
2/14(木):朝 用務員室前 >昼神さん【2】
昼神さん、佐々礼です。(ノックを2回、それから声を掛けて扉を押し開く。校内で顔を合わせれば挨拶を交わし、時として足を留める事も間々あったが、こうしてわざわざ訪れるのは年末以来となった。しかしこの時間帯は教員の往来が気になるところ。早々に「お渡ししたいものがあって、」と前置いた後、差し出したのはカラフルな包装紙に包まれた小さな何か。)えーと……友チョコ、のつもり、です。バレンタインなので……クラスの子と交換し合う予定なんです。それと同じので。(手首に提げた紙袋には同じ柄の包装紙が複数個と、その奥底に異なるもうひとつ。女子高生らと成人男性を一緒くたにするのも考え物ではあるが、いずれも“友達”という括りに置くことを望む関係性ともなれば、友チョコなる文化を持ち掛けられた際に彼の顔も同時に浮かんだのだった。包みの中身は、クッキーでマシュマロとチョコレートを挟んだスモアサンドだ。)あたし、再来週受験本番なんです。合格発表は卒業後になっちゃうんですけど。(国公立組は少し遅く、試験が終わったとてすぐに解放とは相成らぬが、今はその先を想った。)だから、色々終わったら……ゆっくりお話出来ると嬉しいです。やっぱ、学校だとなんか気になっちゃうし。昼神さんよければ、ご飯とか食べながら……とか、かな。(望みを口にして、よぎるは想い人の姿。異性と二人という状況を彼がどう思うかは知れぬところなので、事前に確認を入れるつもりだ。と、共に。大切に想う相手を、どちらにも知ってもらいたいという願いもある。ゆえに「……お話したいこと、いっぱいあるので」そう加える声は、どこか穏やかなものだった。)
* 10/25(Fri) 00:54 * No.181
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(2月14日という日付と彼女の来訪の理由とが結びついたのは、差し出されたきれいな包みを目にした時。無理やり視界に飛び込んでくる文字情報がないせいか、そんな文化を共有する相手が居ないせいか、街で見かけるチョコレート菓子の割合が増える時期、程度の認識だったのが去年までの話。そんなことより久しぶりに友人に会えると浮かれていたせいもある。そんなこんなで「ともちょこ」という単語は聞いたことはあるが変換に一拍を要した。ぱち、とまたたき、のち、)ありがとう。(贈り物をもらったら礼を言う、という反射の方が先に出た。もちろん嬉しい気持ちに嘘はないので受け取った包みを大事そうに両手にのせたなら、「もしかして手作り? すごい」と既製品とは異なる趣のラッピングをまじまじと眺めつつ、「おれ、女の子からチョコレートもらうのはじめてかも」と感慨深げに。もちろん「友」と名のつくそれは先日渡した親愛のクッキーと変わらぬものであるとわかっているので照れはなく、ただ彼女の手間暇と思いやりの具現に目を細め、大事に食べるね」と締めくくれば、)……そっか。いよいよだね。じゃあ、合格発表が終わって色々落ち着いたら……その時は、これのお礼も兼ねてお祝いさせてもらおうかな。(続く“これから”の話に対し、励ましの代わりに明るい未来の約束を。受験を知らない自分にはその苦難がどれほどのものか想像もつかないが、彼女という人を信じることならたやすくできた。新しい約束は忘れぬよう、さっそく手帳に記しておこう。そして卒業、という単語にもう一人の友人の存在が閃いて、)あ、ついで…って言ったらあれだけど、おれも笑子ちゃんに話したい事いっぱいあるんだ。なんだったら一緒にお祝いしたい相手が居てさ。その子も今年3年生で。(彼とも春休みに合格祝いをと話していたから、二人を引き合わせるならその時だろう。)前に話した、おれが、友達になれたらいいなって思ってた子。や、本当はもう友達だったんだけど、……あのあと、ちゃんと友達になれたから。笑子ちゃんに紹介していい? それで、笑子ちゃんのことも紹介したいな。(あの夜崩壊する塔で露になった現実は姿ばかり。こちらの世界での二人のお付き合いを知らぬが故に感動の再会をもくろみながら笑みを浮かべた。まさかの事実に自分の方が驚かされるとも知らず。──鏡の中に置いてきた相棒ならとっくに更新済みの事実に大騒ぎする春の日まであと少し。ちょっといい店の個室で改めて『自己紹介をしよう』なんてお題から始まる一幕もあるのかも。)
* 10/27(Sun) 16:20 * No.184
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……一応。簡単なものですけどね。昼神さん、甘いもの食べるって仰ってたから……お口に合えばいいんですが。(寄せられる言葉と反応とに眦をほんのりと下げる。親愛抱く誰かのために何かをしたいと思うようになったのは、この幾月かの変化のひとつ。「あたしもこういうイベント、まともにやるの初めてです」なんて微かに笑って見せた。脳裏にちらついていた自己満足なんて言葉を払ってくれた彼へ、小さく頭を下げて応えた後に。)や、そんなお気遣いなく……ああけど、本当に変に気遣わせないように頑張んなきゃ、ですね、もうちょっとの辛抱と思って……その時を楽しみに、励みます。(結果が揮わなければ優しい彼は慰めの方法を手繰ってくれるのだろう。そんな事にはならないようにと改めて意気込む現今、決意新たに、そして手帳の文字が増えることを楽しみのひとつに、転じて彼の語り出しにひととき瞬いて見せた。人見知りの拭えない娘は刹那、怪訝さにも近しい翳りを覗かせるが、続く言葉にそれも霧散してパッと晴れ渡っていくようだった。)あ……良くしてくれるって、言ってた人?そっか、友達に……そっか、うん、よかった。おめでとうございます、……は、ちょっと違うかな?(仔細は知れぬ事ながら、きっと彼は何か踏み出すことが出来たのだろうと思えた。過日の姿を知ればこそ、そんな手放しの想いを手向けて、此方まで喜びが頬に滲んでいく。彼ならきっと大丈夫。そんな感慨は過日から変わらずとも安堵を零し、けれど次いだお誘いには僅かに緊張感を伴った。)はい、えっと、是非……とは、思うんですけど、……ど、どんな人ですか?や、昼神さんのお友達なんだから、変な人じゃないとはわかってるんですけど……な、仲良くなれる、かな。(友達の友達、なんてルートなどついぞ経験はなく、心許無く腹の前で組んだ指がまごまごと落ち付きなく弄ばれる。まさか思い浮かぶ姿など何もない。)……そしたら、その後でいいんで……あたしも、昼神さんに紹介したい人がいるんです。アイリーンが話した……あ、その、友達……って、言ってた人、なんですけど、(思えば語り聞かせたあの日から関係性は変じて、形容し難く口籠る一瞬を経て「絶対、仲良くと思うんです」と続く声は確信をもって告げられた。先に“紹介”を受けた後には、そんなこと必要なくなるなんて知らずに。足を止めず、歩んでいくと決めた道は、やがて重なり連なっていく。)
* 10/28(Mon) 20:51 * No.187
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