4月26日(早朝のキッチンにて、せわしなく動く人影が) |
---|
…少し鍋がでかいか?…まあ、残ったのは冷凍しとけばいいか。(厚手の鍋は軽く水洗いしてからコンロへと。材料から調味料の類も揃え、満を持して迎えた今日。夜明け前な事を考えると朝と呼べるかも微妙なそんな時間、人目を避けるように包丁を手にする。適当に水を張った鍋に火を点け、沸騰させる間に人参、じゃがいもの皮むき、カットを済ませる。同時に深めのフライパンでサラダ油とバターを熱してから、細かく微塵切りにし予めレンジで熱しておいた玉ねぎを投入する。炒めるというよりは蒸す方に近く、焦げない程度に時折ヘラでかき混ぜる傍ら、沸騰した鍋にじゃがいもと人参を入れたなら、解凍しておいた牛肉を取り出し、薄くスライスに。それから玉ねぎを30分ほどじっくり炒めて後、飴色になった其処に牛肉と水を投下、沸騰したらあくを取る)……こんなもんか。あとは玉ねぎと肉を鍋に入れて…(一つの鍋に収まった材料にブイヨンペーストを加え、弱火で煮込んで15分ほど待つ間、米を研いで炊飯器にセット。少し多めなのは冷凍してこれまた二、三日分持たせられるようにと。流石に炊飯器にまで名前を書くこともできないので、誰かに見つかって食べられたとしても、それはそれでいい)…これで久しぶりにちゃんとした飯が食べられる。(ただでさえメンバーの自炊率が少ない上、日曜日の早朝ともなれば健全な学生は寝てる時間だ。もうすぐ5時を指すが、まだまだ朝食には早い。偶然鉢合わせることもないだろう。そして15分後、一旦火を止めた其処にルーを割り入れて溶かし、再び弱火でとろみがつくまで煮込み続ける。――よし、完成だ。)…ん、うまい。(辛口のルーの割に辛すぎないのは、しっかりと炒めた玉ねぎの甘みのおかげだろう。あとはしばらく寝かせておこうと蓋を閉め、自らも椅子に腰掛けしばしの休息を。――しばし、そのつもりだったが、早すぎる起床と料理の完成による気の緩みが相まって、うつらうつらとしている間に瞼はゆっくりと閉じられてゆく。ご飯の完成を告げる音が聞こえるまで、ほんの少しだけ、そう思ったが最後、思考は完全に途切れ――) |
どんなに朝早くても、これなら何杯でも食べられちゃいそう…。 |
(まだ慣れない環境への疲労と初めての寮生活が影響してか、0時前に就寝するという真壁にとっては超が付くほどの早寝が続いた。無論、早く寝た分だけ起きる時間も早くなる。例外なく其の法則に当て嵌まった女は意図せずして休日なのに恐ろしく早朝に目覚めてしまった。通常であれば昼過ぎまでぐっすり寝ているところなのに、何だか妙に損した気分になってしまう。だけれど暫く目を瞑って眠ろうと念じてみても晴れてしまった眠気は一向に再来しない。そうこうしているうちに小鳥の声に合わせて腹の虫が鳴いた。然し、現時刻はもうすぐ5時になろうかという微妙な時間帯。)……お腹空いた、何か食べるもの……。(だが時間も食欲には勝てなかったのか、ふらりと起き上がって靴を履き、適当にカップラーメンでも食べようかとキッチンに向かった。――すると、キッチンが近付いたところで異変に気付く。美味しそうな匂いがするのだ。其れに釣られるように足早にキッチンの中に入っていけば、室内に充満する食欲を刺激する香り。そして美味しそうに炊かれた炊飯器のご飯。)…うそ、ご飯が炊けてる…?もしかして私の願いが届いたとか…――って、当真さん!?(椅子の上で目を閉じる彼女の姿に吃驚仰天。残っていた眠気も全て吹っ飛んだ。驚きのあまり気が動転し、)ちょっ…、大丈夫!?しっかりして!起きて!(転寝しているという思考より先に何か大変な事が起きたのではとあらぬ想像が暴走し、若干青ざめた顔で彼女の肩をゆさゆさと揺する事になるだろう。) |
………………これは俺のだ。 |
(椅子の上という不安定な体勢にも関わらず僅かに頭を揺らす程度、ほとんど静止に近い器用なうたた寝を楽しんでいられたのも束の間、遠くで誰かの声がした)んー…(夢か現実かの認識もままならないボンヤリとした意識の中でなんとか瞼を開けようとしたその時だ、突然の衝撃に体が揺れる。否、揺すられているのか、自分の意思とは全く無関係に動く体の制御が出来ず、)…!?…ば、ばか、やめっ…(開けた視界に映った腕。ようやくこの衝撃が誰かの手によって齎されているのだと気が付けば、その誰かに向けて制止の言葉をかけてはみたが、相手の腕を振り払おうとしたのが逆効果だったのだろう、バランスを崩して身を委ねていた椅子ごとひっくり返り、)いっ……くそ、何なんだいったい…(痛みに一瞬顔を歪めるも、まるで漫画のワンシーンのようなドジに羞恥心の方が優ったのだろう、できるだけ声を荒らげないようにと低く呟いてのち、視線を上へとずらしていくと行き着いた先には)――……まかべ?(見知った顔が一つ。全ての元凶を映した紫が、小さく揺れた) |
も、もちろん!横取りしようなんて考えてないよ…! |
(揺らそうとした一瞬前に彼女の目が微かに開いた事など露知らず、必死の形相で彼女の体を揺らす。すると予想外にすぐに目を開けたものだから、驚きで肩を掴んでいた手がぱっと離れた。――が、何もかも既に遅い。手を離せば衝撃は一先ず収まったろうが、止める間もなく大きくバランスを崩した彼女の体。其の後は言うまでもない―椅子ごと引っ繰り返った様子を見れば、何故か当事者の彼女以上にパニック状態。頭の中ではとにかく大変だとだけ繰り返され、引き攣った顔が戻らない。)あっ…、ちょ、大丈夫!?頭打ってない?(けれども何とか残っている冷静な部分を稼働させ、椅子ごと転げ落ちた彼女に目線を合わせ、酷く焦った様子で屈んでみる。)……。……え、えっと、えーっと…ごめん!ごめんなさい!気を失ってると思ったんだけど、寝てたんだね…。睡眠妨害して、本当に申し訳ない…。(いくら最近に現実離れした出来事を体験していたといえ、寝ている可能性を素っ飛ばして気絶と思い込んだ事は猛省するしかない。早とちりで暴走した上に大事にしてしまい、謝罪一つで足りるとは思えないが―とにかく屈んだ状態で頭を下げ、申し訳なさを詰め込んで謝罪を試みるのだろう。) |
ならいい。…………まあ、真壁は女だしな。 |
(突然の来訪者に驚きを見せたのは一瞬。直後、行き場のない気恥ずかしさから何故起こしてくれなかったと黙りこくる炊飯器を恨めしく思うも、結局は自分が招いた事だ、現実逃避の虚しさに視線を落とし)…大丈夫だ。(実際はまだ痛む頭を軽く押さえながら、まずは一言。それから彼女を追い払うのに効果的な言葉を探そうと静止、している間に屈んだ彼女との距離は近く、繰り返される謝罪と降下する頭のコンボに思わず口から出たのは)え、あ、…いや、もういい。謝るな。………その、俺も驚きすぎた。(予定外の宥めの言葉。全身でごめんなさいを表現する彼女を無下にも出来ず、頭を押さえていた手を外し、ほら、と大きな傷もない事を見せてやれば、少しは落ち着いてくれるだろうか。大仰に心配される事も、その事で取り乱す女も苦手なのだ。だから出来るだけ落ち着いた声で)…で、何の用だ?(ゆっくりと立ち上がり、椅子を直しながら話題も変えてやれば、この件については早く忘れてくれと願うばかりで) |
え、もし私が男だったら何か対応が違ったとか…? |
……ほんとに?痛いの我慢してない?(若しや無理をしているのではと思ったのか、彼女の顔を覗き込みながら念を押すように疑問符を重ねる。己が見たところ目立った外傷はないように思えるが、実は見えない場所に怪我をしているかもしれない。「そんな事…!驚かせたのは私だし…」と首を横に振るも、彼女に無傷らしい頭を見せられたなら取り敢えずは胸を撫で下ろし。ほっと小さく笑みを浮かべた。)…あっ、そうだ!私お腹空いてたんだった…。何か食べ物を求めて此処に来たらすっごく美味しそうな匂いして吃驚したんだけど…これ、当真さんが全部一人で作ったの?(用件を尋ねられた途端、忘れていた空腹が一気に襲う。当初の目的を思い出したなら、興味津々な様子で視線を炊飯器、鍋、彼女の順に巡らせて。相変わらず漂う美味しい匂いに食欲は更に刺激される。)このカレーをほんのちょっとお裾分けしてもらえたり…しない?駄目なら美味しいカレーの作り方を教えてもらいたいんだけど…!(と彼女に多大な被害を齎しておきながら、実に図々しい発言は続く。) |
女は朝からがっつりカレーなんて食べないだろ。だから取られる心配もないかと。 |
(本当は僅かに痛みの残る頭よりも打ち付けた腰の方が鈍く当真を苦しめていたが、これ以上彼女の謝罪を聞くまいと後ろに伸ばしかけた手を引っ込め、直した椅子の背に添えた。そして早くこの空気を断ち切るべく何度目かの大丈夫を告げたなら、望み通り彼女の意識は本来の目的へと移ったようで)……こんな朝から腹が減って目が覚めるなんて……あんた、飯ちゃんと食ってないんじゃないの。(寮にこんなに早起きの人間が居るとも朝食を自炊しにくる人間が居るとも思っていなかったが、なるほど彼女はそのどちらでもなく。学生の一人暮らしでは仕方のない事にも思えるが、呟いた声には心配1割呆れ9割といった具合の気持ちを含め、続いた問いには「ああ。」と、問いがそのまま正解であると告げた)………。(そして新たに提示された選択肢はどちらも当真の本意ではなく、出来ることならば第三、四、五の選択肢「無視する」「追い出す」「いっそ逃げる」から選びたいところだったが、先程の失態の手前、彼女に対して強く出ることも出来ずに作り方を教えるよりは簡単な選択肢で妥協したなら溜息を一つ)…わかった。あんたに分ける。その代わり、食ったらここであった事は全部忘れること、……それでいいか。(元々多めに作ってあったカレーは当真と彼女の分を引いても十分に余りある。そのまま炊飯器の蓋を開ければ、真っ白なご飯がふんわりと炊き上がっていて、早く食べろと言わんばかりだ。時刻は5時半を回ったところ。少し早いが準備が整う頃にはきっと朝食時のはず) |
うん、朝にカレーは初めて!でもお腹空いてるし、食べ過ぎ注意だね…。 |
うーん、夜ご飯はしっかり食べたつもりなんだけど…早く起きたらお腹も早く空いちゃったらしくて…へへ。ありがとう。(彼女の指摘を受ければ、恥ずかしそうにお腹に手を当て、へらりと笑う。しかも勝手に都合良い解釈をして感謝するのだから、何ともお目出度い思考回路だ。其の間にも鼻を刺激する香りが食欲を増幅させる。そして正解の返事を貰えば、「すごい…!」と目を輝かせて。――己の提示した選択肢に押し黙ってしまった彼女を見れば、顔には馬鹿正直に疑問符を浮かべる。真壁にはどちらも差はない選択肢に思えていたのだが、まさか新たに三つの選択肢が生まれていたとは知る由もなく。)本当に?いいの?ありがとう…!当真さんはお腹の恩人だよ…!……えっ、全部?さっきのはいいとして、此処で当真さんに会った事もカレー分けてもらった事も忘れなきゃダメ?揺らしたのと転んだのは忘れるから、其れ以外は…お願い!(蓋が開けられた炊飯器を覗き込むと、ほかほかのご飯がお出迎え。一刻も早く食べたい欲求に駆られながらも、彼女との交流の記録も譲れない。ぱんと両手を合わせて、此処での出来事の一部を忘れる事で妥協してもらおうと頼むのか。) |
……なら、初めてはこのままとっとけば? |
(若干の嫌味すら含んだ投げかけに対して笑顔でありがとうとはどういう事か。この港区にやって来てからというもの、シャドウに限らず当真の周りには理解を超えた存在が多すぎると内心頭を抱える事多数。そして今も、眼前でころころと表情を変える彼女に目眩すら覚えて指先をこめかみに添えながら、)…ああ。それであんたの気が済むならな。(押し黙ってのちに望まぬ選択肢を一つ選び取る羽目になれば、吐く息も重く。そして、)……だ、め、だ。(腹を満たせば満足して帰っていくだろうと思っていたものだから、彼女にとってはどうでもいいような条件にすら新たな妥協を強いられるとは予想外。だが怯んだのも一瞬のことで、はっきりと、意図的に普段よりも低く落とした声で拒絶の3文字を告げれば、)…あんたは腹が減ってるんだろ。だったらあんたはカレーを食う代わりに全部忘れる。俺はカレーをやる代わりに全部忘れてもらう。…欲張りすぎると、得られるはずだったものまで失うぞ。(開けたばかりの炊飯器の蓋を再度閉めれば炊きたてご飯ともお別れ。一方でコンロに火をかけ鍋の蓋を外せば、より一層カレーの匂いがキッチン内に充満するはずで。流石にここまで言えば頷くだろうと、とろみのついたそれをおたまでゆっくりとかき混ぜながら、横目で彼女に視線を送った) |
いやいやいや!これ逃したら滅多に機会ないだろうし…ねっ!? |
うん!これ食べたら大人しく戻るよ!(満面の笑みではっきりと頷き、同意を示す。だが、思いもよらぬ言葉が返ってきたのは其の直後。)……ええーっ!?(彼女の断固とした否定を聞いた途端、早朝には似合わぬ不満げな叫びを上げてしまった。)そ、れは…そう、だけど…でも、ううーん……。じゃあカレー半分だけ食べるから!記憶も半分!(そんな虫の良い案が受け入れられるともあまり期待していなかったが、炊飯器の蓋が閉まれば炊きたてのご飯が見えなくなり、お預けを食らった犬の気分だ。他方で暴力的なまでに食欲を刺激するカレーの匂いは更に増し、真壁は拗ねと悲しみと怒りを足して三で割ったような顔になる。)……うっ、うう、ううう……。当真さんの意地悪……。(あまりに食欲が誘惑されるのでわざと顔をカレーと炊飯器から逸らし、ついでに欲望に負けまいと鼻も摘まむ。)……分かった、分かったよ…。私、インスタントカレーでも食べる…。(大きく肩を落としては冷蔵庫の中や近くの棚の引き出しなどを開け、インスタント食品の類でもないか探してみる。インスタントなら別にカレーでなくラーメンでも何でもいいかとも思う。もちろん彼女の手製カレーは相変わらず食べたくて仕方なかったが、己の引き起こしたアクシデントはともかく彼女と会った事や交わした会話まで忘れるのは譲れなかったようで。現在進行形で増幅する食欲と美味しそうな香りと格闘しながら、如何しても意地を張り通すつもりのようだ。) |
遠慮するな。女子はそういうハジメテ、大事にしておきたいもんだろ。 |
っ…るさ、(鼓膜を劈くような叫び声に咄嗟に耳を塞ぐも間に合わず、続けて畳み掛けるように提案されたのは妥協案の妥協案。加え、追い打ちの如くお預けを言い渡した後、ちらと横目で見た彼女の表情と言ったらなんと形容していいものか。あくまでも此処での記憶を忘れたがらない彼女の気持ちは理解しがたく、けれども駄々っ子のように拗ねられてしまえば怒りより呆れが優ったのか、眉間の皺が増える代わりにおたまを操る動きが緩慢になる)…ああそうだ。俺は意地悪なんだ。(当真としては最大限の譲歩をしたつもりだったが、自分を謗る言葉を否定するでもなく、ただただ受け流すようにその言葉を繰り返す。そして彼女が遂にはカレーを食べる権利の方を手放したなら、これ以上は無干渉を決め込もうと視線を鍋に戻すも、これから食事をしようとする場でちょろちょろと動き回られても困ると)…あのなあ、(明らかに吐息の多く混じった声は聞き分けの悪い子供に言い聞かせる保護者のようなトーンで、)此処にはほとんど食べ物なんて無かった。だから俺は調味料まで買い揃える羽目になったんだ。…考えてもみろ、あのお嬢…桐条がインスタントなんて買い置きしてるわけがないし、あったとしても、それはあんたのじゃないだろ。……ま、俺はあんたが無いもの探し続けたって構わないけど。(最後には意地悪くおたまで掬ったカレーを味見し、「うまい。」なんて呟いてみせれば、コンロの火を止めてから彼女が漁っている棚から皿を取り出し)…そもそも、なんでそんなに嫌がる。このままじゃあんた、俺に意地悪されたままカレーも食べ損なって……それこそ何も残らないだろ。(記憶なんて放っておいてもいずれ失われるもの。それに実際に当真が彼女の記憶を操作出来るわけでもないし、「適当に口約束でもしておけばいいのに。」と続けながら軽く水洗いした皿を布巾で拭けば、後はご飯とカレーをよそうだけ) |
でも何時までも初めてじゃ意味ないし…今なら捨てられる気がする! |
…あ、……ごめん。(彼女の呟きで我に返ったのか、申し訳なさそうに眉を下げて。だが返答にも提案した内容にも後悔はしていない様子。そんな気持ちもお預けによってぐらぐらと揺れっぱなしの情けない状態ではあるけれど―其れでも譲りたくなくて。そんな感情が雑多に混じった表情は酷く間抜けだったろう。然し、拗ねても状況は変わらず更に呆れられるだけ。)……お願いだよー、私に慈悲を…!(精一杯の抵抗もにべもなく受け流されたなら、他に打てる手も見当たらず芸のない訴えを。なるべく鍋と彼女の方を見ないようにしながら、非常に薄っぺらい希望を冷蔵庫に託す。)でも、もしかしたら――ほ、ほんとだ…何も、何もない…綺麗過ぎる…。…其れはまあ、後で同じの買い足しておくし…桐条さん、インスタントぐらい置いてくれてもいいのに…。……うぐ、ううう、……。(やはり彼女は意地悪だと恨めしく思うも、彼女の妥協案を蹴ったのは自分。見ないようにしてもつい見てしまう美味しそうなカレーが彼女の口に運ばれるのを目にすると、見なければ良かったと少し後悔。次いで、待ってましたとばかりに腹の虫が鳴く。)…だって、此処で当真さんと話したって忘れた事にしたくない…!…残らないけど、でも私の中では残ってるものもあるっていうか…。(確かに何処まで正確な記憶を持ち続けられるかは怪しいが、覚えている記憶を忘れたと偽りたくないという馬鹿みたいな意地もあった。「…そうだけど、それって嘘吐いてる事になるし、これから当真さんと会う度に嘘吐いてるんだって思いたくない…!」と子供染みた屁理屈を述べ、冷蔵庫を閉じて肩を落として彼女の食事風景を眺めるしかない。) |
わかったわかった。…そこまで言うなら捨てさせてやる。 |
(よそったご飯の形を綺麗に整え、その横にカレーを流し込む。人参、じゃがいも、牛肉、とろけた玉ねぎいっぱいのルー、全てバランスよく盛り付けたなら、出来立てほやほやのカレーライスに銀の大きなスプーンを添えて、席に着く。そして傍らで涙目になる彼女に意地悪く見せつけるように、空腹を訴える音をかき消すように「いただきます。」と呟く姿は彼女には悪魔か何かに見えるのだろうか。――まずは一口。スプーンに山を成したそれを食べれば、丁度いい辛さ。ルーに馴染んだ玉ねぎの甘みによく出来ましたと内心評価を付けるなら二重丸。もう少し時間を置いてから食べれば、たぶん花丸。そんな穏やかな朝食のBGMにするには些か熱の入った彼女の持論をあるところまでは聞き流していたのは、当真が何を言っても“反応”した事に彼女が“反応”してしまう事を学んだから。だが、その中で聞き流す事のできない単語を耳にすれば、無言でカレーを口に運ぶ手が不意に止まる)……嘘、か…(それはまるで、魔法の呪文のように当真の心を動かした)…だからさ、俺と会った記憶なんて、わざわざ取っておくほどの価値ないだろ、って言ってんの。…………あんた、ばかだな。(ぽつりと落とされた声からは感情の色は読み取れない。しかし、)…ホントばか、(のち、一拍置いてから「正直なやつ。」と付け足し差し出したのは、真っ白な皿。当真の分と一緒に取り出しておいたそれは、彼女が条件を呑んだら渡そうと思っていたものだけれど、今回は特別に)気が変わった。……食えよ。(彼女の強い意志と素直な心へのご褒美だ。単なる気まぐれを装ってか、溜息にも似た吐息とともに目を伏せ、唇を歪めた程度だったけれど、それでも確かに、)あんたは運がいい。(その口角は上を向いていた) |
ありがとう…!当真さんの優しさ、死ぬまで忘れないから! |
(懸命に見ないようにしても視界に入る其れは最早キラキラと輝いて見えた。彼女が食前の言葉を呟いた時の絶望たるや言葉には言い表せないものがあり、普通ならば何かしら声を上げる場面だったが、哀愁漂う表情で唇を噛むだけ。言葉は何も発さない―最早ぶうぶう文句を言う気力も失せ始めたらしい、真壁は異様に静かだった。そして見ない方が利口と分かっているのに見てしまうのが悲しき人間の性というもの。そして其れを丁寧に口に運ぶ彼女の姿がよりカレーを美味しそうに見せ、当然ながら既に怒り状態の食欲が悲鳴を上げる。だがそんな時でも熱心に持論を語るのを止めないのもまた真壁の厄介な性質の一つ。)…あるよ!絶対あるの!……それはちょっと、自分でも思うけど…。(彼女の言葉には何処から元気が出たのか全力で首を振って否定するが、我ながら馬鹿には納得するしかない。――が、目を丸くしたのは其の直後。何故なら、目の前には真新しい皿が差し出されていたから。其れが意味するのは己が切望した、)…っ!いいの?本当に?…〜〜っ、ありがとう当真さん!この恩は絶対一生忘れないよ…!(けれども真壁にとって本当に幸運だったのは、カレーをご馳走してもらえた事以上に彼女の笑みが見られた事だったのかもしれない。現在進行形で増幅する歓喜を噛みしめながら、受け取った皿に物凄いスピードでカレーを盛り付け「いただきます」と手を合わせて食べ始めよう。まずは彼女と同じく一口食べて、)っ!ふぉ、ふぉれ、……!…んぐ、(溢れ出る興奮のあまり呑み込む事を忘れて喋ろうとしたが、まだ口内に残っていた事に気付けば口を閉じてごくんと呑み込む。口の中で絶妙に蕩ける食感と適度な辛さと広がる優しい旨味。)おいしい!(心の底からそう言って笑って、また夢中で食べに戻る。空腹に喘いでいたお腹が一気に満たされていく。)これ、私が食べた中で一番美味しいカレーだよ…!んー…しあわせ…。(時折はふはふと冷ましながら、けれど待ちきれない様子でもぐもぐと頬張る。其の顔は何処も彼処もだらしなく緩みきっていて、まさに至福を体現したものと言えようか。そして皿の中身は瞬く間に減ってゆく筈。) |
出来ない約束はするもんじゃない。…ま、気持ちは伝わらないでもないけど。 |
…おおげさ。(真っ新な皿を映した灰白色が二重の円を描いたその後、直情的に紡がれた感謝の言葉は随分と大仰なもので思わず苦笑を湛えた口元。それも新たな一山を其処に運ぶことで誤魔化したけれど、待てから解放され凄まじい勢いで皿を彩り、気づけば当真と並んでカレーの山を崩しては口に運びとその展開の早さには笑いも通り越して唖然とする他ない。それでも美味しいと、たとえ一時の感情に身を任せたが故の産物だったとしてもその一言に救われた気がした)だから大げさだっての。……俺はもっと美味いカレー食ったことあるし…ま、昔の話だけど。(呆れとも謙遜ともつかないトーンは平生の当真を知る者ならば然程違和のないもので、彼女とは対照的に淡々とカレーを口に運ぶその頬が緩むことはない。ただ表には出さずとも、他意のない純粋なる賛辞が齎す心境の変化は少なからずあって、久しぶりに誰かと食べる朝食は確かに美味しかった)って、そんなに急いで食うと太るぞ。…途中で取り上げたりしないし、もっとゆっくり………まあ、別に、さっさと食って二度寝するなり牛になるなり、あんたの自由にすればいいけど、(あれほど拒んでいた会食にも関わらず、今その終わりを想い小さく “残念”の二文字が浮かんだ自分に困惑の色を浮かべて回りだした舌を止めたなら、潤いを求めて席を立ち、底に“Toma”と書かれたマグカップを取り出して適当に貯めた水を一気に飲み干す。そして一連の動作をこなし終える頃には心と一緒に腰を落ち着かせ、再び向き合ったカレーを掬う手つきは豪快に。おそらく彼女とそう差をつけずに朝食を終えるはずだ)…ごちそうさま。(そして、ぱん、と合わせた掌が小気味いい音を立てたなら)とりあえず食器は洗え。あとは好きにしろ。(先のことはその時次第。流石におかわりを求められれば「太るぞ。」と女の子の禁句を重ねて一蹴するだろうけれど、その後は彼女が居座ろうと寝に帰ろうと当真のペースを保つはず。残ったカレーの保存、食後の片付け、やるべき事は沢山ある。まだまだ先の長い日曜日、この続き、一体どうなるのやら――こうして、平穏な休日の幕開けにしては些か刺激的なスタートを切ったのだった) |
気持ちが伝わって嬉しいけど…出来るからね!死ぬ間際に証明する…! |
そんな、これでも全然足りないぐらいだよ…!(傍から見れば大袈裟に取られても仕方ない表現ぶりだが、望みを叶えてもらえた真壁は大真面目。もし彼女に頼み事をされる場面があれば喜んで聞くだろう。他にも言いたい事はまだ色々あるが、如何せん食欲が強い。静かに味わっていた彼女に追い付いてしまうくらいの勢いでカレーを次々と頬張っていき、唖然とする彼女の様子にも気付く気配はなく。何度口に運んでもたまらなく美味しい、きっと一晩寝かせてもまた違った美味しさになるだろうと至福に胸を膨らませた。)…え、これよりも美味しいカレーが存在するの?すごいなー…どんなカレー?(だが彼女の話にも食いつくのを止められず、興味に満ちた顔で問いかけてみたり。このカレーよりも上が想像出来ないのはもちろん、彼女が其れほどまでに評価する凄いものがどんなものか知りたがった。)…あっ。今からゆっくり食べたら、…大丈夫だよね?…そうだね、ゆっくり食べた方がもっと味わえるし、当真さんとこうやって話せるし!良い事づくめだよね。止めてもらえてよかったー、ありがとう!でも牛にはなりたくないよ…。(彼女の言葉に石化したようにぴたりと手を止め、無意味に深呼吸。これで食べた分が消費されてくれないだろうかと都合の良い事を思いながら、彼女の言葉に深く納得したらしい。牛になりたくないのと彼女と話す時間を作りたいので、此処から食べる速度は一気に普通レベルに落とされる。結果、大胆に食べる彼女に少し遅れながらも其れを米粒一つ残さず綺麗に食べ終える事になるだろう。心も体も満腹な気分は何と素晴らしいものかとまた感動を噛みしめた。)ほんっとうにごちそうさまでした!(真壁も彼女に倣ってぱちんと手を合わせ、其の時の頬のだらしない緩み具合はどうしようもない。)うん、……じゃあ好きにするね!(と言っては先に使った食器を洗い、後は“好きに”手伝いを始めるのだろう。因みに口に出したおかわりは禁句により諦めた。そして其の場に居座り、今度こそ邪魔ではなく本当に手伝いをさせてもらおうと―また、手伝いを口実に彼女と少しでも長く会話したかったから。――其れを終えた後は部屋に戻って少しだけ寝ようとベッドに倒れ込んだ。無論、其れは正真正銘の死亡フラグ―次に目を覚ました時には昼過ぎ、すぐに昼食を求め始めたというのは余談である。) |
12月24日 真壁は、サンタクロースって信じてるか? |
---|
(聖夜と呼ばれるその日の21時5分前、赤いジャージ姿の宅配人が一人、とある扉の前で立ち止まった。小脇に抱えた大きな膨らみある白い布袋と紙袋。字面で見ればその姿はまるで――コンコンコン。軽いノック。のち、無事に部屋の主が現れたなら、第一声よりも何よりも、まずは大きな布袋ごと彼女に押し付けるよう差し出して)…メリークリスマス……ってのは、明日言うんだろうけど、とりあえず。(それは両手で抱えて丁度いいくらいの大きさだろうか、その割に軽く、触れば柔らかな感触がするはずで。「……プレゼント。」呟くと同時に目で開けるよう訴えかけるは彼女の反応が早く知りたくて。そして、もし願いが叶い彼女が中身を覗き見たなら、まずは白いウサギの耳が現れるはず。次にそれを引っ張り上げれば、その全貌は、”ふわふわもこもこルームウェア”。ワンピースタイプのそれはフード付き。其処から伸びる耳こそが先ほどの白兎の正体だ。これで3つ。それから、ずいと差し出した紙袋の中には、薄ピンクの箱がひとつ。ちなみに中身はバニラとチョコのクッキーが数枚、苺やらオレンジやら、小ぶりにカットされた色とりどりのドライフルーツケーキ、メープルワッフルが数個、以上既製品らしく美しい見た目のお菓子が詰め込まれ、さらに、これで3つ)…こういうの、好きなんだろ?…流石に生八つ橋はなかったし、パンケーキは出来立てがいいだろうから全部は無理だけど……(ちなみにコスメはよくわからなかった。とは言わなかったけれど、沈黙で察してくれてもくれなくてもいい。夜には重すぎる甘いプレゼントだがしかし、夜。叶えられるものは全て揃えたつもりだった。――だから最後の1つは)…時間あるなら、これもやるけど。………要るか?(彼女がプレゼントの中身を確認する間組み続けていた腕を崩し、その親指で指し示したのは、自らの胸、のあたり。つまりは |
本当は今も信じたかったんだけど…!高1の冬に正体明かされちゃって…! |
(クリスマスイブの日、其の日は一日早いクリスマスパーティーをして寮に帰った後、そろそろ本来の調子が出始めるかという時刻。突然のノックの音に誰だろうと思いながら「はいはーい!」と言いながら扉を開け放つ。すると其処に居たのは―すらりとしたサンタクロースの姿。そして空っぽの手に差し出される袋を何とも分からず両手で受け取って。)…当真サンタだー!メリークリスマス!(今日はイブだなんて細かい事は抜きにして挨拶を返す。けれど其の袋は大きさの割に軽量でしかもふんわりしている。サプライズプレゼントをもちろん其の場で開ければ、最初に見えたのは真っ白な長い憂さ耳。其れをするする引き出せば、次第に明らかになる正体。見る見る間にぽかんとした顔が喜色満面に染まり、)わ、わーっ!何これすっごく可愛い!ふわもこのうさぎだー!(喜びのあまり其の場でぴょんぴょん軽く飛び跳ねながら、手触り柔らかな愛らしい贈り物を両手で抱き締める。こんなに可愛いものを自分が着れるのかと思うとまた心が弾む。)あっ、ふわふわもこもこ…動物で、ワンピースで…もしかして、これって…。(そう思いかけたところで続けざまに差し出される二つ目の袋。入っているピンクの箱を開封すれば、其処には色彩豊かなクッキーとケーキとワッフル。これまた覚えのある組み合わせ。あまりの事に言葉を失っているうちにも続けられる言葉が夢のような現実を認識させる。)……う、うん…好きだって言ったけど…。まさか、こんなに…全部、……〜〜っ!…っ、…ど、どう゛ま゛ざ、…う゛〜〜……大好き!(溢れ出した感涙に咽びながら、彼女が指差した胸に突っ込むように勢いよく抱き付くだろう。嬉しくて、嬉しくて、とにかく嬉しいが一杯。何という事だろう、可能なものを全て律儀に叶えてくれるなんて。何て可愛らしいサンタクロースが来てくれたのだろう。ぐしゃぐしゃの顔で笑いながら、)クッキーもケーキもワッフルも、一人じゃちょっと多過ぎるから。当真さんと一緒に食べたいな。(だなんて彼女の優しさに甘えてもう一つ我儘を重ねてみよう。) |
そうか……――って、高1…!?……どのタイミングで誰にバラされたんだ…? |
(正直な話、今日のために駆け回った当真の恥ずかしい想い出は沢山ある。けれど、そんな苦労を微塵も表に出すことなく、最近は緩みがちな口元も真横に結んだまま彼女の反応を伺うはあくまでポーカーフェイス)……ったく、着る前からウサギみたいにはしゃぐなよ。(事前に好きなものは調査済みだ。喜んでもらえる自信はあったけれど、飛び跳ねるほど分かりやすい“うれしい”を見せられれば思わずにやけそうになる。だが、まだまだ続くプレゼントの為にもここはクールに。崩れた口元を呆れ顔で誤魔化せば、先日のメールを思い出した様子の彼女に押し付けるは第二弾。そして答え合わせは自分から。彼女の喜ぶものなら何でも与えてあげたいと、随分と甘やかし癖がついたものだと内心自分を笑いながら)…って、お、おおっ…!?(格好よく決め込んだのもここまでだ。飛び込んできた温もりに走る衝撃は体に、脳に。崩れた顔。驚愕と困惑に間の抜けた声が漏れて、倒れこそせずともバランスを失いかけた足が必死に体勢を持ち直せば)…ばかだな、…泣くことないだろ。………あと、知ってる。(メールに書かれた5つの好きなもの。その“友達”に自分は入っているのだろうかと、過ぎった疑問の答えを求めるのは恥ずかしくて、少し不安で。だから二度目の返信にて、思いがけない欄に連ねられた自らの名前を見つけたとき真っ赤に染まったその顔を、彼女は知らないだろう。そうして当初の予定よりも張り切って行われた今日の作戦。カテゴリは何であれ、彼女の“好き”の一つに入り込んだ自分に自信を持って告げた最後の演出は、多分、後で思い返せば確実に恥ずかしい想い出に追加されるに違いないけれど)…ああ。……にしてもほんと、こんなんで喜ぶとか、簡単なやつ。(なんて、「要らない」の僅かな可能性すら吹き飛ばしてくれる彼女の笑顔が愛らしくて、うっかり余計な事を口走りそうな自分を制して照れ隠し。それからその小さな頭に手を乗せてわしゃわしゃと撫で回せば、上から押し付けるよう力を加えている間は此方が見えないと、こっそり自制を解いたその顔は彼女に負けず劣らず喜色に満ちて) |
サンタに手紙書いてた時、深刻な顔したお父さんに「サンタはお父さんだ」って…! |
(これだけの物を集めるのはどれだけ大変だったろう、其の為にあちこちを探し回ってくれた彼女の姿を想像するだけで嬉し涙が出そうになる。)だって、ほんとにふわふわもこもこして可愛いし、着るのがすっごく楽しみ…!これを買う時の当真さんも可愛かったんだろうなー…。(全身から溢れる喜びを抑えられず、そして其れを買う彼女の姿を想像してはまた頬がだらしなく解けた。呆れられても仕方がない様子ではあるが、其れを持ち上げてみたり回して見たり頬ずりしてみたりとあらゆる方向から触れまくった。)だって、だって…こんな、すごいこと…してくれるって、思わなくて…嬉し過ぎて、もう……。知ってても、何度でも言わせてね…!(あのメールは誰かのプレゼントの参考にするのではないかとも思っていたから、このような形で返ってくるだなんて。彼女が倒れないのをいいことにぎゅっと抱き付くのを止めない。本当はメールの彼女の名前にだけ太線と二重線を引いてここ大事と思いきり強調したいくらいだったのだけど、)喜ぶよ!こんなに温かいサプライズされたら誰だって喜ぶに決まってるよ…!ほんと、ほんとに…素敵なプレゼント、ありがとう…!(何度も有難うを繰り返して、頭を撫でられたなら黒目が見えなくなるくらい目を細めて心地よさそうに其の手を受けていよう。そうしてしっかり抱き付いた後に名残惜しくも体を離し、思い出したように部屋の奥を手で示して。)あっ、どうぞ上がって上がってー!ちょっと散らかってるけど!(と招き入れようとする部屋は、無法地帯までは行かないけれども其れなりに雑然と散らかった部屋。彼女が上がってくれたなら、奥の小さなテーブルへ案内しつつ鼻歌混じりに貰ったばかりのスイーツを二人分に分けて皿に乗せ、彼女のところへ持って行こう。そして食べる前に待ちきれなくなったか、いそいそとパジャマの上からこれまた貰いたてのふわもこワンピースを着てみよう。自分が着てみたかったのもあるし、着た姿を彼女に見てもらいたくて。) |
……それは…どこから突っ込めばいいのか…。逆に中3まで頑張ったんだな…。 |
(例えば慣れない女性用の服屋で、「ふわふわもこもこ」で「動物…できればウサギ」モチーフの「ワンピース」を探す事がどれだけ困難だったか――。正確には物自体はすぐ見つかったので、此処での困難はそれを伝えるに至るまでの気苦労を指すが、そんな事実は無かったと装った表情も無駄だったか、さらりと現実を言い当てられれば、ぴくりと眉が動いたような。ともかく当真自身は平静を保ち続けたと信じて渡しきったプレゼントたち。彼女が喜ぶほどに内心頬は緩みっぱなしで、心を決めたとはいえ日毎近づいてくる決断の時に高まる不安は拭い切れない中、腕の中の温もりに容易く癒される。そして彼女が離れゆく頃、やっとのことで引き締め直したその顔は、誰かの部屋を訪れるという初体験に緊張していたこともあって)…おじゃまします。(殺風景な自室と比べれば大分賑やかな生活感ある私室に足を踏み入れ、案内されるがまま行き着いた奥、テーブルの周りをうろうろとするは、居場所に困ってのこと。初めてのお部屋訪問。友人の部屋での作法など知らぬと明らかに戸惑いの滲んだ顔で立ち尽くせば、何処に座ればいいのか。床か?床でいいのか? )…あ、真壁。(仕方なく、遅れてやって来た彼女にそれとなく正解を尋ねようとした。が、それどころではなくなった)……。(早速お披露目されたふわもこワンピース。想像に違わず、否、それ以上に愛らしい姿に「…まあまあ似合ってる。」なんて、用意した言葉も失った。もしこの姿の彼女が目の前に居て、それでも尚表情を崩さぬという人物が居るのなら弟子入りしたいくらいには)………。(何か言った方がいいことくらい分かっていたが、沈黙を埋める為とりあえず詰めた距離。そうして眼下に収めた彼女の姿を改めて直視すれば、フードを無理やり被らせ、垂れたうさ耳を下方に引っ張る。デジャヴュ)……ああ、サイズ、合ってるな。…(それだけか、と野次でも飛んできそうなものだが、代わりに彼女が少しでも苦しそうな素振りを見せれば直ぐに放してやるつもりで、そこでようやく)…あと、まあ……強いて言うなら、かわいい。(ぼそりと付け加えたそれこそ本音だ) |
耐えられなかったらしいけど…告白されてなければ今も信じてたと思う…! |
(一生分のクリスマスプレゼントを貰ってしまったのかというくらいに豪華なサプライズに機嫌は絶頂に達し、引き締まる気配の見えない緩んだ顔で彼女を部屋にご案内。丁寧に一言断ってから入る彼女にますます表情を崩しながら「いらっしゃい!」と大歓迎。彼女が惑っている事はまだ知らず、簡単な早着替えを終えれば「じゃーん」と見せびらかすように両手を広げ、おまけにぐるりと其の場で一回転して見せた。調子に乗って勢い良く回り過ぎ、少しくらっとしたのはご愛嬌。が、其れが視界に入っているだろう彼女からは何も反応がないようで。)…ど、どうかなっ…?えっ、あれ、変!?私が着るにはワンピースが可愛すぎた…?(一人で勝手に焦りながら視線は落ち着きなく動く動く。若しや突然過ぎて驚かせたのだろうか、其れともワンピースの愛らしさに自分が釣り合っていなかったか―想像が独り歩きし始めたところで、詰まった距離。挙動不審状態で彼女を見ていれば、突如として暗くなる視界。)……うん!ぴったりだよ!すごい…!(彼女の口からコメントが出されたなら一安心、すっかり舞い上がって袖や裾を軽く引っ張ってみたり。)……っ!あ、ありがとう…!でも、でもね…!当真さん…やっぱり可愛い!(小さく付け加えられた言葉に肩揺らして驚くも、其の顔は照れと嬉しさで一杯に溢れ返り。もう堪え切れないと言わんばかりに飛び出た本心。――と、彼女を立たせた侭の事に気付けば照れ隠しのように、)あっ、こっちね!此処どうぞ!(其処で思い出したようにくるくると忙しなく動き回るのは真壁とて部屋に誰かを招く事が多くないから。もちろん床に座らせる気はなく、折り畳みの椅子を引っ張り出し、其の上に低いクッションを置けば手で叩いて示して。其の格好で跳ねるようにケーキ、クッキー、ワッフルがそれぞれ乗せられた皿とフォークをテーブルの上に置くのだろう。) |
…真壁のそういうところ、いいと思うけど……悪い奴も居るんだから気をつけろよ…? |
(4月から今日まで、この歳にしてようやく?と言われそうな初めてを体験することが何度かあったが、今回の初体験はかなりレベルが高い。友人の私室に入って早速の戸惑いも仕方のないこと。とはいえそれも直後訪れた衝撃によって何処かへ吹き飛んでしまったけれど)……。(例えば、高校3年にもなって「じゃーん」と言いながら両手を広げてくるりと回れる女子が何人居るのだろうか。内、何人に対して呆れを覚えず、むしろ愛らしさを感じられるだろうか。前々から天然記念物並に不思議な生物だと思っていたけれど、自分の与えた物でこれ程はしゃいで貰えると与え甲斐が有りすぎて困る。と、クラスメイト馬鹿も此処までくれば相当だと自覚して重ねた沈黙。――私が着るにはワンピースが可愛すぎた?なんだそれは。内心が全部ダダ漏れした日には一日中埋まりたいような気分で、崩れた表情を見られまいと乱暴に彼女の視界を遮ったことにさえ、こんなにも無邪気な反応をされてしまえば為す術なく)……だから、それは解せないって言ってるだろ。(漏らした本音に対し、驚きながらも真っ直ぐなお礼を言われるところまではシュミレーション済み。しかし、彼女の本音らしいオウム返しには流石に隠しきれない羞恥を含んだ言葉を吐き出して。――尤も、その裏表無い素直さこそ彼女に惹かれる理由でもあるのだけれど)…あ、ああ……悪いな。(互いに照れ隠しには丁度いいタイミング、先の疑問も解決となったなら、用意してもらった椅子に腰掛けよう。そして並べられたスイーツの数々、我ながら随分と沢山買ってきたものだと呟きながら、)ありがと。……にしてもこれ、真壁一人で食べてたら確実に太ってたな……ま、俺も居るから安心していい。(なんて、元々一緒に食べられたら、という期待なくして此処まで無計画な買い物はしない。当然自分の好物も紛れさせたその中から目当ての物を手にすれば、「じゃ、いただきます。」――メープルワッフルに噛み付いた) |
大丈夫だよ!怪しい人にお金あげるよって言われたら警戒するし…! |
(自分が年齢の割に随分と幼稚な事をしているという事実には気付かないようで、予想以上に暖かくて柔らかい抜群の着心地に酔いしれる。これは一度着てしまうと脱ぐのが大変そうだ。これから部屋での大半は此の格好で過ごす事になるだろう。ただ惜しかった事柄を一つ挙げるとすれば、褒めてくれた時に彼女の顔が見られなかった事。一体どんな顔で其れを口にしてくれたのかと思うと、其れだけでまた頬が解けてひどいにやけ顔になってしまうのだが。もう一人の自分が居れば、視界が覆われていても彼女の顔を見られるのにと浮かれた事も考えながら。)えー!私には解せない事が解せないよ…!(其の言葉が本気で信じられないと言わんばかりの調子で猛反論。こればかりは譲れない様子だ。――其れを経て、テーブルの上にずらりと勢揃いしたスイーツ。どれもこれも甘い香りで早く食べてくれと催促しているよう。)う、ほんとだね…嬉しい幸せ太りだけど…!うん、すっごく心強い…!前から思ってたけど、当真さんってスレンダーだよね!日頃から運動してたりする…?(だがそうと分かっていても食欲は強い。今夜は強力な助っ人も居る事だ、夜のデザートも本日くらい許されるだろうと子供のような「いただきます!」の後にクッキーを一枚齧り「んー!甘い!さっくさく…!」と夜とは思えないテンションではしゃぎながら、続けてケーキも欲張ろう。小さく分けた一切れを口に運べば、また絶句して大きく目を見開いて。)えっ、何これ…美味しい、すごい…!フルーツケーキってこんなに美味しかったんだ…!(普段は生クリームのケーキばかり食べていた事もあり、フルーツケーキの味は新鮮なもの。そして一方、彼女が真っ先にワッフルに手を伸ばしたのを見れば、其れが如何いうことかは分かる。)ワッフル好きなの?私のも半分どうぞ!(とすぐに半分にして渡したがるくらいには其の光景が微笑ましく嬉しいものだったから。) |
警戒レベル低すぎだろ……知らない人に声かけられたら、とりあえず警戒しなさい。 |
…わかったわかった。俺が認められなくても、真壁がそう思ってる事に意味があるし…その方が俺も嬉しい。……だから俺は解せなくてもいい。それでいいだろ。(何故そこまでムキになるのかと呆れに近い吐息はしかし、それだけ自分の為に必死になってくれる彼女が愛しくもあって。自ら肯定は見せなかったものの、彼女の心中まで否定することも諦めればこの話題はオシマイと言わんばかりに視線を逸らし――これからはテーブルいっぱいに広げられたお菓子を食べることに専念するとしよう)…運動?…いや、昔はよく外で遊んでたけどな……今は、特には。(他愛ない質問にふと余暇の過ごし方を思い返してみると、幼き日には少年達に混じって駆け回った記憶もあったが、今となっては叶わぬ過去だ。独りの時間は室内で過ごす事が専らだと付け足して。そう、独りが当たり前だった日々の中では誰かとデザートを頬張ることすら非日常なのだ。大はしゃぎでクッキーやケーキを頬張る彼女が微笑ましくて、齧ったワッフルがいつもより甘く感じられて、幸せに味があるなら多分、こんな感じに違いない)…そりゃよかった。細かい好みまでは分からなかったから…若い女性にオススメ、なんだと。(チョコレート?ムース?チーズケーキ?家族以外の為に何かを買い求める機会がなかったのはスイーツもまた然り。結局店先の煽り文句に従順な買い物をしてしまったから、無事に彼女の笑顔が見られたことに心底安堵するも、相変わらず口元が象るのは苦笑いに似た――)…まあ、全部あんたにやるつもりで買ったから好きなだけ食え……って、…え?(忙しなく動き続ける彼女に意識を取られていたこともあって、咀嚼したばかりのそれと同じものが差し出されたのには驚いた。そして反射的に「別に、」口癖の拒否が出そうになるも、今ならその行為の意味がわかるから、素直に受け取ることにして)…好きだよ。…今日のは特別うまいしな。(ふ、と零した笑みは今度こそ苦味の抜けたもので、再び齧り付いたそれはやっぱり幸せの味がした) |
だって知らない人でも困ってるかもしれないし…当真さん、お母さんみたい…。 |
私が思ってる事に……う、うん?だんだん頭がこんがらがってきた…でも、きっとそれでいいと思う!(言いだしっぺのくせに物事を順序立てながら考えるのが苦手な所為か早々にお手上げ。最後は何ともいい加減な言葉で強引に締め括り、其処から視線は目の前のスイーツに戻された。)そうだ…!じゃあ、暖かくなったら公園で一緒にバドミントンしに行こうよ!当真さん強そうだけど、私も負けないように頑張るから!手加減なしでね!(終わりは此の瞬間も刻一刻と確実に迫っているのに、春の話題を持ち出すなんて可笑しいのは自分でも分かっているけれど。唐突に彼女と外で他愛もない会話をしながら子供みたいに遊びたいと強く思った。そして同時に其れが楽しいものになるだろうと根拠のない予感もあり。此の先に何があっても此の味を忘れる事はないだろうと感じながら、)すごいよー、細かい好みとか自分でもよく分からなかったんだけど…この味はすごく好き!(分からない中で彼女が苦労しながら選んでくれたのだろうと考えるともう限界だろうと思っていた笑みがまだ深まった。これからフルーツケーキを見れば、真っ先に彼女と此の日を思い出すだろう。)もちろん!食べるの勿体ない気持ちもあるけど、でも美味しく頂くよ!(本当は後生大事に取っておきたい気持ちもあるが其れはワンピースに譲るとして。唐突な行為は断られるかとも思ったが、彼女がワッフルを受け取ってくれたなら、破顔しては己も真似して其れに齧り付く。広がる甘さとほどよい歯ごたえが絶妙な組み合わせで、また幸せが増えていく。)…私も、前から好きだったけど、もっともーっと大好きになったよ!…あっ、もう一個プレゼントもらっちゃった。……当真さんの笑顔!(ふっと幸せいっぱいに笑えば、其処にはクリスマスらしい幸福感に満ちた空間が広がるだろう。彼女と笑い合える日が来た事がこんなにも嬉しい。失いたくないという思いを強め、大事に味わいながらも次第に皿の中身は減ってゆくのだろう。其れは早朝に優しい味のカレーを食べた時を思い起こさせた。) |
そういう時は他の誰かも頼れ。不安だから、真壁一人で解決しようとするなよ。 |
…バトミントン?好きなのか?……まあ、楽しそうだな。(春、訪れないと言われた未来の約束を持ち出されても過る絶望の先にある希望が見えてくるのだから、彼女が如何に自分にとって救いある存在かを実感する。「よし、じゃあ負けた方は罰ゲームだな。」なんて、当たり前のように先の約束が出来るようになった自分に驚きながらも、こうした変化が嬉しくもあって)…覚えとく。真壁は食べ物で釣られるからな、好み知っといて損はないし。(初めて彼女と話した切っ掛けも食べ物だったっけ、と遠い4月を回想すれば、あの時も彼女は美味しそうにカレーを頬張っていて、思えば彼女と喋る時はいつも何か食べていたような。カレーにお寿司にデザートに、何を食べても幸せそうな彼女と味わうこの幸せがいつも傍にあればいいと願いながらも夜は更け――大切な友人と過ごす聖夜、忘れられない記念日となる。そして来訪から今まで面と向かって好意を示せないまま過ぎた時間も確実に積み重なり、0時前には再びあの扉をくぐらねばなるまいと意識したからこそ、受け取ったワッフルを彼女に見立てて呟いたそれは、二度目の本音で)……は?……――……ったく、……ほんと……(かわいいったらありゃしない。内心頭を抱えながらも空いている方の手を彼女に頭に伸ばしたなら、撫で――るわけではなく、ぺち、その額を軽く叩いて)あのなあ、…そんな事ばっか言ってると、要らなくなるくらい押し付けるぞ。……って言っても、真壁と居ると呆れることの方が多いから、そんな心配いらないか。(今度は空気を震わせるほどの笑声がこぼれ落ち、緩やかに細めた紫眼が彼女を映す。彼女と居ると自然と頬が緩むのだ。ただし我慢しなくて良いなら幾らでもと告げるほど羞恥心を捨てきれなくて、結局余計な一言を付け加えるのはご愛嬌)――……早いな。あんたと居るとあっという間に時間が過ぎる。……楽しかった。ありがとう。(そうして時刻は11時を回った頃、楽しい聖夜の終わりを影時間に告げられたのでは最悪だと自ら席立つことで示したなら、名残惜しくも「おやすみ。」を言い残して部屋を後にするのだろう――。今日、彼女に会いに来て良かった。来る大晦日を思い不安を語り合わずとも、無理に前を向かずとも、決して無くならぬ絶望も今この時だけはその眩い笑顔で覆われる。彼女と、仲間とならば苦しい決断も下せるはずと、12月24日、彼女が与えてくれた贈り物は ) |
そんなに頼りないかな…ってとこは置いといて、ありがとう!思いっきり頼ってみるよ! |
好きだよ!それに私がまだちょっと自信あるかもって種目だし…!マラソンとかだったら勝てる気がしない…。…でしょ!?……春、楽しみだね!(事情を知る者からは現実逃避の妄言と一蹴されるかもしれない。けれど大好きな友人との明るい未来を信じて何が悪い。「え゛っ……絶対勝って当真さんに猫耳とかうさ耳とか付けてもらう…!」と意気込む姿は何も知らなかった頃と同じではないが、不安を打ち消す為の空元気でもなかった。春が来るなら罰ゲームだって何だって楽しみなのだ。)そんなー、人を食いしん坊の動物みたいに…!いや、釣られない自信はないけど…。私も当真さんの好みもっと知りたい!(だが強ち間違ってもいないのだから反論に説得力は乏しく、其れを自分でも認めるのだから全く格好が付かない。そして彼女の好みを更に多く知りたいという希望も、もちろん未来へ宛てたもの。最初に目にした時にはあれほど沢山に感じられたクッキーやケーキ、メープルワッフルも気付けば驚くほど減っていて。この時間はずっと続いてほしいのに過ぎるのも早く、同時に食べ物の減りも早い。空に近くなった皿は彼女と共有した楽しさを物語っている。――気付けば時計の針は進み、日付変更が迫っている。彼女の手が伸びてきたなら撫でられる事を期待するも、指が予想外の方向に伸びたなら「えっ、えっ…え?」と目を白黒させながらも、唐突な可愛らしい行動にまたにんまり。)いいよ!むしろどんどん押し付けて!どれだけ沢山貰っても、要らなくなる事なんて絶対ないから!好きなだけどうぞ!……え、ひどいなー。そんなに呆れられる事はしてないつもりなのに…!(手を止め、両手を広げてウェルカムを表すくらいには大歓迎らしく、喜色満面で笑みを返し。最後に加わる一言に不満げな声を出すも、すぐに堪え切れず笑ってしまう。)わっ、ほんとだ…!もうこんな時間…。…私の方こそ!すっごく楽しかったし嬉しかった!ほんっとうにありがとう!(彼女が席立つのを見れば己も席を立ち、ほんの少しでも時間を続けたくて「おやすみなさい!素敵な夢を!」と玄関まで見送るのだろう。可愛いサンタクロースが運んできてくれた、幸せなクリスマスと未来への希望。其れを胸に抱え、今夜はきっと温かな夢が見られる筈――) |
12月25日(早朝、ふわもこサンタが瞼を擦りながら向かうのは斜め向かいの――) |
---|
(12月25日、早朝。本当は昨日のうちに一緒に渡してもよかったのだが、本日の方がより驚かせられるのではないかと踏んで。珍しく早起きし、斜め向かいの彼女の部屋―ドアの取っ手にぶら下げたのは赤と緑のクリスマスカラーの紙袋。其の中の大半を占領しているのが石鹸やボディソープやスクラブなどのバスグッズ一式が詰め合わせになったクリスマスギフトセット。そしてもう一つの小箱に入っているのは運と奇跡に手伝ってもらいながら如何にかこうにか焼き上げた手作りのほんのり蜂蜜マドレーヌ。見た目は少しと言わず大幅に歪であるが、味は何度も味見を繰り返し、問題なく食べられる味にしてあるので心配はない筈だ。そして其の中には後もう一つ、よく見なければ分からないようなカードが折り畳まれて入れられている。) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― Dear Gen.T Merry Christmas! 昨日は幸せなクリスマスイブの時間をプレゼントしてくれて本当にありがとう! ワンピースは着心地良すぎてどこでも着て行きたいぐらいだよー。 可愛い当真サンタさんも見られて何倍もお得な気分♪ それでね!今日は私がサンタだよ! 私は事前にさり気なく調査できる気がしなくて…! 勝手に使えそうなのを選ばせてもらっちゃったんだけど。 ちょっとでも役に立ってくれると嬉しいな(*^▽^*) あとマドレーヌは見た目はちょっと残念だけど、味は問題ないから!大丈夫! 今日が当真さんにとって素敵な聖夜になりますように(*´ω`*) From Kasumi.M ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― (そんな文面が綴られたクリスマスカードが付属され、其れは彼女に気付かれるまで出番をじっと待っている事だろう。彼女ほど凄い事は出来ないけれど、どうか気持ちばかりでもプレゼントが届きますように。そうして一連の行動を終えれば、後はクリスマスソングを口ずさみながら、満足げに自分の部屋へと戻って行くのだろう。) |