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12/25(火):放課後 用務員室前 >昼神さん

(いくつかの学校を転々としてきたが、クリスマス礼拝がある学校は初めてだった。案外他所でもあるものなのだろうか、と考えもした二年前から数え三度目の礼拝は、これで最後なのだという実感もいまいち湧かないままにつつがなく進行していくだろう。そんな中、時折明後日の方向に視線が吸われていくことがあった。これまで意識してこなかったけれど、ふとした際に“こういう時って用務員さん何してるんだろ”が思考の一部に食い込むことが増えてきたのは、ひとつの出会いが原因に他ならない。――明日の終業式後の予定で盛り上がる教室に「決まったら教えて」と言い残し、スマホ片手に廊下へと躍り出る。“これからむかいます”と打ち込んだ後には、流石に直前すぎたかとの反省も交えつつ階下を目指していこう。逃げ出したいくらいの情動はない。緊張は未だ頑なな根を張るが、もう足を取られるようなものでもなければ構わず二階まで降り立ち、何となく周囲に人影がないことを見回してから用務員室の扉を叩いた。)失礼します。(第一声は固く、開いた扉の内をそろりと窺う。他に人の気配があるようなら学年と一緒に名乗ってから目当ての人物の名を出すし、そうでないなら、)……昼神さん、お疲れさまです。今、平気ですか?(今は用務員と生徒の距離感で、生真面目さを纏った声が問う。)
* 9/20(Fri) 20:17 * No.89

(クリスマスれいはい。耳に馴染まない言葉を漢字に変換されてもぴんとこず、講堂に向かって列を成す生徒たちを見ても、彼女もあの中に居るのだろうか、どんなことをしているのだろうかとふと疑問に思うだけだった。──自分にとって12月25日は特別な一日ではない。ただ、世間では特別らしい日にかこつけて、感謝と友情を形にしてみたいと思ったのがきっかけだった。当然彼女の誕生日が昨日だったことを知る由もなく。いつ連絡が来てもいいようにHRが終わる頃には用務員室に戻り、今か今かと握りしめていたスマートフォン。文字など読まずともそれの震えが来訪の証。もうすぐだ、と思ったら予想以上に早く開いた扉に一瞬人違いかとも思ったけれど。)いらっしゃい。えみこちゃん。(その姿を見間違うはずもない。パイプ椅子に掛けていた腰をさっと浮かせて扉の前へ。)うん。今休憩もらってるから……わざわざありがとう。すぐ済むからちょっと待ってね。(場所が場所なだけにできるだけ手短にと考えていた。それに学校終わりとはいえクリスマス当日の学生は忙しいに違いない――なんて考えは浅慮な思い込みと明日知ることになるのだけれど、今はまだ友人や家族、あるいは恋人と楽しく過ごす貴重な時間をいただいているという頭でいる。長机の上に置いてあった紙袋を取ってくるのに5秒足らず。本当にすぐ済ませるつもりだった。)これ、えっと……(しかしいざ渡す段になると何と称すかでまごついて、いつもより多いまばたきの間に考えついた言葉が、)お近づきの印に…(である。クリスマスプレゼントなどと言えば要らぬ気を遣わせるかもしれないと思ったが、気を利かせた文具店のラッピングは明らかにクリスマス仕様の赤い包装紙。なんなら緑のリボンがついた金色のシールには『Merry Christmas』と書いてある。読めないので気づかなかったが。)あの、カピバラの柄は見つからなくて、犬猫はありすぎて迷っちゃったから……その、気に入るかわからないんだけど。(包みの中身は”フルーツサンド柄の手帳”。それを手に取ると、紙袋の底に小さな菓子の包みが見つかるだろう。そっちはアイシングクッキーで、紫と青のマフラーをした雪だるまが2体仲良く並んでいる。)
* 9/21(Sat) 01:33 * No.91

(室内を窺ってみればすぐに視界に映るのは彼の姿のみ。更に向こうの扉の奥がどうなっているかなどは知る由もないので、兎角。加えて名を紡ぐどこか柔らかに伝う響きとに安堵し、ふと肩の力が抜けた。)いえ、あたしもまた、どっかでお話できたらって……思ってたんですけど。……なんか、機会とかきっかけとか、あと口実っていうのかな。そういうの見つけるのって、難しいですね。だから、お誘いいただけてうれしかったです。(LINKSの『お友達』の一覧は少しずつ増えてきたけれど、未だ不慣れさは付き纏う。友達って難しい。角ばった思考が無用な壁にもぶつかるが、それも厭わしいものでもなかった。文字での応酬でも告げられた通りの文言へ「急いでないんで、お気遣いなく」と声をかけはするが、やっぱり大人は忙しいんだろうな、なんてすれ違いが生じているなど露知らず。やがて戻って来た彼のまごついた様子を暫し見つめて、そうして、)……お近づきの印。(馴染みない文言に思わずと反復。ぱちりと瞬いた瞳が自然と文字の記された箇所を追う。しかし彼がそう言うならば記号や装飾以上の意味などないものとして、今はふわりとあたたかに包まれる胸裏に従った。)……ありがとうございます。なんだろ、気になる。あのね、あたしも用意してきたんです。……お近づきの、印。受け取ってもらえますか?(お返しとして差し出したブルーのラッピング袋。申し訳程度に添えられたサンタクロースのシールは剥がしてもよかったな、とよぎる間隙に。)……や、でもあの、やっぱどうしても、イサナの印象が……あって……だから多分、もしかしたら、……大人の男の人に渡すものじゃない、かも……。(今度は此方がまごまごと口籠って、一目惚れして購入後に過ちに気付いたことを懺悔した。中に収まっているのは“クジラのルームシューズ”。丸っこい青いクジラを模したもこもこのそれは、随分可愛らしく――有り体に言ってしまえばやや子供っぽいデザインではあったか。開けられるのがちょっと怖い、けれど、ふたつ分のそわそわは喜びの方に傾いて、受け取った贈り物を揺らした。)……お邪魔でなければ、今開けてみてもいいですか?
* 9/21(Sat) 11:47 * No.94

え、えみこちゃんも…?(イベントにかこつけた贈り物だとお返しをねだるようでまずいと思ったのに、彼女の手中には既にプレゼントらしき袋があっておかしいぞ。LINKSでのやりとりなどすっかり飛んだ脳内に浮かぶ疑問符。とはいえイエス以外の選択肢はないのだから「それは、もちろん…」と両手でそっと受け取ると、大きさの割に軽く柔らかな感触にこれは、と呟く。彼女の反応からして子供向けの何かなのか。立体感のある不思議なフォルムのそれ。輪郭を確かめるようにそっと袋の上から撫でてみる。おっかなびっくりするようなものじゃないとわかっていても、中身の見えないプレゼントをもらうなんて久しぶりで驚き以上に浮かれてしまった。)あ、うん。もちろん。…じゃあ、おれも。(ゆえに差し出された申し出はありがたく、ちょうどいいとばかりにこちらも袋を開けるとしよう。ブルーの袋の中を覗けば、小さな海の中に浮かぶ青いクジラ。)わ、スリッパだ。……なるほど。だからイサナ…、(早速取り出して電灯の下でよく見ると見慣れた色合いに親近感。ふわふわのそれはぬいぐるみのよう。「かわいい」との感想は素直な第一印象で、「かわいすぎる」とは言わなかった。)こんなかわいいのあるんだね。履くのがもったいない気がするけど…ありがとう。大事に使うよ。(宣言通り、今夜から板の間や廊下を泳ぐ二体のクジラの姿が見られるだろう。こうして彼女の心配は杞憂に終わり、ドキドキするのはこちらの番だ。)手帳って持ち歩くものだから好みじゃなかったら困るなとも思ったんだけど、使いやすい人気のやつだって聞いて……それに、もし使いにくくても、ノートとか、家で日記代わりに使えるかなって……。(どのような形であれ、彼女の日々のお供になればいいと期待して。人によっては記念日を記録するのにも使うと聞けば、既に終わりかけている12月始まりを選んだ思惑も透けて見えるか。)
* 9/22(Sun) 00:46 * No.98

(この数ヶ月、慣れないことだらけ。察しは宜しくない部類でもやり取りから感じ取れた結果、望んだのは“プレゼント交換”なるもの。鼓動の音が聞こえてくるような心地の中で贈り物を眺める彼をじっと見つめて、しかし快い反応にふっと息をつく。無下に扱うような人ともはなから思ってはいないが、緊張はどうしたって付き纏う。いつか、繰り返していくうちに慣れていくだろうか。これからも続くことに、祈りを潜ませて。)は、はい。見つけた時、イサナ思い出して、っていうのがおっきいんですけど……うん、やっぱ、昼神さんに似合うと思います。(審美眼に自信などあるわけもないが、クジラを手に取るその姿を見ていれば密やかな満足感も生じる。此方はすっかり肩の荷も下りて、今度は見守られつつ開封する番。包装を崩さないようにと解いて、明かりの下に取り出したふたつを見遣る。)手帳……フルーツサンド柄だ。……あっ、クッキーも入ってる。(ぽつぽつと目にしたまま口を衝いて、次いで手帳を捲ってみたりと中まで眺めてみる。)……かわいい。スケジュール、適当なアプリ使ってるだけなんで、うれしいです。使います。書くこと、書きたいこと、いっぱい増えたんです。(眦が下がって、面持ちには微かな綻びが生まれる。機能性のみで選んだ愛着もないスケジュールアプリから、これからは色彩豊かな手帳が日々を彩るお供になってくれることだろう。ぷかぷかと湧き上がる気持ちをひとつひとつと伝える。)こっちのクッキーも、なんかアイリーンとイサナみたいで……食べるの、もったいないな。……ありがとうございます、昼神さん。(並ぶ二色の雪だるまへと向けられる、どこか柔らかな眼差しは、お姉ちゃんぶる理想の姿が宿るよう。)
* 9/22(Sun) 22:31 * No.104

(お土産なりプレゼントなり、自分では買わなかったであろう誰かの気配がするアイテムはそれだけで特別な気分にさせてくれると知っている。寂しかった家にまたひとつ増えた温もりを腕に抱きながらはにかんで。)…そう? …じゃあ、似合ってるところ、そのうち見せられたらいいな。(ぬいぐるみチックなふわもこルームシューズが似合うと言われたなら成人男性としては苦笑が先に来るべきところだろうが、真実これを気に入ったこともあり、好意を素直に受け取ることに。本当にいつか彼女を家に招くことがあるのなら、件の湯呑みを見せたいな、と朝晩の食卓の供を思い出しつつ。)……なら、よかった。(ドキドキの終わりは安堵にて。もしも気に入らなかったとしてあからさまに態度に出すとも思わなかったが、自然な表情の変化にほっと一息。作り笑顔が苦手なのはこちらも一緒。お互い嘘がつけない不器用さが真実の証左になるのが嬉しかった。クッキーに込めた意図も無事に伝わったなら「わかる? おれもそう思って選んだんだ。向こうで雪遊びとかしたかったな、と思って」と不思議な小部屋が現れなくなった世界の話を添えて。そしてやわらかな眼差しに宿るアイリーンの気配を見てふと思う。「ああ、でも」)…向こうでできなかったことは、こっちでしなさいってことなのかも。さすがに雪が降ってくれなきゃできないけど。(理想の世界で起こったことは皆現実の世界ではありえないことばかり。けれど今、それはもう“ありえない”ことではないのかも、と。)実はおれも、はじめて手帳買ってみたんだ。…おれもね、書きたいこといっぱいできたから。えみこちゃんとのことも、向こうの世界のことも、色々。……ちょっと前までは“書きたい”なんて絶対思わなかった。ペンを持つたびに手が震えて怖かった。……でも、今は、書けるようになりたいなって、思うから。(だからこっそり買ったのだ。彼女とは表紙違いのお揃いのダイアリー。海を模した青い表紙。ブリーチングするクジラが描かれた構図を気に入って。)忘れたくないから、全部残しておけるように。(下手くそでもいい。どれだけ時間がかかっても、まずは今夜、今日の日のことを書いてみるつもり。)……だからもっと書くことが増えたらうれしいな、って。……ので、その…これからも、末永く、よろしくお願いします。(年の瀬の挨拶ではないから来年も、とは言わなかった。それはいつか、もう一人の友人に言われて嬉しかった言葉だった。小さく下げた頭を上げれば、恥ずかしそうに視線を揺らしながらも最後にはブラウンの瞳をただただ見つめて。)
* 9/24(Tue) 11:15 * No.112

(互いの手に渡った、きっと自らでは選ばないような品。それも贈り物の醍醐味なのだろうか。ぴかぴかに磨いた宝物のようにいつまでも受け取ったふたつを見つめていられたけれど、ふと彼の言葉に瞬く。ぱちりと瞑った瞼を持ち上げれば、その奥に希望が閃くような。)……そっか。もう、こっちでも出来るんですもんね。なんでも。(どこか呆けた声は、考えもしなかったと伝うよう。彼との思い出たる障害物競走などは苦手分野な上に場を作るというハードルは高いが、例えば皆々とは味わえなかった冬ならば。)え、と……じゃあ、積もるくらい雪降ったら……雪だるま、一緒に作ってみますか?おっきい雪だるま一個作るのも、ちっちゃいので友達いっぱいにするのも楽しそう。……けどもう少し、人手あった方がいいのかな。(経験則に乏しい事柄もぽこぽこと思い浮かぶのは、密やかに内在していた憧憬か将又理想の世界で経た体験の産物か。次いでよぎるは現実と理想両者の姿を知るもう一人。勝手に明かすような真似は当然しないが、イデア・ルームでは仲良くしているように見受けられたふたりなので、いつか合わせられればなんて夢に見る。そんな夢想も共有して、然してその吐露に耳を傾ける眼差しはやわらいだ。)昼神さんも?いいですね、あたしはアナログな手帳って久々なんですけど……これだと、ペンの色とか種類とか変えたり、好きなシール貼ったり出来ますし。……一緒に楽しみましょう、書くことも、それが増えてくことも。(“書きたい”と、その想いひとつで充分なことのように思えた。ぱらぱらと捲ったページに指先が触れる。12月25日。今日という日に、小さな特別がもうひとつと増える。次は自分から彼に同じものを送ってもいいかもしれない、なんて、随分先のことまで思い馳せていると、なんだか畏まったような文言に瞳は丸みを帯びた。けれど同時に、胸がくすぐったくなるような言葉にも思えて。)は、はい。……こちらこそ、えーと……末永く、よろしくお願いします。(同じように頭を下げて、然して今一度持ち上げた折に絡む視線。ふ、と思わずと相好崩し「……なんかちょっと、気恥ずかしいです」なんて素直な胸懐を明かした。気恥ずかしさも、そわそわとした心地も、不思議と厭わしくは思えない。そんな気持ちも応酬も思い出も、積み重ねていけるのだと信じればこそ。)
* 9/25(Wed) 21:07 * No.119


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