9月14日(沸き立つ思いを胸に、奇襲果たすべく向かう3年B組。) |
---|
(初等部から高等部まで年層の幅広い生徒が在学するとはいえ他学年の教室へ足を運ぶ機会などそうそうなく、最高学年の教室が並ぶ階層は異空間宛らだ。言葉通りの異空間へ夜毎訪れる為か来る日の昼休み、奇襲果たすべく向かう足取りには一切の躊躇なく、いざ出陣とばかり敷居を跨いで探すは勿論、)あ、居た居た。……か・す・み・ん・セ〜ンパイッ。えっへへ、来ちゃった〜。(時間帯が故級友と談笑中ならば悟られぬよう相手方に唇に人差し指を充てる動作をして、予習復習読書その他諸々、何らかの作業中ならば極力足音を立てぬよう―いずれにせよ背後から距離縮めトンと軽く肩を叩き、一驚を喫すること叶ったらば作戦は大成功。こそばゆさに短な笑いを追随させながら、背に回した儘だった左腕は小さな手提げ袋を差し出した。)ハッピーバースデー!でね、これプレゼントですっ。寮で渡そうとしたら朝寝坊しちゃって、夜はその、部活のみんなとか友達と一緒してくるかなと思って!あとは早く渡したくってうずうずしてたのもある!開けて開けてー!(突き出す紙袋に座すは小ぶりの巾着袋。ピンク色のリボンを解けば透明の小袋にラッピングされた”かすみ草ピアス”がお目見えする筈。純白の細やかな布と金色のスタッズで拵えた可憐なかすみ草が複数連なるピアスはその美しさと響きからして彼女にぴったりだと、選択に強烈な自負心抱えた女は唇にゆるやかな弧を引いた。僅かでも笑いが誘えれば上等、その面貌に穏やかさが宿ればこれ以上ない幸せだ。) |
9月17日(お邪魔した2年C組にて、今か今かと待ち伏せる相手は―) |
---|
(其の日はいつもの星と月のピアスではなく贈られた可愛らしいかすみ草のピアスを揺らしながら、珍しくクラス内で二番乗り出来るほど早めに登校。自席に鞄を置いたかと思えば、眠気も忘れて教室を飛び出した。そして真壁が向かった先は二学年の教室。まだ早い時間帯だからか、そんなに居心地悪い思いをしなくていいのが助かった。先に来ていた彼女のクラスメイトであり己の部活の後輩に大して「ごめん、ちょーっとだけ教室借りるね…!」と断ってから扉の裏に隠れ、少しだけ顔を出しながら彼女が登校してくるのを待ち伏せよう。其の様子を後輩たちが何とも言えない目で見ているが、其処は気にしたら負けだ。――其れから、暫く。彼女の姿が目に入ったなら、教室に入ってくる瞬間まで待ち―入ってきた途端、いきなり目の前に飛び出そう。)ナナちゃんおはよう!朝っぱらからごめんね、起きてる?大丈夫?(と朝にしては高すぎるテンションで話しかけながら、取り出したのはプレゼント包装にされたフューシャピンクの小箱。)お誕生日おめでとう!それとプレゼントも!何か恥ずかしいから後で開けてもらえると嬉しいな!…それじゃあね!(と来た時の必要以上の慎重さは欠片もなく、ばたばたと慌ただしく去っていくのだろう。箱の中には前面にキラキラのビジューとパールが施された“リボンバレッタ”が彼女の目に触れる時を待っているのだろう。ビジューで華やかに、けれどパールの落ち着いた輝きで愛らしく上品に―地の色の柔らかなピンクゴールドは彼女をイメージしたもので。其れが彼女の記念すべき一日にささやかでも花を添える一品となれたなら幸いだと思いながら。) |