【Event4】説明スレッド | |||||
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>白河通り。
あの反応の大きさからして、今回も大型のシャドウの確率が高い。 万一の時に備え、君達にこれを渡しておく。 >美鶴は全員に何かを配り始めた。 >”地返しの玉”を手に入れた! 瀕死になっては何もできなくなる。できれば使わないに越したことはないが、一応な。 |
(次の行動を決めるべく控えめに呼び掛けた先の正体を待つ―) | |||||
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(薄ら目を開けて捉えた景色に対する違和は微睡むように再び瞼を閉ざしてから、確かな違和感として膨れ上がり未だ醒め切らぬ頭に起床を促した。緩慢な瞬きを繰り返して漸く体を起こすに至れど、直近の記憶が引き出せずに上下左右と辺りを見回す度に疑問符が積み重なって行くばかり――眠っていたかさえ定かでは無い現状の最新の記憶といえば、)……大型シャドウの、(討伐。その為に特別課外活動部の面々と共にシャドウの反応があるという施設へと入って、――それから。そこから先がどうにも曖昧で、微かに音を乗せて動かした唇を噤むと改めて室内を見渡そう。用途に沿って誂えられた内装は踏み込んだ場所と合致するのだから、恐らく同じ場所だろうと推測は出来る。それでも自分が此処に居る理由を思い出せない以上、誰か他の面々と合流した方が良いかと早々に切り替えてはベッドの脇へ移動して足を床に着けて、そこで別の音に気付いた。シャワーと思しき流水音に一人だと思っていたその認識に新たな疑問符が浮かんで、其方を見詰めたまま動きを止める。同じ室内から聞こえるそれは無人とは言い難く、恐らく誰かいる。何か、かもしれないけれど。)……あ、の…(音が止むのと同時か否か、小さく息を吸い込んでから呼び掛けた声は人かそれとも何かに届いただろうか。シャドウや何かであれば即座に動けるようにと注視して見詰めたその先に現れたのは――) | |||||
アミューズメントホテルにしちゃ内装懲りすぎだよな。こういうトコはハジメテで? | |||||
(頭から浴びる其れをシャワーの水滴だと理解出来たのは、つい今し方の事であった。僅かながらに機能しつつある脳が何故水浴びをしているのか、此処は何処であるのかと等いった疑問を幾つか提示したものの、其れを上回る倦怠が意識に霧のような幕を掛ける。――どうでもいい。正しくは、それ。何故なら頭に直接語りかけて来る言葉は何よりも、利川の欲するモノであったから。身体の水分を拭き取る最中、不意に急くようにも聞こえる小さな呼び掛けが耳に届いたなら、向こうの準備は万端といった所なのだろう。伸ばした腕は迷わず衣類を掴み取り、Yシャツの前だけ全て肌蹴させた格好でシャワールームの出口を潜る。ベッドの脇にて待つ人物は果たして誰であったか――靄の掛ったような今の思考回路では碌に考える事すら儘ならず、構わずゆっくりと彼女の許へと足を進め、其の両手首を掬う事が叶えば力任せにベッドへと押し倒してしまう筈で。)……――どうシて欲しい?(優しくか、それとも乱暴にか。耳元に唇を寄せて、吐息にも似た掠れた甘い問い掛けをそうっと落とす。虚ろに澱みながらも獣の如き鋭さを宿した碧の双眸が鼻先が触れ合う程の至近距離にて彼女を真っ直ぐに射抜きながら、細い指先は顔の輪郭を撫でるように滑らせて黒髪へと辿り着き、そうしてこれといった抵抗が感じられなければ彼女の髪を纏めるゴムをするりと外してしまうだろう。求めるは熔けるような、ひと時の快楽。) | |||||
初めてです。なので、他と比較も……普通はこんな感じじゃないんですか? | |||||
利川先ぱ……ご、ごめんなさ――(最初に、現れた人物が人間であったことに安堵して。次に、その人間が同じ目的で此の施設に入った内の一人であることに警戒を解く。安堵が滲む声で状況を尋ねる為に彼の名前を呼び掛けようとしたところで、彼の衣服の状態に気付けば即座に視線を伏せて謝罪と共に背を向けようとした筈なのに――最後の「い」の音を紡ぐ前に、思考停止。常の困り顔の儘に表情も硬直して、数秒前と現状がまた一致せず、疑問符のみが頭を占めて思考の阻害を始める。状況を判断する事さえ碌に出来ぬまま瞬きを繰り返して、転じた視野が捉えた碧を困惑さえ浮かばぬ瞳が呆然と捉えるだけだ。初動の遅れが更なる状況の悪化を招くと知るのは今で無ければ良かったものを―然れど、耳を擽る声で漸く働いた危機感から頭が動き始めたのも確か。)っ……あの、て…手を…放して、退いて欲しいです(こそばゆさに息を詰めて反射で顔を逸らした後、彼に問われた通りに要望を返す事が出来る程には頭が少しずつ動き始める。無意識に呼吸を躊躇する程の近さに加えて、己を映す瞳の色が此方の不穏さも擽りかねず、触れる指先に強張る身体に反して冷静さを得るべく一度だけ瞼を落としてそっと息を吐く。親しいとはいえぬ相手故にからかわれているのかどうかも判断し難いけれど、この部屋に至る経緯が定かではなくとも、兎にも角にも現状は甚だ不味い)…先輩。ボタンを、しめないと。お腹が冷えて風邪ひきますし、まず…服を。服を、ちゃんと最後まで着ましょう(男女の知らぬ距離感をこのまま受け入れる気は毛頭無いけれど、先程から短絡な頭に浮かぶ正当防衛の四文字を用いず穏便に話が済むのならばそれが最善の筈だ。そう結論付けて再び現状を捉えるべく傍の瞳を真っ向から映しては、この期に及んでも変わり映えの無い微苦笑にて冷静に言葉を紡ぎ――) | |||||
似たようなモンだケド、入り易さの違いはあるだろうな。ココは色々とあからさま過ぎ。 | |||||
(意図も容易く思い通りに運ぶ展開の、一体何処に不自然さを見出せただろう。顔を背ける初心な反応と、大人しく白いシーツに解き放たれた豊かな黒髪のコントラストに双眸細めては、次に指先は彼女の制服のリボンへと掛かる予定であったのだが――たどたどしい乍らもハッキリとした言葉は拒絶に等しく、ぱちり、驚いたように双眸を瞬かせたのは、本当に無意識だったように思う。)…同意の上だと思ってたんだケド、違えの?(部屋の内装を見れば此処が何処かなど一目瞭然。肝心の経緯はどうにも思い出せないが、其処に居るという事はつまりそういう事を目的としていたのだと当たり前のように感じていた節もあったもので。――…?微かに生じた認識のズレは心に些細な違和感を植え付けたけれど、一体其れが何であるのかは未だハッキリと思い出すに至らない。何かを忘れているような気もするけれど、怠慢に支配された頭は考える事すら放棄する。余計な事など考えず、ただ快楽だけを求めればいいのだと、何処からか再び悪魔の囁きを聞いた気がした。)暑いからヤダ。………そんなに気になんなら、サチちゃんが閉めてくれたってイイんだぜ。ここの、ボタン。(最低限隠す所は隠しているし、寧ろこんな状況にしては幸いにも衣類は着ている方であるのだから、これ以上隠す必要も無いだろうと紡ぐ言葉に改善の余地は見られない。自ら動く意思は無いと示した上で、開けた胸元を指さしてはニヤリ、同じく真っ直ぐに彼女の双眸を見詰めながら意地の悪い笑みを滲ませて。)……ところで。イヤなら早く振り払うなり引っ叩くなりしねぇと、マジで取り返し付かなくなるぜ。――俺は別に、このままシたって構わねえんだからよ。(此れが最後の警告だとでも言うように、囁く声は低く鋭く、苦笑滲ませる冷静さを見せる彼女の耳に脅しではないと届くように。程無くして利川の片手は当初の予定通り彼女のリボンへと伸びるだろうが、さて――) | |||||
あからさま……あ、なら間違えて入ることは無くなりますね。差別化にも。 | |||||
(彼の発した言葉と表情に動きが止まる――欠けた記憶の最中に同意を示す遣り取りがあったのか、それとも誰かと勘違いをしているのか、若しくは彼もまた現状を把握出来ていないのか。現状の正しい認識を得る為に思案に頭の容量を割けば必然的に口は閉ざされ、必要な否定の言葉を紡ぐ機会を逸した儘に時は進む。複数の事柄に頭を巡らせるには不向きな短絡思考は、結局、考えがとっ散らかって纏まらないからこそ一度頭を落ち着かせる為にも目を瞑って息を吐く。次いで不都合な至近距離を打破する契機になればとしたそれも、結果は無益であったようだけれど、)その…退いて貰えないことには…それも出来ません(より眉を下げ困惑を募らせる瞳は至近距離で彼の顔貌を映し、改めて頭を切り替える契機にはなった。蠱惑的に笑む端整な顔や半端に晒された身体に心音が高鳴るような元々が心的距離ではなかったことに感謝して、単純に見ている分には綺麗な其の顔を映した儘に次なる手段を頭に巡らせる。体格差のある相手。隙を生むには平手打ち金的頭突き目潰し噛み付き等々、淡々と手段が過る頭に最終警告の如き言葉が鼓膜を刺激すれば――躊躇など、不要。真剣な顔が頭上の手を乱暴に振り払い、)―――っ、(攻撃の意図を持って動き出そうと振り上げた手が彼の頭部に触れる直前に顔が歪むと、突如怯んだように失速してその手はぺしっと力無く彼の両頬を叩き、)……利川先輩。止めてください。これは同意ではありません。退いて、ください(両頬を挟んだまま困惑から青く変わった顔が声だけははっきりと拒絶の意思を示そう。思えば、彼の言う通り明確な拒絶を示していなかったのも此方だ。先程の発言や無理強いを働くような相手にも思えぬから、出来る限りはっきりと大きな声で拒否を示そう。現状が変わらぬであれば、それでも何度でも声を発する心算で。「お願いします、」と紡ぐ懇願が縋るように触れた彼の頬に爪を僅かに立てて、――) | |||||
そ。これで一個覚えたな、男とのホテル選びは慎重にネ。 | |||||
(顔を赤らめて動揺する事も無ければ、言葉通りにボタンを閉める訳でもなく。それ所か益々狼狽を深めた彼女より真っ向から告げられた言葉は予想の斜め上を行くもので、またまた双眸を瞬かせる事となったが、けれども考えてみれば其れも確かに正論だと納得してしまった時点で、既に快楽を求める心など無かったのかもしれない。わざわざ彼女に警告とも言える言葉を落としたのも、攻撃を加えるようにそれと無く煽ったのも、未だ何処となく宙に浮いているような覚束ない意識をハッキリと覚醒させる為だったか、或いは――。振り上げられた腕はそのまま落ちればさぞ小気味良い音を鳴らした筈だが、空間に響いたのは何とも力の無い間の抜けた音で。両頬を挟む掌は音の通り痛みを伴う事はなかったが、後にチクリと感じた痛みは僅かに立てられた爪によるものだろうか。今度こそ彼女の口からハッキリと拒否の意思が示されれば些細であった違和感は確信へと変わり、同時に悪魔の囁きが脳裏から消えて行く。けれど、それにしたって、)―――…ヒデエ顔色。でも、良く言えました。(表面上冷静に努めていた彼女だが、まるでキャパオーバーでも起こしたような血の気の引いた青白い顔色を見ては彼女なりに思う所もあったのだろう。其れが突如失速した腕の動きに関係があるのかは定かではないが、ふ、と小さく噴き出して。可笑しそうに口元を綻ばせては、彼女の片手に己の手を重ねて、掴んで、ゆっくりと頬から其の手を引き剥がそう。それから切り替え早くあっさりと彼女の上より退いては、体制を立て直してベッドの淵へと腰かけた後、)髪留め、…必要だろ?アッチに鏡もあるし、落ち着いたら結んで来いよ。(平素と変わらぬ態度にて、ほら、と彼女へと顔を向けて差し出す掌には、先刻まで彼女の髪を縛っていたゴムが乗っている筈。まるで何事もなかったように繰り広げられる遣り取りの中、頬に残った微かな爪痕だけが、先刻の出来事を物語っていた。) | |||||
はい、覚えておきますね。あ…でも、男の人と入るホテルを選んでる時点でもう… | |||||
……よかった(小さく噴き出す姿と良く言えましたの言葉に口を噤んで彼の行動を見詰めた顔も、手が彼から離れたのならばみるみると顔の緊張は解れ安堵に緩んだ。心の底から安心したかのように微かに震えた息を吐き出してから漏れた言葉にも強張りは消え、現状が打破され物理的な距離が確かに出来たことに、もうひとつ息を吐く。上げていた手を降ろす前にゆっくりと感覚が遠い掌を開閉させてからぎゅっと力を籠めて握るともういちど「よかった」と小さく小さく呟いて。どっと増した疲労に閉じかけた瞼がひくと揺れたのは傍らの声を聞いて、)あ…そうだ…そう、でした。……ありがとう、ございます。少し頭を冷やしてくるので、…その…先輩も服をちゃんと着ておいてください、ね(彼の言葉でぼんやりとしていた頭が起動し直すように動き始めたのならば、身体を起こして後ろ髪を確認するように触れてから差し出されたゴムを躊躇い無く手に取ろう。手に戻る黒を見詰めて緩慢に立ち上がれば、思い出したように彼に言葉を残して部屋に在る大きな鏡よりも洗面所へと足を運ぼうか。鏡に映る自分の顔色を見ずに水を出したのならば冷水で数度顔を洗い、備え付けのフェイスタオルで顔を拭う。それからいつもと同じ調子で髪を乱れなく端的に結えば、最後に――自らの両頬を自分の掌で思い切り叩いて戒めを。それから漸く鏡に映る自分を見てみれば顔色はもう元の色に近付いて、表情とて変わらない筈だから。彼の元へ戻る姿とて普段と同じである筈だ)その、利川先輩。さっきは、…ごめんなさい。それと…最初に聞こうと思っていたんですが、……先輩は何でこの部屋にいるか、覚えてますか?(彼の元へ戻りながら告げた謝罪のみが先程の一件に触れた以外は、下がる眉の位置も表情もどもりがちの言葉も何事も無かったかのように。最初に告げる筈だった問い掛けを今漸く口にしようか――) | |||||
もう…なに?純粋に泊まり目的とかもあるっしょ、サチちゃんってばヤーラシイ。 | |||||
(良かった。それが一体何に対しての安堵なのかは状況から察するに何事にも至らなかった故だろうけれど、でも。程なくして同じ言葉が繰り返し、まるで何か別の物に脅えてでもいたように、小さく小さく彼女の唇から紡がれていた事など利川は知りもしない。長い時間考える事を怠けていた頭は未だ物事を深く考えるまでには機能せず、ならば此れ以上の詮索も必要無いだろうと気にしない事にして。ゴムを手に洗面台へと向かう彼女の後姿を「リョーカイ」と緩慢な動作でひらひらと腕を振って見送れば、彼女の要望に応えてキチンと制服を着直すとしようか。と、言ってもボタンを閉めるだけの簡単な作業、そう時間は掛からない。彼女が戻ってくるまでの余った時間、曖昧な記憶を辿るように双眸伏せて状況を思い出そうと試みるも、矢張りどうしたってこの部屋へ入るまでの経緯はわかりそうになく――ま、いいか。考えても無駄なら考えなくとも同じだと、思考はどうでもいいの其の一言で塗り替えられてしまったのだった。)…それはナニに対しての謝罪?イヤだったからしたんだろ、なら別に謝る必要なんてねえよ。それとも「別に気にしてないよ」とでも言って欲しいワケ?(戻って来た彼女の顔色は先刻よりも大分良くはなっていたものの、開口一番に告げられた謝罪にはゆるりと首を傾げ乍らさも何も気にしていない体で言葉を紡ぐ。遠回しに謝罪は要らないといっているようにも聞こえるが、何に対してのごめんなさいなのか主語が足りないと言っているようにも聞こえたかもしれない。雲のようにハッキリとしない曖昧な言葉をさて彼女は何と捉えるか――。)それを聞くなら何処まで覚えてるかって聞いた方が利口だぜ。生憎、この部屋に関しちゃ俺は何の心当たりもねえもんで。(訊ねて来るという事は彼女も矢張り、此処へ至るまでの記憶が欠落しているらしい。何とも奇妙な状況ではあるが、心当たりは少しだけ。覚えているのは、――そう、シャドウ討伐へと何処かへ向かっていた事くらいだ。) | |||||
そ、そういう意味では……純粋な宿泊なら男女別室でしょうしどこでも問題無いような、 | |||||
(部屋に戻り露出が制限された衣服を目視で確認したのならば、話し易さを第一に少し距離を置いた彼の前に足を止めて、背ける必要も無く彼に視線は留まる。先程の姿の儘であってももうそれ以上は口出しする気は無かったけれど、何故此処に居るかを思えばすぐに動き出せる姿の方が良い筈だと、また安堵を口許に滲ませた。然れど、謝意は籠めたつもりでいた謝罪を問われれば目が瞠り、瞬きで彼の姿を刻む。半端に開いた口が言葉を探す最中に視線が泳いで、)い、いえ…迷惑をかけてしまったので……そう、ですね。ただの…私の自己満足の、謝罪でした。……さっきのは、変な独り言だと思ってください(僅かに泳いだ視線が床に落ちて、小さく息を吐くと軽く俯いた状態にて少しだけ頭を下げる。御座なりの謝罪の如く、その理由もそもそも先程の一件自体が目前の彼ではなく常に意識は自己に向けられていたのだから。結局その心中を全て語る事もせず詫びるように告げた自己満足との言葉の後、顔を上げては常の顔で謝罪を独り言へと変えて貰えるように頼もうか。迷惑であれ独り言ならばその扱い方に強制力は持たぬだろうとしてのそれは、それこそ彼の認識が如何なるかはわからぬけれど。――曖昧な記憶を埋める為に尋ねた問いは、如何やら彼と自分の情報量は変わらない模様。決して得意とはいえぬ思案に耽る為に眉を下げたところで、分からないからこそ存外早く結論は導き出される。)そう、ですか……何も…。…なら、ええと…早く他の人と合流した方が、…良さそう…かな。私も…気付いたらベッドに寝てて…よく、この状況をわかっていない…ので(あくまで提案であるため当然ながらその言葉に強さは無く、外へ出る為の出入り口の扉に視線を向けながら申し訳無さを籠めた自らの情報の少なさも伝えよう。シャドウがいると言われた空間での記憶の欠落は感覚的にあまり良いものとは思えず、)……そういえば、先輩は…どうしてシャワーを…?(情報を求める以上のものは伴わない声音にて、自分の記憶の始まりが彼がシャワーを浴びていた状況より後であることから疑問をひとつまた尋ねてみよう) | |||||
こういうトコ意外と壁薄いからサ、一人で静かにしてると聞こえちゃうカモよ?色々と。 | |||||
(泳ぐ視線。床を見詰めて俯く顔。下がる頭。其れを自己満足と称したように彼女の仕草のひとつひつつを見ても先刻の謝罪に別の意図が含まれていた事は明らかだが、独り言だと思えと話題に終止符を打たれてしまえばそれ以上言及する事は叶わない。けれど、)……そういう生き方してて愉しい?(彼女の行動を見ていると、其れは他人の顔色を窺っているようにも、何かを恐れているようにも、怯えているようにも見えたから。まるで己とは正反対の生き方をしているように思えた彼女へと投げた其れこそ、他意の無い純粋な疑問だったかもしれない。――互いに互いの状況を知れば益々謎は深まるばかりではあるものの、頭部の後ろで頭を組む動作は酷く気怠げで、現状を理解しようと思案している姿にはとても見えないだろう。思い出せば幕の張ったような曖昧とした意識ではあったけれど、自らのした事も、声に導かれ快楽を求めていた事もハッキリと覚えているのだから不思議なものだ。そのまま上体を後ろへと倒し、ベッドへと身を沈めては天井を見据えて、控え目な合流への誘いには「それがイイかもネ」と生返事をひとつ。そういえば、と思い出したように落ちた疑問には、さも当然だと言わんばかりの声色で以て言葉を紡ぐのだ。どうしてって――?)そりゃあ、…スル為じゃねえの?(寧ろそれ以外に何の目的があるのだと言いたげに、其れは何の悪びれもなく。詳細はともかく、そういう気持ちであった事は確かなのだ。――同輩からの通信が入るまで後僅か、彼女の声で少しでも現状が理解できたなら一先ず此の状況を打破する事は出来るだろう。) | |||||
そ、それは確かに……やっぱり、宿泊場所は目的に応じて、ですね。 | |||||
(どうしてそんなことを尋ねられたのかがわからない――それが彼の問いに対して懐いた感想。定位置の下がり眉はそのまま彼に視線を留めて数秒、目の前に居る利川景充の事を見据えての思案。この手の言葉に肯定的な意味は無さそうだと感じるのは、受動的な態度が是とはされぬという経験則からのこと)何か…気に障りましたか?(捉え難い目前の彼の感情を正しく認識出来ている気はしないけれど、若し気分を害していたのなら今後彼と接する上での留意点に加える為にも問いに問いで返そう。本来の彼の問いを避けたのではなく、問いに続けて楽しいか否かに答えを続ける。"そういう生き方"を自分なりに検討を付けてのそれは、)でも、…楽しいですよ。その、もちろん全てがとは言いませんが…大体いつも、快眠快食です。…毎日、色んなことがありますし(作る必要も無く自ずと浮かぶ微笑での肯定。楽しさを刺激する物事は日常に多く散りばめられていて、現状を是と認識している頭には問われたことさえ不思議な程に、満足している。この感覚自体には嘘偽りは含まれていないのだから。伝え終え彼に視線を留めたまま「先輩、は…どうですか?」と続けたのは会話の流れと彼は如何答えるのかという好奇心からか――。危機意識の薄そうな彼の姿に視線を辺りに彷徨わせては、過剰に現在の状況を警戒し過ぎたかと再考も。その中で得たまた一つの回答は何処か曖昧さも感じながらも疑念には至りはせず)スル……シャドウと?…い、いえ…ええと………あ、今よりもっと安全な時に、同意の上で…楽しんでくださいね(状況下から浮かんだ一つの考えを小さく紡いでから誤魔化しを入れる。先程の流れを踏まえれば指す行為は想定出来るがそれに非難の言葉も情も持たぬが故に、小さく手を叩くと自分は相手となれなかった分、助言めいた言葉を伝えようか。行き着いた先が本題と逸れた気はしながらも思案の路線を戻せぬまま、思えば新鮮な室内を観察さえ始めてしまったところで――届いた通信に我に返れば置いたままであった武器を手にし、扉の前に立つ)頭をスッキリさせるのに…丁度良さそうです(なんて声を掛けては、現状に至らせた原因に向うべく彼の方へと視線を向けては、扉に手を掛けよう――) | |||||
そゆこと。これで一個覚えたな、将来役に立つぜきっと。 | |||||
気に障ったっていうか、気になった?特に深い意味はねえよ。……ああでも、サチちゃんの気には障っちゃったカナ。(此方を真っ直ぐに見据える双眸を覗き込むように見返して、あっけからんと落とした言葉は果たして彼女の納得の行く答えてあったかどうか。碧を細めて続けた言葉がまるで彼女を揶揄するような響きを持ったのは、此方の姿勢を窺うような其の問い掛けこそ、先刻の発言が彼女の心の何処かに引っ掛かっている事がわかる何よりの証明であったから。此方もまたどうしてそんな言葉を返すのかと、問い質すように二つの碧が其の根本を見極めんと細くなる。――楽しいと、返って来た言葉は己の問うた其れとやや論点がずれてはいたが、滔々と語るその姿には喜色すら滲むのだから、其れが心からの言葉である事に疑いはない。「………俺も楽しいぜ。今はな。」言葉に嘘偽りはないと言いたげに、少々の間を空けて答えた唇は、綺麗な三日月を描いた。)それってボケてるつもり?それともワザト?ま、いいケド。言われなくったって愉しむさ、……これからな。(先刻の記憶はどうやら彼女の中で無かったものになったらしい。否、単に触れたくないだけか。彼女が己の言葉をどう捉えたのかはさておき、此れからが本番であるのは確かなのだから愉しむに越した事はない。間も無く届いた通信に状況を把握すればなる程道理で、武器を手に扉の前に立った彼女を見遣れば、一度グッと伸びをしてから、勢い良く飛び起きようか。)――お望みとあらば、踊ってやるさ。(ホルスターから召喚器を抜き取れば準備完了。此の元凶と一曲踊りに行こうじゃないか、勿論、死のダンスを。) |
(欲望色濃いホテルの一室。戸惑う声は、水音の合間に紛れて――) | |||||
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(鈍い意識を暗闇の底から引き上げると記憶にはない天井が見えた。そこから室内へと申し分程度に投げかけられるムーディーな照明に、ぱちりぱちりと戸惑いを含んだ瞬きを繰り返し覚醒を促すこと数度。起き抜けの頭を緩く振りながら身を起こせば、壁面に掲げられた大きな鏡と、ベッドの上に鎮座する二個の枕が目に入る。そうだ、ここは確か――)シャドウが…出るって。皆でいかがわしいホテルに入って……、それで……?(断片的な記憶を整理しようと口に出してはみたものの、肝心のロビーに足を踏み入れてからの記憶が全く無い。扇情的な雰囲気の内装からして泊まり部屋の一室であるのは確かだが、いったい誰が、何故、自分をこんなところに連れて来たのか。否、そもそも一緒に突入したはずの他のメンバーたちは何処に行ってしまったのだろうかと、徐々に明瞭さを取り戻してきた思考で次々と浮かぶ疑問について考える。その答えを知るための手立ては、先ほどから部屋に響き渡るシャワーと思しき水音を辿れば分かるのだろうか。このようなホテルでシャワーとくればどうも嫌な予感しかしないのだが、じっとしていたところで無為に時間を消費するだけだと腹を括れば恐る恐る音の発生源へと近づいて)……誰?……ねえ、なんで水なんか流してるの?(問うたところで期待した通りの答えが返ってくるとは思っていなかった。何故なら今はまだ影時間。ここに誰か居るとしたらシャドウか仲間しか選択肢がない訳で、戦いに赴いていた状況を顧みれば可能性としては圧倒的に前者の方が高いのだ。だからホルターから引き抜いた召喚器を両手に握りしめたまま、糸川は扉一枚隔てた先に居る何某かの存在へと全神経を注ぎー) | |||||
なんつーか…ただの知り合いとこーいうトコって死ぬほど気まずいよな…。 | |||||
(曝け出した白い肌に弾かれて滑り落ちていく水の粒は、頭の中を蝕んでいる奇妙な靄を流してはくれないようだった。正確な状況判断を求めて思考の海へと溺れる為の集中力も、ぐるぐる、ぐるぐると視界の隅で生成される排水溝の渦に目を奪われてしまってとても適いそうにない。意識はあるのに意思はない。体も心もむず痒くて、どうしようもなく気持ちが悪い。降り注ぐ水圧と重力に逆らわず、垂れ下がる桃色を掻き揚げれば多少はクリアになった視界が、見覚えのない浴室のタイルを映し出す。無機質な壁。簡素なシャワー。自宅でもなければ、知人の家でもない。何よりもどうして今、シャワーを浴びているのか。ぐるぐる。ぐるぐる。愉快な水の動きを目で追うことにも飽きてしまって、拭い切れない不快感が気持ち悪くて――だから、きもちよくなりたい。短絡的で原始的な思考は普段なら失笑ものなのに、今はそれが素晴らしく冴えたアイディアとさえ思えた。シャワーを浴びているのも、詰まりはそういうコトなんだろう。外部から響き渡ったどこかで聞き覚えのあるような女性の声音に誘われて、ノズルを捻ればキュッキュという音が反響する。手早く体を拭く最中「ちょっと待ってて」と掠れた声をあげれば腰に気持ちばかりのタオルを巻きつけて、躊躇なく扉を開くのだろう)――…なぁに。ベッドで待ってられなかったのか?……それとも、一緒に入りたかった?…見かけによらず大胆だなぁおい(彼女の姿を認めるや否や、腕を掴み引き寄せる力は相応に強く、けれど華奢な体を抱きしめんと背に回した掌はまるで幼子をあやすようにぽんぽんと、優しくその背を叩いた。そしてそのまま腕を放し離れていく一連の動作は、随分と手馴れたものだ)……あァ、誰かって聞いてたな。…見ての通り。……綾さん、安心した?(ぽたり。雫を滴らせながら彼女の横を通り過ぎ、室内へと足を運ぶ。思い出したように問いに答える様はひどく気だるげで、取り分けその手に携えられた銀色に向ける視線は倦怠感に満ちていた) | |||||
そもそもただの知り合い同士で来る所じゃないですよ、…普通は。 | |||||
(絶えず響いていた流水音が不意に途切れる。何が出てきても対処可能なように身構える姿勢を硬くしていた刹那、耳に届いたのは予想に反した人の声で、しかもそれが聞き覚えのあるものだと悟ればそっと緊張感を緩めた。何故こんな時にこんな場所でシャワーを浴びているのかは分からないが、ともかく仲間の一人なら危険はない筈だと――そう判断してしまったのは早計だったのかもしれない。開いた扉へと向けた灰青の双眸は最初こそ普段通りに冷めていたものの、水滴を滴り落とす白い肌を視認するなり丸々と見開かれ)は…………? い、一緒にって……何ふざけたこと言ってるんですか。それよりも露出狂じゃないんだから服、服を着て――…(下さい。と脱衣所を覗き込もうとする前に、予想外の方向から引かれた体は抵抗する間もなく抱き寄せられる。知らない体温、知らない匂い。甘やかすように背を撫でる掌は腕を掴んだ強引さとは正反対で、怒りも羞恥も通り越して糸川の頭は真っ白に染まった。故に彼が身を離しても暫くは何も考えられずその場で硬直していたが、己の名を呼ぶ声に肩を震わすと努めて冷静な顔を取り繕いながら)……せんぱい。…上広先輩…ですよね。(確認するように呟いたのはどうにも様子がおかしいからに他ならない。暗がりに浮かび上がるすらりとしたシルエットに疚しさにも似た混乱が煽られるのを抑えつつ、一歩一歩と彼との距離を詰め、気だるげな瞳を覗き込む)安心も何も、変ですよ…こんなの。あたしが寝てる間に何かあったんですか? 例えば頭を強くぶつけたとか、熱があるとか…。(問いかけに反して心配よりも警戒の強い声音なのは、未だ銀の拳銃を片手にぶら下げたままなのは、唐突に抱き締められた感触が残っているからなのだろう。しかし半裸の上級生を放っておくわけにもいかず、一先ずの状況整理を試みた) | |||||
…そォ、か?…罰ゲームとかであるコトない?……アレ? | |||||
(虚ろで焦点の合わない瞳は困惑を露にする少女をその淡緑に捉える瞬間だけ、妖しげな鈍い光と剥き出しの本能を滲ませた。然れど可愛らしくうろたえる少女に向けた柔和な微笑だけは何時も通り。そしてその唇が紡ぐ無粋な程に沢山の言葉たちもまた、何時も通りといえるだろう。吐き出す言葉のジャンルと、その言葉に対する冗談みの無さが違うだけだ)……うん?違ぇな。まさひと先輩、だろ。…今はそう呼んでくれた方が嬉しいな。…大体ねえ、露出狂なんて随分な言い方してくれるじゃねェか。どうせ脱ぐんだから着る必要がねぇもん。君も脱いで待っててくれてもよかったんだよ。……俺は自分で脱がしてやンのすきだから、イイけど、さ(手持ち無沙汰になっていた片手で、艶やかな黒髪を撫ぜる手つきは矢張りどこまでも優しい。けれどその優しさは不特定多数の人間に向ける其れとは違うと、甘ったるく低まった声音が告げている。ああ。かわいい。どうしてこんな感情が沸いてくるのか。彼女はただの後輩で、同じ志を胸にした仲間で、ただそれだけの筈だったのに。近付いた距離。彼女から歩み寄ってくれたという何でもない出来事にすら蕩ける瞳が抑え切れない。的外れ極まりない質問に漏らした笑い声はどこかで少女を馬鹿にこそしていたが、この状況に疑問を感じ、変だと言う彼女は何も間違ってはいない。頭頂部から後頭部へ滑らせた手で小さな頭を固定する。微笑を浮かべた顔を近付ける合間に彼女が逃がれられないように。然し、所詮は片腕だけの力だ。抵抗があれば容易に離れるだろう。それをさせない為に身を屈め、もう片方の手でさらりと少女の前髪を横に攫っては、コツンと、額と額を合わせるのだ)…どーだ?熱い?…熱なんかないよ。……君に溺れるぐらいの熱は、あるかもしンねぇが。…試してやろうか(鼻が触れ合い、吐息が触れる距離にまで近付いた顔。視界いっぱいに広がる可愛らしいその顔はどんな表情をしているのか。何であれ、心底愛おしいと綻ぶ頬に変わりはない) | |||||
つまり先輩は罰ゲームでの経験がある、と。……へー、流石ですね…。 | |||||
(元より軟派なイメージの強い人物ではあったが、女性と見れば取って食うような不逞の輩ではないことぐらい数ヶ月の付き合いでも理解している。ましてや頭の良いらしい彼の事、こうして無理に迫ったところで利になる事など何一つ無いだろうに。淀みなく紡がれる言葉の数々は正しく男女のひと時を前提とした其れで、しかもその本気具合が此方を見据える視線からありありと感じ取れるのだから猶更いたたまれない)あ、あのですね先輩、あたしたち別にそういう事するためにここに来たんじゃないって分かってますか? 第一、そういった要求や性癖の暴露はあたしなんかじゃなく彼女さんにでもするべきだと思うんですけど……上広先輩のことだから一人や二人居るんでしょ?(常識的に考えれば失礼極まりない発言だが今はそんな言葉選びに気を使える余裕など皆無だった。――逃げたい。今すぐ逃げ出したい。それが叶わないならせめて彼から向けられるこの蕩けそうな何かを別の方向に逸らしたいと、掌が髪を撫でるささやかな音を聞きながら考える。しかし徐々に煮えてきた頭では冷静な対処方法など思いつくはずもなく、結果として糸川に出来る事と言えばじっと様子を窺うだけ。そうして本来であれば己が受け取るべきではない砂糖菓子の如き優しい笑みにくらくらと眩暈を覚え始めた矢先、やはり共に戦う仲間に油断していた節はあったのだろう。頭の後ろへと回された手、屈みこんだ背中、淡く澄んだ色が限りなく近い距離に飛び込んできて)――――……、…っ!(思わず言葉を失い、次に襲ってきたのは猛烈な動揺。触れ合った額を中心として寧ろ此方が熱でも出しそうな錯覚に、普段の素っ気ない仮面はいとも簡単に剥げ落ちる。掠める吐息を意識するたび朱に染まる頬が、今どれほど子供じみた無防備な表情を晒しているのか嫌というほど自覚させるから、ともかく見られたくない一心で彼の腕から逃れると空いた手で枕を掴み)――先輩のバカ!いい加減にして!!(ふかふかとした其れを向き合う顔面に思い切り叩きつけた。この時ばかりは遠慮も配慮も相手が目上だという事実もまったく忘れて) | |||||
あーでも罰ゲームだから……お一人サマだったけど、な。…あは。 | |||||
?…わかってない。そんなに問題じゃないとも思ってるが……いや?二人もいるわけねぇよ。そんな面倒な、……、なァ君。俺のことなんだと思ってンだ。傷ついちゃうわ?(口振りに反して上機嫌な微笑みはこの状況を楽しんでいるようでも、彼女の混乱を笑っているようでもあった。言葉自体には目を丸めて首を捻ってみせるあたり、平生誰にでも発揮される人懐っこい青年という面と、女性に対して向ける秘められた側面とが交錯しているのだろう。本能のままに行動するなんて愚の骨頂という持論もあれど、まぁ、いいか。そんな風に思わされる程度には彼女の顔がかわいかった。ほんのりと染まった桃のような頬の初々しさに胸を擽られるような感覚を覚えて、あぁそういえば年下相手なんて久しぶりだな。逸らした意識はすり抜けていく細い体を容易に見送った。喉を鳴らす。困惑と動揺に固まっていた彼女がどう動くのか。抵抗するのか逃げるのか。霞んだ思考も漸く動きを見せて彼女の次の行動に対処しようとした、その時)っう゛、わっ !?(無様に洩れた悲鳴。唐突な衝撃。真っ白に染められた視界。柔らかい筈の感触が遠心力とその他諸々の力で硬度を増し、鼻っ面を叩かれたことを悟った。なにしてくれるの――。反射的に零れ出ようとした言葉を留めたのは、チクリと痛む頭に気が向いたからだ。――どうして今、枕をぶつけられたのか。彼女の抵抗だ。抵抗する女の子はかわいくてスキ。動揺に溺れた彼女も可愛くて、それで――。それで? くしゃりと髪を掻き乱したのは脳の困惑を押さえつけたかったから。微かに息を吐いたのは、状況の整理を終えたから、だ。揺らいだ体を立て直す頃にはぷっくりと両頬にわざとらしい膨らみを加えて、必然的に歪んだ唇の弧に不自然な微笑を貼り付けた)ば…、今の衝撃で確かに俺の脳細胞は幾つか死滅したかもしれねぇけどね?ばかって……もう。先輩とばかを並べてんじゃねぇよ。――…なにか不満だったのか?(先程のような事態を想定してか、開いた距離から少女を見下ろす双眸は怒りや苛立ちではなく、どこか寂しそうな、捨てられた子犬のような哀愁を纏わせている。どうして、と。) | |||||
それは…かなり寒いというか…、いったい何に対する罰だったんですか? | |||||
問題じゃないって言えるところが問題な先輩だなー…と思ってますし、傷ついてる顔には見えませんよ。全然。(この際、彼の奇妙な関心から逃れられるなら怒られても失望されても良いと思っていた。しかし決めつけに返ってきたのは屈託ない笑みで、突き放し気味の企みが無駄な足掻きにもならなかったことを即座に悟る。当惑故に八の字に下がった眉は言葉こそ通じていても意志疎通が図れない遣り取りに少しずつ限界を訴え、それが爆発したのは他に打つ手を失くした必然とも言えよう。だが、とはいえ、本気での攻撃は拙かったと気がつく頃には後の祭り。枕によって繰り出したアタックは存外見事に命中してしまい、彼が息吐くまでの少しの間に此方も漸く我へと返ったなら、呆然とした表情を浮かべて力なくその場にへたり込んだ)……だっ、て、先輩が恥ずかしい真似するから…。あんな、あんなの、バカップルしかしないものだと思ってた…。(純粋な非難というよりは拗ねたように聞こえる問いかけに真っ先に飛び出てきたのは、謝罪ではなく言い訳めいた其れ。だが明らかに弱り切った調子な辺り、一定の距離から注がれる哀しげな眼差しに良心の呵責を覚えているのは確かだろう。これではいけないと浅い深呼吸をひとつ。落ち着いた精神状態に自らを置いたなら、今までのことを極力冷静に振り返る。――乱暴は、されていない。無理強いも、されていない。それどころか終始優しかった彼の態度は客観的に見れば女性への扱いとして上等な部類に入ると思われた。だからこそ、普段通りにあしらうことが出来なかった側面もあるのだが)不満……じゃなくて、突然だったので驚いてよく分かんなくなっちゃっただけです。それにその……ごめんなさい…痛かったですよね? 脳細胞はどうにもなりませんけど、冷やすもの探してきましょうか?(火照りの大分引いた頬で両手を空にしたなら、視線を床へと投げ掛けたままぽつりと呟く。及び腰な位置関係は未だそのままではあったけれど、攻撃の意図は一応なくなったらしい) | |||||
んー?知りたいのか。……結構、ディープなお話。だよ? | |||||
(お前は顔と言葉が合ってない。聞き慣れた言葉が彼女の口から零れ出たのなら、この異常な事態にもまだ日常が含まれているようだ。座り込む少女の弱弱しい声音に乗せられた言葉自体が胸を打つことに変わりはないが、手を伸ばしたくなる衝動を堪えることが出来たのは、頭の中の靄が薄らぐと同時に自分自身の意思というものが幾らか戻ってきたからだろうか。――けれど、まだ、ぼんやりしている)…そりゃあ熱なんて単語出されたらおでこコッツンに決まってるもンだよ。カップルじゃなくても少し深めのスキンシップってコトで、ね(控えめながらも悪戯っぽく笑う姿は極めて普段のものに近く、先程までの男の様子とも然して相違はない。軽々しい口振りも女性に対する態度も、平生から一般的な其れではないということだ。未だ人格に影響を受けているのか、それとも正気を取り戻したのか。ニコニコと浮かべたその笑顔を彼女がどう判断するのかが重要で)うん?突然じゃなかったら許してくれたか?…って冗談は置いといて、そんなに痛くないから…いいよ。大丈夫。寧ろ君の方が…随分急に投げてたから、腕とか手首とか痛めてない?…あと、綾さんが謝る必要は微塵もねぇよ(罰の悪そうな彼女を見て小さく笑ったのは、本来ならばその態度は自分が取るべきもので、にも関わらず笑い続ける自分がいたからだ。妙に可笑しく思えてしまった。原因は十中八九自分にあり、彼女は何も悪くはない。でも、そう、まだ――、)それにどうせゴメンナサイしてくれるなら……ちょっとごめんね(遠退いた彼女に近付いたのは口にした心配を行動でも確認する為のようで、やんわりと腕を掴む仕草に覚えたデジャヴュ。――ふわり。背に回した掌。彼女を包んだ甘ったるい香りは瞬きよりも早く彼女を解放して)――…ヨシ。癒された。これは脳ごと癒されたわー。もう元気バリバリだぁ。うん。…ちょっと待っててな。服着てくるから(捲くし立てるような言葉と共に再度浴室へと歩む姿はまるで、何事もなかったかのよう。) | |||||
え。この流れでそう言われると逆に……いえ、聞いたら拙い話なら止めておきます。 | |||||
(頭の方は幾らか冷えても、現状は分からない事ばかりだった。不自然に記憶が途切れている理由も、このような事態に陥った原因も。彼が何を思っているのかすら判断がつかぬ点には一抹の不安が残るが、それでも距離を取った今は話が通じている――気がする。あくまでも"気がする"レベルのため、じっと動向を窺う視線は外せないままだったけれど)決まってる…って常識みたいに言いますけど、仲間同士のスキンシップにしては近過ぎますよ。…でも…そうですね、分かりました。あれは先輩流のじゃれつきだと思って忘れる事にします。(冗談とも取れる返答に呆れ混じりの溜息をひとつ。相手が読めない以上己の心の安寧を優先したのは都合の良い結論だが、殴ってしまった後ろめたさも含めて水に流すのが一番だと、自らに言い聞かせるように呟いた。それから小さく首を振って)あたしの方こそ平気なので心配には及びません。日頃の探索の成果、ですかね。(多少なりとも痛い目は見たはずなのに、一向に上機嫌な態度の崩れない彼に不可解そうに眉根を寄せる。そこまで気にしていない風に見えるのは内心ほっとしたところだが、本当に大丈夫なのかと顔を上げようとして――不意打ち気味に腕が伸ばされたのはその時だった。すれ違う一瞬に記憶にも新しい香りを間近に感じたなら、ぱっと振り返る頃には後ろ姿はシャワー室の中へ。あまりにも自然な一連の動作に二の句が継げない)…――なんか、いろいろ誤魔化された気がする。(ぽつり、戸惑い深い声で呟いたのは少しの間が空いてから。立ち上がってスカートを払い、枕をベッドに戻し、なんともむず痒い気持ちで待ち時間を凌いでいたが、突如ノイズ混じりの通信が飛び込んできたなら表情を引き締める。そうして彼が着替え終わる頃にはドアから廊下を覗き込む糸川の姿があるだろう。部屋の片隅に放置されていた武器を携えた双眸は、既に元の冷めた色へと戻っていた)桐条先輩の話、聞きました?…上にシャドウが居るって…。あたし達も急ぎましょう、上広先輩。 | |||||
はは…まァあと君が数年歳を取らなきゃ解禁できないお話かもな。 | |||||
あらそ?じゃれつきなんて言うとちょっと可愛く聞こえちまうな。…でも今回のはオレ流っていうよりも、恐らくシャドウの影響だろうよ。男女を誘惑をして洗脳、弱体化を狙っているとか、…となると彼らにもそれなりの知力があるのか。…何にせよ良いシュミではなさそうな。……因みにホントの俺はもう少し優しいと思うよ。…そう。だから…君がちゃんと、さっきまでのコトを忘れられるンなら、どうぞ?(僅かに真剣みを帯びた表情で導いた幾つかの推測は冗句とおどけた微笑に紛れて消化された。敵の考察は後でもできる。ならば目の前に彼女がいる今だからこそできることを優先すべきだと判断した頭は、溜息を漏らす少女の呆れを助長するような唐突な弁解とアピールを口にした。曖昧な記憶乍ら自身がやってのけた言動を思い起こせば、少々揶揄するような悪戯な微笑が浮かぶ。それでも尚、伏した双眸に灯るのは穏やかな色で、大丈夫だという彼女に安堵の色が重なった。尤も彼女の方はあまり快い表情はしていないのだが、其れを気にする性分でもなく。だからこそ冷静さを完全に取り戻した脳が指令した、自己満足的なやりたいが儘の行動が起き得たのだが――、律儀にも脱ぎ畳まれた衣服を身に纏い彼女の元へと戻る様には、先程の行動に対する彼女の反応を伺う素振りの一つも滲ませていなかった。お待たせ。平然とそう口にして、室内に乱雑に放置されていた武器を彼女に倣い携えた)聞いたぜ、美鶴さんは無事だったみたいね。おー急ごうか。他の子達も大丈夫ならイイが…、色んな意味で(共に此処に乗り込んだ仲間達のことを苦笑混じりに思いつつ。廊下に踏み出した足取りは彼女に合わせ、今度こそ本来の目的へと赴くのだろう。その表情は心なしか何時もよりも上機嫌のまま)……あァそういえば…ゴメン。…ごめんなって、言ってなかったよな?君さァ、すげぇ可愛かったよ。シャドウとか関係なく止めらンなくなる位。綾さんもあんな顔するのねって……また見たいとか言ったら怒る…?……や、見して貰うつもりだけどな(にっこりスマイルとウインクで飛ばしたハートマーク。「モチロン今度はムリヤリじゃないぜ?」――さて、この男。本能か。演技か。果たしてどこまでが正気だったのか。――答えはシャドウのみぞ知る――。) |
(おぼろげな思考に戸惑う双眸へ映る影の正体は、はたして――) | |||||
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(天上に妖しく輝く巨大な満月に照らされた大型シャドウ出現地点とされる建物を見上げた徳永は柄にも無く唖然とした後、困惑を滲ませた笑みを浮かべていた。まさかこうしたホテルが現場とは一体誰に想像できたことだろう。何せ本年成人を迎える身分、恐らくは未成年ばかりのメンバーには教育的に宜しくないのではないか。それにしても大型シャドウは何故こうも市街地に出現するのだろうか――なんて。悠然と建物を注視する姿とは裏腹に内心では存分に混乱を来すも、然し有無を言わせぬ作戦開始の合図に足を踏み入れ、それから、――それから?)……ダメだわ、何も思い出せない。(寝起き故か、それとも他の要因が存在しているのか。未だぼんやりと靄の掛った頭を振り再度怪しげな室内を見渡した徳永は深い溜息を零していた。繰り返し巡る記憶の果て、何度意識を集中させても部屋へ辿りつきベッドへ身体を預けた記憶が何処にも無い。何処かで気を失ったのか、それともシャドウの仕業なのか。唯でさえ纏まらない考えを持て余しているにも関わらずおまけに徐々に靄が晴れるにつれ、耳朶へ届き始めた水音は紛れも無く同じ室内を発生源としていて――)シャワーを浴びるほど余裕のある状況だったかしら……。(扉を隔てた向こう側に誰が、或いは何が存在するのか知った事ではないけれど、少なくともいつまでもベッドに腰を掛けている場合では無いだろう。ベッドのスプリングを軋ませソファに立て掛けられた長傘へ歩み寄り手を伸ばした――刹那、鳴り止む水音に指先は空を切る。微かに伝わる何かが動く気配に得物を構える事も適わぬ儘、戸惑いを秘めた眼差しは閉ざされた扉へ注がれて――) | |||||
高校生が安易に立ち寄って良い場所じゃあないですね。 | |||||
(止めどなく流れる湯は、平生であれば目を覚ますのに適している筈であるのに、思考に掛かった靄は未だ晴れそうに無い。何故、見知らぬ場所でシャワーなんぞを浴びているのか。常であれば必ず疑問に思う筈の事柄すら浮かぶ事は無かった。脳内に響く誰かの言葉と、外側から聞こえた音に従うように最低限の衣服を身に付け、部屋へと足を踏み入れた。平生浮かべている穏やかな笑みはまるで無く、優等生の顔は消え失せて、焦点の定まらぬ瞳は対象へと向かう。後は力の侭、其の白く細い手首を掴み、半端な姿勢の彼女を其の侭の姿勢で押し倒した。―散らばる黒髪に僅かに瞳細め、顔を彼女の首筋に埋めて、)…綺麗だ。(小さく低く唸るように吐き出された言葉と共に、口唇が僅かに首筋を掠めるだろう。後、奇妙なまでに湧き上がる欲望の侭、柔らかな黒髪に触れようと、彼女の左手首を掴んでいた手を離した。―まるで鍛えて等居ない肉体は恐らく隙を付けば簡単に動かせるだろうが、さて。) | |||||
非常事態だからって困ったものだわ、…内装だけでも十分悪影響でしょうに。 | |||||
か、がみ…くん?(青年の姿に覚えた安堵は続いて双眸に飛び込んだ教室での面影など欠片も無い身形に崩れ落ち、紡いだ彼の名には徳永の動揺が色濃く宿っていた。数学が得意で美化委員、品行方正な同級生の彼は何処へ消えたのか。先程とは異なる混乱に揺らいだ視線を何とか彼へ注ぐも時既に遅し。手首から伝わる熱量に意識が傾けば半端な態勢をこれ以上保てる訳も無く、重力に導かれた身体はいとも容易く組み敷かれ、)じょ……うだんにしては少し性質が悪いわね。(首筋に触れた柔らかな感触の主を悟り狼狽え声が詰まるも彼らしからぬ言葉を反芻すれば芽生えた危機感が困惑した頭を冷やして行く。目前の彼は紛い物か、或いはシャドウの傀儡と化したのか―現状を打破するには無暗な抵抗では意味を為さぬと方向性を定めた直後、不意に左手が自由を取り戻す。これ以上無い好機に抱いた逡巡は一瞬。其れと無さを装って伸ばす片手は彼の抵抗が無ければ露となった其の首元を撫ぜる筈で、)…知らなったわ、……――きみがこんなに強引な子だなんて。(密やかな声音で囁き、触れた指先は首筋から鎖骨を経て肩口へ。緩慢な所作にて擽るように彼の肌を淡く這う。紅を引いた唇で弧を描き、「ねぇ、……どうしたの?」なんて困惑を交えた吐息を零せば―一転、肩へ添えた掌に込めた力で彼を遠ざけ、残る一方は何故か彷徨う其の手の自由を今度は此方が奪わんと突き動く。内心の羞恥心に蓋をして弄した芝居が功を奏すか知れないがせめて一定の距離が生まれる事を祈りながら、茫とした漆黒の双眸を覗き答えを希求す碧眼は滲む憂慮に揺れていた) | |||||
全くです。…傍から見れば非常事態かどうかが分からないのだから余計に。 | |||||
(良く聞き知った声音が鼓膜を揺らしても、意識も理性も到底戻って来る兆しはない。唯一、相手が級友である歳上の女性だと理解したのならば、敬語のみを装備して。他はと云えば寧ろ、細い首筋も、錦糸の様な黒髪も、何処か戸惑った様な声色も何処何処までも女性らしく。欲望は比例して湧き上がるばかり。―其の柔らかな黒髪に触れようと手を伸ばした其の瞬間、自身の首筋に感じた違和に動きを止めた。そうして甘受した熱は、より一層脳内麻痺を広げるようで。然れど其れに浸る間もなく肩押される侭に、今度は自身がベッドへと倒れ込んだ。が、男の右手は彼女の右手首を掴んだ侭離さず、寧ろ彼女の動きに合わせるように其の手首を引き寄せれば、離れた以上に彼女との距離は縮まる筈で、)…俺も知らなかったな。貴女がこんなにも積極的だなんて。(耳元に唇寄せて囁く声は教室内での其れよりオクターヴ低い。挑発するように歪められた薄い唇はそれでも確かに笑みを象っていた。同時、空いた左手は自然に彼女のリボンへと伸びる。)煽ったのは貴女ですよ。…そうでしょう?(リボンに手を伸ばしたまま、悦を滲ませ疑問符投げる。抵抗が無ければそのまま其れは解かれてしまう筈で―彼女の演技は唯でさえ熱に浮かされている男の起爆剤になってしまった様である。優等生の仮面は剥がれ落ち、今は只獲物を捕食せんとす一匹の獣。冷えた光双眸に宿し、横目で彼女を見遣った。) | |||||
人の視線は勿論だけど、…個人的にはきみ達への影響だって悩みの種よ。 | |||||
(艶めいた姿が視界を過る度、平素の彼が脳裏をちらつき心は千々に乱れるばかり。触れた指先から伝わる心音と温もりは確かに人の有するもので。転じて薄らぐ敵の可能性に思考が揺れた矢先、主導権を青年に握られた侭の女は再び平衡感覚を失った。反射的に閉じた瞼を押し上げれば悟る自身の失策に、浮かべた微笑みさえ掻き消えて。耳朶へ響いた低音は混乱を増長させ、竦めた肩と跳ねる鼓動を悟られまいと眼を逸らすも逃げ場の無い距離の近さに呼吸は詰まり、)…っ、……きみも私も、お互いの事を全然知らないなんて…きっと、後悔するわよ。(不意に蘇る過去の情景に諭すような呟きを零せば取り繕った笑みには穏やかな色彩が微か滲む。―突き付けられた否定し難い事実に沈黙は一瞬。首元から響く衣擦れに耳を傾け、徐に伸ばした指先は宛ら幼子をあやすように青年の黒髪を撫ぜようと、)そうね、…加賀美君は悪い女に騙されただけ。…私はきみにちゃんと謝らなくちゃいけないわ。(滲む熱と冴えた瞳の織りなすコントラストに震えが背筋を伝う。眼差しから逃れんと掌で双眸を隠した後、輪郭を滑る片手はやがて彼の頬を優しく包み込み、)だから、…ごめんなさい。後で言い訳、沢山聞いてね?(胸元を戒めるリボンが青年の手中へ収まると同時、振り被るだけの距離が無いと悟れば先達て紡いだ謝罪を免罪符に指の腹で抓るは彼の頬。整えた爪が傷を付けぬよう施す配慮とは裏腹に、加える捻りに容赦はない。女が明確に示す最初で最後の抵抗が齎す結果や、如何に。) | |||||
まるで徳永さん自身は除くような仰り様ですね。…2つしか違わないでしょう? | |||||
(平生から笑顔の鎧崩さぬ彼女の狼狽した様子は物珍しく、純然たる興味から細めた瞳を僅かに見開く。然れど、色取り戻した様を見遣れば、比例するかのように加賀美の瞳は色を失う。そうして。発された言葉に形式的に返答しようと、)後悔?…こんな事にそんな物無いでしょう?一時だけの間柄なのだから。そもそも特に興味も、…(ありませんが。―思わず飲み込んだ言葉は、現在奥底に眠る自意識から発された物。当惑から視線は泳ぎ、思考も一時停止。そんな中髪に触れた掌は暖かく。視界奪われても抵抗少なく、為されるが侭に。穏やかながらも好戦的な宣言聞けば喉元まで疑問符上るも、其れを発する前に先程迄温もりに包まれていた頬に痛烈な一撃。星瞬く視界と、熱持つ頬に反射的に両手を離し、片腕で両瞼を覆った。そうして、湧き上がる問は、何故このような痛みが頬を走っているのかと云う極自然な物から派生して、先程迄の自身の状態や、彼女と此の場に在る現状やらへと移る。思考を巡らせれば巡らせる程頭は冴え、一点の答えに行き着く迄そう時間は掛からなかった。)…シャドウか。(ベッドの上に倒れた侭、溜息交じりの第一声。自我を取り戻した直後の一声が、非礼への謝罪でも協力への感謝でも無い辺り、此処で殴られても文句は言えまい。瞼を覆っていた片腕を降ろせば、シャツのボタンを留めながら身体を起こし、此処で漸く謝罪を。)ご迷惑をお掛けしました。……つい先の事なのに少し記憶が朧気なので確認したいのですが、…何処まで?(述語を欠いた問い掛けは、現状必要だと判断した物ではあったが、女性に対しての物としては不適切この上ない。然し、揺れの無い声色からも配慮を欠いている意識が無い事が伺えようか。―現状としては異様な程の落ち着きは加賀美らしいとも表現出来ようが、彼女に対しての気遣いに欠け過ぎて居た。) | |||||
単純に一般的な年齢区分で判断しただけよ。…2年しか、なんて何だか新鮮な気分だわ。 | |||||
(後悔先に立たず。―拘束を解かれ自由を手にして尚も青年の傍に座り込む姿はそんな心情の表れか。彼の頬へ与えた熱の名残に眉を顰めど紡ぐ言葉を見失い、人知れず唇噛めば永劫にも似た一瞬の静寂が室内を満たすのみ。然し、落ち着き払った呟きが現状を打破すれば心中に掛かった靄を幾許か晴らすには十分で。平素の笑みを纏わんとした―瞬間、耳に届いた声音に徳永の表情は意図せぬ内に色彩を失い、)加賀美…くん?(得体の知れぬ違和感を覚え咄嗟に零す彼の名前。淡々とした調子は沈着たる気質故に違いないのに、何故だか一向に教室での優等生たる青年とは結び付いてくれぬ侭。想定外に触れた其の姿は彼の持つ仮面の一つかと。想像抱けど判別もつかず、この女にしては物珍しくも本日幾度目かの戸惑いを覗かせた。やがて返答へ窮したにしては不自然に生じた沈黙へふと我に返ったなら首を横に振り否定を示すと共に漸く反応を返すのだ。)大したことないわ。精々…そう、リボンまでだもの。……加賀美くんも男の人だったんだなぁ、って少し驚きはしたけれど。(滑り落ちたリボンを手に久方ぶりに湛えるは常の笑み。思わず吐露した胸中にふと想起する先刻の出来事はどうにも面映く、ばつの悪さも込み上げたなら巡る記憶へ早々に蓋をした。然し、遡る時間の流れがやがて自らの行いに辿り着けば和らいでいた表情は反射的に憂いを帯び、)寧ろ謝罪すべきは私の方よ。…念のため冷やしておきましょう、痣にでもなったら大変だわ。(決断に準じて腰を上げ、其の足先が目指すは浴室の傍に備え付けられた洗面台。冷水に浸し適度に絞ったハンカチと、それから彼が身に付けているベストや上着が残っていれば手に取る事も忘れずに。舞い戻った暁には彼の頬へ簡単な治療を施す心積もりで其の深淵にも似た双眸を覗き込む筈で。) | |||||
ああ、成程。…そうですか?あまり大きな差ではないように思えますが。 | |||||
(自身が晒したであろう醜態と、其の相手が選りにも選ってメンバーの中で最も顔を合わせる彼女であるという事。状況は整理すればする程最悪で、思わず一際大きな溜息吐いた。其処で鼓膜震わせたのは先程放った問に対しての答ではなく。ぱちり、瞬きを一つして首を傾ぎつつも呼ばれたのだと解釈すれば、「はい」と発するに留めた。―静寂が支配する部屋は現在の男にとっては好都合。能面のような顔は其の侭に、衣服を整えながら今後の対応を頭に巡らせていた頃、届いた答に)…そうですか。なら良かったです。(と、彼女の笑顔に釣られるように口端を上げ、些か簡素過ぎる纏めを。―随分と空いた間は、彼女の返答に虚偽がある可能性を考慮するに至ったが、敢えて言及をする事はなく、彼女の報告を事実として受け入れたのだった。次いだ世間話じみた言葉には、苦笑にも似た笑み漏らし、)俺も自覚させられましたよ。…ああでも、それは少し勿体無かったかもしれませんね。徳永さんが驚くなんて希少でしょうし。(落とした言葉は僅かに自嘲気味に。然れど続けて発した声は教室内での其れと大差なく、つい先頃までの雰囲気は崩れ、場にそぐわぬ安穏とした空気が流れる事だろう。―そうして、声返す間もなく立ち去った彼女の動きを眺め、準備を終えた彼女の姿が再び近くに現れれば、)貴女が謝るべき事は何もありませんよ。正当防衛でしょうし、…そう申し訳なさそうにされてしまうと、俺は何処まで反省したら良いのか。(言葉の割に反省の色が見えないのは、彼女のフォローが上手いからか、それとも本当に反省していないのか。視線を交差させつつ、)ご厚意は有り難く頂きます。(と述べ、「ありがとうございます」という謝辞と共に諸々の荷を受け取ろうと腕を伸ばして。) | |||||
えぇ。…敬語で話掛けてくれている加賀美君に言われると、尚更。 | |||||
(目前で深く溜息を零す姿は状況を鑑みれば不思議でも無い筈なのに脳裏に描く彼の姿からはやはりずれが生じていた。如何に頻繁に姿を見掛けると言え一般的な評価以上なんて知らぬ級友と言う名の浅い関係を思えば当然の筈なのに。浅はかな思い込みに潜めた眉を曖昧な笑みで隠したなら、「つい、確認を」と誤魔化す事に終始して。―やがて彼が現状を受けとめたなら、混ざる嘲りへ今度はこちらが瞬きを返し、)…気付きたくなかった?(僅か不思議そうに遠慮がちながらも傾げる首。けれど続く聞き知った調子の声に追及は途絶え、穏やかな一時にそっと目を細めて、)そうね、向こう一ヶ月は今日驚いた分でカバー出来そうなぐらいよ。…良かったわ、加賀美君の記憶に情けない姿が残っていなくて。(殆どの記憶が欠落している様子に覚える安堵は深く。冗談めかして胸を抑えたならほっとしたと大仰に吐息を零しくすくすと軽い笑みを漏らすのだ。―其の際ふと気付いた襟元の違和に漸くリボンを結び正す身形。)何も無かった以上、加賀美君に傷が残れば過剰防衛よ。…それに私自身、ホテルに入ってからここで目覚めるまでの記憶が無いの。全てがシャドウの仕業ならそれこそきみが反省する必要だって、(ゆっくりとした口調はさも当然の事実を語るように。然し、反芻した単語は何故だか腑に落ちなくて、半端に開いた唇を閉ざせば絡んだ眼差しと耳が拾った声音を受け、何処か喜ばしげに口許が緩むのみ。腕の中を確認した後、彼へ衣類を手渡したなら再び其の傍らへ腰掛け、未だひんやりとしたハンカチを折り畳み彼の頬に添えたなら、)…加賀美君は余り気にしていないのかと思っていたわ。(僅かな沈黙の後、吐露する胸中は反省と言う単語を受け沈んだ蟠りの一端。―表情と言葉、紡ぐ調子に纏う雰囲気。女の知る優等生の彼とは噛み合わぬ姿へ覚えた当惑はやはり己の先入観に過ぎぬ気がして。零す呟きに浮かべる表情は平時とは異なる苦笑だった。) | |||||
徳永さんがどう、という意味ではないのですが、…こういった事は形式が大切でしょう? | |||||
(彼女の返答には若干の違和を覚えずには居られなかったが、追求する程の強さはなく、「そうですか。」と云う実に単調な返答に収まった。して、彼女の疑念の声が耳を揺らせば自身の失言に気が付くも、どうやら其の侭流れて行きそうな空気を察して、)そういう訳でもないんですが。(と、濁すに留め、僅かな苦笑を交えれば了となるだろうか、彼女次第ではあるけれど。)…俺は覚えていないですけど、徳永さんは俺の醜態を覚えていらっしゃるでしょう?…誰にも言わないで貰えますか?(すっと立てた人差し指を唇前に持って来れば首を傾げてダメ押しを。傲慢な自己保身が滲むこの”お願い”は相手に対して失礼極まりなく。真意はどうであれ、先の話すらもこの為の振りに取られても致し方無かった。)そうでしょうか。…?(苦笑地味た笑みと共に問い返そうとするも、奇妙な沈黙に再び首を傾け言葉の続きを待つ。そのまま荷を受け取れば、彼女の動きを目で追い、ハンカチが頬に添えられれば其の身を小さく震わせて。そうしてそこで、沈黙を彼女が破ったのならば)…そう、見えますか?(笑みは携え消えぬ侭、放つ問は事実確認以上の物ではなかった。とは云え、当人が此処で驚愕した様子も、狼狽した様子も見せないところから、其れは既に肯定と取られても致し方ない。そうして、2拍程度の間の後、)…していない、訳ではないのですが。そうですね、どうにも記憶がないせいか、大変申し訳ないのですが罪悪感が薄い事は確かです。(自然と首を擡げ素直に吐露する姿は、優しい頬の温もりに対して、些か釣り合いの取れぬ物であったろう。―そこで入った通信に視線を上げて、彼女を見遣りつつ)…行きましょうか、諸悪の根源を倒しに。(と、扉を指差すのだ。) | |||||
そうね、…何処でも誰にでも通用する基礎みたいなものだから。 | |||||
…私は少し怖いわ。知らない自分に、気が付くなんて。(実の無い遣り取りへ終止符を齎す声音は平坦に事実だけを物語る。故に胸中に宿った思いを吐露せど、絡める眼差しに混ぜる問は結局音には成らずじまい。薄れた表情を取り戻さんと視線を伏せるも束の間。声に導かれ押し上げた筈の瞼は然し、細やかな瞬きを繰り返す事と相成った。何せ深読みする程、真意の見えぬ言葉と何処とない幼さと愛らしささえ滲む其の仕草。思わず露になった驚き滲む表情を反射的に片手で隠す事暫し。長々とした思考の果て、とうとう先程から居座り続けていた靄を細い呼気に乗せて吐き出したならそっと肩の力を抜いて、)こういう時はね、徳永さんだけの秘密にして下さいって言うのよ、正直者のお兄さん。…ほんの少し、言葉を弄すだけで人の気持ちは良くも悪くも簡単に変化するんだから。(諭すでもなく綴る調子に業とらしく滲ませる悪戯心。とは言え生来の気質故か子ども染みた雰囲気は長持ちせず掻き消えて。代わって浮かぶ表情と言えば平生にも増して莞爾とした微笑みに相違無く、)…加賀美君の醜態なんて見た覚えはないけれど、大切な思い出には鍵を掛けてしまいましょう。…誰にも見られないように、ね。(彼の願いと此処での記憶を無条件に享受しては、異論はないかと傾げる首。微か震えを来した様子に一度動きを止め「失礼、」と呟いたきり口を紡ぐも、向けられた問には躊躇いがちに同意を示し、現状分析にも似た声にそっと首を横に振り)謝罪が欲しかった訳じゃないの。ただ、…知らないきみの姿に興味があっただけ。(判然とせぬ答に自然、今度は此方が謝罪を添えて。変わらぬ色彩を抱く双眸はアンバランスな彼を静かに見据えていた。)最上階、ね。…氷の彫像を作るには少し季節が早いかしら。(弧を描く口許の穏やかさこそ変わらずとも、物騒な言い草は丁寧ながら淡々と。少々乱れた黒髪を慣れた手付きでハーフアップに纏め直す最中、首筋を辿る両の手は宛ら此の一室での出来事を拭い去るように。傘を手にすれば迷い無き足取りは扉へと一直線。「準備は良い?」なんて振り向きざまに彼の様子を伺った後、先陣切ってヒールを鳴らし影の世界へ飛び込もう。建物の頂に潜む宿敵を真っ直ぐに目指して。) |
(未知なる相部屋の主。その正体は敵か味方か、それとも――) | |||||
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(混濁した意識の中、うっすら開いた瞼から差し込む光が眩しくて、また閉じた)……っ!(違う。自分にはやるべき事があったはずだと体を起こせば、必然的に視界はひらける。飛び込んできた見覚えのない天井、壁、照明――今まで身を委ねていた其処に座り直せば、それが大きなベッドである事に気がついた。比較的長身の当真でも余りあるそれは明らかに複数人用のサイズ。内装の雰囲気といい、誰かの私室というよりはホテルのような場所の一室なのだろう。そう、ホテル)…ホテル…?……そういえば、俺は…(段々と記憶が鮮明になる。今日は6月8日、確か街に出たという大型シャドウを追って現場に突入し、――ダメだ。やはりそれ以上の記憶がない。これもシャドウの仕業だろうか、未だにぼんやりとする頭を抱えながらもなんとか意識を集中させると、どこからか水音がした。水滴の落ちる音にしては大きすぎる流水音は、部屋の内部に設置されたシャワールームらしき場所から漏れており)…誰か、居るのか…?(声をかけたが、呟くようなそれが届くはずもない。メンバーの誰かであればと願うと同時に、そうだとすると何故こんなときにシャワーを?という疑問がついてまわり、結局嫌な予感を拭えないまま気配の動きを探ることしか出来ず)――…止まった…?(そして急に訪れた静寂に緊張は高まり、水音を有する一角から視線が外せなくなる。確実に誰か、もしくは、何か、居る。そう判断したなら、そっとホルスターに手を伸ばし、出てきた相手次第では先手を取れるようにと召喚器を構え――) | |||||
回転ベッドって、なんのためにあるんだろうな。 | |||||
(夢の中にいるような、或いは現実との境界でまどろんでいるような。そんな不思議な心地だった。頭を打つ水は冷たく、けれども意識が覚醒するには至らない。なぜ自分が此処に居るのか、なぜ朧げな意識ながらシャワーを浴びているのだろうか。様々な疑問が浮いては消えて行き、水を止めた後、やがて頭に何者かの言葉が過れば――もうそこには疑問が残らなかった。――ぽたぽたと髪から滴る水には目もくれず、腰に巻きつけたタオルだけが薄い体を覆う。まるで寝ぼけているかのように、焦点のうまく合わない瞳はシャワールームの出口を探して、そうして視界にひとつの存在を認めた。ホルスターを構えるそれへ向かってゆっくりと足は進んでゆく。滴る雫は床を濡らし、男の辿った跡を明確に残しながら。そうして辿り着いた彼女に、――では、なく。その彼女が腰掛けるベッドへ向けて、倒れ込むように飛び込んだ。)……ねむい…。(ぼすん。大の男が飛び込むことでベッドは軋み、掠れた声がぽつりと溢れる。ふと今気が付いたかのように彼女へと眠たげな瞳を向ければ、柔らかに笑みをひとつ浮かべて。)――ね、(甘えるような呼び掛けと共に、ゆっくりと手を伸ばす。それが彼女の腕を掴むことが出来たのなら、)こっち。……おいで、(穏やかな口調とは裏腹に、力強く引き寄せる事だろう。尤も、強く振り払われてしまえばその腕は容易に解ける事だ。) | |||||
……三半規管を狂わせるんじゃないか?理由は……知るか。 | |||||
(水音が止み、扉越しの気配が近づいた。来る!反射的に引き金にかけた指が強張り、唇はもう一人の自分の名を呼ぶ準備をした。当真の嫌な予感はよく当たる。だからこそ、出てきた巨大な影の全貌を認めた瞬間、それが見覚えのある少年の姿だった事による安堵と半裸の濡れ姿だった事による衝撃に)…こ、だ…ま…?(誰に問うたわけでもなく、認知したものの名が間の抜けた声と共にこぼれ落ちた。だが彼が本物である確証はなく、構えた召喚器をそのままに鋭い視線を注ぎ続けた誰にでも出来るアナライズの結果、風呂上りらしき彼の装備は腰に巻かれたタオル一枚。防御力は低そうだ)…って、お、おい…(しかし初見の分析結果は直ぐに撤回されることとなる。限りなく無に等しい防御力はかえって未知なる攻撃力を秘めており、其処から上下に伸びる肢体の白さに鼓動が早くなる。無防備な布の裾が彼の歩きに合わせて揺れ、半裸の状態ではチラリズムも何もあったものじゃなかったが、)と、とりあえず服を…(何か見てはいけないものを見ているような気になれば目を背けたい衝動に駆られ、その目元、健康的な肌色を僅かに朱に染め)…ま、待て!その姿で寄るなっ…(なんて召喚器を構えたままの必死な呼びかけも虚しく、もはや大型シャドウに並ぶ、否それ以上の脅威を感じて思わず目を瞑ったそのとき、どん、と、その身を襲った衝撃は想像とは違い)……?(ベッドが沈む。バランスを崩す。召喚器が宙に浮く。慌てて目を開く。バランスを取る。咄嗟に彼を見る。此方の存在を認めた双眸が弧を描く)――…は?……え、…なっ…!?(一瞬の出来事がスローモーションの如く展開され、直後、甘い声色が鈍い思考の隙間に入り込む。そして彼があまりに柔らかく微笑むものだから、視覚からは想像もつかない痛みを腕に覚えた時にはもう遅く、気を抜いた一瞬を突かれた当真の体はいとも容易く彼の元へと――)……な、…ななっ…(そうしてベッドの上、色気の欠片もないジャージに包まれた丸みも凹凸も少ない体を強ばらせたまま、何故の「な」を繰り返すばかりの当真は滑稽な程わかりやすく動揺していた) | |||||
……そんなに高速でまわるの?寝るなら普通のベッドだな。 | |||||
(未だに意識は霞掛かり、現状を把握するまともな理性など存在してはいなかった。慌てふためく彼女は十分にか弱い“女”に見えたし、その初々しい反応にも心は擽られていく。頭の先が求める快楽には未だ至らずとも、柔く緩んだその表情は変わらなかった。――意外にも抵抗が見られぬままベッドの上へおさまった彼女は、それでもこれらの行為に賛同している訳ではなさそうだけれど、相手の意思など知らぬもの。ふわりと抱き締めるように両手ですっぽり彼女を覆い、そのまま胸元へと引き寄せる行為はまるで抱き枕に対する扱いと変わらない。それでも不意にくすくすと笑みの混じった吐息を漏らして、その柔らかな髪をそっと撫ぜれば、近い距離感ゆえに囁きは耳元へ落ちる事だ。)……かわいい。大丈夫だよ。(低く掠れた声は、慈しむような重みを孕む。強張った体の緊張を溶かすように耳の頭に触れるだけの短い口付けを落として、僅かに響かせたリップ音は確かに彼女の鼓膜を揺らしただろう。――それが彼女にどのような感情を抱かせるかは知らないけれど、甘えるように背を抱いた腕に少しの力が入り、そのやわらかな肢体に触れようとする欲望は確かに男の持つそれだった。)ね、 ふれてもいい?(笑みを深め、懇願するように漏れる甘い吐息。細長い指が彼女の頬をそうっとなぞる。逃がさんとばかり腕には未だに多少の力がこもるけれど、痛みの生じるほど強引なものでは無いのは飽くまでも許しを乞うような意識が残っているからやもしれない。若しくはそれほど大きな抵抗を見せぬ彼女の様子に油断している証拠でもあろうか。現実との境目は未だに掴めない。夢はまだ、覚めないでいた。) | |||||
だから知るか。………俺だって普通のがいい。 | |||||
(硬直。当真の現状を的確に表す言葉は緊張よりもそれが相応しい。唯一動きを見せるのは彼を見つめる瞳のみ。動揺で大きく揺れる其処に映るは自分よりもずっと白くて綺麗な、濡れた素肌。少し視線を上げると視界いっぱいに広がる児玉秀斗。の顔。初めて間近で見る彼の端正な顔立ち、長い睫毛、伸びた鼻筋、薄い唇、――きれいだ、と抱いた感想は実に場違いなもので、混乱した頭が生み出した戯言に、って違う。馬鹿か。そうじゃない。なんて呑気なセルフ脳内突っ込みを入れていられたのも束の間、腕ばかりではなく体ごと彼に引き寄せられてしまえば、二人の距離はゼロになる。そして大きな体に包まれ、短い髪を掠める彼の手のひら、頭上から降る低い声、耳元に触れる吐息、加えて頬に感じる熱は気のせいか、もしくは直に伝わる彼の体温に違いない。――とでも思わなければ、全てに頭がおかしくなりそうだった)…だ、だいじょうぶじゃ(不意に柔らかな感触が耳を伝って脳を揺さぶり、「ない。」と、続けるはずだった声が途中で小さな悲鳴に変わる。軽い笑声を含んだ彼の息が当真を取り巻く空気を揺らす。頭の中が揺れる。くらくらする)……っ。(近い。近い。近すぎる。ああくそ、と悪態をつくも、頬を辿る慣れない感触が気持ち悪くて、唇からは声にならない音が漏れる。――いったいどういう事だ。普段からぼんやりとした様子の彼だが、流石に異変を感じざるをえなかった。もし彼が相当な節操なしで食えるものは何でも食べるというタチでもない限り、自分が襲われているという現状は非現実的だ。おかしい。つまりこれは現実じゃない――?いっそ自分の見ている夢ではないか、と希望的観測に陥る段階まで来てとりあえず口にしたのは)…やめ、ろ。…言うことをきけ。(拒絶の言葉。本当なら今すぐ彼の股間を蹴り上げてでも引き剥がしたい衝動に駆られていたが、感情的な姿は恥という気持ちが当真を押し止め、なんとか二人の顔の間に壁の如く手を差し込めば、それ以上彼の瞳に自分の顔を映さぬようにと) | |||||
あ、ちなみにおれはお布団もすき。そっちはどっち派? | |||||
(腕の中で大人しくしている彼女は、さて普段からこうも従順であったろうか。曖昧な記憶はすぐに霞んで消えてゆき、物事をうまく考えられぬ今の頭ではその存在は紛れも無く、自身からは遠く異なる女性というものだった。男を強く跳ね除ける気迫など欠片も感じられない弱々しさは変わらず愛らしく映り、益々抱えた欲を増長させる要因にもなると言うのに。布を隔てているとは言え密着した体から伝わる体温も心地が良く、それを手放したくないと子供のような独占欲さえ生まれていた。――耳に小さな口付けを落とした後、上がった悲鳴にはくつくつと満足気に喉を鳴らして。「キスはだめなの?」いたずらな問い掛けは実に楽しげな口振りで、優しい声色をしながらもからかうような色が交じる。こんなにも至近距離に居ながら明確な拒絶を示さぬあたり、それは受け入れてくれたも同然だと解釈しても可笑しい事では無いだろう。互いの吐息すら感じながら、一方的と言えどもその触れ合いは続く。けれども頬へと触れた指が唇を伝ったその刹那、――口先のみで紡がれた拒絶の言葉に、ぴたりと男の動きが止まった。)――……。……なんで?(純粋な疑問だった。気怠げな瞳が小さな驚きを湛えるように幾度か瞬きを繰り返して、思考を働かせるけれど。やはりそれはろくに機能しなかった。不意に視界を隔てる小さな手が現れては、それを蝕むように、縋るように指を絡め取る。なぜ。どうして。“なんで?”――ふと、自らが問うたそれが脳裏にすとんと落ちた。触れる肌は心地が良い。絡めた指も温かい。けれども、途端にすべてがわからなくなった。)……あ、れ。(ぼろぼろと何かが剥がれ落ちて行く気配がして、数秒、数十秒と男に沈黙が続く。次第に戻り始めた意識は、それでもすべてを理解出来るほどに鮮明なものではなくて。きゅ、と絡めたままの指に力を込める。恋人繋ぎにも似たそれは、他人同士がするにはあまりに可笑しなもので。ただ夢かどうかを確かめるような行動だった。)……。ここ、どこ?(――長い沈黙の後。異様なほどに近い距離から不思議そうに放つ問い掛けこそ、男にとって一番肝心なものであった。) | |||||
…強いて言えばベッドか。けどまあ、布団も嫌いじゃない。 | |||||
……なんで、って…(やっとの思いで口にした拒絶、それはひどく純粋な響きを含んだ疑問で一蹴された。理由など「嫌だから」以外にないだろうと再び言葉をかけようとするも、その前に彼の変化に気がつき、――想いが通じたのだろうか?此方を映しているのかいないのか、虚ろな瞳が瞬いたかと思えば、壁にした指先に彼のそれが絡まり、)……?…(行為そのものはそう変わらずとも、先程までと明らかに違うのは彼の視線や口調から甘ったるさが消えたことだ。当真を辱めたそれが影を潜め、感覚を確かめるように指と指が触れ合ってのち、彼が口にした問いを耳にすれば)――………あ、のなあ…!(散々あんな事をしておいてそれかと張りかけた声、それも途中で大仰なため息に変えたなら、ひとまず絡まった指を振りほどき、寝転ぶ彼をそのままに一人起きて座り直す。自分が冷静になる為だ。そして沈黙。沈黙を経て)…此処はホテルだ。(端的に告げるは彼の質問への答え。どうやら彼も意識を奪われていたのだろう、当真も襲われたあの意識が混濁する感覚を思い出せば、彼も被害者に違いなかった。仕方のないことだった。済んだことだった。と、納得して全てを水に流そうとはしたものの、いざ眼下の彼の姿を目にすると、先程の醜態が脳裏に蘇り顔が熱くなる)……。(死にたい、とは思わなかったが、消えたい、とは思った。そしてそっと後退り、彼との距離を取れば、傍にあった大きな枕を抱えて)…と、りあえず、寄るな。服を着ろ。(同性から見れば傷だらけの大きな手のひらも、彼から見れば小さくささやかな抵抗だったのだと思い出した結果が枕のバリケード。当真得意のすまし顔は割と崩れやすく、やはり顔を隠すように目の前に立てたそれに顔を埋めれば、しばらくは彼の様子を気配にて伺うのだろう) | |||||
疲れてるときにお布団見たら、誘惑されてる気持ちになるよなあ。 | |||||
(握り締めることで確かに感じた指の感覚は現実に違いなかった。ここが何処だか分からなければ、つい先程まで何をしていたかも認識することが難しい。ただ、呆れたように大きな溜息を零す彼女の様子から、自身が“何か”をしていた事は明確であるようで――瞬く間に失ったもうひとつの体温、空っぽの指に違和感を覚えるのはそれだけ長く掴んでいたためだろうか。)ホテル。…………、ああ。(予想外の答えを反芻するように呟きを落として、何気なく部屋の内装を見渡せば。成程、彼女の言う通り此処は確かにホテルらしい。くあり、緊張感の欠けた大きな欠伸をすれば寝起きのような倦怠感に抗いもせず、もう片方の枕を引き寄せぼふりと顔を埋める。ベッドに沈んだままの体は次第に眠気を覚え始め、数秒と経たないうちにうとうとと微睡み始めてゆく。恐らく彼女の言葉がなければそのまま眠りこけていた事だろう。)……ふく?……あ、ほんとだ。露出狂みたいになってるな。――あれ、(ゆっくりと顔を持ち上げて、不可解なことを告げる彼女の表情を覗こうとするけれど、枕によって隠された為にそれを見ることは叶わなかった。されども言われた通りに自身の体を見渡せば、“ホテル”の用途に違わぬ半裸体を晒していたものだから。僅かに過った予感がそのまま彼女の体を不躾に見つめ、それがジャージに覆われているのを確認することで一先ず安心――して、良いものなのか。よく分からなかった。おもむろに上体を起こしてしっかりと彼女へ向き合えば、言葉を選ぶように少し首を傾げて。)うーんと。乱暴されたりした?責任、とるべき?(思惟を巡らせた割にはあまりに率直な言葉だけれど、一先ずは現状を整理するべく疑問を放つ。それは内容に反してあまりに軽い響きだけれど、呑気に着替える前に確かめなければならぬと思ったから。) | |||||
…疲れてるときに限らず、あんたは何時もそんな感じがするけど。 | |||||
(居場所を確かめるように室内を見回す姿に既視感を覚えたなら、やはり“何か”から目覚めたらしい彼は全ての記憶を失っていたようだ。しかし、その先の行動は当真と違って実に緊張感に欠けるもので、非常に自然な流れで眠りに落ちようというのだから、その時と場所を選ばぬ平常心には賛辞を贈りたいほどだった。が、生憎余裕をなくした当真が彼にかけた言葉は切実な願いであって、)みたい、じゃなくてそうだろ…。(枕に音を吸い込まれくぐもった声は何時になく弱々しく、脳裏に焼き付いて離れない白い肌を打ち消すように何か別のものを想像しようとする。――白。しろ。米。ご飯。そうだ、明日の夕食のおかずは何にしよう)…たしか、この間買ってきたサバが……(鯖。青魚。DHA――。早く服を着てくれと願いながら続ける無意味な連想ゲーム。幸い先程の記憶は無いようだから、当真さえ何事もなかったかのように振る舞えば万事解決。と思った矢先、彼の気配が動きを見せた。はじめは脱ぎ捨てた服を求めに行くのだろうと思ったが、気配が離れるどころか此方に向いていることに気がつけば本日二度目の嫌な予感がした。寝ると食べる以外に欲求など無さそうな彼も年頃の少年、この状況下から連想するものが無かったはずもなく、率直な疑問が投下される)……。(ぎゅ、と枕に指先が強くめり込んだ。思い出す先刻の情景、何か乱暴されたかと言えば、)…なにも。(枕を少し離して、一言。実際問題、当真が騒ぐほどの事が起きたかと言えば答えはNO。昔近所で飼われていた大型犬にだってあれくらいの事はされたと無理やり納得すれば、また枕に顔を埋める前にもう少しだけ)何も責任感じなくていいから、服を着ろ。…風邪ひくぞ。(淡々と紡ぐ。出来る限り平静を装った声。それは感情を隠すことに慣れた平生の当真のものに近づきつつある。ただし、枕はまだ手放せない。彼から離れてもなお熱い頬を隠す方法を、この時は他に知らなかったから) | |||||
あ。わかる?あの誘惑にはあらがえないでしょ。 | |||||
(露出狂。自らが発した言葉とは言え、弱々しくもしっかりと同意されてしまえばうーんと困ったように思考する。こうなった経緯をはっきりと思い出せない以上は一先ず謝罪する他ないだろうし、故意ではないにしろセクハラと言われても仕方のない行動に走っていた現状をどう受け入れたら良いものか。幸いにも己を非難する彼女の態度は冷静でそう危機感を抱くことも無かったが、それがこの男に対しては逆にいけなかった。「サバ?ご飯によく合うよね」――彼女から零れた独り言に対して呑気な返答が出来る程には、焦燥感もまるで生まれなかったからだ。広いベッドの上で向かい合い、この年頃にしては些か重い話を繰り広げても、二人の空気はさほど変わらなかったように思う。薄緑の双眸で枕に縋る頼りない指先がそれを強く押し付けるのをぼんやりと眺めながら、紡がれた一言は何もかもを抑えたようなそれだった。その反応を見れば、少なからず何かがあったことは明白で、それでも彼女はそれを言い出さない。余程思い出したくない事なのか、はたまた口に出すまでもない些細な事だったのか。煙のようにすり抜けていったその答えを追求するでもなくその状態を保っていれば、続いた言葉は彼女なりの気遣いだろうか。)……うん。待ってて、すぐ戻るから。(待つ義理など彼女には無いやもしれないが、大方の記憶がはっきりとしない児玉にとって、この場で一人残されてしまえば帰り道も散策せずにベッドの上で眠りこけるのみで終わりそうだったもので。やわく笑んだ後にようやく立ち上がれば、濡れた足跡を辿るようにシャワールームの所へと戻り――そうして服装を整えれば、普段通りの児玉に戻っていた事だろう。その間に先ほどまでの行動がぽんぽんと少しずつ記憶に戻りもしたが、なにもないと告げた彼女の言葉に沿ってそれを口に出すのはやめた。戻って早々当然のようにベッドの上に腰掛けた後に、さて生まれた次なる問い掛けは。)それでさ。なんでここに居るんだっけ?(本来の目的などすっかり抜け落ちたものだった。) | |||||
わからないでもないけど……俺は我慢は苦手じゃない。 | |||||
(何か嫌な目に遭った時は、それ以上に最悪な場合を想像してみる。例えば、もし相手が他の寮のメンバーだったら?――夜長、最悪。上広、最悪。利川、最悪。赤萩、最悪。加賀美、最悪。玖珂、最悪。――其処に彼の名を連ねてみてもやはり“最悪”の二文字が続くのだけれど、己を慰める為にも彼の評価を「比較的マシ」で上書きすれば、自己暗示は完璧だ。幸い、彼にとってベッドの上という状況は興奮を煽るものではなく微睡みへと誘うもの。これ以上何かされる心配もないのだからと記憶を失くした彼を責め立てる事もせず、質の悪い夢だったと一人この事件の幕を引くことにした)…ああ。(そして残された言葉通り、大人しくその場で彼の帰りを待ってやる)……っ。(否、待つしかなかった。大型シャドウめがけて先陣を切ることも厭わない当真が珍しく“怖い”という感情を抱いたのは、この建物全体が有する扇情的な色の所為だろう。タルタロスを単独探索するよりもこの未知なる空間に一人放り出される方がよほど恐ろしかった。――それから数分と立たずして、彼が戻ってきたことを再び沈んだベッドから察し、)…ん?ああ…(鶏の如くシャワールームに行くやいなや目的を忘れでもしない限り、掲げた枕の向こう側の彼は服を着ているはず。ようやく焦りや戸惑いが薄れてきた当真自身に対する安堵も相まって、少しばかり緩んだ口元からは問いに対する答えがすんなりと)大型シャドウの討伐だ。このラ…建物から反応が出たって桐条が言ってたろ。……って、まさか、寮を出る以前の記憶すらないのか?(ごく普通に受け答えをしてからふと、当真は出撃直後からの記憶が無かったが、はて、彼の記憶はどこから奪われたのだろうと疑問に思った。彼が記憶を徐々に取り戻している事など露知らず、何から説明してやるべきかと頭を悩ませる傍ら、その反応を窺うべく自然に下ろした枕。然程長い時間ではなかったものの、暫くぶりの広い視界にぱちぱちと目を瞬かせたのち、色づいた照明の下、平時の彼の姿を認めたなら小さく胸を撫で下ろした) | |||||
おれは我慢、苦手だな。でも眠気に抗いながらまどろむのは好き。 | |||||
(戻りつつある記憶を辿れば自身が何者かに操られていたとは想像に易いが、それが広いベッドを前にして睡眠欲求を抑えられる程のものだったとはなかなかに恐ろしい。今でこそ彼女へ投げた問いの答えを聞こうとその意識が沈むことは無いが、寮へ帰宅すれば真っ先にベッドに縺れ込み数秒と経たない内に眠りこけているだろう。元々眠気に抗うような性質では無いのだ、それを自らの意思ではないものに曲げられるとは――少しだけ、恐怖心と不快感とが頭を出した。)大型シャドウ?……言ってたかもしれないけど、聞いてないかも。とりあえずみんなについて来た感じだから。(その場の雰囲気に身を投じるように、責任感など欠片も持たぬ行動など児玉にとっては日常茶飯事だ。寮を出る以前の記憶、と言っても比較的変わらぬ日常のどこからどこを思い出せば良いのか検討もつかず、「うーん。……ああでも、ラブホを見た覚えはあるかな。」ここでしょ?だなんて間の抜けた声が続いた。しかしその外装を見た後の記憶はすっかりと抜け落ちているようで、次に繋がるのは先ほど彼女を襲った瞬間である。枕を下ろし通常通りの彼女の表情が視界に入った後、ふと脳裏にとある想像が過った。あ、と漏れた小さな声は果たして彼女の鼓膜を震わせただろうか。普段通りの眠たげな眼を彼女へと向けるや否や、緩慢に唇を開いて。)もしかしてだけどさ。他のみんなも、…………。(同じように操られ、別室でどうにかなっているのではないかと。前例がある以上あまりに想像の出来る展開を途中まで口にし、不意に言葉を噤んだのは先ほどの件を水に流そうとしてくれた彼女の気遣いを思い出したからこそ。とは言え今や彼女へ手を出した一連の流れはすっかり記憶として児玉の中に戻って来ており、聡い彼女であればぶつ切れた言葉からも児玉の言いたかった事が伝わるような気がしてならない。――そういえば。)ごめん。(今更だろうけれど、結局告げていなかった謝罪を改めてぽつりと零した。) | |||||
……それでなんとかなってるなら、あんたは幸せなんだろうな。 | |||||
聞いてないかも、って…………ったく…(こうも清々しく言い切られてしまえば呆れ顔に終始する他なく、結局それが彼の常であるのだと察知し呑み込んだ続きの言葉は、彼の場合は失くす記憶すらなかったのだという答えに帰着して嘆息に変わる。そして敵の本拠地にて先刻まで操られていた者とは思えないほどの落ち着き様、世間話の如く緩やかに紡がれる言葉の中に、敢えて言い直してまで避けた直接的な表現が織り込まれれば、う、と一瞬言葉に詰まった後、最低限の「ああ。」がイエスと返事を成した)……どうした?(それから不意に聞こえた小さな発見を伝える声にぴくりと眉を動かし、何か危険でも察知したのかと思わず体にまで緊張を齎したその続きを静かに待てば、逆に一切の緊張を持たぬ蕩けたミント色が二つ、此方に向けられてのち)…みんなも…?………――…っ…まさか、(最初こそ何を意図したか分からぬ言葉の続きをごく自然に想像し、想像出来てしまえば、今度は此方が口を噤んだ。彼にとっては失った記憶、曖昧な過去となったはずの其れが万が一蘇ったとして、当真が沈黙を保てば彼はまた眠りの中で意識と共に簡単に手放すものと思っていたものだから、改めて形を成した謝罪には失礼ながら些か驚きが優った表情で沈黙を続け、)…………ん。(音になったかならぬかという程度の肯定を軽い頷きに合わせて示すのが精一杯だった。そもそも当真が口を閉ざすのは情けなくも醜態を晒した自らへの羞恥心が大きな理由。だから明確な彼への怒りと名のつくものは存在しなかったのだけれど、本心全て口にするような質でもなければ、徐にベッドから立ち上がり、近くのクローゼットの中から何やら白いものを引っ張り出して)…ほら。(彼の顔目がけて投げやれば、彼が避けぬ限りは当真の分らしきバスタオルが一枚、彼に覆いかぶさるに違いない。そして、体と違って随分と水気を含んだままの、普段はもっと柔らかな彼の髪を顎で示し、)…拭けよ。(と呟けば、これが今の当真にできる「怒ってない。」の最大限) | |||||
うん。……うん?あー。でも、あんまり満たされない感じはするかな。 | |||||
(どこまでも他人行儀な意識は長年の癖によりそう簡単に治るものでもなく、呆れ顔を呈しながらもそれを受け入れたらしい彼女の様子を見れば改めようとの気が起こる筈も無かった。とは言え此処が見覚えのある場所で合っているかは短い返事によって確信を得られたし、本来の目的も先ほど耳にした以上必要な情報はこれで大方揃っていよう。脳裏に浮かんだ予感はあくまでもその可能性があるという程度の悪い想像に過ぎないのだから、言いたい事さえ伝わればそれ以上に必要は無い。それよりも、多少無神経の色も交じるであろう遅れた謝罪に対する反応のほうが男にとっては重大であった。けれど。)…………。(存外にあっさりとした返答と、それに重なる頷き。前向きに捉えれば許しの合図にも思えるけれども、女心を熟知している訳でもない児玉にとってはその解釈が難しかった。やがておもむろに動き出した彼女が掴み、こちらへ投げたのは――白い、)……タオル?(ばさりと被さった覚えのある感覚に緩く疑問を口に出しつつ、その動向を観察していた双眸がじっと彼女を見据える。続いた気遣いの言葉にやや瞠目するも、それは小さな笑みとなって表情を和らげた。)ありがと。やさしーね。(素直な感想を告げながらタオルに手を添えれば、普段通りの手つきで以ってわしゃわしゃと髪の水気を拭き取ることだ。しかし半乾き程度でその行動を止めるのもいつも通りであって、少し経てば満足したかのようにタオルを首元へと落として。――恐らく許してくれたのだと、推測ではあるがそう解釈した上で改めて口にするのは先ほど消えた話題のこと。)――さっきの続きだけどさ。もしみんながああなってたとしても、こんな感じで解決してそうだよね。シャドウ相手に戦える女の子なら、男も同じように成敗できそうだなって。(随分楽観的な思考だけれど、そこまで危機感を覚えないのは児玉が襲う立場にあったからだろうか。やはり無神経に響くやもしれないが、それが素直な感想だった。) | |||||
何事も慣れれば物足りなくなるからな。得ることだけが満足じゃないんだろ。 | |||||
(白い布地越しに垣間見えた彼の驚きに染まった瞳。それから、ありがとう。当真には真似できない素直な感情表現には含羞の色を頬に浮かべ)…これからシャドウ倒すってのに、風邪ひかれたら困るだろ。(出来た建前を並べてふいと視線を逸らせば、彼の手が頭から落ちる頃には二人の周囲から波紋は消える。が、一度静まった水面も新たな投石に揺らぎ)そうだな。弱点を突けば倒れるのはシャドウも男も変わらない。……解決と呼べるのかは…微妙だけど。(自分と同じ状況下に置かれたであろう彼女たちを想い何事もなければと願ってしまうのはこの時ばかりは同じ立場、女としての感想だった。しかし、逆の立場で物を語る配慮の欠けた彼に向ける批難の目はなく、急所を突かれた少年たちの悲惨な姿も想像したくはないとばかりに苦笑ともつかない表情で独り言ち)…それより、問題はこれからどうするかって事だ。無闇に動き回るのも得策じゃない…けど、このまま喋ってても埒が明かない。(失くした記憶を手繰るよりも、想像の範疇を超えない仲間の安否を考えるよりも、今は前を見据えるべきだった。そして、閉じたクローゼットを背にもたれ掛かり、思案の中でふと思い出したのは我々の司令塔たる少女の事。「そうだ、」と漏らした直後、張り上げた声で紡ぐは)桐条!(――すると、僅かながら通信が繋がった感触。「桐条!おい、聞こえているのか!桐条!」それから何度か響いた当真の声を突然遮ったのは、桐条美鶴、彼女の声だった)――…わかった。最上階、一番大きなフロア、だな?…此処には俺と児玉の二人だけだ。他の奴らも暫くすれば通信が繋がると思うけど……ああ、頼む。(得た情報はまさしく求めていた指針。他のメンバーとの連携は彼女に任せることにして、ベッドの上に視線を投げつつご丁寧に入口に立てかけてあった武器を手に取れば)聞いたろ。上だ。…行くぞ。(廊下にシャドウが待機していないとも限らないこの状況、彼の準備を急かすように扉に手をかけた。流石の彼もここで二度寝を決め込むほど無神経ではなかろうが、万一そのような事があれば今度こそ痛みを伴う目覚めを齎されること間違いなし。――当真の瞳は今、何時になくシャドウ討伐に対する気勢で燃えていた) | |||||
……かっこいいこと言うね。なっとく。座布団二枚。 | |||||
(ふとした拍子に頭から抜け落ちてはいるけれど、今回の目的はあくまで大型シャドウの討伐。それを思い出させてくれた彼女の言葉は、同時に児玉を共に戦う“仲間”として認識してくれているようなそれで――彼女の親切心とは別の部分で、少し面食らったような気持ちになる。それもそうだな、なんて気の抜けた返事を下すことも出来ずに数秒間たっぷり悩んだ後、「困るんだ?」と投じた変化球は僅かに混乱した頭からよく分からぬうちに放ったものだった。とは言え時間が経てば混乱もすぐ収まり普段と変わらぬ思考へ戻る事だろう。)……弱点を突けば。(――幾つかの解釈が出来るその言葉を反芻し、彼女の言葉のみで正気に戻れた自身は幸運だったと、そっと思った。弱点とまでは行かなくとも、鋭い悲鳴や平手打ちによって意識が覚める場合もあるやもしれないし、たとえ力で押さえ付ける事は可能であっても根本的に女性の方が強いものだと、勝手な認識は進んで行く。さて現状打破に向けて動き始めた彼女の様子を見守りつつ、通信で交わされる言葉は一通り頭へ入れながら首にかかったタオルをベッドへ落とそうか。大型シャドウの行方は既に観測されていたようである、これからの行き先を一つに定めればもう迷う必要も無い。急く様子の彼女に「了解」と短く告げて、大きな伸びをひとつした後にあっさりとベッドから立ち上がれば、同じく入り口にある武器へと手を伸ばした。)とりあえず、上に着くまでは温存して行こっか。回復要員もいないしね。(最上階へ着くまでに果たして何が起こるかはわからないのだと自らにも言い聞かせるようにその言葉を告げさえすれば、もう心の準備は整ったも同然である。意識を操られていたとは言えシャドウに対する特別な憎悪感は無く、ただ命じられたがままシャドウの討伐へ向かうように、その瞳に大きな意志など込められてはいないけれど。だからと言って普段と成す事は何も変わりはしない。バトルアックスを掴んだ手は、久し振りのその感覚を確かめるように、強く強く握り締められた。) |
(常時晒した額を隠し、臆病晒してシャワールーム手前に立ち往生。) | |||||
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(体の痙攣が契機となり覚醒の兆しを見せるも刹那、猛烈な倦怠感に襲われ瞼を下ろし、睫毛で幕を引く心中は今なら未だ間に合うとばかり。再びの心地よさに身を浸すべく寝返りで追い打ちまどろみ特有の重たさに意識を沈めゆく中、瞼の裏にちらつく妖しげな色が安寧を阻む。この品位に欠ける蛍光ネオンは何だ。放り出された意識が呼び寄せられる――そうだここは、)ラブホだ…………(己等を照らす眩いネオンに抱いた何のひねりもない感想は、遡ることいくらか前の到着時胸中へ仕舞い込んだ代わり、目覚め際に発されることとなった。身体を起こしどでかいベッドの上でとんび座り、自らの呟きにより完全覚醒を果たした立平はだらんと垂らされた儘だった手を胸元へ移動させ挙動不審に周囲を見回して、一先ず部屋にいずれかの存在なし、服装乱れた形式なし。大丈夫バッチリ着てるオッケーワンナイトラブとか起こってない。といった確認へ急ぎ安堵に大袈裟な溜息吐いたらば、乱れたであろうポンパドールを直すべく頭の天辺へと手をやって、重力に逆らう前髪を手櫛で整えがてら、)かがみかがみ…。てかホントびっくりしたってかこの状況なん……な…………えっ?(鏡を探すべく床へ足をつき、洗面所らしき扉の前へと辿り着いたところで漸く水音へ気が回るも、気付いた直後に止まるとなれば正に思考回路はショート寸前。今すぐ誰にも会いたくない。ヘアピンを右手に、シャワー室前で立ち往生。) | |||||
緊急事態なんだ。一も二もなく飛び込むべきだろう。 | |||||
(水音。──聞き慣れた水音。また無意識の内に手を洗ってしまったのだろうか。けれど感触があるのは両手だけに留まらない。僕は何をしているんだろう。そんな意識も次第に遠のいて、赤萩は、ただ丁寧に丁寧に全身から滴り落ちる水気を拭っていた。靄が掛かったような妙な感覚に包まれながら、それでも動く手足は、慣れた手つきで扉を開け、一つの空間に──否、女性に辿り着いた。裸にバスタオル一枚纏った姿で。彼女との間に、平素は人避けのために装着している眼鏡のレンズは無い。直接交り合わせることを良しとしない瞳が、此度は虚ろな歪みを見せる。)綺麗な瞳だ……。(口元を歪に引き上げて、文字通り"にっこりと"笑う。然し、平素よりも更に悪い顔色に、この異様な相貌に、一体どうして彼女が警戒しないと思えるだろう。──急に真顔へと戻る貌。突拍子もなく右手を伸ばし、強引に彼女の肩を掴めば、素早く位置を把握して彼女を扉の隣の壁に強く押し付けた。互いの距離は、近い。その行動には、貧弱そうに見える躯が持つありったけの力を込めているに違いないけれど、次いで伸ばした左手が彼女の頬に触れようとする行為は、彼女が或る程度力を込めて逃れようとすれば、為されることはないだろう。ただ、もし逃れなければ左手は彼女の髪を──耳元を優しく撫ぜる筈だ。実は果たして、) | |||||
ムリムリ私超絶慎重派だもん…石橋叩いて叩いて叩きまくってから渡る派だし…。 | |||||
(脳を揺さぶる拍動は緊張による産物か逃走本能による警鐘か。覚醒直後こそ己の状況に不安抱いたが横着な状況把握に安寧を獲得していたからこそ、突き落とされた危機的状況への応対は儘ならない。最早答えを求めたとて受容する余地すらない脳髄はどうしようどうすればいいと延々と繰り返し、強張り棒立ちの肢体をそのままに。水音が止まり気の遠くなるような”束の間”を経て開かれる扉の先、位置していたのは。)………あ、赤萩センパイ……?ってうわお!?(己の記憶上常に位置していた眼鏡は無いし、しっとりと濡れた黒髪も目新しく、両目を見開いたのはそれらの新鮮さに起因する。次いで視界に入った姿は制服姿でもなく――制服どころかその場凌ぎに身に纏ったバスタオル一枚は頼りないがゆえあまりに刺激的だ。晒された上半身の色香に反しまるで艶のない悲鳴を小さくあげて、視線はゆるやかに下降路線を辿ったが)え?…やーだもうセンパイったらどうし………ひっ!!(鼓膜を揺らすは先程とは意味が異なるため、幾分かは静まった脈拍と彼の声のふたつ。さりとてそのような科白が彼の口から告げられるとは夢にも思わず、再び彼の相貌へと視線を上昇させたところで、特質な部屋の異様な明るさに照らされた相貌を見た。青白い肌、歪んだ口許と笑いの感じ取れぬ目尻。尋常じゃあない状況に息を呑み緊張した肢体は無へと引き戻された容貌をも見届けて、肩に位置した手を理解した頃には既に背は壁に接していた。眉寄せてはぱくぱくと口を開閉させ音にならぬ声を発しようと試みつつ、耳元に触れた左手が打って変わって優しいものだったから、)ひゃぁっ?!せせせセンパイどうしたんですか……?熱とかあって具合悪いですか……?それともあの、わたし立平なんですけど、その、人違いとかしてません………?(衝動に手から滑り落ちたヘアピンに目もくれず、追って右手で瞬時熱を持った耳元を覆おう。近距離に心臓が耐えられずして顔逸らしがてら発した声は尻すぼみに、) | |||||
君は慎重というよりも馬鹿だ。叩きすぎて渡れなくなるのが一番問題だろう。 | |||||
君の方こそ、どうしたんだ?(口元からするりと滑り落ちた科白は、他の誰でも無い彼女に向けられたものだ。己とこの状況で、この場にいる、彼女に。独特の蛍光灯に照らされた髪は何処までも艶やかで、手を伸ばすのが少し躊躇われたけれど──こうして耳元に手を宛がうことが出来たなら、先の躊躇いが可笑しくてまた歪に笑みを浮かべた。肩を押える力は緩めぬままに彼女の反応を見、その手を頬へ掠めたところで、その明るい声音に応えるように再び口を開こうか。)人違いなんて、するわけないじゃないか、立平。立平奈南。僕が間違える筈、ないだろう。こうして、君とここにいるんだから。(驚きか戸惑いか──如何して彼女がそんな表情をするのか理解は出来なかったが、きっと恥ずかしがっているのだろうと、熱に浮かされた思考は捻じ曲がって行くばかりだ。それがまるで自身の意識であるかのように思えてしまえば、視界に映る彼女の瞳がとても可憐に光ったように見えた。内から湧き上がる衝動に弾かれるようにして、覆われていないほうの耳元へそっと口元を寄せれば、)僕は君に熱を上げているのかもしれないな。そして具合はとても、……"イイ"。(平素よりも落ち着いた、低い声で囁くのだ。縮まった距離は、まるで彼女を自身と壁の間に縫いつけるかの如く、──さて、彼女は如何するだろうか。「構わないか、立平」意思の確認をするような問いかけを囁くも、然し留まることを知らない赤萩の左手は彼女の腰元へ、右手は肩から首元のボタンへと伸びて行く。) | |||||
バカじゃないもん超超慎重派なだけですし!…でも渡れないのはヤバイね。…泳ぎます? | |||||
(動揺色濃い問い掛けに応じる彼の様相には寸分の乱れも見られない。共に特別課外活動部に身を置く立場であれふたりきりで言葉交わした数はそう多くないような間柄だが、彼が質の悪い冗談に興じる性分でないこと位は知っていた。置かれた状況の異と彼の豹変ぶりへの動揺に由来した心音は、どうしてか逸らすことの叶わない瞳が上方で歪んだ目元口許を捉え、より一層先を急ぎ始めた。)で、でっすよね〜…えええと私その、そもそもなんで今ここにいるか分かんないっていうか、その、あは、アハハ……(繰り返される己の名に人違いといった僅かで浅はかな期待は打ち砕かれ、口早に捲し立て下手な空笑いを添えたらば早くも八方塞がりだ。右手で覆った耳殻の熱さ、脳髄をも揺らす心音。こんな時ばかり研ぎ澄まされる感覚は吐息をも感ぜられる気配の近さ、鼓膜を振動させる低い音を余すこと無く拾い上げて、腰元に触れる手、首もとへと伸びる右手を知覚したその時、耳殻から熱の移った右手は彼の頬めがけて、)ぃっ、いぎゃーーー!!??!(尻すぼみした先の声とは比にならない声は悲鳴というより奇声に違いない。確認への返答でもなければ言葉にもなり得なかった音に続き、彼の頬へと向かった平手は如何様にしてその動きを止めたか。奇声に危機を感じて瞬時離れていたらば右腕ごと大きく空を切り、異常過ぎる奇声が彼の身動きを封じたらばばっちーんと耳に障る音が響くだろう。いずれにせよ一定の距離は保たれ場に満ちたであろう沈黙に落とす言葉はひとつ、)………や、やぁ〜だセンパイったらもう、ちょー積極……的……ですね……。(居た堪れなさに急降下した視線は床を這い、未だ心臓は早鐘を打ち続ける。) | |||||
慎重な人間はまず石橋を壊さない……し、泳がない。別の道を模索すべきだ。 | |||||
(こんなに気分が優れていたことが、未だ嘗てあっただろうか。彼女とこの場にいる、それだけで口元は歪に歪に弧を描いていくばかりだ。何故ここにいるか分からない?何を言っているんだ。君は、僕と──。何故かたじろぐ言葉振りもしおらしいと認識する脳は痺れに痺れ、思考は妙な方向に溶けて広がっていく一方である。半ば衝動的に伸ばした手は、とても自然な流れで彼女の首元へと進み、──進んだ所で突如、耳朶に触れた奇声に弾かれた。)いッ………!(同時に耳朶に響く強烈な音。そして、耳の奥にまで走る強烈な痛み。反射的に頬に手を当てれば、じんじんと余韻が響く。──痛い。何するんだ。何で。ゆっくりと瞬きを一つしてから、鋭い目付きで面前の彼女を睨み付ける。平手打ちの衝撃で一二歩後ろに下がったからか、彼女との距離は"平素よりも少し近い"くらいであったけれど、その"平素より"に気付いたのかもう一歩後ずされば、「何す、!」と抗議の声を上げようとした。然し、脳裏の奥で思い起こされる、記憶の無い記憶。ぼやけた視界の奥に見える、彼女の顔。言い淀んだ抗議は結局言葉に成りきらず、赤萩の視線はみるみる左右へ揺れていく。そして。)………………………………ご、(暫しの沈黙を経て、漸く口にした言葉といえば、)誤解だッ!!誓って君に邪な気持ちを抱いているとかそういう訳ではなく、僕は誓って何もしていない自信があ………いや、っこれはシャドウが……!!(積極的と称されたことに加え、この状況に対しての言い訳であった。勿論、慌てる余りに、自身の格好には気付いていないのだが、「……………迷惑を、かけた」羞恥と後悔と納得のいかない心情に塗れたひどく複雑な表情で、謝罪の旨を告げるのだった。) | |||||
てか石橋叩き壊すってヤバイよね…?ナナミパンチじゃムリだなぁ、私か弱いしな〜。 | |||||
(面と面とが衝突したその瞬間、指先から手の甲にかけて痺れがはしる。いち女子高校生に大した破壊力は望めなくとも、反射的に繰り出したが故に手加減のひとつもない平手打ちの威力はその右手に残る麻痺が物語っていた。小気味良く乾いた音に続いた彼の反応をして、立平を襲うは何がヤバイってセンパイのこと殴っちゃったことがヤバイ。思っきしやっちゃったし結構良い音したし痛そうでヤバイ。そりゃ怒るよね目線が以下略。鼓膜を揺らす抗議の一声には共感と申し訳無さとに所以して内心は謝罪の嵐だが、音として発されなかったのは女の小心が過ぎるためだ。罪悪感焦燥感その他諸々の自責の念に駆られ落とした視線はそのままに、保身ともとれる一言への反応は、自身の想定を大きく裏切ったものだから。)ごごごめんなさいマジごめんなさい痛かったですよね私本気で反省してて、何ならセンパイもどうぞデコピン1…2,いや3発くらい………へ?……あ、シャドウ?そなの?(本流の如き一声は一部彼の声に重なって、勢い良く上げた面貌は真剣そのものだ。容赦なしの平手打ちとデコピン数発じゃあどう考えても比にならない持ちかけは仮に受容されれば露出したまま享受するつもりだが、本来の目的であるシャドウとの単語にぴたりとその声を止めよう。眉寄せ唇擦り合わせては記憶を手繰り――確かに今の彼と先程の彼とじゃあ別人のようだと、あの豹変っぷりもシャドウの何らかの攻撃のためと考えれば合点がいった。両掌を合わせ発する声は、)ならしょーがないですよっ。もう過ぎたことはドンマイってことで、思っきし引っ叩いたのもドンマイで忘れてくれるとちょー嬉しいんですけど、あー………センパイはとりあえずその、えーと、着替えたほうが良いよ……(切り替えを目論んだ提案が受容されるか否かは気になるところだが――冷静になったところで失念していたのは、彼があまりにも目に毒な姿であることだ。散々注視しておきながら言い終えるやいなや「わ、私後ろ向いてますし!」と今更過ぎる指摘に加えぐるりと勢い良く回れ右。膝を折り手探った床からピン留めを手にすることができれば、彼を背後に垂れた前髪を持ち上げることで意識の転換を図った。) |
(混沌とした世界から徐々に現実を認識し始め、感じた異変にも呑気に首を傾げて―) | |||||
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(影時間、相変わらず深夜に慣れた真壁の体はこの時間帯に入ってから活発になっている感覚まである。が、連れてこられたのは高校生が入るにはあまりに不健全な場所。外装からしてもホテルの絵にハートマークで表現されそうな場所だった。しかし、作戦開始の合図が出されては引く事も出来ない状況。必要に迫られて仕方がないのだと自らを無理矢理に納得させ、両手一杯の気まずさ抱えながらも足を踏み入れ――それから。記憶が酷く曖昧だ。真壁が次に目を開けた時には、何故か寝起きのようなだるさがあった。瞼を持ち上げ、目を軽く擦りながら、徐々にはっきりと視界に入る見慣れない風景。真っ先に目に入るのは、自分の部屋とは似ても似つかない小奇麗な色の天井。)――んー、んん……?……ふぁあ…ここ、どこ……?(よく分からないが、とにかく自分は寝不足がピークに達したかで眠っていたようだ。十分とは言えないまでも、少しの睡眠を取れたという感覚は存在していた。其の時、明らかな異変にやっと気が付いた。室内にシャワーと思われる水音がするのだ。己一人ならばそんな事は有り得ない、この部屋には自分と他に別の人間が存在する事を示していた。驚きのあまり頭が一気にクリアになるのを感じながら、)……シャワー?…誰か居るのー?(共に部屋に入ったならば、年頃であるし同性のメンバーだろうと勝手に思い込んでいた。けれど、姿を現したのは――) | |||||
こういう場所に初めて来た理由がシャドウ討伐なんて、嫌な思い出になりそうだよ。 | |||||
(朧な世界に落ちるのは水音、意識はゆらゆらと揺蕩う。此処は何処だろう。何をしているんだろう。一つ、一つ、小さな疑問が水面に浮ぶ。然し、其れを掬い上げることは叶わない。細い身体を水が伝い流れると、身体を、下ろされた髪を、ゆっくりと濡らしてゆく。流れ落とされた化粧は、玖珂を少年の顔にした。元々中性的な顔立ちだ。化粧なしでも少女には見えようが、曝け出された平たい胸があれば十分男に見える筈。水が滴り落ちる前髪を掻き上げ乍ら水を止め、手を伸ばした先にあったタオルを腰に巻く。頭に、何かの声がする。快楽へと導くような誘惑だった。言葉に押されるようにシャワールームを出ると、其の先に居たのは見知った少女。)───……真壁さん、(彼女の名前を呼んだ、束の間の出来事。玖珂の掌は彼女の手首を掴んで、もう片方の手で肩を押したなら、半ば強引にベッドへと押し倒した体勢になるだろう。髪を伝い、ぽたり、と落ちた雫がシーツを滲ませる。年頃の男子平均より小さな身体、振り解くことは容易いだろうが───さて、如何なることやら。) | |||||
そんな思い出を持つ人って他に居ないだろうし…ある意味、特別? | |||||
(シャワールームの扉が開閉される音の後、真壁の前に姿を現したのは―素顔だからか平素よりもずっと少年らしく、だけど変わらず愛らしい顔立ちをした少年。共にシャドウ討伐の活動をするなど、よく見知った相手でもあった。)えっ、……玖珂くん…?(彼に視線を向けて―でも、すぐに大袈裟に逸らした。何故なら、彼はタオルを腰に巻いていたが上半身裸だったからだ。見てはいけないものを見てしまったような気分になりながらも足は動かず、凍り付いたように其の場に立ち尽くす。何とも言えない嫌な予感が真壁の全身に走った。ただ唖然としている間に近付いてきた彼に手首を掴まれ、異変を察知した時にはもう手遅れ。咄嗟に距離を取る事も叶わず、其の体はいとも容易くベッドに落ちる。シーツに雫が落ちる音が妙に生々しく現実だと認識させる。)……っ!――…待って、ちょっと、何するの…!どうしたの、…止めてよ…!(混乱と戸惑いが一気に押し寄せて、顔がくしゃりと歪む。この状況を何とかしなければ―そう思うけれど儚げで小柄な体躯の彼を強く振り払う事も躊躇われて、掴まれていない方の手を使い、中途半端な力で押し返そうとする。―可笑しい。明らかに何時もの彼ではない。其れはよく分かる。だが、如何してこんな事になっているのか、何より自分が如何すべきか分からない。ただ、もしかしたら彼に届くかもしれないと淡い期待を抱きながら必死に呼びかけ続けて――) | |||||
そういう特別っていうのも嫌だね、……出来るなら記憶から消し去りたい。 | |||||
(意識が支配される。然し、“支配されている”感覚がない。全てが、玖珂の意思であるかのように流れゆく。まるで自然に彼女をベッドに沈めるように組み敷いて、朧げな濃紺で彼女を見下ろした。少女の言葉と抵抗はご尤も、然し玖珂には届かない。「何って、」 そう言い掛けた唇が弧を描く。手首を掴んだ指を滑らせるように彼女の指と絡めて、肩を押した手は彼女の頬を包むように触れた。“少年”の唇は静かに動き、彼女の眼を見詰めて語るように言葉を落とす。)この状況で何するか分からないほど、真壁さんって鈍感じゃないよね。………それとも、ホントに分からない?(ホテルの一室、男女二人。一方は裸同然で、一方をベッドに押し倒す。其れは単純な話。何を、とは言わずとも、此の年頃で余程鈍感でない限りは予想出来ることだろう。頬をそっと撫で、微笑みかける姿に普段の玖珂は見えない。言葉に導かれた本性の現れか、支配されているだけなのか、其れは誰にも分からないけれど───「ねえ、真壁さん」と言葉を掛ける玖珂の口許に浮かぶは、悪戯っ子のような笑み一つ。)分からないなら、教えてあげようか。知ってる?僕ってさ、───……これでも、男なんだよ。(どれだけ少女のように見えても、少女の装いをしていても。性別は男で、中身だって男。其れは支配がなくとも揺るがない事実である。中途半端な抵抗は避けるのも容易く、玖珂の枷にはならない。「狼には気をつけなきゃ、駄目だよ」 そう笑った口許はゆっくり、彼女の其れに近付く。支配は解かれぬ侭、目先の熱を求めて身体は動いていた。) | |||||
気持ちは分かる…けど、記憶操作しちゃうのも怖い気がする…! | |||||
(彼が何を考えて何を見ているのか、全く分からなかった。如何してこんな状況で笑えるのだろう、彼が笑うほど真壁は泣きそうな気持ちになっていく。まるで恋人同士の其れのように絡め取られる指、普段は触れられる事のない頬。危機感と焦燥ばかりが徒に募る。)…分からな、…くは、ない…けど…!そういう事じゃなくて…!(流石に此の先を想像出来ない歳ではない。ふるふると動かせる首を左右に振る事で否定を示し、不意に頬を撫でられる感触にびくりと体を揺らす。何時もの彼とは別人のようで、己を見ているようで何も映していないような瞳が怖かった。再び名前を呼ばれたなら、正気に戻ってくれるのかと縋るように彼を見上げて。)……し、…知ってるよ、知ってる…。玖珂くんは男の子なんだって知ってるし、もう分かったから…ね?(上げる声は情けなく震えていて、そんな事にも気付けないほど動揺は広がっていた。そんなの分かっていた―つもり、だった。だけど、この状況で痛感する。正真正銘“男の子”の力、少年の顔なのだと―其れを知らぬうちに軽く考えていた事も。中途半端な抵抗もあっさり回避され、いよいよ追い込まれた。)……っ、駄目…!(刻一刻と近づく二人の顔と濃くなるばかりの危険信号。長い爪で彼を引っ掻く事も爪を食い込ませる事も不可能ではなかったが、こんな状況でも頭の冷静な部分が彼を下手に傷付けてはいけないと警告する。そして咄嗟に真壁が思い付いた、状況を打開する方法は―渾身の力を振り絞り、思いきり頭を枕に押し付けてから彼の額に自らに額をぶつけようとするもの―所謂“頭突き”であった。これなら攻撃した自分も其れなりに痛みを味わうからとの意味もあったかもしれない。其れが彼に何かしらの衝撃を与えてくれる事を祈るしかなく、しっかり彼に命中したならば当初の想定以上の額に痛みに「〜〜っ、いっ、たた…」と真壁自身が打ちのめされる羽目になろうが。) | |||||
そりゃあ、あれこれ操作するのは嫌だけどさ。都合良く忘れられるならありがたいよ。 | |||||
(全てが作り物のようで、作り物じゃない。支配の末に導かれた行動であっても此の状況は現実だ。彼女を組み敷き、指を絡め、頬を撫ぜた、其の行為。拒絶を物ともせず、余裕に満ちた笑いを口許に携えた姿は、平素の玖珂に程遠い。「分かってるなら、………ね?」 彼女へと近付く唇でそう呟く。其れは彼女の熱に触れる筈だったけれど、そう簡単には行かない。玖珂の下にいる彼女が身体を引いたと思えば、勢いよく近付く頭。そしてぶつかる。其れは衝撃。)…っ……いっ、たあ……(額を伝って頭全体に響く痛みに、離した手で其れを押さえる。身体は彼女から離れ、床にするすると座り込む。自らの額を押さえた手は其の侭に、鈍い痛みから僅かに滲んだ涙を目許に浮かべて、)一体何す、───……っ!(言い掛けた唇を噤んだのは、一瞬で全てを悟ったから。覚えている。覚えている限り、しちゃいけないことをしたことは確かだった。足は逃げるようにシャワールームへと駆け込んで勢いよく扉を閉め、そして再び薄く開いて隙間から顔を覗かせた。とは言え、気まずくて直接顔を見ることは出来ずに、濃紺から放たれる視線は宙を泳ぐことになった。)真壁さん、あの、………ごめん。シャドウが、………いや、何でもない。……ごめん、なさい。(ずきずきと痛む頭で、言葉を探す。言い訳は一つも出て来ない。動揺と謝罪だけが空間に立ちこめる。隙間から覗く頬はチークを乗せたように薄らと赤みを帯びて、唇は居心地が悪いのか糸で縫い付けられたように噤まれる。慣れない状況に、熱は集る。小さく息を吐いて立ち上がると、脱ぎ捨ててあった衣服を身につけた。いつもの女子制服、濡れた髪はひとつに纏めて。そうしてシャワールームから抜け出せば、きっと彼女と対峙することになるだろうけれど。)……頭突きじゃなくて、殴ってよかったのに。……ごめん、怖かった?僕、こんな格好してるけど、一応男だろ。……嫌な思い、させたよね。(ある程度距離を取って一度視線を逸らし、もう一度彼女へと其れを向ける。操られるような弱さを持った自分が腹立たしく思えば前髪を掴んで溜息吐き出すことになって、静かな室内には息遣いだけが響く。) | |||||
そうだ、いっそ楽しい思い出で塗り潰しちゃうとか? | |||||
(渾身の一撃は避けられる事なく彼にしっかりと命中。が、其れだけに本人への反動も予想以上に大きなものだった。)うう゛っ…、…痛い…。(取り敢えず彼と距離が開いたなら、気休めでも効果はあったらしい。涙目の彼に申し訳なく思う余裕もなく、仕掛けた張本人も酷い涙目という間抜けな有様。さっきまでの危うく大人びた雰囲気もぶち壊しだ。)だ、だから、ごめんって…――え?戻って、くれた…?(其の発言は当然のものだろうと思うも、狼狽した様子の彼に微かな期待も芽生えて。次の瞬間、逃げるようにシャワールームへと駆け込む姿を唖然と見送るしか出来なかった。かと思えば扉はすぐに少しだけ開き、気まずそうな等身大の少年の顔が覗く。其処にはもう得体の知れない恐怖は感じない。)う、ううん…大丈夫!…悪いのはシャドウでしょ?玖珂くんだって大変な目に遭ったんだし…うん。(嗚呼、完全に戻ったのだと全身の力が抜けていく。そして正気に戻り、記憶が残っているのか居心地悪そうに言葉を濁らせる彼に慌てた様子で否定に入った。彼が別人のようになったのも恐らくシャドウの仕業なのだろう、ならば彼も被害者だし、自己防衛の為とはいえ彼に頭突きをしてしまった自分も悪い。だが、二人の間に流れる鉛以上に重苦しい空気に抗いきれず、最後の言葉は歯切れ悪くじわりと沈む。其の後、ベッドから起き上がった真壁は格好も表情も見慣れた姿に戻った彼と顔を合わせて。)まさか、殴るなんて…!……まあ、ちょっと…怖いって思った時もあったけど、もう平気だから…!シャドウに振り回されたのは玖珂くんも同じだし、むしろ私の方こそ思いっきり頭突きしちゃって…ごめんね。痕になってない?(其の時にはもう安心して視線を向ける事が出来た。嘘を吐いてもバレバレだと思ったのか、怖かった事は素直に吐露した上で力一杯の頭突きを再度詫びよう。そして距離のある彼の額に心配そうな視線を向けて。) | |||||
………そういう考えもあるんだね。僕には思いつかなかった。真壁さんらしいや。 | |||||
(支配された空間で霧が晴れたように意識が覚醒し、自らの仕出かした行為を自覚してからシャワールームへと逃げ込むまでは早かった。幾分かの動揺と戸惑いを出来るだけ抑え込み、震えそうになる唇を薄く開いて拙い乍らも紡いだ謝罪の言葉はちゃんと彼女へと届いたようで一安心。「でも、……ごめん。僕に隙があったから、駄目だったんだ。」 扉越しに伝う声はいつもよりも力なく落ちていく。衣服を身に纏う時間ですら億劫に感ぜられるほど、先の出来事は玖珂に打撃を齎した。───こんな形をした男だ。昔は普通だったとしても、ある程度の身体が形成された年頃の現在、人と交友を持つことなんて多くない。女だと勘違いして近付く男を悪戯に扱うことはあれ、異性との“そうした”行為に免疫はない。自分のやろうとしたことが終着点まで行き着かなかったことに限りない安堵が浮かぶ。彼女と向き合うにも、大きな不安は拭い去ることは出来なかった。落ちるのは只管の謝罪。調子の乗らない喋り方は、平素の玖珂を知る者にしてみれば面白可笑しくもあろうか。いっそ開き直って笑えれば気も楽になるのに其れが出来ないのは、結局のところ取り繕うのが下手な“子供”であるという事実。)………まあ、真壁さんの頭突きも結構な威力だったけど。痛かった。たんこぶ出来たかもね。……でも、そのお陰で目が覚めたんだ。……ありがとう。(悪態吐くようにとんとんと進む言葉は、最終的に彼女への感謝へと収束する。少し時間は掛かったけれど、漸く、先程の状態を脱却するに活躍してくれた彼女に、小さな笑みを浮かべて感謝を伝える。ただ、「………僕、本当に何もしてない、よね?」と不安気に尋ねる姿は些か滑稽か。まだ乾き切らずに水を落とす髪は記憶を思い起させるけれど、其れを一々気にしていられるほど悠長でもいられない。突如として飛び込んできた通信は、此の事態の元凶である奴の場所を告げる其れだった。)───……やられっぱなしなのは、癪。(通信相手に告げるでも、彼女に告げるでもない、其れは最上階で待ち受けるだろうシャドウに対する苛立ち。きゅ、とショートブーツで地面を踏み締めると音が鳴る。扉を見据えて言うのは、)行こう、真壁さん。僕、早くあいつら倒したくて仕方ない。(───些か、物騒なお誘いだった。) | |||||
きっと大丈夫だよ、これから先の人生の方がずっと長いんだから! | |||||
(すっかり正気に戻ってはいるようだが、大きなショックの所為か彼の言葉に平素のような覇気は感じられなかった。「そんなの…!完全に隙をなくすなんて無理だよ。悪いのはその隙に付け込む奴だって…!」と更に否定を重ねる。難しいと分かっていたが、彼に自分を責めてほしくなかった。元凶も判明すれば心に折り合いも付けられる。其れに彼だって自分と同じか其れ以上の打撃を受けているのは明らかなのだから。また、もしシャドウの対象が自分であっても、きっと支配されてしまうだろうと予想がつく。予告もされていないのだ、特別に強靭な精神でも持たなければ阻止するのはきっと不可能だ。人の心を弄んだシャドウ以外の誰も責められる事ではない。)……だ、だよね…。…頭が真っ白で加減とか考えてなくて、それは本当に反省してる…。というか私も痛かった…。たんこぶ…!?…ごめん!もし出来てたら…お詫びに薬代とか湿布代とか出すよ!…どういたしまして。元の玖珂くんに戻ってくれてよかった。(痛いところを突かれたが、其の口調は普段の彼にとても近いものだったから胸を撫で下ろした。たんこぶと言われた時には不安げの彼の額を見るも、思いがけず感謝までされてしまえば―利口な方法とは言えずとも、其の言葉を有難く受け取るとしよう。だが其れでも不安は拭えないのか、再度問われたなら「うん…!其の前に止めたから、安心して…!誓って何もしてないよ、絶対!」こくこくと物凄い早さで首肯して答えた。これで彼にも安心してもらえるといいのだが、果たして。――と、不意に繋がった通信に驚きで小さく飛び上がる。)……うん!こんな事した悪いシャドウを懲らしめなくっちゃね!(其の言葉にすっくと立ち上がる真壁も戦意は十分。思春期の男子の心を弄ぶなんて卑怯な行為は断じて許せない。彼のお誘いに一も二もなく賛同すれば、革のローファーをしっかり履き直し、彼と共に元凶の待つ場所へと急ぐのだろう。) |
>最上階の大きなフロア。 >美鶴からの通信を受け、やってきた。 大丈夫か?遅いから心配したぞ! >フロアの奥には4体の大型シャドウ。 よし、今から私の指示に従い、チームを組んでシャドウ討伐にあたってくれ! |
6月8日 満月の夜 | |||||
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法王のアルカナを持つ大型シャドウ。 女性を模した椅子にまん丸とした男性が座っており、顔には仮面をつけている。 | |||||
赤萩、糸川、徳永、君達は奴を倒すんだ! | |||||
よし、アナライズが完了したぞ! ―――――――――――― 《ハイエロファント》 スキル:電光石火(全体に打撃属性で10ダメージ)or二連牙(単体に貫通属性で20ダメージ) HP:200 弱点:電撃・氷結 ―――――――――――― 弱点がいくつかあるぞ…だが、逆に君達の弱点を狙う攻撃もある。幸い全員が回復スキルを覚えているからな、互いにフォローし合うんだ! 各自のHP:50 | |||||
勿論よ。それにしても、何の目的があってこんな所に現れたのかしら…。 | |||||
弱点を突けるのはお互い様かしら?いずれにせよ怪我には気を付けて……行きましょうか。
―――――――――――――――――――――――― コマンド:ブフ(氷結) 対象:ハイエロファント 「さっさと片付けてしまいましょう、…ブフ!」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:180】 【徳永残りHP:50】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― さあ、二人とも。準備はいいかしら? ―――――――――――――――――――――――― コマンド:総攻撃 《30ダメージ!》 【シャドウ残りHP:150】 ―――――――――――――――――――――――― 私もだけれど糸川さんは特に注意が必要だわ、余り無理はしないようにね?赤萩君は幸い弱点はないようだけれど…畳掛けられれば危ない事に代わりは無いもの。どんな時も油断大敵、……次の方、宜しくお願いするわね。 | |||||
なんででしょう……シャドウも愛憎とか欲望めいたものに惹かれるとか? | |||||
あたしと徳永先輩が攻撃に出るのはハイリスクハイリターンって感じですか。でも此方から叩かないとキリがないですし、多少の危険は覚悟です。頑張りましょう。
―――――――――――――――――――――――― コマンド:ジオ(電撃) 対象:ハイエロファント 「ウラニア、あいつを狙って!」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:130】 【糸川残りHP:50】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― ……要は倒れなければいいんでしょ。倒れなければ。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:防御 「これで大丈夫…かな」 【シャドウ残りHP:130】 【糸川残りHP:50】 ―――――――――――――――――――――――― やっぱり普段タルタロスで戦ってるシャドウより強い…ですね。危なくなったら大人しくフォローに回ることにしますので、先輩たちも無理しないで下さい。 | |||||
シャドウに本能があるとでも言うのか。……そもそも感情があるのか? | |||||
……危険は避けて通れれば、それが一番良いじゃないか……。 悪いが僕は無理なんかしないで、進めさせてもらう。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:ガル(疾風) 対象:ハイエロファント 「行けるか…!」 《10ダメージ 》 【シャドウ残りHP:120】 【赤萩残りHP:50】 ―――――――――――――――――――――――― リスクも無ければダメージも出ないのが厄介だな。君たちは随分と聞き分けが良い様だから蛇足だと思うが、……畳み掛けられるような状況にだけはしないでくれ。 | |||||
シャドウの攻撃 | |||||
コマンド:二連牙(貫通) 対象:糸川綾 【シャドウ残りHP:120】 【徳永残りHP:50】 【糸川残りHP:30】 【赤萩残りHP:50】 | |||||
敵意はあるみたいだけれど、…感情の発露が旺盛なシャドウなんて想像したく無いわね。 | |||||
魔法スキル特化のペルソナが揃った結果ね。…糸川さん、大丈夫?すぐに回復するけれどまずは、
―――――――――――――――――――――――― コマンド:ブフ(氷結) 対象:ハイエロファント 「レアー、…一つおかえし、お願いね。」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:100】 【徳永残りHP:50】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― お待たせ、…ちゃんと利くはずだから安心して? ―――――――――――――――――――――――― コマンド:ディア 「小まめな回復が肝心だわ。」 対象:糸川綾 《20回復!》 【シャドウ残りHP:100】 【徳永残りHP:50】 ―――――――――――――――――――――――― この戦いも漸く折り返し、長期戦にもつれ込む前になんとかしたいところだけれど…。 | |||||
喜怒哀楽が激しいのは嫌ですね。人懐っこいシャドウは…許せるかもしれませんが。 | |||||
…………、まん丸のくせにピンポイントで狙ってくるなんて生意気。 徳永先輩は回復ありがとうございます。でも少し掠っただけなので、あたしに構わず次の攻撃に移ってもらって平気ですよ。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:ジオ(電撃) 対象:ハイエロファント 「どうせなら100倍にして返せたら良いのに」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:80】 【糸川残りHP:50】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― 削るか防ぐか微妙なところだけど…赤萩先輩にも釘刺されてますし、引き続き安全策で行ってみます。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:防御 「次から鍋蓋でも持って来ようかな…」 【シャドウ残りHP:80】 【糸川残りHP:50】 ―――――――――――――――――――――――― なんていうか、こう、一気に戦況を覆せないのが歯がゆいですね。少しづつ効いてはいるみたいですが…。 | |||||
人懐こい態度をしながら平気で攻撃してくるのも、それはそれで嫌だ。 | |||||
無事回復出来たみたいだな。 然し、全員回復出来るのは利点だが、ダメージが通らないのは随分な欠点、か。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:ガル(疾風) 対象:ハイエロファント 「効け!」 《10ダメージ 》 【シャドウ残りHP:70】 【赤萩残りHP:50】 ―――――――――――――――――――――――― このまま安全策を取るのは賛成だが、 ……弱点に無縁な僕が回復に回るのが一番効率が良いと思う。任せてくれ。 | |||||
シャドウの攻撃 | |||||
コマンド:二連牙(貫通) 対象:糸川綾 【シャドウ残りHP:70】 【徳永残りHP:50】 【糸川残りHP:30】 【赤萩残りHP:50】 | |||||
かといって人懐こくて攻撃してこないシャドウも…処遇に困ってしまいそうだわ。 | |||||
……ありがとう二人とも。…赤萩君、お手数だけれど何かあったらお任せするわね。それに、これ以上の長期戦なんて面倒事は私も御免蒙るわ。
―――――――――――――――――――――――― コマンド:ブフ(氷結) 対象:ハイエロファント 「迷いは無いわね?…やりなさい。」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:50】 【徳永残りHP:50】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― もう1度、全員で畳掛けましょう。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:総攻撃 《30ダメージ!》 【シャドウ残りHP:20】 ―――――――――――――――――――――――― あと一押しと言った所かしら?集中攻撃の借りを返すチャンスね糸川さん、あとはお任せするわよ。 | |||||
すぐ逃げるのは偶に見ますけど、結論としては普通が一番対応に困りませんね。 | |||||
何か、なんてありません。任されたからには必ずこれで終わりにします。
―――――――――――――――――――――――― コマンド:ジオ(電撃) 対象:ハイエロファント 「大人しくやられてしまえば良いの。…ジオ!」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ消滅!】 【糸川残りHP:30】 ―――――――――――――――――――――――― ――…ふぅ。流石にやり返せてすっきりしましたし、先輩方に怪我がなくて良かったです。それでも疲れはあるでしょうから、徳永先輩も赤萩先輩も今日はゆっくり休んで下さいね。 |
6月8日 満月の夜 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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恋愛のアルカナを持つ大型シャドウ。 大きなハート型の体から仮面をつけた頭と羽が生えており、宙に浮いている。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
真壁、上広、藤澤、君達は奴を倒すんだ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
よし、アナライズが完了したぞ! ―――――――――――― 《ラヴァーズ》 スキル:マハジオ(全体に電撃属性で10ダメージ)orエンジェルアロー(単体に貫通属性で10ダメージ&攻撃されたPCは次のターンシャドウに回復スキルを使うか、味方を攻撃しなければいけない) HP:200 弱点:火炎・氷結 ―――――――――――― 弱点はいくつかあるが…その分、電撃属性の攻撃を受けると二人いっぺんにダウンしてしまうな。…!?…しかもコイツは特殊な技を使うぞ!気をつけてくれ! 各自のHP:50 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ハートだけならまだ可愛いって思えそうなんだけどな…。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
何か一気に相手が強くなった気がするんだけど…三人で助け合いながら頑張ろうね! ―――――――――――――――――――――――― コマンド:ブフ(氷結) 対象:ラヴァーズ 「どーんとぶつけちゃって!」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:180】 【真壁残りHP:50】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― 上手く出来るか分からないけど、試してみる…! ―――――――――――――――――――――――― コマンド:防御 「守りも攻撃のうち!」 【シャドウ残りHP:180】 【真壁残りHP:50】 ―――――――――――――――――――――――― 変わった技持ってるみたいだし、上広くんも藤澤さんも無理はしないでね…! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
んーでも、本当に可愛い敵だったら攻撃戸惑っちまうかも? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
うわマジか……俺らアタリぽいなこれ。……オーケー。なるべくかわいい二人を守れるようにがんばりますよー。うん。
―――――――――――――――――――――――― コマンド:アギ(火炎) 対象:ラヴァーズ 「とりま率直にっつーコトで、」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:160】 【上広残りHP:50】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― イイね〜とりあえず俺と香澄さんはどんどん弱点狙っていこうか。そんじゃ、協力おねがいな。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:総攻撃 《30ダメージ!》 【シャドウ残りHP:130】 【上広残りHP:50】 ―――――――――――――――――――――――― 俺と幸さんが一気にやられる可能性があンのね。幸さんは自分の攻撃でも体力削る場合があるから、回復も重要になってくるか…。……特殊な技に関してはその時の各々の体力を見て行動って感じでよろしく頼む。…まーじで、無理は禁物だからなっ。 一般的な可愛さなら…ぬいぐるみや子犬や子猫のようなシャドウでしょうか…?
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何だか色々あるシャドウみたいだけど…三人いればきっと。…私も、が…頑張ります。 | ―――――――――――――――――――――――― コマンド:シングルショット (貫通) 対象:ラヴァーズ 「いつもの、お願い。アナト!」 《30ダメージ! / HP10消費》 【シャドウ残りHP:100】 【藤澤残りHP:40】 ―――――――――――――――――――――――― その、先輩達も…無理は、しないでくださいね。自分の体力に気を配って動こうと思うんですが、場合によっては…回復を…お願いしてしまうかも、しれません…。ハートの…え、えと…シャドウの出方次第ですが、…ちょっとずつでも、攻撃できれば…倒せ、ますよね。 シャドウの攻撃
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コマンド:マハジオ(電撃) | 対象:全員 【シャドウ残りHP:100】 【真壁残りHP:40】 【上広残りHP:30】ダウン! 【藤澤残りHP:20】ダウン! あっ、駄目だ…。…そんなものを躊躇わないで攻撃する自信ない…!
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そんな、二人一気に…!?…もう怒った、弱点狙いまくるから!
| ―――――――――――――――――――――――― コマンド:ブフ(氷結) 対象:ラヴァーズ 「好きにはさせないからね…!」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:80】 【真壁残りHP:40】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― 二人とも大丈夫!?とりあえず、藤澤さんを回復させてもらうね! ―――――――――――――――――――――――― コマンド:ディア(回復) 「初めてだけど…効果ありますように!」 対象:藤澤幸 《20回復!》 【シャドウ残りHP:80】 【真壁残りHP:40】 ―――――――――――――――――――――――― さっさと倒さないと、本当に厄介みたい…!地道に削っていかないと…! 攻撃しようとしたら目ぇうるうるさせるパターンか。…目隠し必須だネ。
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〜っ…言ったそばからコレかよ……、ゴメン、ダウンだわ…。
| ―――――――――――――――――――――――― >ダウンしていて動けない! 【シャドウ残りHP:80】 【上広残りHP:30】 ―――――――――――――――――――――――― …あー…申し訳ねぇけど、回復おねがいしたいな…。 …スイカ割りのように他のメンバーが指示を…?
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ま…真壁先輩、…ありがとうございます…!すごく、助かりました。でも…ごめんなさい。今は、…動けそうにないです…。
| ―――――――――――――――――――――――― >ダウンしていて動けない! 【シャドウ残りHP:80】 【藤澤残りHP:40】 ―――――――――――――――――――――――― あの……この分は、必ず。動けるようになったら、…シャドウに。 シャドウの攻撃
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コマンド:エンジェルアロー(貫通) | 対象:真壁香澄 【シャドウ残りHP:80】 【真壁残りHP:30】洗脳!(総攻撃には参加できない) 【上広残りHP:30】 【藤澤残りHP:40】 それちょっと楽しそうな気が…。でもバレたら怒られそうだね…!
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…っ!何これ、……ごめん!総攻撃は無理そう…!
| ―――――――――――――――――――――――― コマンド:ディア(回復) 「長引かせちゃうけど…ごめんね。」 対象:ラヴァーズ 《20回復!》 【シャドウ残りHP:100】 【真壁残りHP:30】 ―――――――――――――――――――――――― 次こそは絶対に攻撃と回復するから…! しかも命がけよ?……どうせならもっと安全で楽しいコトしようぜ。
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はー…クラクラする。香澄さん大丈夫?…厄介な技だな、気をつけねぇと。
| ―――――――――――――――――――――――― コマンド:アギ(火炎) 対象:ラヴァーズ 「とりあえずお返し」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:80】 【上広残りHP:30】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― 攻撃か回復か、しっかり考えなきゃなンねぇな…。…今は万全を期するべきか。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:ディア(回復) 「女の子に怪我させるとかほんっとさァ……」 対象:真壁香澄 《20回復!》 【シャドウ残りHP:80】 【上広残りHP:30】 ―――――――――――――――――――――――― …コレで半分は削れたか?…よし。折り返しだよ。もう一分張り。冷静に、頑張ろうぜ。 ふふ。やっぱり遊びはシャドウを倒してから、ですね。
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冷静に…冷静に、ですよね。……冷静に。でも、 | ―――――――――――――――――――――――― コマンド:バスタアタック (貫通) 対象:ラヴァーズ 「アナトもスカッとしたいよね」 《50ダメージ! / HP20消費》 【シャドウ残りHP:30】 【藤澤残りHP:20】 ―――――――――――――――――――――――― これで……あともう、少し?次もくるけど…もうひと踏ん張り、がんばりましょう。 シャドウの攻撃
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コマンド:エンジェルアロー(貫通) | 対象:上広優一 【シャドウ残りHP:30】 【真壁残りHP:50】 【上広残りHP:10】洗脳!(総攻撃には参加できない) 【藤澤残りHP:20】 これが終わったら皆でぱーっと遊びたいね!
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上広くん回復ありがとう!これで如何にか出来そう…!
| ―――――――――――――――――――――――― コマンド:ブフ(氷結) 対象:ラヴァーズ 「最後の一発お願いね!」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:10】 【真壁残りHP:50】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― だいぶ皆を苦しめてくれたけど、もうお終いだよ! ―――――――――――――――――――――――― コマンド:アタック(斬撃) 対象:ラヴァーズ 「これで終わらせるから…!」 《10ダメージ!》 【シャドウ消滅!】 【真壁残りHP:50】 ―――――――――――――――――――――――― 何だかすごく長かった気がするね…上広くんも藤澤さんも本当にお疲れ様…!総攻撃とか回復とか、本当に色々ありがとう! |
6月8日 満月の夜 | |||||
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戦車のアルカナを持つ大型シャドウ。 細長い大砲の上部に仮面らしきものと翼が生えており、宙に浮いている。 | |||||
玖珂、立平、当真、君達は奴を倒すんだ! | |||||
よし、アナライズが完了したぞ! ―――――――――――― 《チャリオッツ》 スキル:マハブフ(全体に氷結属性で10ダメージ)orマハラギ(全体に火炎属性で10ダメージ) HP:200 弱点:疾風 ―――――――――――― 弱点は一つ……逆に君達の弱点を狙う攻撃は多い、か。物理特化の二人は体力に気をつけて戦い、立平は攻撃とフォローのタイミングを見極めるんだ! 各自のHP:50 | |||||
了解。…ま、どいつが相手でもやる事は変わらないけど。 | |||||
……氷結属性の技が厄介だな…まあいい。序盤は体力を温存しつつ攻撃させてもらう。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:アタック(打撃) 対象:チャリオッツ 「まずは小手調べだ。」 《10ダメージ!》 【シャドウ残りHP:190】 【当真残りHP:50】 ―――――――――――――――――――――――― 俺に比べて立平は弱点が狙えるし、玖珂は弱点を突かれる心配はない……立平の魔法攻撃と回復魔法、玖珂の物理攻撃を上手く使えばなんとかなる…といったところか。…どっちでもいい、続いてくれ。 | |||||
当然。さっさと終わらせて帰りたいね、もう疲れたよ。 | |||||
意外と手強そうな感じ?……まあ、いつも通りやらせてもらおうかな。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:デッドエンド(斬撃) 対象:チャリオッツ 「新しい技、試しとくか。フェンリル!」 《50ダメージ! / HP20消費》 【シャドウ残りHP:140】 【玖珂残りHP:30】 ―――――――――――――――――――――――― 弱点ないのは僕だけ、か。物理攻撃は任せといてよ。でも、ちょっとやばくなったら回復はお願いしたいかな? | |||||
タルタロス疲れるもんね〜…帰ったら甘いモノ食べて回復とかどうだっ。 | |||||
やっぱシャドウってぜんっぜんカワイくなーいっ!……はいはいっ、私も続いちゃいます!
―――――――――――――――――――――――― コマンド:ガル(疾風) 対象:チャリオッツ 「攻撃こそ最大の防御とか言うもんねっ、テュケー!」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:120】 【立平残りHP:50】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― わ、ラッキーチャーンスッ!みんなでいっくよー! ―――――――――――――――――――――――― コマンド:総攻撃 《30ダメージ!》 【シャドウ残りHP:90】 【立平残りHP:50】 ―――――――――――――――――――――――― ふたりとも、もしヤバくなったら回復任せてね、いつでも言ってー!つって私が弱点つかれちゃったらアレだから、……火炎きませんように。なむなむ。でもでもすごーくいいカンジじゃないー!? | |||||
シャドウの攻撃 | |||||
コマンド:マハブフ(氷結) 対象:全員 【シャドウ残りHP:90】 【当真残りHP:30】ダウン! 【玖珂残りHP:20】 【立平残りHP:40】 | |||||
一時的に精神回復しても、後日体重計の上で泣きを見るぞ。 | |||||
……くそっ…言ったそばからこれか…。 ―――――――――――――――――――――――― >ダウンしていて動けない! 【シャドウ残りHP:90】 【当真残りHP:30】 ―――――――――――――――――――――――― …最悪また俺が弱点を狙われても瀕死になることはない。回復させるなら玖珂にしてやれ。 | |||||
うわ、それって厳しい現実だね。夜中に甘いものは禁物ってことかな。 | |||||
当真さん、大丈夫?……休んでて。僕が代わりにやるから。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:アタック(斬撃) 対象:チャリオッツ 「その不気味な仮面、引っ掻くよ」 《10ダメージ!》 【シャドウ残りHP:80】 【玖珂残りHP:20】 ―――――――――――――――――――――――― とりあえず、いい感じで体力減らせてるんじゃない?まあ、ちょっと疲れてきちゃったけど、……これくらい、余裕。 | |||||
……グスンッ。じゃあどーっしても食べたい、食べないとムリ…ってなったら? | |||||
え、わわ、えーとえーと、とにかく当真センパイの言う通りに!します!まずはね、とりあえず私がもう一回動きたいから、
―――――――――――――――――――――――― コマンド:ガル(疾風) 対象:チャリオッツ 「これで間違ってないよね?お願い、当たって!」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:60】 【立平残りHP:50】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― よ〜っし!これでオッケー、玖珂くんごめんっお待たせしましたー! ―――――――――――――――――――――――― コマンド:ディア(回復) 「もうちょいファイトだよっ!」 対象:玖珂愛 《20回復!》 【シャドウ残りHP:60】 【立平残りHP:40】 ―――――――――――――――――――――――― なんかシャドウ強くない?まだ倒れないよ〜。でもって当真センパイは次こそ回復しにいくかんねっ、ちょっと待っててくださいねっ! | |||||
シャドウの攻撃 | |||||
コマンド:マハラギ(火炎) 対象:全員 【シャドウ残りHP:60】 【当真残りHP:20】 【玖珂残りHP:30】 【立平残りHP:20】ダウン! | |||||
食べたらいいだろ。で、太った分はまた動け。…何事も取り返しはつくようになってる。 | |||||
…立平はよくやった。あとは俺と玖珂に任せろ。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:アサルトダイブ(打撃) 対象:チャリオッツ 「我慢させたな…頼む、アトラス!」 《30ダメージ! / HP10消費》 【シャドウ残りHP:30】 【当真残りHP:10】 ―――――――――――――――――――――――― もうすぐ終わりだ。玖珂…いけるな。 | |||||
って当真さんも言ってるし、立平は気にせず甘いもの食べちゃえばいいと思うよ。 | |||||
立平は回復ありがと、これで全力でいける。後は任せといてよ。すぐ終わらせる。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:スラッシュ(斬撃) 対象:チャリオッツ 「これでラストだよ、フェンリル」 《30ダメージ! / HP10消費》 【シャドウ消滅!】 【玖珂残りHP:20】 ―――――――――――――――――――――――― ふう、これで討伐完了?全員でやれば意外と何とかなるもんだね。これでようやく帰れるよ。さっさと帰って寝たいね、疲れちゃった。 |
6月8日 満月の夜 | |||||
---|---|---|---|---|---|
正義のアルカナを持つ大型シャドウ。 戦車の土台を立たせたような姿をしており、土台上部に人の顔らしきものが描かれている。 | |||||
加賀美、利川、児玉、君達は奴を倒すんだ! | |||||
よし、アナライズが完了したぞ! ―――――――――――― 《ジャスティス》 スキル:マハガル(全体に疾風属性で10ダメージ)orマハブフ(全体に氷結属性で10ダメージ)orミリオンシュート(単体に20ダメージ) HP:200 弱点:電撃・火炎 ―――――――――――― 全員が弱点を狙われる可能性があるな…うまく弱点をつきながら、攻撃と防御のタイミングを考えて戦うんだ! 各自のHP:50 | |||||
慣れて来たような気もするけれど、そういう時が危ないのかもしれないね。 | |||||
男3人だと、気を遣わなくても済みそうだ。どうぞよろしく。…今日も出来得る限り早く終わらせたいね。
―――――――――――――――――――――――― コマンド:ジオ(電撃) 対象:ジャスティス 「防御じゃあ勝てないしね、…行くよ。」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:180】 【加賀美残りHP:50】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― 2人とも協力宜しく。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:総攻撃 《30ダメージ!》 【シャドウ残りHP:150】 ―――――――――――――――――――――――― とりあえず、こんな物かな。…一先ず、次、お願いするよ。 | |||||
油断大敵って?最近張り合いねえからピンチに陥ってもそれはそれで愉しそうだケド。 | |||||
アハ、俺は誰と一緒になろうが気なんざ遣った事ねぇケドな。……でもま、それにしたって変わったメンツが集まったもんだぜホント。普段一緒に集まるコトもねぇだろうし、まぁ一時だけどどーぞヨロシク。
―――――――――――――――――――――――― コマンド:アギ(火炎) 対象:ジャスティス 「さぁて…弱点、狙わせて貰うぜ。」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:130】 【利川残りHP:50】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― お二人さん、流石に二連続総攻撃はキツイだろ?体力的に。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:アギ(火炎) 対象:ジャスティス 「ま、だからって防御に回るつもりはねぇケドな!」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:110】 【利川残りHP:50】 ―――――――――――――――――――――――― ああ、相手も弱点狙ってくる可能性あるんだっけか。体力に気ぃ付けねえと俺らの方もヤられちまうカンジ?でも俺回復とか苦手なんだよね〜。んじゃ次、ガンバッテ。 | |||||
ピンチに陥ったときは、……うーん。逃げようか? | |||||
気遣い……がんばって起きてるのは気遣いって言うのかな。言わないな。まあ、頼もしそうな二人だし頼りにしてる。
―――――――――――――――――――――――― コマンド:キルラッシュ(打撃) 対象:ジャスティス 「攻撃は最大の防御、ってね。オーディン!」 《50ダメージ!》 【シャドウ残りHP:60】 【児玉残りHP:30】 ―――――――――――――――――――――――― 次は誰かの弱点つかれるだろうけど、どんどん攻めてこ。すぐ勝てるよ。終わったらラーメン食べに行きたい。 | |||||
シャドウの攻撃 | |||||
コマンド:マハブフ(氷結) 対象:全員 【シャドウ残りHP:60】 【加賀美残りHP:40】 【利川残りHP:40】 【児玉残りHP:10】ダウン! | |||||
逃げられるのなら、良いんだけどね。…何だか不安になってくるな、これ。 | |||||
気を回さないでも上手くやれるのは尊敬するよ、純粋に。…っと、児玉は大丈夫…じゃあないか。回復するべきなのだろうけれども、先に。
―――――――――――――――――――――――― コマンド:ジオ(電撃) 対象:ジャスティス 「…少しでも削らないとね。アストライアー、行くよ。」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:40】 【加賀美残りHP:40】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― お待たせ。ちゃんと回復するから、安心して。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:ディア 「…攻撃手が減るのは困るしね。」 対象:児玉秀斗 《20回復!》 【シャドウ残りHP:40】 【加賀美残りHP:40】 ―――――――――――――――――――――――― 大分弱って来たみたいだし、後は任せたよ。…攻撃は得意なんだろう? | |||||
未来に不安を募らせる暇があんなら、目の前の戦いに集中した方がよっぽど利口だぜ。 | |||||
……なんだ、こんなもんか。思った以上に早く終わりそうで拍子抜け。…ま、攻撃なら任せとけよ、シュートはどうぞごゆっくり。
―――――――――――――――――――――――― コマンド:アギ(火炎) 対象:ジャスティス 「あーあ、なんかこれもパターン化して来たな…。」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ残りHP:20】 【利川残りHP:40】 1more発生! ―――――――――――――――――――――――― なぁんかオイシイトコ持ってくようで悪いね〜。……ケド、ちょっと飽きちゃったからサ、長引かせるつもりはねぇよ。 ―――――――――――――――――――――――― コマンド:アギ(火炎) 対象:ジャスティス 「トドメ、イッとくか。……マーリン。」 弱点にヒット! 《20ダメージ!》 【シャドウ消滅!】 【利川残りHP:40】 ―――――――――――――――――――――――― さぁってと。終わったな、かがみんもシュートもお疲れさん。攻撃は最大の防御です作戦バッチリ大成功ってカンジ。あー、俺もなぁんか今日は珍しく腹減っちまったし、この後食いに行くか。どうせなら皆で行っちゃう?討伐祝いも兼ねて。 |
【Event4終了】 | |||||
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>またひとつ、厳しい戦いをくぐり抜けた。 >仲間同士の信頼感が高まった気がする… >…!? >…頭の中に、不思議な声が囁く… 我は汝…、汝は我… 汝、”愚者”のペルソナを生み出せし時、 我ら、更なる力の祝福を与えん… >”特別課外活動部”のコミュのランクが”3”に上がった! >夢枕に、あの子供から告げられた、”試練”の警告… >それに呼応するかのように、再び現れた”巨大なシャドウ”… >これらは一体… |