉は彼女が飼い主どころか面識すらない状況を示すものだった。どこか気まずそうに落ちる視線をつい追いかけて、その先の黒柴に辿り着く。)……あ。(何やら立ち上がろうとする様子に、近付く気配を感じて立ち竦む。逡巡する暇もないままこちらに向かう姿を見ては、「あー…」諦めにも似た声を漏らしながら、膝を折ってしゃがんだ。期待に満ちた黒目に応えるべく、まずは首の周りをわしわしと撫でて可愛がる。)怖い話していいですか? 俺今コロコロ切らしてて…(膝元に擦り寄る愛らしい姿を前にしても冷静さは損なわず、けれど手遅れに等しいのだからとこの際思う存分両手で撫でまわすことにした。立ち上がる頃にはびっしりと毛にまみれている覚悟を決めて。)残念ながら俺も初対面です。抱えて職員室行くか、交番行くか……もしくは、(迷子犬であれば取るべき選択は絞られる気もするが、どちらにしても道中は野次馬が避けられないだろう。飼い主でもない人間が犬を抱えて移動するのも不安因子である。なので、)可愛がられて満足したら、自分で帰れるのかも。そっちに賭けてみます?(第一発見者である彼女を見上げて問い掛ける。一方で黒柴は、されるがままに腹を見せ付けていた。)
* 8/17(Sat) 01:39 * No.29

(大袈裟な反応をしてしまった事に此方が謝るべきところであったくらいだが、結局今回もふるふると首を振るのみで。“怖い話”との語り出しに怖がりは一瞬顔を顰めて警戒の色を見せるも、続くオチにそれが緩和するまでは一瞬の事。)あ、 あ〜……それは……確かに、怖い話だ。周りからつつかれそう。(温もりの残る足元を窺えば、ハイソックスは素材感のためか被害軽微であるが、如何せん白地にはまばらな黒い毛がやや目立っている。対処は後回しにしようと諦観で締めて、明示された選択肢をひとつひとつと検討していく。選択肢その一、めちゃくちゃ目立つ。選択肢その二、やや目立つ。苦々しさとその他不安要素が胸中にこぽこぽと湧き上がる中、賭けの提案に一度首を傾けたのちに。黙する間からややあって、スカートを押さえ、至福を味わっている黒柴の傍へと同様に屈みこんだ。)ん……正直、連れて歩くの自信ない。そっちの方がこの子のため、かな。……えっと、ど、どこ触ったらイヤとかイヤじゃないとか、わかる……?(怖々と手を伸ばしてみて、一瞬で引っ込めて。満足いくまで“可愛がる”という新たなミッションとして遂行しようと試みるも、不慣れさの壁が邪魔をする。犬と彼とを視線が行ったり来たりと繰り返すうち、恐る恐ると、おずおずと、次なる問いかけが続く。)……あの。委員会、一緒だよね。ごめん、名前、聞いていい?
* 8/18(Sun) 06:30 * No.31

つつかれますよね。放課後だしバイトは休みだし、まだ良かったなって思うことにします。(僅かに眉を下げながらも、構われたがりの相手をするべく開き直るように笑う。撫でる度に白黒の毛が舞う光景を前にして、「帰りに買い物しないとな…」しみじみ落とす独白でひとまず今日の予定は確定した。提示した選択肢を懸命に考える姿を一瞥して、やがて黒柴を挟んで屈む姿を目にすれば、彼女が賭けに挑む意志を示したと解釈する。)確かに、そっちの方がこの子のためかも。犬ってなんとなく女の人のが好きなんだよなあ。(体験談として勝手に犬の印象を語りながら、どうにも不慣れな仕草と助け舟を求める様子にからりと笑った。)胸のあたりとか顎下、あと側面も好きかな。どうせ毛まみれになっちゃうんで、触り心地を堪能してみてください。(手本のように口にした箇所を撫でる間、黒柴はされるがままだ。その様子から手を伸ばす勇気に繋がることを期待して「どうぞ」と目線と共に撫でのターンを託す。それから、遅れての自己紹介を挟んだ。)保健委員ですよね、さっき見たなって思ってました。 二年の宮生です、宮生彰虎。折角顔見知ったんで、あとで番号交換しておきます?名前覚えてて欲しいし。(はじめましてが最後の挨拶にもなり得るのがこのマンモス校。連絡先交換ははぐらかすのも容易な調子で告げた後に、彼女が撫でるのとは別範囲に手を伸ばして熱心に撫でかわいがる。そろそろ満足してもらえるだろうと期待を抱きながら、)ベタですけど、犬と猫ならどっち派ですか?(黒柴に視線を向けたまま、そんなことを問い掛けた。)
* 8/20(Tue) 20:42 * No.35

(いざ挑戦の時。彼の示した位置を「胸、顎下……側面……」とオウムのように反復して、そうっと伸ばした指先は今度こそその身体に触れる。ふわり、掌が毛並みに沈んでいく。)うわぁ、わぁー……ふわふわ……かわい……、(柔らかな触り心地、撫ぜる都度示される心地よさげな反応。先程までの及び腰なんてなかったかのように、その愛らしさに耽り始めることになるだろう。)宮生……うん。あたしは佐々礼。三年の、佐々礼笑子。番号、は、…………え、と、うん、宮生がいいなら、いい……けど。(眉を下げた長い逡巡は何も迷惑がっているわけもなく、慣れぬ応酬への正答に辿り着けなかった間だ。証左のようなぎこちない首肯に次いで、ふわふわの胸元を撫ぜつつの閑談が続く。)んー……のんびり気ままな感じとか、どっちかっていうと猫派だったと思うんだけど、……今、ちょっと浮気しそう。宮生は、派閥あるの?(動物は好きだ。見ている分には。触れ合った経験の乏しさからそれ以上の視点は持ち合わせていなかったが、これだけ至福そうにされては揺らぎもする。反応を見て、感触を堪能して、暫し二人がかりで愛でているうちに、黒柴はおもむろにすくりと立ち上がってみせた。わふわふと何やら語り掛けるように鳴いてみせたのち、意気揚々と何処かへ歩み出す足取りは迷いなく、その後にはもう振り返りもしなかった。)あっ……満足した、のかな。……帰れるといいんだけど。(案じる中に名残惜しさが混ざりつつ、目線を下げればスカートには黒白混じりの毛が纏わりついて「あぁ……」とどうにもならぬ声を零す。まぁ此方はマシかもしれないと、申し訳程度にスカートを払いながら立ち上がろう。)あの、付き合わせて悪かったわね。宮生のおかげであの子も、多分……満足してくれたっぽいし。……どっかでまた会えるといいね。脱走中じゃなくて、散歩中とかで。(さて帰巣本能を信じた後には、おずおずとスマホを取り出してみるつもり。この微かな縁の途切れる箇所が、このはじめましてにならないように。)
* 8/22(Thu) 18:07 * No.36

(黒柴にとってもお待ちかねだったであろう、彼女からの撫でターン。初めこそ恐る恐ると伸ばされた指先もすっかり毛並みと愛らしさの虜になったようで、やはり心なしか男が撫でていた時よりもご満悦な様子の犬に笑いを噛み殺した。)三年?なら先輩だ。よろしくお願いします。(さざれさん、と記憶するように一度苗字を声でなぞってから、ふと真顔になる。「……すいません、どう書くのか想像もできない」難読漢字を想像して頭の中を疑問符で満たしながら、「あとで答え合わせお願いしますね」と気安い笑みを向けた。)俺はかなり猫派のほうで、揺らぐつもりもなかったんですけど……(首元のあたりを撫でながら、概ね彼女と等しい派閥を告げるも煮え切らなさが残る。心地良さそうな黒柴の姿をしばらく眺めた後に、ふ、と表情が緩んだのは降伏の合図だった。)浮気ありますね、これ。かわいい。(愛嬌に愛くるしさ、それから手触りも込みで目の前にかわいいを押し出されるとさすがに折れた。暫定的に犬派二票を獲得したことも影響したのか、立ち上がった犬がわふわふと告げたのは感謝の言葉だろうか。振り返ることなく去って行く背中は潔さを感じて、案ずる彼女をよそにもしや人間に可愛がられに学校に通う常連なのではと勝手な想像力が働いた。)…まあ、大丈夫だと思いますよ。(従って犬の帰路に男が心配を寄せることはなく、さっぱりとしたものだ。それよりも残された抜け毛の懸念が大きくて、声を漏らした彼女に笑いかける。)いいえ。通り掛かって良かったです、俺も癒されたし。(ある程度の毛だけ払い除けながら同じように立ち上がり、)散歩中に会えたら、その時は飼い主さんに声かけてみます。名前わかったら連絡しますね、また触らせてくれると思うんで。(通学とバイトの行き来に犬探しの楽しみを増やしながら、無事連絡交換を終えれば挨拶代わりにトラのスタンプをひとつ送信。スマホを仕舞った後には、)良かったら駅まで一緒に帰りません? 毛まみれ同士、多少は目立つの相殺されるかも。(口実はそこまでの杞憂でもなく、誘う声は軽やかだ。はじめましての続きとして、穏やかな時間をもう少し引き延ばすように。)
* 9/1(Sun) 13:28 * No.42


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