零、歓迎の宴の段
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【零】正門前
(朝早く、歓迎の宴を開くべくお使いを命じられたのにはおちょぼ口でうなずいて。宴自宅にもお祭り騒ぎにも心はワクワクと浮き立つもの。箱に突っ込んでまとめていくつか抜き出してしまったせいでお題の紙をうっかり散乱させて、同室の相方と共にせっせと箱に戻し、結局最後に残った一つを太い指先で開封する。)ヤマノイモ?(その名前につい頭に浮かべてしまったのが山中の景色なあたりが体育委員会のサガであるのかも。街に出て購入するのもいいが、山に入って採ってくるのでも別に構いやしないだろう。うっかり単独行動をはじめそうにもなったが、二人一組で用立てるとなれば、相方に食事の後に正門前で待っていることを伝えてしばし互いの用意に時間を割くことになるだろう。して、現在。腹ごなしの運動にはちょうどいいくらいの時刻の正門前で、出門表にさらりさらりとサインする。)……あれ?私、山に採りに行くと伝えただろうか。(足元に汚れの目立つ私服姿は山菜取りに出かけたところで取り立てて不審なこともないが、待ち合わせ相手はどうだろう。同級生たちが相手ならば割合、自然に山に分け入ることに決定するものだが。首を傾げたままサインを終えた出門表を小松田さんに返却した。)
* 9/5(Fri) 21:05 * No.7
…
(またしても学園長先生の思いつきかと早朝からの呼び出しにげんなりした者も多かろうが、浜守一郎は少数派。)お使い? 楽しそう!!(純粋にペアを組んでのお使いなんて楽しそうだと思ったし、なにより体験入学生の話を聞いたときから新たな仲間との出会いに胸を躍らせ、この日を待ちわびていたのだ。彼らを歓迎するための宴を開くだなんてなんと素晴らしい思いつきかと気合十分に引き抜いたくじ。果たして其処に書かれていたのは――)七松小平太先輩! よろしくお願いします!!(彼とはいつか、尼崎の浜で一緒にバレーボールをやったことがあったっけ。熱き心をぶつけ合ったあの日と違わぬ勢いで一礼、のち、言い渡された通り朝食をとってから正門前にやって来た。ヤマノイモというくらいだから山に行くのだろうという短絡的な思考のもと、一応汚れても構わぬ外出着に着替えてある。)お待たせしました! …っと、(すでに待ち合わせ場所に先輩の姿があると知れば慌てて駆け寄り、そのままの勢いで門を出ようとして小松田さんに引き留められ、すみませんすみませんと謝りながらあたふたとサイン。浮足立った心を挙動に滲ませながら、)さあ、今度こそ行きましょう! ところで、この辺りだとヤマノイモってどこで採れるんでしょう? 七松先輩はご存知ですか?
* 9/6(Sat) 00:36 * No.10
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(後輩というものはみな総じて可愛いものだがーー自分の『可愛がり』が後輩たちに喜ばれるものかはさておいてーー熱い心でぶつかってくるような後輩というのは殊の外かわいい。同じく六年生の仲間が可愛がっていることも相まって、朗らかな笑みと共に集合に向けての挨拶は交わしていたに違いない。)おお、浜守一郎!来たか!(彼より先に来ていたことにはさほど頓着した様子もなく豪快に笑い、彼と小松田さんとのやり取りも朗らかに笑って見守って。)裏裏山のあたりに群生地があるぞ!ついでにいくつか山菜が採れるところも教えておくか?あって困るものでもないだろう!(後輩は可愛いし、訊ねられれば応じたくなるのが性分だ。多少大目に採取したところでおばちゃんならばいいように計らってくれるだろうと、信頼半分無責任半分の思考で。楽しげに笑いながら、裏裏山のほうへと向かっていく。当然のように獣道へ足を踏み入れ、彼を先導しながら、足で地面を踏み固めて足場を作る。が、彼も転入生とはいえ四年生である。数歩歩んで、足場を作ることはやめにした。)体験入学生たちのためにも、うまいヤマノイモをとってやらんとな!競争でもするか?(後輩相手にもそんな冗談を飛ばして豪快に笑う。今のところ、冗談のつもりだ。)
* 9/6(Sat) 02:08 * No.12
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(「えっ!守一郎のペアって七松先輩なのか!?」ただでさえぱっちりとした目をさらに大きくした同室に「うん? そうだよ?」と返したのは朝食の一幕。他にもご愁傷さまと言わんばかりの視線がいくつか寄せられたがきょとん顔で受けとめた。相方が体力の有り余った体育委員会委員長であることは重々承知の上で、その勢いに熱き心でどーんと乗っかるのがこの男だ。)はい!(二人揃って朝っぱらから元気のいいこと。)裏裏山に群生地! ってことはたくさん採れますね! しかも山菜も! ぜひぜひ!!(大量確保となれば体験入学生たちも喜ぶだろうし、教えてもらえるというならなんだって。話を聞けば一層やる気が漲った。そうしてゆく山道は次第に険しくなっていくけれど、なるほど穴場っぽいぞとわくわくに拍車をかけるばかり。しかし、そんな余裕も彼が踏み固めてくれた足場があってこそ。それに気づいたのは足を止め、再び歩き出したのち。)競争ですか?(「勝負だ!」とは敬愛する我らが用具委員会委員長の口癖であるが、生憎と自分は競い合うことを愛してはいない。が、それはそれとして、一人ではできないことというのは魅力的だ。)…はい!(して、深く考えずに頷くのも忍たま歴の浅さゆえか。冗談のつもりとも知らず、)どっちがたくさん採れるかですか? それとも、早くヤマノイモを見つけた方が勝ちですか?(気軽に乗っかった競争とやらの、まずはルール確認を。)
* 9/6(Sat) 09:27 * No.13
…
(このところ体育委員会の後輩にも体験入学生への加減を懇願され、ペアが彼だと知った隣の組の用具委員長にももの言いたげな視線を向けられてはいたものの、まあ、細かいことは置いておくことにする。)そうだぞ、体験入学生にもしんべヱ並に食べるやつがいるかもしれんしな。多いのはいいことだろう!栗に銀杏、木通なんかもあったはずだぞ。一つ二つお駄賃につまんでもよさそうだな。(思い出すように虚空に視線を投げながらも、進んでいく足取りには全く迷いがない。お使いをしたものの特権を思い浮かべて、最上級生というには子供っぽい顔つきで笑ってみせる。体験入学生たちの姿も性質もまだ知らないが、せっかくの宴ならばたらふく食わせてやりたいと思う気持ちに嘘はない。彼の確認にうん、と頷く。特に後輩相手にはひきつった笑みを浮かべさせかねない冗談であったとは自覚しているのかしていないのか。大きくうなずいた彼の頭に手を伸ばして、ついわしゃわしゃとなで回す。)なっはっは!守一郎は可愛いなあ!留三郎が自慢するのもよくわかる!(うんうんと何度も頷いて。細かいことを気にせずに提案した競争の中身をそうだなあと思い浮かべる。)早く見つけたほうが勝ちにしよう!ヤマノイモを掘り出すのには体力がいるからな、見つけてからは協力するほうがいっぱい採れるぞ!(そうして即断即決。)
* 9/6(Sat) 12:44 * No.15
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栗に銀杏、木通かあ……うーん、うまそうですね。楽しみだな。(忍術学園に来てよかったことの一つにおいしい食事が挙げられるが、其処に「大勢で囲む」と付け加えれば完璧だ。見つけたヤマノイモや秋の味覚をみんなでおいしくいただく様を思い浮かべてにっこり。彼の楽しげな笑みにつられて膨らむ期待。軽快な足取り。もはやお使いというよりお散歩気分。競争だって一種のレジャーみたいなものだ。ゆえに頷く。)うわっ!?(すると不意に与えられた大きな手のひら。目をぱちくりさせながらも、しかし驚き以上の声は上がらない。年長者から好意を刷り込むようにもみくちゃにされれば悪い気はせず、そっか、おれってかわいかったんだ、と照れくさそうに笑うばかり。ツッコミ不在のまま突っ走る。ついでに自分が食満先輩にとって自慢の後輩なのだと知れば「本当ですか!?」と瞳を輝かせ、)わかりました! それじゃあヤマノイモ探し競争ですね! (お返事は今日一番の元気の良さで。塹壕堀の名人である彼相手にイモ掘り勝負では分が悪いが、見つけるだけなら勝機はゼロじゃないはずだ。)この山のどこかにあるというヤマノイモの群生地、見つけてみせますッ!! やるぞ、おー!!(山中にこだまする大声がセルフ合いの手となって場の雰囲気を盛り上げる。天高く突き上げた拳をそのままに、)では七松先輩。スタートの合図をお願いします。(十八番の号令を彼に託せばしばし二手に分かれての探索となるだろう。地の利を考えても不利は承知の上だったが、やるからには全力で。何事も”はじめての”という冠がつけば前向きな一歩を踏み出せるのだ。)
* 9/6(Sat) 22:18 * No.18
成功
(食欲の秋とはよく言ったもので、山の恵はきっと今も豊かに実っていることだろう。彼の笑う様にそうだろうそうだろうといわんばかりに幾度も頷いて見せる。学園長から命じられたお使いではある者の特段気負うこともなく、ただ、一応危険がないように、置いていかないようには配慮しているつもり。)なっはっは!おっと、これは内緒だったか?(わしゃわしゃと撫でた先の反応もまた温かい気持ちになるものだった。後輩は可愛い。反骨心のある後輩たちもそれはそれで可愛いが、こうして素直に可愛がらせてくれる後輩もまた可愛いものだ。特に口止めもされてはいなかったが、件の用具委員長が気恥ずかしさに眉を吊り上げる姿を思い浮かべては首をかしげる。もっとも、最終的には細かいことを気にしない方向で放り上げるわけだが。)そうだな!私も負けないぞ!見つけたらすぐに教えるように!(大きなヤマノイモを掘り当てる期待に、腰に手を当てて人差し指を顔の前に立てる。地の利も経験もあるが、それはそれ。彼の突き上げたこぶしに応じるように。)いけいけどんどーん!ヤマノイモ探し、始めッ!(山一つ分は届きかねない大声で号令をかけ、それぞれに分かれて群生地を探し始める。数分待とうか、という提案すらなかったのは、自分に利があることを知っていても、彼を侮っているわけではなかったから。)
* 9/7(Sun) 20:42 * No.21
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はいッ!!(響き渡る「始めッ」の号令を合図に駆け出すは早い。見開いた瞳に闘志を燃やし、)行くぞー!(勢いよく飛び出した。この時期ヤマノイモの葉は鮮やかな黄色に色づく。つまり目を凝らすような注意深さよりも運と運動量が物を言うというわけだ。ならば根性。学園長先生も忍者はガッツと言っていたし、と見つけるまで走り回る心算で。)えーと、ヤマノイモは黄色い葉っぱが目印で、蔓植物だから巻きつきやすい低木を探せばっと……(とはいえ体力脚力ともに真正面から勝負して先輩に叶うはずもなく、唯一五分と言えるのは運のみだ。そこに山奥での生活で得た知識を加味すれば、――さて、勝負の結果はどうだろう。やがて見つけた黄金の滝。)あッー!!(遠目にも生い茂った黄葉がよく見えた。近づけば細長いハート型の葉っぱが何枚も。間違いない。ならばすうと息を大きく吸い込んで、)七松せんぱあい!! 浜守一郎!ヤマノイモ見つけましたーッ!!!(平常時の大声の更に倍、の倍はあるだろう声が山中に。腹の底から出た声は遠く離れた彼の耳に届いたろうか。それとも案外近くに居たりして。もしかするともう勝負はついた後だったのかもしれないが、いずれにしても自らの力でやり遂げた達成感に、)やったぞー!
* 9/8(Mon) 10:27 * No.24
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(以前に見かけていたヤマノイモはどうやら収穫済みであったらしい。掘り起こされた地面の後を見て、すぐに別の場所を探し始める。豊富な力に恵まれた体は、山を上ったり下りたりしても支障がない。ヤマノイモはいくつか見つけたが、学園中の量を賄うには心もとない。多少身の詰まったものを数本か背負い籠にしまい込む。太陽も少し高くなり、影の大きさも少しずつ小さくなっていく。秋めいた気配を山の中からいっぱいに吸い込んで。ピクリと耳を動かし、彼の声を拾う。多少遠くにいたところですぐに駆けつけて、)よし、よくやった!(わしゃわしゃと彼の頭を撫でまわす。自分が見つけた分は数本程度。これほどに生い茂ったものならば学園中の皆にいきわたるに違いない。ワクワクと弾む心をそのままに、)よし、次はいけいけどんどんで掘り出すぞー!(発見の喜びにそのまま共感して、気合を入れるようにこぶしを突き出す。)うん、しっかり根を張っていて、うまそうだな!(塹壕堀の要領で、地面が堅かろうが遠慮なく苦無で掘り出してみせる。)うーん、すまん、守一郎、ここを頼めるか?(堅い地面を掘るのは何のそのだが、ヤマノイモに近い部分を掘りすぎて傷つけてしまってもよくないと、ふと気づいて眉を下げた。しかし収穫が無事叶ったのちには改めて「よくやった!」と朗らかに笑いかけるだろう。)
* 9/8(Mon) 18:59 * No.27
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(こだまする歓喜の声。その余韻も消えぬうちに大きな手が現れた。賞賛と労い、それから数本のヤマノイモを携えて。)わっ!(わしゃわしゃと掻き撫ぜるような勢いは本日二度目。驚きもそこそこに「へへ、やりました!」と胸を張ろう。)了解です! 次はいけいけどんどんですね!(そしていよいよ芋掘りタイム。流石は塹壕堀の名人。無駄のない動きで的確に苦無を突き立ていけいけどんどん。あっという間に土を掘り返していく様にほへーと感心。)あ、はい! (からの頼りにされればハッと我に返ってしゃがみ込んだ。そうだった。芋掘りは二人で協力の約束で、それが楽しみでもあった。)お任せください!!(ほとんど掘り返された其処を覗き込むとカッパの頭が見える。あとはイモの形にそって丁寧にその周りを掘り下げてゆくだけなのだが、細長いヤマノイモは石の避けて複雑な形をしていることもあるので要注意。協力して事を成すということが嬉しくて、しかしこの時ばかりは熱き心は封印し、力任せにポッキリ、なんてことのないように。)慎重に、しんちょーに。(を合言葉に無事大量のヤマノイモを収穫したならば、)おおーー!! これならみんなに喜んでもらえますね!!!(お褒めの言葉には満面の笑みで頷こう。そうして忍術学園に帰る道すがら、)それにしても、体験入学生ってどんな人たちなんでしょうね。これ、分けてあげたら喜んでくれるかな。(ずっしりと重くなった袋を揺らしながら。中にはムカゴ。他にも道中見つけた秋の味覚が幾つか。)……仲良くなれたらいいなって。七松先輩はどうですか?(歓迎の宴にて出会う新たな仲間たちへの期待を胸に、足取りは軽く。)あ、次はみんなでイモ探し競争しますか?(ついでに恐れ知らずの提案を。結局はっきりと勝敗を決することもなかったが、勝ち負けはさておき単純に宝探しのようで楽しかったから。こうしてまた思い出が一つ。土塗れとなったことすら勲章と言わんばかりに晴れやかな帰路を行く。)
* 9/10(Wed) 01:21 * No.33
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(胸を張って見せる後輩に、にかっと白い歯を見せて笑ってみせる。わしゃわしゃと彼の頭をなでる手つきはついつい楽しくなって、というあまりに単純な理由でのこと。)堅いところは任せろ!(なんて朗らかに。あっという間に近くにはこんもりとした土の山ができていた。二人で協力する、というのはいいものだ。堅い土を掘り進めて大枠を作るのは得意だが、自分の力加減ではうっかりとヤマノイモをバキバキに折ってしまっておばちゃんに叱られてしまいかねないのが難点。そんな力自慢を後輩がいるということそのものがたしなめてくれている。)しんちょーに……。(つい、なんとなく声を小さくしながらも彼と共に慎重にヤマノイモを掘り進める。思っていた以上の大収穫に大輪の笑みが咲くのは自然のこと。)だな!これだけあればいいだろう!うまそうだな……。(お駄賃代わりにちょっと分けてくれやしないだろうか?なんて邪念がひっそり。じっと芋を見てから背負い籠に入れなおす。)う〜ん、どうだろうなぁ。秋の味覚が嫌いな奴というのもそう多くはないんじゃないか?まあ、どれかは好きなものがあるだろう。(はてと首をかしげて思い描くは、此度の思い付きを披露した学園長先生のお姿。)守一郎も先輩になるのだからな、よく面倒を見てやるといい!私は目いっぱい可愛がりたい!(後輩というのは可愛いもので、それに『体験』という枕詞がつこうが変わりはない――が、こんなことを言うと加減をしてくださいと後輩には涙ながらに懇願されるので、ここだけの話。その代わりに後輩を迎え入れる経験の少ないだろう彼の背中をポンとたたいて激励を送った。少しして、彼の提案に目を丸くする。)なっはっは!それは楽しそうだな!是非やろう!(みんなでの競争というのは自然と沸き立つものだ。競い合うというのも、体験入学生という道の相手には特に楽しくなりそうだ。獣道を少し外れて、多少踏み固められた道を通りながら忍術学園へと帰っていく。太陽はたまごたちを祝福するように輝いていた。)
* 9/10(Wed) 05:02 * No.34
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