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記憶の扉

(かすんだ視界。頭の中に靄がかかる。鮮やかな景色はもはや遠い記憶の中にしか存在せず、何度も手にとって眺めるうちに褪せて本物の色は忘れてしまった。最初から持っていないのと、あとから失うのと、どちらがましなのか考えるのは意味がない。結論は同じ。どちらにせよ今は無いのだ。だから誰かのそれを借りることができたなら、一緒に眺められたなら、そう思った。──鏡の割れる音がして、かすんだ視界の先に息をのむ音。潤んだ瞳は見えないけれど、泣いているのだとわかってわたしも泣いた。)  たい。(呟きは真白なシーツに沈んで消えた。)
* 9/30(Mon) 23:01 * No.16


azulbox ver1.00 ( SALA de CGI ) / Alioth