9月19日(深夜に足音を消して隣の部屋、――立平奈南の部屋の扉の横へ) |
---|
(教室で告げた誕生日おめでとうの翌日―ー正確には翌々日の9月19日、金曜日、深夜。雨音が響く夜分に明りの灯った部屋から足音を抑えて隣室の前へと足を運んだ女は、淡い桃色の紙袋を物音を立てぬよう立平奈南の部屋の扉の横へと置いて。自室にて最終確認を終えたそれを置き終えたのならば余計な音を立てないうちにまた静かに自室の扉を閉めた。淡い桃色の紙袋の中には、オフホワイトとピンクの二枚重ねの不織布を上の方で巾着のように橙色のリボンで結んだ包みがひとつ。予定していた場所より少しずれてななちゃんへという宛名とリボンの絵柄のあるカードがその横に一枚。包みの中にはくてっとした柔らかいしろくまのぬいぐるみが透明のケースを抱えていて、透明のケースの中には薄桃と白の花の形をした紙せっけんが3個程入っているだろう。おまけのような苺みるくのキャンディもケースの傍に二つほど。包みを持ち上げれば横へ落ちるカードの裏側には、―ー お誕生日おめでとう。なんだかぬいぐるみのイメージができちゃって…よかったら、もらってください。 藤澤幸 ―ー との文字と一緒にうろ覚えのジャックフロストの絵が小さく横に。) |