零、歓迎の宴の段
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【零】客間

(年の近いもの、離れたもの。年若さこそ共通すれどもその中身は幅広かろう。目が合ったものへは穏やかなほほえみを向け、周りの様子には騒ぎ立てることもなく気を配る。日頃と同じようにピンと背筋を伸ばしてありがたいお話には耳を傾ける。そうして続くのは新たな修行の場への案内か、と思えば。思いがけず出し物を決めるようにと言い渡される。ぽかん、と、温容なおもざしが驚きを浮かべたのもつかの間、学園長が立ち去る折には深く頭を下げてその姿を見送った。自分はまだしも、小さな子供たちが困惑してはいないだろうかと周囲に視線を配らせる。)はじめまして、鰐文寺英哉と申します。(ともかく、こうした状況に子供たちが困惑しているのならば手助けをせねば。)何やら、芸をとのことで…大丈夫ですか?手品や曲芸の道具は一通りございますので、もし御入用でしたらお声がけくださいね。(どこからか小豆のたっぷり入ったお手玉を取り出しながら。自分は芸の披露には慣れているが、それが常識ではないこともまた重々承知。完全にサポートに回る腹積もりであった。)
* 9/5(Fri) 22:11 * No.8

(流石は往年の天才忍者が開学した忍者学校だと言うべきか。客間へ導かれる道中だけでも分かる広大な敷地に視線があちらこちらと移ろい落ち着かないのは己だけでは無かっただろう。創設者たる学園長の有り難〜いお話も最前席で背筋伸ばして爛々と瞳を輝かせながら拝聴し、いざ言い渡されたのは――)……はァ、……?(出し物。歓迎される立場の我らが?――ぱちくりと猫目を瞬かせる間に学園長は去ってしまう。早々に学園内を探索する気満々だった出鼻を思い切り挫かれた気分で顎先擦り、一考する思考を震わせたのは穏やかな声だった。視界の端へ映る彼の手のひらに、ころり、まんまるお手玉が転がる。)それはそれは!貴方様はそのような類の芸がお得意なので?なんとも羨ましい!ワタシめもパッと披露できる芸の一つや二つ持ち合わせていればよいのですが、これがなかなかねェ……(そう言いつつも差し出した己の手のひら。本来の意図は“そのお手玉を貸してくれ”の意だが、)――ああ、申し遅れました!ワタシ、獅子谷千代丸と申します。猛き“獅子”が如くの強さを“千代”に八千代に追い求める者!同じ体験入学生として、どうぞよろしくお願いいたします。(そう告げつつもにんまり笑み浮かべてしまえば、挨拶の握手のようにも映ったか。)
* 9/5(Fri) 23:58 * No.9

(シャリシャリと音を立てて、男の両掌の間をちいさなお手玉が行き来する。気が付けば二つ三つと増えていきそうだったが、今のところは一つだけを手慰みにするだけに収まっている。)はい、辻でできるような芸は、一通り。道具を用いれば多少心持も楽になるかと思いますので、よろしければ。(穏やかなままこくんとうなずいて見せる様にはとりたてて自慢げな様子もない。単なる善意を控えめに申し伝えれば、両掌を移動していたお手玉の軌道を変える。そのままふわりと浮いたお手玉は差し出された彼の手のひらにぽすんと行儀良く収まるはず。)獅子谷くん…と、およびすればいいでしょうか、千代丸くん?こちらこそ、よろしくお願いします。(同年代の少年とのかかわりというものに、実のところあまり慣れてはいなかった。呼び名に迷いながらも折り目正しくお辞儀をして。彼の手のひらを見てハタと気づいたように掌で口元を隠す。)もしや、これは握手をすべきでしたか?(そうして、慌てて両手を彼に差し出した。両手で彼の手のひらを握りこむ形で握手をしようと試みているようだ。)
* 9/6(Sat) 01:21 * No.11

であれば鰐文寺殿にとって、出し物なぞ御茶の子さいさいでございましょう!……ですがそれもあくまで“鰐文寺殿にとって”のお話。(自ら意志を持って己が手のひらへ飛び込んで来たかのようなお手玉を、きゅっと握り込む。そして、)ワタシにかかれば、(ひょいっと彼を真似るようにもう一方の手のひらへ――)ッぶ、…………このザマです。(――飛び移ることなく、べシッと己の顎に激突して胡座をかく膝の上へと落っこちた。)どうにもワタシめは小物との相性が悪いようで。鰐文寺殿のように自在に操るなぞとてもとても……。ですから、鰐文寺殿のご厚意には甘えられそうもございませんねェ。(告げるなり、肩を竦めてお手玉を拾い上げた後。入れ違いのように差し出された両手を見て、薄い茶色の簾をも見透かすようにじいと彼の黒い眼を見て――ふはり、噴き出した。)“獅子谷”も“千代丸”も、鰐文寺殿のご随意に!恐らくはワタシより齢も上でございましょう?(僅かなやり取りの中で受け取った空気を疑うことなく首を傾げれば、一つ結びがふらりと揺れる。ちなみに、差し出された両手にはさり気なくきゅっとお手玉を握らせていた。)
* 9/6(Sat) 22:32 * No.19

そうなのです、ですから、何かお困りのことがあればお力になりたいと思いまして。入学後は皆様に助けていただくこともあるでしょうから。(忍者の心得などは持たず、右も左もわからない。同じく体験入学生である彼を頼りにする機会もあるだろうからと微笑む姿にはやはり穏やかに。けれど彼のお手玉が膝の上に落っこちる様を見てついあっと声を漏らす。)これは、失礼を…すみません、(掌で口を隠す。目じりが落ちている。腹を抱えて笑うことこそないが、確かに笑っていた。)すみません、修業を始めたばかりのころを思い出してしまいまして……。そうでしたか。小道具を使わぬ芸となると、僕は他には歌くらいしか…。ぜひなんかお力になりたいと思うのですが…。獅子谷くんは何がお得意でいらっしゃいますか?(人の失敗を笑うつもりはなかった。慌てて咳払いをして目線を下げて謝罪する。思えば何が得意化も聞かないで芸の提案というのもいささか先走りすぎていたかもしれない、と、小首をかしげて見せて。)では、獅子谷くんと。僕の齢は十四となります。そうたいして変わりはないと思いますが…。なにより、体験入学生という僕たちの立場には何の変りもございませんし。(柔らかく微笑みながらも、彼が自分に年上らしさを感じたらしいように、自分も彼に年下らしさを感じていた。両手で包んでお手玉を受け取ると、はにかむように笑ってみせる。)
* 9/8(Mon) 11:02 * No.25

それは頼もしい!本日に限らず、鰐文寺殿は頼られる機会の方が多そうだ。……これは鰐文寺殿の一番弟子の立場でも確保して、いざという時真っ先に頼れる権利を得ておくべきでしょうかねェ?(猫目をにんまり細めながら、柔い微笑みを見遣った。時に狡猾さと冷酷さを求められる忍者という職において、彼はどうにも――…。)おや。(口元を手のひらで隠した一瞬、言葉選ばねば濃淡の無さそうな彼の笑みに異なる色が差して猫目が僅かに丸くなる。が、すぐに軽い笑みがこぼれ落ちた。)いえいえ、ワタシは小手先に関しちゃあ赤子よりも拙い自覚はございます故!(だから気にしていない、とばかりに再び双眸を細めよう。)ワタシの特技ですか?ふーむ……。(して、差し向けられた問には顎先を擦る。なにせ、)ワタシめの自慢はこの腕力、脚力、そして無尽蔵の体力!……故に、お披露目出来るような特技と言えば林檎を片手で握り潰したり、薪を素手で真っ二つに割ったり?芸と申すにも地味なものばかりなのですよねェ(芸達者と力自慢。相反する己等の特性に果たして手を取り合える要素があるだろうかと、同じ方向に小首を傾ぐ中。)――んふふ、ここでは齢二つの差も些事ということですね。それは何より!尚の事、肩の力を抜いて過ごせそうです。(年功序列を取っ払ってくれるその姿勢には、ちゃっかりしっかり甘えて笑ってしまおう。)
* 9/9(Tue) 18:52 * No.30

未だ修行中の身ではございますが、お役に立てる機会があるのでしたらうれしく思います。もちろん、獅子谷くんにも。師となれるほどに円熟してはおりませんが、頼りにしていただけるのなら身命を賭してご助力いたしましょう。(穏やかに微笑み、胸元に手を添えて軽く一礼してみせる。彼の言葉が冗談であれ何であれ、柔らかなままのほほえみはこの先も変わりないと、男自身は思っている。一方で不覚にもこぼしてしまった無礼な笑みの行方は咳払いと共に放り投げてしまいたい。)有難うございます…大変、失礼をいたしました。(彼の細められた双眸に、一度深く頭を下げて謝意を示す。そののちに次々に挙げられた彼の特技に目を丸くし、笑みを深くして賞賛の意を示す。)素晴らしいお特技かと。…二人で興じるのでしたら、僕がお手玉にして投げた薪を獅子谷くんが二つに割る、というのはいかがでしょうか?(得意分野は異なるようだが、と、暫し思考の間を置いて。思い付きの一つを投げてみる。曲芸めいたものは得意だから、彼の手元に届くように投げることはできるかもしれない。――生憎、二人並んで芸を披露する機会というものも少ないから、皮算用めいたもの。)他の皆様方のご意向はわかりかねますが…僕に関しては、どうぞご自由に。序列で縛るよりも自由なふるまいをしていただくほうが、僕はうれしく思います。獅子谷くんの勇ましく魅力的なお姿も、きっとそちらのほうがよく見えるでしょう。(彼の笑みに柔らかな笑みはますます深く。)
* 9/9(Tue) 23:20 * No.32

身命を賭して、でございますか……。(緩やかに揺れる前髪の奥を射抜くように、頭垂れる姿を真っ直ぐに見る。滅私奉公の精神は立派に孵化せんとする忍者のたまごにはうってつけなのだろうが――)不躾ながら、……センパイ方にもいずれ聞かれるやも知れませんが。鰐文寺殿は何故この体験入学の誘いを受けようと?忍者として世を忍び影に徹するよりも、表立って人助けをする方が鰐文寺殿の気質にもお似合いでしょうに。(齢十二の拙い目線を以てしても、その精神はこの世界には危うく映ったが故。純然たる疑問を、黒い眼へ投げかけた。その眼がひとたびまん丸く開いた後、向けられた案には「ほう!」と思わず感嘆が漏れる。)なるほど、それはよい!『曲芸:おてだまきわり』とでも申しましょうか。鰐文寺殿が薪をお手玉が如く軽々と操り、ワタシがそれを宙で割る!(やはり芸達者の思考回路は力自慢のそれ等遠く及ばない。満足気に頷けば、)であれば、鰐文寺殿はどんどん数や高さを増やしつつ薪でのお手玉を続けてください。ひたすら貴方様の真上に!ワタシは鰐文寺殿の頭上を軽々飛び越えつつ、薪を次々と割ってみせましょう!(当然彼へ割った薪をぶち当てるつもりも毛頭ない。自信満々に告げた後、「……出し物のお披露目場所が屋内限定、で無ければ……」はたと浮かんだ制限事項はこの際目を瞑ってもらえると信じよう。)ややぁ、兄君のような広く深いお心構え!忍術学園のセンパイ方も、鰐文寺殿のような懐深きセンパイが多ければよいのですがねェ(未だ姿見えぬ“忍たま”の上級生らを思うように、学園長が消えていった方向へじいと視線を送った。)
* 9/10(Wed) 17:36 * No.37

(まっすぐにみられたならば、ほほえみを持って応じるのみ。前置きを添えての彼からの問いかけに、幾許か生まれた沈黙は応じるべき言葉に迷ってのものだった。)人様にお伝えできるような理由ではございませんよ。ただ……、そうですね。人助けをするにも、考慮すべきものが多い時代柄に感じます。…この答えでは、獅子谷くんのご心配を晴らせませんか?(微笑みを浮かべたまま、ゆるりと頭を振って見せる。忍術学園なる学び舎が集めるものが、彼のような人材であるならば確かに己は場違いであるかもしれない。元々体験入学に諾を示した理由などは他言するつもりはなかった。だから柔らかな態度で口を閉ざすだけではなかったのは、彼の言葉をこちらを案じてこそのものだと受け取ったが故。――して、差し向けた案に快い反応が返されたならば安堵も交えて。)おてだまきわり、ふふ、申し出るにも通りが良い名ですね。獅子谷くんも大変かとは思いますが、(と気遣いながらも重ねて頼もうとし、しかし、彼の言葉に徐々に明らかになる芸の輪郭は、)ふふ、とても楽しそう。(素直にそんな感想をこぼすほど――そこに薪を上げられない不安も、木っ端が当たる不安もなかった――心が躍るものだった。芸を演じよというからには、さすがに多少広い場所を与えてもらえるとは信じたい。「どなたか先生がいらっしゃったら相談してみましょう。一応、軽く練習もしておきたいですから」と応じてきょろ、と視線を障子の向こうに向ける。)学び舎で長く過ごされている方々ですから。僕のような旅の者より、よほど人心に明るい方が多いのではないでしょうか。きっと、お優しい方々ですよ。(後輩たちを守り、集団生活を長い間送ってきた人々だろうと微笑む様はやはり穏やかで。)
* 9/11(Thu) 12:29 * No.38

(“濃淡が無い”印象はあながち間違いでは無かったようだ。誰とでも分け隔てなく接しているようでいて、常に厚く高い壁を築き上げる技巧――…成程、彼が器用なのは手先だけでは無いらしい。)……いえ。出過ぎたことを申しました。お忘れください。(此方からは問うた癖、彼の問いには答えない。何せ、人様に伝えられない理由を持ち合わせているのはお互い様だ。意識を出し物へと移すべく、猫目を細めて笑ってみせよう。彼と同じ色の笑みで。――まぁとは言え、)ええ、そうでしょう、そうでしょう!鰐文寺殿にとって出し物の類が御茶の子さいさいであるならば、ワタシめにとって人ひとり跳び越え続けることこそ朝飯前!(こうしてフフンと胸を張る頃には、すっかり歳下じみた幼い笑みに逆戻りなのだけれども。)せっかく人前で披露するのです、緊張よりも愉悦を覚える演目の方が我々もやり甲斐がございましょう!――練習時間はあまり多く頂けないと考えてはおりますが、それでも失敗の画なぞ浮かびません。忍術学園のセンパイ方、全員の目をすべて奪い尽くしてみせましょうぞ!(先程のように差し出した手は、此度はしっかりと“ご挨拶”の意図を持って彼の手元へと向けられた。そのまま握るもお手玉を再び握らせるも、彼次第だ。)いやいや、此処は忍術学園。天才忍者・大川平次渦正が開学し、一流の忍者が集う強豪!センパイ方とて、他者にも己にも厳しい益荒男が勢ぞろいしていてもおかしくは――…、……うん、?(わざとらしく恐れおののいてみせるはもちろん揶揄混じりではあったけれど、不意に混ざった単語にふと引っ掛かりを覚えて揶揄が止まる。)……旅の者?鰐文寺殿、旅をしておられたのです?(それは先のように探る色では無い。ただただ純粋に、純朴に、興味の矛先が真っ直ぐ向いた。)何処まで足を伸ばされたので?海の向こうへ出向いた経験はございますか!?(こうして猫目を釘付けにさせてしまったのが運の尽き。根掘り葉掘りの土産話掘り起こし大会はさて、いつまで続く?)
* 9/11(Thu) 17:19 * No.40

なんと、素晴らしいことでいらっしゃいます。僕も負けていられませんね。(長い間歩くことはできても飛び跳ねて人を超えていくことなどできはしない。素直な賞賛を瞳に乗せて微笑む姿は年下をほめそやす調子にも似て。得意分野が違うからこそ、この芸も映えるというものだろう。観衆が沸き立つであろう姿を想像しても、いざ自分たちが演ずる姿を想像しても心は踊る。)ええ、まさに。芸を見せて楽しんでいただくためには、こちらが楽しむ構えも必要ですから。呼吸を合わせる時間だけ、あればいいですものね。…ふふ、不思議と、できるような気がいたします。(初対面同士での協調である。だが、課題といえばおそらくそれだけだろう。お手玉にするのも薪割りをするのも、お互いに大きな課題ではない様子。多少練習の時間が少なくとも課題ではないようにすら思ってしまう。改めて差し出された手を両手でしかと握り、挑戦的なその目標への協同を示してみせる。微笑みこそ穏やかではあるけれど、自らの芸に対し卑下するところはないつもりであり、彼への信頼と期待も示して見せる。)一流の忍者とは、そのような益荒男揃いなのでしょうか…?(一流の忍者、と称される人々への見識は非常に浅い。先ほど相まみえた学園長も自他ともに厳しい益荒男のようには一見して見えなかったが、と考え込んでいたものだから、彼が何かに引っ掛かりを覚えているのだと知るには少し遅れて。)ああ、はい。僕は出雲のほうから…(柔く微笑みながら軽く旅路に触れようとして、強い興味を示されたとなれば少しばかり驚いたように目を丸くする。しかしそれもつかの間、これまでの旅路や旅先での人々について語って見せるのは当然のこととして。いつしか食事時を示されるか教師が顔を出すまで、旅の話は続いていくだろう。土産話を口遊み、興味に応じることは実のところ、楽しいもの。)
* 9/12(Fri) 22:53 * No.42


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