
11/18(日):昼前 ハッピーイート店内 >昼神さん【7】
(てるてる坊主に願ったとおりの快晴の日曜日、友人と以前に訪れたときと比べて賑わう店内は休日の楽しげな雰囲気に満ちている。深緑のシャツにブラックジーンズを合わせ、休日にお決まりの黒のボディバッグとグレーのスニーカーの組み合わせだ。今日はこれにプラスして小さな紙袋が加わったが、中身は後で種明かしすることにして。年上の知人とランチ共にする第一声は、)急に誘ったのにオッケーしてくださってありがとうございます。昼神さんとご飯食べに来れて嬉しいです。(校舎外であるので、学校関係者とテーブル囲むというより、仲良くなりたい年上の人と楽しくご飯を食べるという心持ちのほうが強くなる。場所の問題だけではなく、ちまちまと折り重ねたメッセージのやり取りのせいもあるだろう。案内された広めのボックス席で、メニュー開くのにもあまり遠慮は見当たらない。)やっぱりパフェ食べたいですよね、今日俺ハヤシソースのオムライスも食べたいと思ってて、…昼神さんは今日は何を食べる気分ですか?(視線は同席者とメニュー写真とを行ったり来たり。いつ渡そうかなのタイミングうかがいから、時折そこに自分の隣に置いた紙袋も加わることになる。)
* 9/9(Mon) 23:02 * No.52
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(流石にこの時期になっても無地の黒Tシャツに古びたジーンズとはいかず、長袖のシャツをその上に羽織る。黒地に落ち着いた色味の青と黄色の格子が走るそれは昨日買いに走ったばかり。自ら選んで服を買うという行為が久しぶりすぎておかしくないだろうかと今朝鏡の前で何度も不安になったけれど、それを笑うような相手と会うわけじゃないと知っていたのでえいやっとそのまま家を出た。ちなみに履き古したスニーカーの新調は間に合っていない。相変わらず重たげなトートバッグを肩にかけて、)こっちこそ。今日は誘ってくれてありがとう。おれもうかいくんに会えるの楽しみにしてた。(返す言葉は文字を打つ何倍もスムーズに紡がれた。対面での会話は久しぶりにもかかわらず、比較的落ち着いた応対ができたのも遠き日に憧れた交換日記みたいな数日おきのやりとりのおかげだろう。一人になれる時間を見つけてはイヤホンをつけて文字を“聞く”ことから始まる作業は果てしなく面倒で、そのうえ人差し指によるポチポチ入力で目当ての単語を打つのには恐ろしいほど時間がかかった。それでも返事を期待すればこそ。ときたま3日も4日も間が空いても急かされることはなく、いつでも続きを返してくれた彼には感謝しかない。気づけば季節は夏から秋へ、それももうすぐ終わろうとしている。)うん。パフェは食べてみたいな。(向かいに座る彼は何をするにしてもスマートで感心する。真似て大判の写真が並んだメニュー表を開きながら、添え物のような文字に安堵した。これなら指で示せばいいだけだ。)でも、おれもまずはご飯ものが食べたいかな……うかいくんがオムライスなら別のやつの方がいいかなって思ったけど、うーん……やっぱりオムライスが食べたいかも。ケチャップソースのやつ。(とん、と指さしたのは鮮やかな黄色と赤のコントラストがいかにもな『ハッピーオムライス』。記憶の中のひよこが頭にのっけたそれを食べろ食べろと言っている気がして。)ほら、リンクスで何度も見ちゃったからさ。
* 9/10(Tue) 03:08 * No.54
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(目の前の人が返信に要した労力なんてつゆ知らず、社会人だからお忙しいんだろうなとゆっくりとした返信ペースも気にせず楽しんでいたメッセージのやりとり。勉強の合間に、家族三人分の食事作りが終わった頃合いに、ふとした瞬間に届いていたメッセージは青年の生活のちょっとした彩りになっていた。知り合ってから半年にも満たないのに、心の距離感が久しぶりに会う中学校の先輩ぐらいになっているのは少しずつ重ねたやり取りの賜物だろう。)俺もまずはご飯ものにします。あのひよこの頭のオムライス、やたらうまそうでしたもんね。(指された『ハッピーオムライス』は確かにひよこが帽子のように頭に乗せていた代物によく似ている。少しの逡巡の後、)決めた。俺オムハヤシにします。別々のもの頼むのは、また次来たときにしてもいいなと思うので。(昼神さんとハッピーイート計画第二弾を勝手に頭に浮かべつつ、デザートのページへメニューをめくり)……パフェは、食べてる間にもうちょっと迷ってもいいですか?チョコバナナと季節限定の栗のやつで迷ってて。(己の希望を告げてひとまずのオーダーが整えば二人分の注文済ますつもり。このままではせっかくの料理を味が分からない状態で食べることになりそうなので、個人的メインイベントを先に開催することにする。入りはやや唐突だった。)あの!これよかったらもらってくださいの修学旅行のお土産です。中身はお菓子と湯呑みで、本当は消え物だけのほうが無難かなって思ったんですけど俺がお近づきの印に何か形に残るものあげたくなっちゃって、……あっでも趣味に合わなかったら返品可能です。いや昼神さん優しいからそんなこと言わないだろうなってのもわかってるんですけど、(選んだときにはあんなに余裕ぶっていたくせして、いざ渡す段になったらなんだか言い訳重ねたくなる。余分な言葉がたくさんくっついた上に、握った紙袋の持ち手がひしゃげてスマートとは程遠い渡し方になった。どうぞとテーブルの上で差し出した袋の中身は、相談に乗ってもらいつつ購入した抹茶のラングドシャにホワイトチョコが挟まった洋菓子に、京都の名所イラストが散りばめられたいかにも“京都土産の湯呑み”である。)
* 9/10(Tue) 22:44 * No.55
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(当たり前のように「次」という言葉が紡がれ内心どきりとしたけれど、緩む頬はうつむき加減の今なら目立ちはしないだろう。彼に倣ってページを捲る。)あ、うん、おれもどのパフェにするかゆっくり決めたいかも。……想像以上に色々あってびっくりしてる。(チョコバナナ、栗、ストロベリーに抹茶――カラフルで充実したデザートページに目を落としながら希望にはもちろんと頷けば、優柔不断がどれにしようかなとつるりとした紙の上に指を滑らす。)…え?(ところが天啓に行き着く前に切り出された新たなイベント。思わず視線を上げれば眼前には紙袋。中身はなんだろなと考える前に答えも添えて差し出されたなら、)あ、ありがとう……(反射の感謝がまずはこぼれて、それから彼の懸命な説明の間、ゆっくりと何度もまたたいた。人はおどろきと感動が過ぎると反応が鈍くなるらしい。けれどテーブル越しに渡されたそれをそっと膝の上にのせる様は宝物を扱うように。手に取った緑色のパッケージ。おそらく商品名なりなんなりが書かれているのだろうが、洒落たデザインにまぎれた文字はもはや水の中に落としたように形を捉えることができなかった。)行先京都だっけ。抹茶かな? おいしそう。(だが幸い修学旅行の行先は知っていたのでそれらしい会話運びはできたはず。次いでずっしりした方の箱に手を伸ばす。当然返品する気などなかったので検品のつもりではなく、)わ……この湯呑み…お寺? あ、神社も……京都の観光名所がいっぱい。(持ち上げたそれをぐるりと一周させてお手軽京都気分を味わったのち、)すごい。おれも旅行行った気分になれそう。(「趣味に合いました」と微笑むことで彼の不安を拭うことはできたろうか。)おれ、京都行ったことないからうれしい。うかいくんの気持ちも、すごく。(改めて空になった紙袋に目を遣れば、ひしゃげた持ち手に彼の緊張を見つけて余計に嬉しくなった。このお土産に込められた想いの強さが伝わるようで。なんでもそつなくこなす印象があった彼に一層の親しみを抱きながら、)おれもフタコー生だったらうかいくんと旅行行けたのにな、って思ってたから……ほんとにありがとう。大事に使うよ。(今夜は久しぶりに、自分のためにお茶を淹れようと心に決めた。)
* 9/12(Thu) 02:51 * No.58
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そしたら食べながら決めましょうか。そのほうが満腹具合もわかって二人で一つずつパフェいけるか!?の検討もできそうですし。(勝手に話まとめて店員呼んで、ハッピーオムライスとハッピーオムハヤシの注文済ませたところまでは充分いつものスマートな気遣いができる鵜飼倫央だったはず。しかし、紙袋出してからは卒のない対応は在庫切れ。言葉を重ねれば重ねるほど焦りが露呈していく気がして、これよかったらどうぞだけで終わってたほうがスマートだったなと後悔するが、ぽろぽろ落ちた言葉たちはもう取り戻せない。)抹茶です!中にホワイトチョコが挟まってて、個包装になってるんでおやつとかに食べやすいかなと思って買いました。(選んだ理由はまた勝手に言葉になり、どうやら初対面の間抜けな印象を払拭して、鵜飼って実は気の利く良いやつですよをアピールしたがるような物言いになっていることに気付く。そういう変な自意識やら緊張やら後悔やらが報われるかのように丁寧な手つきで扱われる土産物たちは、もうそれだけで彼の元で大切に扱われ、幸せな生涯を過ごすだろうことが予想できた。彼の言葉の一つ一つからも喜びが伝わり、先程までの後悔が帳消しになる。そわそわと反応窺っていた青年は、ほっとしたように笑みを浮かべた。)いかにも京都!っていうの、なかなか自分じゃ買わないし、意外と人とかぶらないんじゃないかなって思ったのと、俺が気に入ったのでこれにしてみました。(旅行中に自分が感じていたちょっとした「こうだったらよかったのにな」を、目の前の人も同じように考えていたことを知り、ますます喜びは降り積もる。近い未来見据えての提案はちょっと前のめり気味に、)昼神さん、俺が卒業してバイト始めて旅行できる分のお金貯めたら、一緒に京都行きませんか?二人で、二人じゃなくても他の人誘ってでもいいんですけど、俺たちで修学旅行しましょう。
* 9/14(Sat) 23:15 * No.62
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(彼の説明に「それ助かる」と挟んだ言葉は短いけれど、嬉々としてパッケージを眺める顔が全てを物語っている。確かに個包装なら休憩時にちょうどいいし、仕事仲間にお裾分けもしやすいだろう。のちに初めて耳にする菓子の名をうまく言えず困惑する羽目になるのだが、それはさておき。)確かに、これはなかなか被る気しないな。自分だと買わないだろうし……でもほんと見てて楽しいし、……見せてあげたいな。(最後の呟きは小さく。愉快な湯呑みに描かれた名所たちを眺めながら、病院で眠る祖父を思い出す。素敵なプレゼントをもらったこと、そんな優しい知り合いができたことを聞かせてやったらきっと喜んでくれるだろう。そう思えば言葉にしたありがとうの何倍もの感謝が胸に渦巻いて、だからもうこれ以上の嬉しいことなんて起こらないと思っていた。それだけに、)…… えっ (続く提案に今度は大きな瞳がこぼれ落ちるかと思ったほど。ベタだけれども思わず湯呑みを持たぬ方の手で頬をつねる。)…ちゃんと痛い。……エッ!(遅れてやってくる理解。これが彼相手でなければ詐欺を疑うレベルの申し出だったが、数か月もかけてこんなしがない男を騙すメリットはどこにもないはず。今すぐ宿を予約するから金を寄こせと言われた方がよほど納得できたくらいだ。)…い、いいの? だって、うかいくんが卒業ってことは、あと数ヶ月先で、そこからバイトして、……そんなに先まで、おれと付き合ってくれるの…?(口にするとまた驚く。そんな遠い未来の約束なんてしたことがない男には現実味が無さすぎて、またたきの間に軽い思いつきや社交辞令の類かもと思えばようやくちょっと落ち着いた。疑うわけではなく、そうだとしても嬉しいなと思ったから。一瞬でも自分と共にある未来を描いてくれたことが。湯呑みを両手でぎゅっと握りしめて、)…それ、もし叶ったら、すごくうれしい……。(近場に繰り出すのにすら途方もない時間がかかる自分に旅行など無縁と思っていたけれど、彼が一緒ならと想像するだけなら幾らでも。この時ばかりは後ろめたい隠し事などすっかり忘れて、夢みる瞳がきらと光った。)
* 9/15(Sun) 20:49 * No.63
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ご家族さんですか?(は、見せてあげたい相手についての問いだ。)もし携帯使われる方なら、スマホのカメラで撮って画像送れますけど、よかったら湯呑み持った写真撮りましょうか?(勝手に物理的に遠く離れた場所にいるのかなと推察し、これまた勝手にもしかして画像添付してメッセージを送ったことがないのかもとスマートフォン技量も推し測り、ややお節介なご提案。成人男性と湯呑みのツーショットを彼のご家族?が喜ぶかは不明だが、自分の妹や母なら喜ぶだろうしという経験則に基づく申し出だった。(思ったよりも大きな驚きに早まりすぎたかなの懸念が首擡げる。仲良くなれたかなと思って浮かれてそのままの気分で言っちゃいましたという乾いた笑いとセットの矢継ぎ早の謝罪は、結局言葉にならずに消えた。目の前で繰り広げられた絵に描いたようなリアクションと続く言葉への驚きが保身を容易く凌駕したためだった。)いいです、というかあの よくなかったらこんなこと言わないですし、そんなに先までって言っても何も十年後の話をしてるわけでもないですし、俺は個人的には卒業して就職とかしてからのほうが昼神さんと友達って感じになれそうだなとも思ってるんですけど、(用務員と生徒だと友人として付き合うのに差し障りのあることもあろうが、卒業生と用務員ならちょっとは自由度が増すだろうし、社会人同士の友人関係ならもう咎め立てされることは何もないはずだ。そういう長いスパンの交友関係も念頭に入れていることを一方的に明かしつつ、瞳の輝きに心の底からの喜びを見る。)そうやって喜んでもらえて、俺のほうがすごく嬉しくなっちゃいました。俺たちただの生徒と用務員さんの関係じゃなくて、こうやって一緒にオムライス食べる仲なので、これからも末長くよろしくお願いします。(ちょうど運ばれてきたほかほか湯気立てるオムライスたちは、ハッピーを冠するだけあって見た目からして幸福の象徴みたいだった。あたたかい食事を共にして、そういえばと脈絡のない会話交わして、食後のデザート会議をして、言葉重ねる度に改まった口調が崩れたりまた持ち直したりを繰り返したのはご愛嬌。また学校でと手を振り別れるそのときまで、心もお腹も満たされたひとときを過ごすことになるだろう。ハッピーイートの店名に恥じず、これまでの来店全てがそれぞれ色合いの違った「ハッピー」で彩られた思い出となった。)
* 9/16(Mon) 17:14 * No.64
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うん。じいちゃん。(家族?の問いには素直に頷くも、申し出には少し困ったような顔で曖昧に笑ったのち、)…そうだね。せっかくだから撮っておこうかな。…って、おれも映るの?(てっきり湯呑み単体の記念撮影のつもりだったが、他者の手で撮られた写真がずいぶん久しく貴重なもののように思えたならば逡巡の末お言葉に甘えることにした。照れくさそうなぎこちない笑顔の横に五重塔を添えてパシャリ。フォトフォルダに数少ない思い出がひとつ増えてゆく。──こんなやりとりがこの先も続くと思うと、やはり夢のようで。)……そ、そっか。うかいくん、そんな先のことまで考えててくれたんだ。……おれ、こういうのはじめてで、びっくりしちゃって。……ありがとう。(ぽかんとした顔は徐々に緩み、やがて期待に満ちて笑う。『先』という言葉が示す未来の範囲が彼とは違うことを知り、彼が自分と同じでないことを喜んだ。いつ途切れてもおかしくない小さなきっかけを細々と縒り合わせてひとつの縁にしてきたけれど、それこそ彼の卒業を機に二人のつながりは失われると思っていたから。)うん。おれもまたうかいくんとオムライス食べたい…から、こちらこそ、よろしくお願いします。(そうして口に運んだ幸福のオムライスはとびきりおいしくて、久しぶりに誰かと向かい合って食べる食事はしあわせだった。スプーンを動かす手はゆっくりと。合間に修学旅行先の思い出話をねだってみたり、他愛ない季節の移ろいの話をしてみたり。デザートは悩んだ末に期間限定のものを選んだ。それ以外なら“次”の機会にすればいいと、そんな選択肢が胸の内にあるのがうれしくて。時々崩れる敬語をあえて指摘することはせず、慌てるさまを楽しみながら「卒業したら外してね」と未来を描けばあっという間に時は過ぎ、)今日はありがとう。湯呑みも早速使ってみる。お菓子も食べたら感想伝えるね。(大事に抱えた紙袋を落とさぬよう、片手でちいさく手を振った。また今度。約束はせずとも其処に行けば彼に会える場所となった学校は、明日からは単なる職場でなくなった。もう皮肉な縁とは思わない。)
* 9/17(Tue) 23:41 * No.69
azulbox ver1.00 ( SALA de CGI ) / Alioth