5月11日(放課後、学生寮2F、隣室の扉前にて) |
---|
(5月11日の学生寮2F、一番奥の部屋。そっとその取っ手に掛けたのは白と黒の特徴のない紙袋。中身は何の変哲もない新品のルーズリーフと、几帳面に正方形に切られた紙に『これからも隣人としてどうぞ宜しく。良ければ使って、要らなければ捨てても構わないよ。 加賀美』とだけ記した手紙とも呼べぬ代物のみ。噂に聞いた隣人の誕生日、とは云え、未だ深い関わりもなく、やや形式的な物となったのは否めない。然りとて、贈り物が実用的な物であるのは、彼との関係性ではなく、加賀美の性格故であろう。直接相手と顔を合わせる事もなく、ゆらり、取っ手に揺れる紙袋を今一度目視で確認すれば、隣室へと戻った。) |