
11/14(水):午後 京都市内の土産物店【5】
(班行動での歴史的建造物巡り中、レポート作成が課せられているとはいえ、お勉強ばかりでは息が詰まると息抜きがてら友人らと訪れた土産物店は観光客向けの京都らしさで溢れている。思い思いに店内回る中、頭に浮かぶのは夏ごろ「友だち」リストに増えたひらがな四文字の人物のこと。二年生でも三年生でも、そもそも学生でもないあの人は、きっと今日も校舎内で生徒のために働いてくれている。旅の思い出のお裾分けしたくて、何を贈れば喜んでもらえるだろうかとうろうろと売り場を物色する。)なあ、ちょっと年上の人にお土産買おうと思うんだけど、お菓子系と後に残る系とどっちがいいと思う?(振り返りざまに気安い口調で問いかけたのは、すぐ後ろに同じ班の友人がいると思ったからだ。だが、思った顔は見当たらず、間違えましたが顔を一瞬過ぎる。視線だけ動かして目当ての友達が近くにいないことを確認したのは刹那のこと、)ごめん、同じ班のやつだと思って話しかけちゃった。…ところで、お土産これとこれだったらどっちがいいと思う?お菓子系と、後に残る系。あっちのふちっこにあるホワイトチョコはさまった抹茶のラングドシャもうまそうなんだけど。(指し示すのは京都土産の定番品である箱入りの生八橋と金閣寺や五重塔、伏見稲荷など、京都各地の観光名所をデフォルメしたイラストが散りばめられた湯呑み。後輩か同学年しかいないと踏んでいるので、端から敬語を外すと決めたらしい。)
* 8/28(Wed) 08:56 * No.39
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(共に遊ぶにはおよそ面白くない性質であれど、最近は少し人づきあいが良くなったとは級友たちの評。高校生活最後の年の思い出作りの面も考え班行動のルート作成においても比較的空気を読んで、若者たちに人気のスポットが取り入れられてもすんなり了承したのは、その評を裏打ちする行いでもあっただろう。班の面々が喜んだとは言うまでもない。かくして、班行動の一環で訪れた土産物店。古都の様々な土産物を前にしても青年ははしゃぐ様子もなく、陳列棚へ視線をあてながら思考を余所にとばしていた。結果、話しかける声も半ば聞き流し、己の班のメンバーの声と誤認するに至る。)君、そうやって相談を持ちかけるならば、こちらの要求も飲んで頂きたいですね。具体的には、多眠無気力症撲滅キャンペーンに協力を……、(頭が痛い問題は、修学旅行終了後から開始される新任の風紀委員会顧問主導のキャンペーンである。この際、級友にも協力させようと決心して向き直り、顔を見てようやく人違いに気付いた。間違えましたの過らない無表情だが、気まずさは漂う。てん、てん、てん、の無言を経て、こほん、咳払い。)……失礼。こちらも同じ班の人と勘違いしてしまいました。ちょっと年上の人へのお土産、ですか?(誤認で応答したお詫びも兼ねて、質問に応えようと思考を巡らせる。ちょっと年上の人、この言い方では親族はないだろうと推測しつつ。)お土産に何が適しているか、その人を知っている君こそが分かるはずですが……その人の嗜好は、知らない?(示された湯呑みへと目線を移ろわせ、)お茶を嗜む人なのですか。これなら、普段使いできそうな湯呑みですね。(続いて身を屈め、生八橋の箱の消費期限のラベルを覗き込んだ。)生八橋を選ぶ場合。これはあまり日持ちしないでしょう。その期限内に消費しなければならない。その人がご家族と菓子をシェアする習慣があるなら箱入りで問題ありませんが、一人で全て食べきる前提ならば量は考慮した方がよろしい……かと。(気の利いたアドバイスなど出来ない自覚はあるので、どれとも結論を明らかにせず自信の無さが滲む。)
* 8/31(Sat) 06:08 * No.40
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要求?(思いもよらぬ言葉に瞬きひとつ。硬い言葉遣いも相まって、怒らせてしまったかとこの場を切り抜ける術が何パターンか頭の中を駆け抜けていったのも束の間。咳払いと続く言葉からして、面識のない人間からの突然の質問に答えてくれる気持ちはあるようだ。ならばと気安い口振りは続く。)俺がいちばん知ってるだろってのは本当にごもっともなんだけど、……嗜好、 好き嫌いはなくて、和菓子を食べることが多いけど、チョコとかクッキーも食べるってことは知ってる。確かに消費期限短めなのがたくさんだと昼神さんのご迷惑か……(消費期限を気にする前にお菓子がなくなるタイプの家庭であったため、期限内に食べ切れないとの指摘は目から鱗であった。そういえば、あの人の家族構成も知らない。一人で暮らしているのかも、誰かと暮らしているのかも。知らないことだらけの相手にお土産選ぶのは難しく、でも心躍る作業でもある。自分では気付かぬところの指摘をくれる相談相手がいるなら尚更だ。)アドバイスありがとう。とりあえず湯呑み買って、抹茶のラングドシャが日持ちしそうならそっちも買おうかな。渡せない間に生八ツ橋の期限がきちゃったら困っちゃうし。(普段使いできそうとのお墨付き得られた湯呑みは購入決定。後で洋菓子のほうの消費期限は確認するとして、せっかくの縁をここで切るのも寂しいので世間話をもう少し。)さっき言ってた、多眠無気力症撲滅キャンペーンって何するの?よかったら俺も手伝おうか。(名前も知らない相手を信頼しづらいかと思い至り、遅ればせの自己紹介。)俺、3-9の鵜飼。……風紀委員だよね?校門のあたりで立ってるの見たことある。名前聞いてもいい?
* 8/31(Sat) 22:40 * No.41
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(好き嫌いはない。和菓子を食べることが多い。チョコやクッキーも食べる。一つまた一つと呟いて情報を積み重ねれば、見知らぬ人物の像が朧げにかたちをつくり始める。そうやって縁もゆかりもない相手像を組み上げるべく試みるほど、心が浮き立つのは何故だろうか。)好き嫌いがなければ、美味しそうだと思った品を贈るのは宜しいでしょう。美味しいものを贈ろうとの気持ち、受け取り手からすればそれこそが嬉しいかと。加えて抹茶とホワイトチョコは、一般的に間違いのない組み合わせでしょうから。(ホワイトチョコを挟んだ抹茶のラングドシャのほうを臨み、落ち着いた緑基調のパッケージに僅かに口許を緩ませる。殆ど材料も無いというのに、その人の喜ぶ顔を想像してみたくなってしまう。そうしてから改めて件の湯呑へ目を向け、)………とても。とても、京都ですね。(ぽつり、真顔で感慨を落とした。ブランド物等とは明らかに毛色の異なる品。一目見れば京都を連想すること間違いなし。あらゆる商品が京都ですアピールをしている、賑やかさに満ちたこの店を凝縮したようだと思う。とりあえず彼の土産物選びに一段落ついたとみれば、一安心の吐息をこっそり逃がした。次いでの申し出には、はたりと瞬いた。思いがけない協力者は、願ったりかなったりではある。)よろしいのですか。内容としては、風紀委員会によるアンケート調査です。青少年の夢を掲揚し、心の健康を促進して病を防止しよう……が、スローガンですね、多眠無気力症を精神疾患の一種とみる説に添っての。多眠無気力症は落ちつきをみせていますし、まあ、形式的な……極めて形式的なものですが。(懐疑的な口調は、これで撲滅できるとは微塵も考えていないからである。)鵜飼君。はい、風紀委員の3年1組の九堂律です。アンケートに協力頂けるのでしたら、修学旅行後から期末試験までの期間で、いつでも構いませんので。(日取りはそちらの都合に合わせます、と補足。)
* 9/4(Wed) 02:19 * No.43
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九堂はすごい。ちゃんとした理由もつけて人の決断のこと間違ってないよって背中を押してくれるのがすごく上手だ。(元々人との間に隔てを作らないほうではあるが、同学年と知れた途端に気安い名字の呼び捨てに呼称が変わる。「抹茶とホワイトチョコ、うまいよね。家用にも一個買おうかな」は、一般的に間違いのない組み合わせという冷静な判断に乗っかって発された。真顔で落ちたそのままの感想に頷き、言葉を継ぐ。)そう。せっかくの修学旅行土産だし、京都っぽいほうが一緒に行った気分が味わえそうなのと、渡した相手が興味示した場所があったら「俺が大人になったら一緒に行ってみませんか?」って誘いやすいかなと思って。(目論見明かしつつ店内カゴを手に取り、結局中には湯呑みと件の菓子が二箱入れられた。お節介かなの申し出のほうも無事受け入れられたようで、具体的な内容が示される。)夢って夜見るやつ?将来の夢のほう?…いや普通は将来の夢のほうか。(ある単語に引っかかって転げ落ちた問いは、この旅行中は訪れていないあの世界が影響してのことだ。が、すぐに問いのおかしさに気付いて訂正くっつけることになった。)九堂は、あんまり効果があるって思ってなさそうだね。アンケートって俺が答えるだけのほう?それともやってねってみんなに呼びかけるほう?(こっちの問いかけは純粋な疑問から生まれたもの。答えがどちらでも申し出た協力を取り下げるつもりはない。日取りについてはまた改めて連絡しようと、ポケットから取り出したのはスマートフォン。)よかったら連絡先交換しない?また日程LINKSで決めようよ。(了承得られれば「友だちリスト」にまた新しい名が増えることになるだろう。首振られてもクラスは分かっているのだから、また修学旅行後にでも改めて3年1組訪ねればいいだけの話だ。画面に目を落としたついでに目に入った時刻はそろそろここを出発したほうがいい頃合い。)俺これ買って行くから、また今度!(告げる別れはやや慌ただしく、一直線にレジに向かう。会計待ちの間、レジのすぐ横に並んでいた地元メーカーのものらしいもちもちした皮で餡を包んだ和菓子から一つを取り、カゴの中に加えてお会計。店を出る前にもう一度親切な同輩の姿見つけることができたのなら、九堂、と声掛け呼び止めて)これ、アドバイスくれたお礼。和菓子嫌いじゃなかったら食べて。(と、ささやかな贈り物押し付けてから店を出ることになるだろう。もし彼が見つからなかったとしても、宿でのおやつになるだけのこと。納得いく土産物と旅先での新たな縁、二つを手に入れた高揚で仲間の元に向かう足取りは軽い。)
* 9/8(Sun) 14:44 * No.48
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恐縮です。諸々の言語化という点では、君のほうこそ長けているような……。(好青年然とした佇まいに加え、随分と丁寧に言葉を綴る生徒だと思う。呼び捨てにも全く嫌な感じがしない心象はそれが要因か。ともあれ、少しでも力になれたのなら光栄だ。己の発言で彼の後押しができたらしい事に、胸を撫でおろしては細く息を吐き出した。)大人になったら共に京都観光?遠出?をしたい相手、なのですね。(物言いからは彼自身もその人の情報をそれほど積んでいないように窺えたが、通り一遍には終わらないようだ。不躾に踏み込む心算はないが、傍目には少し、不思議な関係にも映った。)……うまくいくと宜しいですね。(旅行の思い出を分かち合うような贈り物と目論見を捧げるほどなのだから、報われると良い。言葉を選ぶ前にその想いが自ずと、素直に口をついた。言葉尻には常よりも抑揚がある。アンケート調査の協力の話に及べば、説明が足りていなかったと反省して。)夢、とは、将来の夢のほうですよ。夢をもって病気を防げるなど、現実的ではありませんが。(多眠無気力症の原因たるシャドウに対抗できる者は現状限られているから、効果が得られるとは思えないといった面もある。)協力をお願いしたいのはアンケートの回答です。双高所属の人ならどなたでも回答可です。できれば放課後にでも口頭での回答、お話しながらでお願いしたいのですが、難しいようならこちらからアンケート内容をメールで送って回答いただくのでも構いません。(一定数をランダム的に選出したアンケートを取ってこい、との顧問の方針により、風紀委員たちはアンケート回収人数のノルマを定められ、飛び込み営業力が試される羽目になったのである。相手のスマートフォンを見れば、同じように取り出したそれを連絡先交換すべく向き合わせる。)はい、お願いします。……非常に助かります。(友だちリストに増えたアカウント名を確認し、地道に心のこもった感謝を告げた。そして、去り行く姿を見送った――では終わらず、)え、いや、あの、(反射で受け取ってしまった和菓子に呆気に取られ、あたふたする。しかし付き返したくはない。)ええと。お礼ですか……ではありがたく、いただきます。(会釈を贈って踵を返す。パッケージ越しにもわかるささやかな柔らかさが心に重なった。)
* 9/11(Wed) 23:33 * No.57
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