【Event11】12月31日
>大晦日
>巌戸台・分寮 ラウンジ
>…ついに約束の日が訪れた。

ご覧よ…僕は人間じゃない。あくまでも、この世界に死をもたらす為の存在。
”宣告者”である僕が連れてくるのは絶対の死だ。努力とか意志の力でなんとか出来るようなものじゃない。生きとし生けるものが例外なく持った、”生きる”待遇としての”終わり”が、避けようのない決定事項として、すべての人間の上に訪れるものだ。

よく考えて欲しい…”ニュクス”と対峙する事が、本当にみんなにとって幸せなのかどうかを…今のキミたちは事実に驚いて、迷ってしまってるだけだよ。
でも、世界には”どうにもならない事”がある。キミたちはそれを知らないんだ。

みんな知っているはずなのに、自分のこととして認識しなかった”死”…それを迎えたとき、キミたちは、その圧倒的な事実の前に恐怖し、絶望せずにはいられない。…だから僕はせめて、すべてを忘れて終わりを迎えてもらおうと思った。記憶なんて曖昧なものさ…欠けたって、すぐにそれが新しい現実になる。失うと思うから怖いだけで、元々なかったことになれば何も変わらない。

もうあと少しで0時…約束の時間だ…。
…さあ、キミたちの答えを聞こう。

>これはとても重要な選択肢だ。
>慎重に選ばなければならない。

□今のままを続ける
□記憶を手放す
□今のままを続ける
(最期の選択が赦された約束の大晦日。滅び逝く運命の決定した例の夜から此の日まで、突き付けられた選択肢について悩んだ事など然し一度も無かったように思う。忘却が如何に楽な道であるかは知らない訳ではないし、彼の言うように今までの全てを無かった事にしてしまえばそれはそれでまた新たなスタートが切れる事を利川は身を以て経験して来ている。――けれどそう、それでは以前と何も“変わらない”のだ。)決まってんだろ。俺も、手放すつもりはねえよ。今までの記憶も……ココで出来た仲間も、お前らの事も。(其の声には躊躇も迷いも一切なく、とても重要な選択をしたとは思えぬ軽い口調で言い切っては頭の後ろで手を組んで、ソファへと深く凭れ掛る。ひとつ呼吸を置いてから天井を仰ぐ利川の脳裏に過るのは、今まで切り捨てて来た沢山の記憶たち。――これが少し前の、内なる己の影と向き合う前に告げられていた事だったらそれこそ迷い無く記憶を手放す事を選んでいたに違いない。今までと違い完全な忘却を得られるのだから、寧ろ喜ばしい事だった筈だ。けれど今は違う。心の奥底にずっと仕舞いこんでいた弱さと向き合い一歩を踏み出せたからこそ、得られたものがある。欲した所で手に入らないと思っていた友人。仲間。手放したくないと思う大切な存在。脳裏に浮かび上がった顔を追うように視線を天井から仲間たちへと戻して「だからサ、」常と変らぬ余裕湛えた不敵な笑みが利川の口元を彩った。)悪いケド、ちょっと覚悟しといてネ。……最後の最後まで醜く抗ってやるからさ、お前らの言う“死”ってやつに。………もう二度と、大事なモノを失くさねえ為にもな。(だから手を伸ばす事を諦めない。飽きたと投げだすような事もしない。例え無駄な足掻きだとしても、勇気を持って手を伸ばし、一歩を踏み出しただけで世界がこんなにも違って見えるのだと知れたのは他でもない、仲間たちだから。――双眸に宿るのは絶望では無く、希望だった。)
□今のままを続ける
(12月31日――大晦日。晦日とは月が隠れる日を意味するのだと何かの本で読んだ覚えがあるが、影時間の満月と同じ輝きを携えた彼は宣告通り姿を現した。糸川にとって提示された選択肢は先の話し合いでも宣言した通り答えが決まっているもので、最初から選ぶ余地などないも同然であったけれど。さてどこから話すべきかと居並ぶ面々をなぞるように一瞥した視線はひとりの青年を捉え、最終的にかつての仲間へと帰結する。死地に至る決断だというのに心持ちは奇妙なほど落ち着いたまま。一旦伏せた灰青が再び周囲を捉える頃には、そこには確固とした意志を湛えて)デス――…ううん、敢えて夜長君って呼ぶけど。答える前にひとつ訂正。…あたし別に、死ぬのはそれほど怖くないよ? 強がりとか平気なふりじゃなく、あたしが一番怖いのは大切なものを失うこと。自分から諦めて手放すことだから。(彼の言う通り、死とは遍く降り注ぐもので、それは覆す術などないのかもしれない。だが終わってしまう未来を見据え続けることは己にとって今までとあまり変わらず。不安と隣り合わせの執着にしがみつく生き方だってそのままだと静かに語る)そもそも、何も変わらないなんて馬鹿な冗談は止めて。確かに欠けた記憶は幾らでも埋められるかもしれないけど、そんなのもう"あたし”じゃない。…同じにはなれないの。だってシャドウのせいで辛くて悩んで苦しくて……でも幸せで、そういう全部をひっくるめて今があるから。貴方たちの齎す死もあたしの一部だったなら、安易になかったことにしたいとは思わない。(10年前、幼少期に遭遇した死の片鱗。苦悩と出会いのはじまりが力を取り込んだことにあるのなら、それはもう糸川綾という人間の基盤を作っているといっても過言ではないのだ。なれば最後の瞬間まで忘れない。手放さない。何時かの夜に愛するひとに受け止めて貰った浅ましき欲求と、終末が迫る今に導き出した答えが綺麗に合致するのは何とも皮肉だけれど、立ち向かう心構えとしてはきっと上等だ)……だから足掻くよ。たとえ無駄だとしてもあたしの幸せはあたしが決める。この考えだけは絶対に曲げるつもりはないから、…ごめんね?(凛然と告げた決意表明の後、黄金に向けた謝罪は彼が自分たちを慮ってくれているのだと分かったからで。近い戦いを憂うように口を閉ざせば、僅かな痛みを堪えるようにそっと胸元に手を当てた)
□今のままを続ける
(時は、待たない。――突然の終末を宣告され突き付けられた現実によって鮮やかに彩られた限りある日常を過ごした其の果て。訪れた約束の日、徳永小百合は穏やかな微笑みを携え選択の時を迎えて居た。宣告を受け、死に方の選択権を得たあの日。女の心は否定しようも無く、夢の世界へと揺らいで居た。何も知らず心乱されぬ嘗ての日常と言う名の揺り籠の中で現実を理解し得ぬうちに身を委ねる唐突な終焉。以前の徳永ならば抵抗一つ無く受容して居ただろう当然の終わり。――けれど、今は、違う。痛みを知り、悲しみに触れ、やがて手にした何物にも代えがたい幸福な時が、どれ程の苦痛背負えど、共に生きたいと願う愛しい人が此の世に居る。両手全てを広げて守りたいと願う仲間が居る。義務感等では無く、彼らと共にする未来を身勝手に思い描くが故に。だから、人の手を取る為だけでは無く、自分の願い叶える為に手を伸ばす事を知り其の内情に変貌を遂げた女は嘗てと変わらず今も、微笑う。)以前の私なら…他ならぬ救済と、喜んで君の提案を受け入れて居たことでしょう。けれど、御免なさいね。……今の私にとって、幸福はもっと違う形をしているの。(瞼を伏せ、思い描く此れまでの日々。きっともう、昔のように穏やかに心乱さず粛々と生きて行く事は出来ないだろう。時に人へ反発し、傲慢に願いを紡ぎ、身勝手に心ぶつける。―然し、そんな人間的な自分の方が余程、好きになれたから。気海に触れ、そっと女は瞼を下ろす。人と人、命と命。ぶつかり合った時に思いを馳せながら)……君の言う通り、死は全ての人間の上に訪れるものよ。…でもね、この世界には死を迎える恐怖さえ凌駕する素晴らしい輝きが沢山満ちているわ。大切な人との絆、思い出、命の育みが紡ぐ全てを…私は手放したくなんてない。いつか此の輝きを、――……未来へ繋ぎ、与えたい。(人は終わりを目指し生きている訳ではない。喜びも、悲しみも。幸福や苦しみさえ。命抱くからこそ、手にする全ては愛しく美しい。終わりが在ると知りて尚、其の手に数多の煌めきを与えたいと望むからこそ、人は命を繋ぐのだ。体裁だけを繕って母親を模した行為に意味など無かったのだと今、身を以て理解する。もう決して何も諦めないと誓いは、強く。)いつか必ず死は訪れる。其の事実を、私は覆そうとは思わない。けれどね、終わりがあるからこそ、私は其の時を否定せず最後の一瞬まで此の命を燃やして精一杯生きて居たい。…だから決して忘れない、一瞬だって諦めない。最後まで足掻いて見せる。…大切な人と思い描く未来が私にはあるから。(瞼持ち上げ映し込む彼の姿に今も仲間であり続ける二人の姿を重ねて。変わらぬ穏やかな笑みに確固たる決意を乗せた。叶わぬ願いと知りながら、其れでも彼らも共に未来を描きたいと傲慢な想いさえも抱いて。)
□今のままを続ける
(――決断の日。真実を告げられたあの日から、時の流れはいつも以上に緩やかなものに感じていたにも関わらず、こうして振り返ればあっという間だったような気もする。長かったようで短い日々。そう感じたのは、答えを疾うに定めていたくせに心の奥底でほんの僅かな不安が残っていたからやもしれない。この選択をする事で未来がどう転ぶかは分からない。勿論何も変わらない可能性だってある。それでも悩み抜いた上で一度決めた意志は、そう簡単に揺らぐものではないから。)……もし、ここに来たばかりのおれだったら。どっちを選んでたかは分からないけど、どっちを選んでも、適当に何も考えずに“そのとき”が来るまで平和に過ごしてたと思う。みんなが死のうと世界がどうなろうと、多分どうでもよかったから。……でも、今は違う。(色々な時を過ごして行って、初めて知ったことも、初めて出来たものも、たくさんある。あの頃と違って大事なものが出来た今は、それら全てを捨てる事なんてとても出来ないのだ。)失いたくないもの、たくさん出来たから。忘れたら楽にはなるだろうけど、これは全部、忘れたくない。忘れたらだめなんだ。……自分から手放すより、一生懸命守って、そのまま終わったほうがずっといい。最後まで足掻いて、抗いたい。(少しずつ前を向けるようになったのも、はじめて友達が出来たのも。大切な記憶があって、今自分は此処に立っている。いつになく真剣な瞳は真っ直ぐに宣告者を捉え、自らの口ではっきりとそう紡いだ。たとえ彼の言うように、避けられない死に恐怖し、絶望を感じる未来が待っているのやもしれないけれど。それでも、何も知らないまま退屈な日々を過ごすのは、――昔の自分に戻る訳には、もういかないのだ。そうじゃないと、ともだちに教えて貰った大切なすべてがなくなってしまうから。約束を守るためにも。数少ない希望であれ、それに縋る事から始めなければ、何も変わりはしないだろう。決意はもう、揺るがない。)
□今のままを続ける
(幸せな数日前が過ぎ、瞬く間に迎えてしまった選択の日。迫りくる恐怖が日に日に心を蝕むのは感じていても、選ぶ道は最初に真相を知った時と変わりない。己なりの精一杯の慎重な決断だ。抱えた悩みは解決こそしていないが、打ち明けられた相手の存在により軽くはなった。そんな不完全で好きになりきれない自分も受け入れながら生きていこうと思えたのは此処で過ごせた時間があったから。本音を誰にも言えず、普通の顔して無理に振舞う自分に戻りたいとは思わない。悩みを抱えているのが同じでも、記憶を持つ方がより苦しい事が増えるとしても。此処で出来た大好きな友人や仲間たち、此処で濃い時間を過ごしながら築き上げた絆を忘れる道を選ぼうとは如何しても思えなかった。)私は忘れないよ。全部抱えて生きる。(きっぱりとした口調で宣言し、真っ直ぐと前を見詰める先に躊躇いは見えない。もちろん此処で得た記憶が大事だというのも何よりだが、記憶を失った自分になるのが嫌でもあった。)私にとって…記憶を失う以上に怖い事はないから。記憶を失うぐらいなら、苦しんで死ぬ方がずっといいし、後悔しない。私は、楽しい記憶ばっかりじゃなかったとしても…やっぱり、今のままがいいよ。もし絶望したとしても、この選択を後悔しないって思えるから。(ふっと力を抜いて小さく笑えば、本当に後悔しない未来になるような気がしてくるから不思議だ。前の全員での話し合いの中でも、飛び交う言葉や意見にどれだけ背中を押されたか。結末が何であろうと、これが己の望んだ選択だと胸を張れる。けれど其処で視線を答えを尋ねる彼に向けて、)……デスさんの言っている事も、何となく分かる気がする。失ってしまえば、何も怖くなくなるのかもしれない。でも、絶対に自分の中の大事な何かは消えちゃうの。どんなに怖くても、無力でも…抗いたい気持ちも一緒に忘れるのは嫌だよ。未来がどうなっても、何も知らずに終わりを迎えるのが救いだとは思えない。だから、私も最後まで全力で抵抗するよ。無理でも諦めたくないから。(最後は爪が食い込むほど強く拳を握りしめて、己の決意を語り終えるのだろう。其の過程でどれほどの痛みが伴おうと、もう二度と大事なものを見失わないように。)
□今のままを続ける
───……僕は、怖いよ。(決断の日。対峙した宣告者に向けて放った言葉は、酷く臆病な言葉だった。濃紺は終末を映さずして足許の爪先を見詰め、拳は握り締められる。未だ見ぬ終末が忍び寄り、そして今、終末は目の前にいる。言葉は振り絞るように溢れただろう。睫毛の影が落ちるように瞼を伏せ、もう一度開く頃には静かな眼差しで宣告者を見据えた。宣告者を、───夜長を。)僕は、自分が死ぬのが怖い。自分以外の誰かが死ぬのが怖い。今まで当たり前に生きてきた世界が、消えるのが怖い。(今、玖珂の手の中にあるもの。側にあるもの。五感の全てで感ぜられる世界が消えてしまう恐怖。知られたくない自分を抱えて生きて来た嘗ての自分じゃ考えられなかった感情が、其の胸に宿る。今まで何度も行き場のない感情から握り締めた掌に刻まれた爪痕。再び其の拳を握るのは、確かな決意からだった。)いっそ、忘れた方が楽なのかもしれないって思ったこともある。きっと、その方が楽なのにさ。不思議だよね。……忘れたくないって気持ちの方が、勝ってた。記憶を手放すには、僕には大切なものが出来すぎたんだ。(痕の残る掌を眺め、そして握る。手放したくはない。此処で経験した全てのこと、出会った仲間のこと、其れから友達のこと。全部、全部、全部。忘れたくはない。全てを忘れて生きていく世界に、意味なんてない。)僕は、戦うよ。───…なんてさ、こんなこと言えるようになるなんて思わなかった。でも、決めたんだ。………僕は、戦う。抗う。最後まで諦めない。もう、逃げたりしない。(深海に落ちた狼は浮かび上がる。同じ色の濃紺を携えて、確りと前を見た。決して揺らがない、迷いの消えた双眸。玖珂愛は小さな少年だ。小さな小さな、何の力もない少年だ。然し、一人じゃない。仲間が居る。一人じゃ如何にもならないことだって、彼等となら如何にかなるような気がしてしまう。其れが例え終末に挑む無謀な戦いであっても、きっと。だから未来に思いを馳せる。戦いを終えて、『お疲れ様』と言い合える日を。笑い合える日を。)
□今のままを続ける
(迎えた大晦日。迫られた選択は寧ろ男にとっては其れこそが生死の選択に近しかった。―加賀美誠という一人の人間が、築いた物。其れは半ば以上がこの4月より後、更に限定するのならば9月5日より後に手にした物だった。其れ迄の男は単なる器に過ぎず、空洞に仮面を付けただけの存在。漸く詰め始めた中身を手放す事は、現在の加賀美誠という一つの人格の喪失と同義であった。なればこそ、)…俺は、手放さない。この記憶を、そして、今の俺自身を。…君の言う“幸福の棺桶”は、俺にとっては全く幸福ではないんだ。棺桶には違いないんだろうけれどね。(返す声は力強く。彼を見据える瞳は瞬く事すらない。次いだ皮肉とも取れる言葉はかと云って責める風でもなく、小さな笑みすら零して。)少し前なら、面倒な物思いは無駄だから早く記憶を消してくれ、って頼んでいたのかもしれない。…でも、今はさ。足掻いてみたい、みっともなくても、苦しくても。何もせずに諦めるのは嫌なんだ。…ニュクスとやらを倒せると、本気で思っているかと問われたら、それは分からないと言うしかないけれど、…それでも俺は。若し死ぬとしても、この記憶の中で死にたい。そちらの方が余程、―…余程、幸福だ。(瞼下ろし噛み締めるように吐き出す言葉は巡る記憶と共に。―初めて得た友人も、恋人も。初めて抱いた感情も。戸惑う事は多くとも、幸福には違いなかった。失いたくない、忘れたくない。人類を救うだとか、そんな高尚な物の為じゃあない。利己的で身勝手な男は、何処何処までも、唯只自分自身の為に。)だから、俺は戦うよ。絶対に勝てないと言われても、はいそうですかって納得、出来ないからさ。…大体、この世の中に、絶対なんて物は無いと思うしね。1%でも可能性があるなら、諦めない。(そう語る顔はいっそ晴れやかですら、――此の決断は絶望に向かう物ではない。少なくとも死より生へ向かう一歩に違いないのだと。“滅びの宣告者”足る彼を見据える双眸には確かな決意宿る。其の選択が、彼との対峙示そうとも。)
□今のままを続ける
(贅沢な怠惰に塗れ、積み上げてきたこの十数年間が如何に空ろだったのか。途方もない現実が信じ難い非現実に侵されてきたこの数ヶ月。長いようで短かったこの時間がなければ上広優一の人生は全くの失敗。愚かな考えではあるが、勝者敗者で考えるならば間違いなく後者だ。諦めの境地で高みの見物。自分すらも見下していた今までの自分なら、嗚呼世界が終わるのかと、この疎ましい人生から解放されるのかと、安堵にも似た深い溜息を吐いたに違いない。そんな自分を変えてくれた時間。競争相手ではなく“仲間”という括りに入れられた人たちとの、絆。その記憶を手放すことなんてどうして出来るだろう。答えはもう決まっていた。自らを絶対的な“死”だと呼ぶ嘗ての仲間を見据えて、閉ざした唇は微かな乾きの中、静かにその時を待つ。――“どうにもならないことがある”ことを知らない?――違う。だからこそ、沢山諦めてきた。だから――だから、もう)……諦めるのは…疲れちゃったもん、なぁ……(掠れた小さな呟きは誰に向けたものでもない。自分自身へ、語りかけた言葉。もう笑顔で何もかもを受け流していくことなんて出来ない。――双眸に、熱が篭もる。手にした真実を零さないように握り締めた拳が軋みをあげる。そう。その痛みが、いいんだ。――これは諦めじゃない――、)俺はもう、俺を諦めない。……バカな奴は大嫌いだが…最後くらい、…元々自分なんて嫌いだしね、…いいよな。忘れないよ。俺は。このままでいい。大体、今迄散々そっちの意思で振り回してくれやがったんだ。最後くらい自分で決めさせて貰っても文句は言えんだろ(勿論、彼らの自分達への気持ちは分かった上。口振りとは裏腹に、終ぞ微笑みを絶やすことも出来ない唇は、容赦なく想いを吐き出していく。柔らかく、それでいて明瞭に)それにもし駄目でも「いっせいのせー」で皆、一緒に死ねるんだろ。上等。寧ろ嬉し…いや、…まぁいいか。僕、皆のこと割と好きだから。それでいい。幸せ。……うん。こんな風にね、性格悪く最後まで抗ってやる。それで自分も、誰かも、最後の最後まで守ってあげたいんだ(もう自分を聡明だなんて言えないな――これは、最初で最後の理想論。視ることを放棄した硝子球は輝き、見据える。今度こそ。道なき未来を、進む為に。)
□今のままを続ける
(選択それ自体はこの頭には決して難しいものではない。現実で繰り広げられる展開を追うことに時間は要しても、示された未来に対してその選択が選ぶことが出来る限りは、其方を選びたがるというのは思えば最初からそうだったのだから――絶望に確かに混在していたそれこそ間違いなく今も基盤に在る、高揚感。戦える。まだ、戦うことが出来る。ならば攻撃という加虐を続けたい。理由など関係無く、戦っていたい。もしデスと名乗った彼等と対峙することになるのならば、尚の事。必ず終わりへ至るというのならば、なればこそ。手段ではなくそれを目的に、あの祝宴の際の終わることを密かに惜しんだように、結果に関わらず戦いに身を投じていたいと思う。それ故に、選択など最初から決まっていた。それが同時に場違いなそれであるからこそ、何時ぞやの話合いでは口に出来なかったものだけれど、)私は…ただ、戦いたい。本当はずっと戦いたかっただけ、だったのかもしれない。今だって、戦いたいから抗おうってそう思ってるから(あれから幾つも夜を迎える度に、見詰め直したその感情は褪せることなく深まるばかり。一度は受け入れたとはいえ真っ当な理由の外にあるその感情を見詰め直して考えてを繰り返す作業が簡単とはいえずとも、変わらない答えを見出す事は出来た。本質がそうなのだと認めたが故に敢えて口にしよう。抗う為に戦うのではなく戦う為に抗うなど根本的に他の皆と異なる理由であっても、此処に居る者に対して声量を落とさず意思として示そう。大勢に理解されない思考が有っても、自分もまた人間だと伝えてくれた人がいるのだから、)でも、そんな自分と向き合おうって思え始めたばかりだから、…まだまだ終わらせたくなんてないんです。忘れたくもない。もしかしたらまだ軽く考えているところがあるのかもしれないし、世界のことなんて全く考えていない。どうにかなると思ってる訳でもない。忘れてしまった方が楽なのかもしれないけど、でも。私は……やっぱり、戦いたい。抗いたい(多勢が打ち出す正答に従うのではなく、彼等の意見に耳を傾けて自分の思案で定めた答え。大切な沢山の記憶を残したいという理由も確かな欲であり理由であり、彼女達と共に在りたいだとか、戦いたいに籠めた理由は数多ある。全てを言葉にせずとも選択を決める上で理由がひとつきりなどということはないのだから。単純で複雑に矛盾した厄介な生き物だから。)考える時間をくれて、選ばせてくれて、ありがとう。でも…私ね、今だって怖いと思うよりもドキドキしてるんだよ。幸せに思うことなんて…人それぞれ違うから(青髪の彼に向けて紡ぐ声は常の如く下げた眉と共に穏かに声量を落として感謝を紡ぐ。内緒話のように声を潜めてみた本音はきっと彼等にも聞こえるだろうけれど、構わない。幸福に繋がる言葉など人の数だけあるのだと其処に自分も含められることが出来た今、彼等を見ていればよくわかるから。)私は、戦いたい。…戦うよ(未来を欲する上でも自分の感情を晒しても変わらない答えに怯みはなく、周りの仲間が居ればこそ尚のこと強く声に出せるその意思を、作り笑いでも癖でもない微笑みを伴う唇で言い切ろう)
□今のままを続ける
(遠くない未来を見据えた決断の時。充実した一年を振り返り、新たな年に希望を託すはずのこの日、大晦日。選択を迫る彼を見据えた目は何時になく厳しい色を宿し)…俺はこのままを選ぶ。(ぴりりとした空気を掻き分け、小さな息とともに吐き出した結論は静かに落ちた)…世界の為なんて立派な考えもないし、多分、世界が終わる日が来るってのも、本当だと思う。(けれど理想を語るつもりはなくて、拙い言葉で紡ぐのは紛れもない現実の受諾。認めたくないものを認めるとき、それもまた絶望だ。両脇で固く握った拳。食い込む爪、その痛みで正気を保つのがやっとで、全てを受け入れたからこそ決意を口にする重みに屈しそうになる。彼には醜い足掻きに見えるかも知れない)…正直、今だって絶対に死ぬ……そんな当たり前のことが、怖い。(それでも、鎧うことが得意だった自分にはもう戻れない)今の自分を失いたくないなんて格好いい事も言えない。こんな自分ひとりで現実を抱えられる自信もない。あんたの言う通り、その時を迎えたら全部後悔して絶望するかもしれないし、記憶を失えば死なずに済むっていうならそうしたかもしれない…そのくらいの決意だ。格好悪くたってそれが本音だ。(不格好だと知りながらも昂ぶり、静寂を裂く低い叫びは確かな熱を帯びていた)…っ…だって、生きる死ぬって話の前で、格好つけたって仕方ないだろ…(そして力なく開いた拳は赤く、くっきりとした爪痕が烈々たる想いの名残の如く。「……けど、」勢いを殺した声で、続けて)…そのくらい本気なんだ。…必死なんだよ、生きるのに。それが“どうしようもない事”だって知ってても。…“ニュクス”を倒したいとか、その先の事とか考えてる余裕なんてなくて、ただ、今で精一杯なんだ。(それは彼に語るというよりはもはや、自らに言い聞かせる言葉となり)…沢山悩んだけど、今だって不安でいっぱいだけど、…でも、こいつらと居ると楽しくて、心配したり怒ったり出来る事すら嬉しくて、その時だけは別のもので満たされるんだ。……だから、ひとりで抱えきれなくなったら、こいつらを頼ろうと思う。無理に忘れなくても、絶望より大事なものが傍に居てくれるなら、きっと…――(全てを話し終える頃、僅か和らいだ表情は今もまた仲間を想う心で満たされが故。誰かに聴かせる為の誓いではないからと好き勝手に並べた言葉の最後、)もう、大丈夫だから。…ありがとう、夜長。(相対する結果となった今でも“こいつら”の括りに入れた二人に向けての感謝を結びとして、この場を終えよう)
―― 
……。
わかったよ。残念だけど、命はキミたち自身のものだ。その使い方もね。
キミたちの選択に従うよ。

今から、”ニュクス”に会う方法を教える。
…タルタロスだよ。約束の日までに、タルタロスの頂上を目指すんだ。
明日から数えて、ちょうど1か月。2010年、1月31日。
タルタロスに”ニュクス”が降りる。…世界の終わる日だ。
約束の日に、タルタロスの頂上へ行けば、直接向かい合えるだろう。
あの塔は、ニュクスを呼ぶ為にある。僕は”宣告者”としてニュクスを招来し、
…タルタロスは世界を終わらせる為に”ニュクス”を受け入れるんだ…

でもいいかい。これから始まる日々は、キミたちにとって無限の絶望との戦いになる。ニュクスは決して“倒せない”。ニュクスと直に向かい合ったとき、それが何故だか絶対的にわかるだろう。キミたちはそこで、自分が何に立ち向かおうとしていたかを思い知ることになる。

じゃあ…僕らは先に行くよ。キミたちとは、この姿であるうちに別れたいからね。 こんなふうに会えるのは、もうこれが最後だと思う。でも、キミたちのことはずっと見ているよ。それじゃ…さよなら。

良いお年を。
【Event11終了】
>…!?
>…頭の中に、不思議な声が囁く…
 我は汝…、汝は我…
 汝、ついに真実の絆を得たり。
 ここに、”愚者”の力は、その最奥を開かれたり。
>”特別課外活動部”のコミュのランクが最大値になった!
>”特別課外活動部”コミュをマスターした!
>かけがえのない絆を手に入れた!

>仲間と重大な決断を共にした。
>絆がより一層深まり、新たな段階へと進んでゆく…

>…!? >…頭の中に、不思議な声が囁く…
 汝、”審判”のペルソナを生み出せし時、
 我ら、更なる力の祝福を与えん…

>まもなく新年がやってくる…
>一ヶ月後の1月31日
 その日、”ニュクス”と向かい合える。
>戦うと決めた以上、その日までに、タルタロスの頂上を目指さなければならない。
>自分たちで決めたことだ。
>……。
>数え切れない思い出の詰まった2009年が、静かに明けてゆく…