>巌戸台分寮。
>作戦室。 「私は…生まれるはずのない、13番目の属性を持つもの。”デス”。 君たちの知る名前で言えば…夜長円、が一番近いのだろう…。」 >彼女…もはや環とも円とも呼べないその人物は、自らを”デス”と呼んだ。 >デス…幾月の言っていた、”滅び”を呼ぶ者…? 「君たちが”シャドウ”と呼ぶものとほぼ同じ存在だが、シャドウから一歩進んだ存在… 12の”アルカナ”が全て交わって生まれる”宣告者”なんだ。」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「10年前…1人の人間の手によって無数のシャドウが1つの場所に集められ、私が生まれた。 しかし、知ってのとおり事故が起き、結合は急に中断。…概ねは幾月の言うとおりだ。 その時、私の力の半分が散らばってしまった…それが君たちが倒してきた、12の大型シャドウ。」 「そうして不完全な状態で目を覚ました私は、残った半身のままでは消えてしまう… だから、事故に巻き込まれた人間の中で、影時間に適性を見せていた人間の子供… 1人1人の器は小さくとも、数があれば…私は残った自らの半身を12に分け、彼らの中に入った。 力を取り戻すまで、ずっと彼らの中で過ごしていたんだ……時が、満ちるまで。 そして、12の宿主が12の破片に引き寄せられるよう…私が再びこの地へ誘ったんだ。」 「言っただろう?…いつも傍に居ると。……そう、君たちだ。私はずっと、君たちの中に居た。 君たちは、あの日からずっと”死の破片”を宿していたんだ。」 >!! 「この地に再び降り立ったあの日、10年ぶりに1箇所に集まった私から、環と円は生まれた。 君たちが残りの12の破片と接触するよう…定められた道を進むよう…人の形をとり、見守る為に。 だが、まだ不完全だった私は君たちから離れきることが出来ず…力の一部を君たちの体に残した。 それが、ラヴァタだ。ラヴァタは幼子の姿で己の役目も正体も知らぬまま、君たちを内側から見守り、 君たちと共に失われた破片”記憶”に接触することで徐々に自分の正体を思い出したんだ。」 「4月、初めて大型シャドウを引き連れてきたのは誰だったか覚えているか…? あれも、幾月に入れ知恵をしたのも、……君たちが辿ってきた道は全て用意されたものだったんだ。」 >円…否、デスの口から語られた、驚くべき真実… >彼女は10年も前から自分の中にいて、12の破片との接触を待っていた…? >そして、”ラヴァタ”は、自分の中に居た頃のデス…? ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「私は”死の宣告者”。シャドウの目的である”母なるもの”の復活を宣告する者。 私には全てを伝える責任がある。…長くなるが、よく聞いて欲しい。」 「母なるもの名は…”ニュクス”。この星に”死”なるものを授けたシャドウの母たる存在… 目覚めれば…星は純粋なる死に満たされて、全ての命は…消え失せる。」 >!? >…全ての命が消える…まさか… >”影人間”…全人類がああなってしまうのだろうか… >そんな事になれば、人類はたちまち死に絶えてしまうだろう…正しく”滅び”だ。 「おそらく、次の春はもうやって来ない。”鐘”が鳴ったのを聴いただろう…あの時全てが決した。 これは絶対に覆せない事実だ。私は”死を宣告する者”…私の存在そのものが、滅びの確約。 死なない命がないように…時の流れを止められないように…ニュクスを消すなんてことは出来ない。」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「だが、私は君たちに絶望を与える為だけにやって来たのではない。……不思議だな。 私はシャドウの集合体…なのに人の姿をして、こうして君たちと語らい、喜び、悲しむ事ができる。 これは、君たちの中に居た恩恵だ。おかげで私は、君たちに選択肢を与えられる。」 「始め、…死を司り、真実を告げるだけの存在だった私に、兄…環の人格が生まれた。 環と円のペルソナ、オネイロスは眠りあいだにあって人の心を休ませ、同時に神意を伝える者。 神意を伝えるのが私の役目なら、君たちの心を休ませるのが環の役目。 ニュクスの訪れはもう避けられない…でも、その日までを苦しまずに過ごすことはできる。」 「つまり、影時間に関わる全ての記憶を消す…普通の高校生活に戻れるんだ。」 >!? >影時間に関わる全ての記憶…それは、4月から今日まで、戦いの日々、全て… 「全てを手放す気はないか?…そうすれば、夢を、幸せの棺桶を君たちに与えることができる。 滅びの訪れは一瞬だ。長い長い眠りの中で、何も知らずに迎えるのなら、苦しまずに済む。」 「…すぐに決めなくてもいいが、12月31日…今年の大晦日、それまでに、考えておいて欲しい。 それを過ぎると、私は君たちに関与する事ができなくなる。 …最後に言っておくが、逃げるのは悪い事じゃない。よく考えるんだ…”絶対に死ぬ”という意味を。 どちらを選んでも、その先は同じ…その途方もない絶望を、君たちはまだ知らないのだから。」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― >…円、…否、デスは重大な選択肢を残し、去っていった。 >……。 >…あまりに、衝撃的な告白だ。 >この世界は…間もなく滅ぶ。 >…人類は死に絶える。 >唯一、与えられたのは、”死に方”の選択権だけ… >絶対に倒せない敵……どちらを選んでも、その先は滅び… >どちらにせよ、死ぬという事実… >”死の宣告”。 >……。 >混乱して何も考えられない。 >死に方なんて、どう選べというのか… >大晦日まで、残りわずか。 >時は、待たない。 |