肆、変姿のいろはの段
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【肆】18日目:町中

(先日の女装の授業での出来栄えはなかなかのものだったようで、女装が得意な立花先輩より日頃から指導を受けていたおかげだと感謝して。そして本日女装の実習授業が行われ、恋仲設定の相手役をときめかせたら合格だそうだが。さて、ときめきとは如何なるものなのだろう。人は恋仲の相手と共にいればときめくこともあるのだろうか。未だ恋を知らぬ己には難しい課題だ。それに今日出かける先を考えるのは男役である自分の役目。いつもなら何処にでも行っていいと言われれば喜んで穴掘りに出かけるけれど、今回は相手をときめかせる場所に出向く必要があるし、女装する際は化粧をし女物の衣装を身に纏うのだから、穴掘りなんかすれば化粧は崩れ綺麗な着物も泥だらけになってしまうだろう。であるから、穴掘りに行くのは断念した。そして思いついたのは、町に出かけること。)理助さ、……あの、今日はなんてお呼びすればいいでしょう。(忍術学園より少し離れた場所にある町についたのはつい先程のこと。実習の相手役はお世話係でもある理助さんだった。山田先生が女装する時は「伝子よ〜」などと自称しているが、理助さんはどうだろう。)あのう、一応今日の予定なんかも考えてきたんですけれども。それとも、何処か行きたいところとかありますか?お団子やお茶を出す店や、白粉や紅を売る店、古い着物を売る店などなど、色んなお店が揃ってますよ。(私服姿で理助さんと町にいると、今が実習中であることを忘れてしまいそうで。楽しんでもらおうと緩く今日の予定も考えてきたが、一番は彼……彼女?の行きたいところへ行くのがいいだろうと、とりあえず聞いてみた。)
* 11/9(Sun) 09:51 * No.1

(「理助、お前の女装はひどすぎる。女装とは男らしさを隠すことではないんだぞ? お前は女装……いや、女性のなんたるかを全くわかっとらん」とは、先日の初女装に対する山田先生の講評で。結果落第を言い渡された男は名誉挽回のため今日この日を待ち望んでいた。化粧の練習、立ち振舞の練習に励み、しかしたかだか二日。前進どころか迷走してやや後退気味。無駄に目立つばかりで似合わない白い花飾りはやはりあった方が女性らしいのでは?と考えた末左耳の上に咲いているし、もとの顔を隠そうと濃すぎる化粧もそのままに。進歩の兆しを見いだすとすれば、せいぜい男らしい歩き方が着物の裾を乱さなぬようになったくらいか。――とはいえ、女装。恋仲。ときめき。トキメキ 、とは? かろうじて前ふたつの意味は理解できたが最後はちんぷんかんぷんだ。聞き覚えはあるが具体的な定義は知らないそれ、を今隣にいる彼に感じされなければまたしても落第だという。困った。)……。(本当に困った、という顔をして彼と会い、よろしく頼むと挨拶をした時はいつもの男の声色で。けれどそれではまずいと以降所作に気を使うあまり真剣さが硬い表情を生み、ろくに話もせずに町までやってきてしまった。もしかすると彼の言葉を何度か聞き逃してしまったこともあったかも。)……ん、?(それでもはっきりとした問いには顔を上げ、「ああ、呼び方か。……いや、呼び方、ね。うん。」とぎこちなく頷いた。)山田先生からは女性名を使うよう言われたが、んん、言われたのですけれど? なので、……栗子…? いや、理子…?(そうして迷った末に自らの名をもじったそれらしい呼び名を差し出せば、あとは彼が呼びやすい方を選んでくれというように、女言葉に慣れない口がすぐさま閉じた。)それと、今日はお前………や、貴方にお任せいたします。(そして敬語を使うのが最も無難と帰結すれば、彼の気遣いをありがたく思いながらもそう告げて。)私には女性が喜ぶような場所がわからないので……喜八郎の方が私よりも知識があるでしょうから、……女性がトキメク?場所とやらに連れて行ってもらえたら学びになるかと。(それからそっと目を伏せて、)……とまあ、このざまだ。……相手が私ですまないな。(呟けば、いつもより長い睫毛がばさりと揺れた。)
* 11/9(Sun) 11:38 * No.2

(実習の内容を聞かされた時ははたして無事に合格できるだろうかと不安を覚えたものの、実習の相手役が理助さんとあると知れば少し緊張感が和らいだ。ときめかせることは難しくとも、理助さんと二人で何処かに行くのは楽しそうだとも考えて、気持ちも前向きになり。実習当日、女装姿の理助さんと顔を合わせて挨拶し、「町に出かけましょう」と誘って。彼女の髪に咲く花飾りに目を止めれば、「花飾り、可愛らしいですね。似合ってます」とさらりと誉めてみた。困り顔の彼女にこちらはいつもと同じ無表情で、町へと続く道を歩きながら話しかけてみたりしつつ。理助さんの女装姿は少々化粧が濃いようにも見えるが、努力の跡が垣間見えてなんだか可愛らしいとも思う。しかし恋のいろはも知らぬ穴掘り小僧は、その感想は口に出さず心の中に留めて。)栗子さんか理子さんかぁ。う〜ん、それでは理子さんとお呼びしますね。よろしくお願いします、理子さん。(提示された二つの名の片方を呼び名に決めて。いつもの理助さん呼びに似た理子さんを選べば覚えやすいだろうという心算。)いいんですか?いやー、僕も女性がときめく場所ってよくわからなくって。でも任されたからには頑張ってときめく場所に案内してみせます。(以前町に来た時に見かけた様々な店を思い出しながら、片手の拳をぐっと握って決意表明。)んー、僕は相手が理子さんでよかったなあって思ってます。理子さん、ちゃんとお化粧もして花飾りもつけて、女性の綺麗に装いたいという気持ち、体現なさってるでしょう?そういう頑張って綺麗になろうとしているところが、僕はいいなーって思って。(少し照れくさくて、視線は空へ向けながら。)よし。じゃあまずは、この先にある匂い袋を売る店を見に行きましょうか。(ぱんと手を叩いて理子さんの顔を覗き込み、気持ちを切り替えるように明るい声で誘いかけた。)
* 11/10(Mon) 15:53 * No.7

(白い髪飾りも桃色の着物もわかりやすく可憐で清楚な乙女のイメージ。自然な女性に見せようという意識よりも「女性に化ける」という思考が色濃く反映された衣装は自らに似合うか否かという尺度を持たずして選んだせいか、濃すぎる化粧と相まって悪目立ちの要因だった。濃い顔と髪に浮かび上がるように咲く白い花、それを彼が似合うと言ってくれた時には驚きを通り越して感心すらしたものだ。なるほどこれが出来る男というやつか、と。なればこそ、彼に見合う女性らしく振る舞わねばと緊張が加速していったわけだが。)わか……りました。こちらこそよろしくお願いいたします。……ええ、何処に連れて行っていただけるのか期待しています。喜八郎、さん。(敬語ついでに敬称をつけてみたのはなんとなく、その方が“らしい”気がしたので。とはいえこれまで若い女性との付き合いなどなく、脳裏に思い浮かべた女性像はなけなしの想像力をかき集めたおぼろげなもの。たとえば男性に付き従う控えめな姿勢。相手を立てて、肯定する…ばかりでいいのだろうか。エスコートは男役の務めと聞いてはいたが、頷くばかりでは怠慢か?と生来の生真面目さゆえに眉は下がるばかり。思わず謝罪がこぼれたのもそのせいだ。)………そ、そうか。(それなのに、彼はなんてことない顔で男の情けない心情を受け止めてくれた。)…ありがとう。(結果ではなく女性らしさを求める向上心、男の気概を肯定してくれたことが嬉しくて、今度は感心より安堵で胸がいっぱいに。相変わらずの伏し目がちで表情はよく見えないだろうが、弓なりの形を描く紅色の唇は平生よりも色濃く喜色をたたえていた。)……はい。(そうして気持ちを切り替えたなら、そっと彼に寄り添うように。恋仲の二人の適性距離は知らないが、近い方が仲は良さそうに見えるだろう。間違っていても彼と二人ならなんとかなる、そんな気がして先ほどよりもしっかりとした一歩を踏み出した。)
* 11/11(Tue) 15:29 * No.10

(くの一教室に所属するくの一達とはそれほど仲が良いわけでもなく、くの一以外の女性と接する機会も今までそれほど多くなかった。そのため女心などまるでわかっていない自分は、ただ理子さんを見た時に思ったこと――あ、髪飾りをつけてる、綺麗だなあ、似合うなあ――を幼子のように素直に口に出してしまって。それが良いのか悪いのかすら頓着しないまま、町に向かう道すがらやっぱり女の人と一緒に歩くのって歩調も合わせなくてはならないし、いつもと少し異なるなあとのんきに考えていた。)はい。喜八郎さんはご期待に添えるよう頑張ります。でも、町を歩いている途中で気になるところがあったら教えてくださいね。そこにも立ち寄りましょう。(さん付けで呼ばれると、なんだか少しくすぐったい。今更ながら今共にいるのは理助さんではなく、女性である理子さんなのだと認識を新たにして。先程から常と違って少し大人しい様子の彼女のことが気になったけれど、これも理子さんが女装に専念しているからだろうかと考えて。)どういたしまして、です。(空から彼女へと視線を動かして、こちらは照れくささからはにかんだ笑みを一瞬浮かべ。それから彼女と共に目的の店に向かって歩き出す。)わ、どうしまし……ってそうか、今の僕らは。そうでした。こほん、失礼しました。理子さん、店はこっちです。ほら、もう少し先にある、あそこです。(縮まった距離に少し驚いたものの、すぐに実習の設定を思い出して納得し。流石理子さん、慣れた感じがかっこいい、なんて思いながら、目的地を人差し指で指し示す。小さなその店先には、最近流行りの色とりどりの布袋の中に香料を閉じ込めた匂い袋が並べられている。理子さんの歩調に合わせながら、てくてくとその店の前まで歩いて行って。)わぁ。色んなのがありますね。この桃色のは何の香りがするのかなあ。理子さんはどれがお好みですか?(陳列された匂い袋を眺めながら、理子さんに問いかけて。店の奥にはこの店の人らしい上品な雰囲気の老婦人が立っていて、にこやかに、だが声はかけずにこちらを見守っている様子で。)
* 11/12(Wed) 16:16 * No.12

……此処が、(勇気を振り絞っての一歩をまさか良いように勘違いされているともつゆ知らず、傍目には、否、遠目には若い男女が連れ添う姿に見えただろうか。やがて辿りついた店先から香る匂い。歩み寄れば目にも楽しい色鮮やかな布袋の数々にほう、とため息を吐いた。このような洒落たものとは縁遠い生活を送ってきたが、あわい香りが自然と張り詰めていた緊張をほぐしてくれたようで。)ええ、……匂い袋とはこんなに種類があるものなのですね。(感心を滲ませた言葉と視線が色とりどりのそれらをなぞる。赤、青、黄色。彼が見つめた桃色をそっと手に取れば、店の奥に居る老婦人と目が合った。「どうぞ」という顔で此方に微笑んだ彼女に軽く会釈をしたのち、鼻先に運んですん、と匂いを嗅いだ。)…すっとした香りがする。(それから他の袋の匂いも嗅いでみる。先ほどと似た香りのようでいて、少し異なる気もしてつい、「これは、何が入っているのですか」と問うてみた。丁寧に紡いだつもりでも普通の女より十分低いその声。しかし店先に出てきた彼女は不格好な女装に驚いた様子もなく、男が手に取った幾つかの匂い袋を指さして順に香原料の名を挙げた。「どうぞ他のものも試してみてください」と促されるまま残りも嗅いでは、やがて紫色の袋を手に取った時、あ、と思わず声が華やいだ。)これ、若様の香とよく似ている…!(白檀の甘く清涼感がある上品な香りに頬を染めれば、それが「お好みの匂い」の答えとなったろうか。)
* 11/13(Thu) 00:58 * No.14

お店の人の手作りなのかな。綺麗ですねぇ。(理子さんの手の中にある桃色の匂い袋も、陳列棚に置かれている様々な色の匂い袋達も、鮮やかな色彩で美しい。老婦人に会釈する理子さんに倣い、己も軽く老婦人に頭を下げて。)爽やかな香りなんですね。じゃあ僕は、こちらを見てみようかな。(他の匂い袋を取り、くんくんとおやつの匂いをかぐ動物のように香りを確かめてみると、甘いお菓子のような香りがした。それから理子さんが老婦人になかみを質問するのを聞いて、説明された匂い袋を己も持ち上げ匂いを嗅ぎ、なるほどこの香りはこういう原料が使われているのかと感心し。そうしている時、ふと聞こえた理子さんの声に瞬きを一つして振り返り、持っていた匂い袋を棚に戻して彼女の近くに歩み寄る。)……やっぱり、綺麗だなあ。(小さく笑んで理子さんを眺める。零れ落ちた言葉は、彼女に聞こえなくとも構わない位に静かな調子で。)出会えましたね、好きな匂い。……それじゃあ、すみません、こちら幾らですか?購入したいのですが。(それからまたいつもの緩い声で、前半の言葉は理子さんに向けて、後半は傍で店番をしていた老婦人に話しかけて。こちらと手で指し示すのは、理子さんが持つ紫色の匂い袋。値段を老婦人から教えてもらえれば、腰に下げた巾着からお小遣いを入れた袋を取り出して。)理子さん、そちらの匂い袋、今日の記念にどうぞ。それがあれば今は身は若様と離れていても、心は近くにいるように感じられると思います。(喋りながら老婦人に匂い袋の代金を支払って、満足げに一つ息を吐いた。)
* 11/13(Thu) 16:18 * No.16

(彼が何かを呟いた、ような気がした。ただ、はしゃぐ男の声がそれをかき消したのか、内容までは耳に届くことはなかったが。)ああ! …じゃなかった、ええ。(浮き立つ心に素が透けて、慌ててまた気を引き締めて。それでも懐かしい香りとの再会に浮かれていると、彼は平素の落ち着きをもってしてあっという間に話を進め、)え?(気づけば手中の匂い袋が贈り物となっていた。わずかに見開いた眼。はじめこそ戸惑いと遠慮を滲ませた視線を返すも、その満足げな様子を見ればこれ以上は無粋と知る。それに老婦人の手前、己の役割を思い出しては、)…ありがとうございます。喜八郎さん。(静かに頷く。演技でもない喜色と感謝を小さな声にのせ、貰ったばかりの匂い袋をぎゅ、と抱きしめた。若様の匂い。「大事にしますね」――仮にも恋仲の二人という設定。そのくせ、女は遠くにいるらしい別の男を想い、男の方は穏やかにそれを見守るという図は冷静に考えればとんでもない状況に違いないのだが、第三者による審査もなければそこまで気の回らぬ当人たちは幸せそうに微笑んでいるのでひとまずセーフ、でいいのだろうか。傍目には微笑ましい一幕と相成った。)…喜八郎さんは? 何か気に入った香りはなかったのですか。(もしあれば今度は此方が贈りたいと思ったが、華やかな布袋を見ているとあくまで女性向けなのだろうか、とも思い直して、)何処か、喜八郎さんも使える物を売っている場所があればいいのですが。(と呟いた。様々な店が連なる町中ならば、何か素敵なものが見つかると期待して。)
* 11/15(Sat) 00:32 * No.18

良かった、こちらのお店に来て。(傍から見れば連れ合いの女性がお気に入りを見つけて、それを喜ぶ少年という風に受け取られるだろうか。実際は恋仲という設定を演じる二人なのだけれど、老婦人は微笑ましそうにこちらを見守っていて。代金を支払うと、老婦人は「お二人共、これからも仲良くね」と温かな笑みを添えてそっと声かけしてくれた。それにしっかり「はい」と頷いて。)喜んでいただけて良かったです。僕らがいつかまた元の道に戻る時が来ても、此処に来た思い出にその贈り物を持っていてくださったら嬉しいです。(いつか体験入学が終わりそれぞれの場所に別れる時が来ても、この匂い袋が繋いだ縁の証になってくれればいい。老婦人の視点に立てば若様に焦がれる娘と彼女に横恋慕する少年のような関係に見えたかもしれないが、老婦人はただ微笑んで「お買い上げありがとうございました」とだけ述べて、店の奥に戻って行った。)うーん。どれも良い香りでしたけれど、僕の好きな匂いって穴掘りの時に包まれる土の匂いなんですよねぇ。土の香りはなかったみたいです。調合するのも難しいのかもしれません。(花の香りやお菓子のような香りの匂い袋はあれど、土の香りとは出会えず。残念だと肩を竦めて。)そうですね。じゃ、何か良いお土産が見つかるまで少し町を歩いてみますか。疲れたら言ってくださいね。町の中にはお団子やお饅頭とお茶をいただけるお茶屋も何軒かあるので、歩き疲れたらそこで休みましょう。(今いる町はそれなりに大きいところで、ただ歩いているだけでも様々な店が目に入る。お土産は見つけられても見つけられなくてもどちらでもいい。彼女が楽しんでくれるなら。)では、行きましょうか。どうも、ありがとうございました。(理子さんを促して、老婦人に礼を述べてから歩き出す。)
* 11/15(Sat) 15:50 * No.20

(すっかり当初の設定を忘れていたが、若様の香りに舞い上がりながらも女性らしい口調を保ったことだけでも褒めてほしい。結果的に仲睦まじい二人と認められたことが嬉しくて、失態にも気づかぬままこれからも仲良くと言われれば彼と同じく、あるいはそれ以上に力強く「はい」と頷いて。言われなくともそのつもりだと言わんばかりに強い瞳が彼を映す。)……そうですね。(けれども気づけば折り返し地点を過ぎて、”これから”の残り期間はそろそろ両手で足りるほど。はじめこそ長すぎると感じていたひと月があっという間にとけてゆくのを感じながら、城に戻ったならば、今度は彼を恋しく思う日々が待っているのかもしれないと、ふと思った。)……土の匂い。なるほど。(彼らしい答えに思わず素が出る。「調合も何も、土なら幾らでも其処らにあるだろうに」随分安上がりな男だと、ふ、と笑う声に愉快さが滲んで。確かに何度か借りた洗髪剤の甘やかな香りより泥土の匂いの方が記憶に多い。ならば彼を思い出すための匂い袋など要らないのか、と一人笑って。)ええ。(そうして店を出る頃には再び理子の装いで、ゆったりと歩きながら町を見て回る。様々な店を覗き込んだが、これといって琴線に触れるものが見つからなければ一旦茶屋で休憩を、という流れとなった。)洒落た店というのは女性用の物ばかり目について、なかなか難しいですね。喜八郎さんの好きなものをと思いましたが、穴掘りのための何かというのはあまりに色気がなさ過ぎる気がして。(店先を一緒に覗くだけでも楽しかったが、理子としての振る舞いを意識すればするほど窮屈さはぬぐえない。運ばれて来た茶にそっと口をつけ、吐き出す溜息の量すら調整するのが億劫だった。)…はあ、一旦理助に戻っていいだろうか。(ゆえにそっと吐いた弱音は囁くように。)……すまない。先ほどまでお前に連れられてちゃんと楽しかったんだが……どうせ町に来るのなら、私が喜八郎と楽しみたいのに、と思ってしまった。
* 11/17(Mon) 01:50 * No.24

理子さんの若様ともいつかお会いしてみたいですけどね。でも忍者のたまごといえど、いつ敵になるかわからぬ者とは会わない方がいいのかもしれませんし。(だから体験入学が終われば理子さんとも理助さんとも会えなくなるかもしれない。一抹の寂しさに包まれて俯きかけた頭を無理やり持ち上げて。)確かに。土の香りの匂い袋を持つ利点ってなんだろう。忍務でしくじって怪我して動けなくなった時、匂い袋をかいで落ち着く〜ってやれるところとか?(だが理子さんの言葉通り怪我をしてもそこら辺にある土を掴んでかげばいいのだから、匂い袋として持つ利点は特に無いのかもしれず。そんな話をしながら匂い袋を売る店を出て、ぶらりと町歩きを始めたものの。様々な物を売る店はあれど、購入とまでは至らずに。)男性が女性への贈り物を買い求めるならいいでしょうけれど、逆はあまりないんですかね。でも男の子だって買い物したい時あるのになあ。僕は穴掘り関連ならなんでもほしいですが、理子さんが気にされるなら無理に選ばなくてもいいとも思いますし。(そして現在、茶屋にてぐで〜っと椅子に座りながら休憩中。ちゃっかりお団子も注文して、勿論支払いは自分がもつつもり。)ええ、どうぞ。理子さん、また後程。(理子さんに一旦別れを告げて。)わあ、理助さんだあ。僕も理子さんも好きですけど、理助さんともぶらり町歩きの旅実習編に興じたいです。でも、そうするためには。(そこで一度言葉を切り、お団子の串を摘まみ上げ、道行く人々を点と点で結ぶようになぞって動かしていく。)理助さん、周りに妙な様子の人、います?こちらをさりげなく監視しているような。もしかすると、山田先生が変装してちゃんと恋仲のふりをしているか見ているかも。(お団子を一個もぐもぐ食べながら通行人を観察する。一度疑い始めれば今目に入ったあの人もその人も怪しく見えて。)
* 11/17(Mon) 16:27 * No.25

どうでしょうね。私は女性から贈り物を貰うどころか、女性とあまり関わったこともないのでわかりませんが、そういうものなのかもしれません。(現に紅や白粉、櫛に簪。綺麗な色柄の布。”想い人”への贈り物にと売り文句を高らかに叫ぶ店員が居るのは大抵そういう店だった。)……ええ、本当に。(男とて鍛冶屋でも覗けば幾らでも時間を溶かすことができるだろう。男性が好むものは大抵女性には贈りづらいものなのかもしれない、とまた一つ賢くなったような心地で気の抜けた様子の彼の旋毛を眺めながら。)……喜八郎もそう思うか?(此方も気を張り詰めての女装は一時中断。とはいえ急に姿勢を崩すこともなく、揃えた足やお茶を飲む仕草には最低限注意しつつ。)…ん?(口調だけを崩して彼との町歩きを夢想しかけた矢先、視界の端で串が軌道を描く。)…なに。(つられて視線だけを右へ、左へ。聞こえた「監視」という単語にびくりと肩を揺らせば、はっと我に返って口を結んだ。)……可能性は、ありますね。(再び紅を引いた唇を動かしたのは理子だった。確かに誰かに見られているような――それは単に男のひどい女装姿に対する奇異の目だった気もするが。)……試験の途中で休憩をしようなどとは、私が甘かったです。(一時の気の緩みを恥じて目を伏せたのち、)何事も最後まで全力でやらねばなりません。(何やら固く決意をした様子で呟いた。そうしてまだ手を付けていなかった自分の分の団子の串を摘まみ、)喜八郎さん、どうぞ。(彼の眼前に持ち上げた。何故急にそんなことをと言われれば、近くの席で寄り添う男女が同じように団子を食べさせ合う姿が見えたからだ。彼の手には彼の団子が。しかし恋仲の真似事に必死な男はとりあえず差し出した三色団子をずい、とその口元に近づけた。)
* 11/17(Mon) 23:31 * No.27

理助さ、じゃなくて理子さんもあんまり女性とお近づきになったことないんですか?僕もです。最近喋った女の人は食堂のおばちゃんです。おばちゃん、美味しいご飯を作ってくれました。(勝手に仲間意識を抱いてほくほくしたりしつつ。おばちゃんは忍術学園における母のような存在なので、女性として意識したことはあまりない。故に女性と話すというより母と話すような心地で。)まあ、何も買わなくても思い出はいっぱい作れたからいっか。(能天気な声を出して良い感じにまとめようとしながら、茶屋で思いっきりぐだぐだとくつろいで。)今日も実習のお相手が理助さんだと知り、一緒に町にいけたら楽しいだろうな〜って思ってここにお誘いしました。さすがに穴掘りは自重しまして。(とは言ってみたものの、監視の可能性を思えば無理に理助さんをこの場に留めることもはばかられ。)あ、理子さんだ。どうも、さっきぶりです。まあ、僕らがあまりにもお似合いすぎて、羨ましくて皆がこっちを見てる可能性もありますが。(道行く人々にお似合いすぎて寧ろ怖いと思われているのかもしれない。)休憩もう終わっちゃうんですか?わぁ、理子さんがやる気に満ちてる。僕もお付き合いします。(残り二個となったお団子の串を握りしめて、きりっとした顔つきになってみた。)はえ。……もしかして食べていいんですか?なんだか赤ちゃんになったような気分です。理子さんは僕のお母さんなんでしょうか。いただきます。(お団子が口元に差し出され、変な声が漏れた。理子さんに懐かしい母を重ね合わせて、遠慮なくお団子を頬張る。もっちりとしていてほのかに甘く、美味である。)美味しい。では次は僕が。はい、理子さん、あ〜ん。(今度は己の手に持っていたお団子をずずいと理子さんの口元へ持っていく。恋仲らしく見えるように、可能な限り甘やかな声で。)
* 11/18(Tue) 16:15 * No.31

そうだったのか。確かにお前とする穴掘りは楽しいが、流石にこの格好ではな。(以前彼の穴掘りに付き合って人生初の落とし穴作りに挑戦した日を思い出す。全身を使うのはいい運動になったし作り上げた感動と達成感もあったのだが、流石にあれを理子の姿でするわけにもいくまい。三度の飯より穴掘りが好きな彼もそれはわかって自重したのだと聞けば、「えらいぞ」と苦笑交じりに。そんな気安い空気もつかの間、さようなら喜八郎。)ええ。(こんにちは喜八郎さん。短い休憩を挟んでの再登場。理子になると口数が減る。)…そうなのでしょうか。(彼は褒めてくれたがやはり自らの女装がひどい自覚はあるので、これとお似合いの彼っていったい、と突っ込みかけたがやめておく。何事も前向きなのは彼の良いところだ。)はい。よろしくお願いいたします。(そうして再び恋仲ミッションにチャレンジだ。きりりとした顔で見つめ合う二人。)…いえ、恋人なはずですが…。(しかしどうにも二人を取り巻く空気が緩い。差し出してはみたものの、人にものを食べさせるなど確かに赤子を相手にしているような気になってくる。果たしてこれは正解なのかと苦悩が眉間に皺を作るので一層可笑しな図になった。それになんだか既視感がある。)……。(餌付けだ、と気づいたのは美味しそうに団子を頬張る様を見て。可愛らしい。胸がときめく。しかしそれは甘やかな胸の高鳴りではなく、庇護欲に近いものだと知っている。今はお留守番中のどんぐりに餌を差し出した時に似ているのだ。)…え、私も…?(そして多幸感は一瞬で羞恥と入れ替わった。近づいてくる団子。甘い声。なんだこれは、とされる側になって初めて気づくいたたまれなさ。それでもぎゅっと目を閉じ、控えめに開けた口で迎え入れる。試験ならばやらねばならぬ。)……くっ、(そっと咥えたひと玉と羞恥を噛み締めると、仄かな甘さが口の中に広がった。)
* 11/19(Wed) 12:00 * No.33

まだ今度、汚れていい格好で穴掘りしましょうね。約束です。(綺麗な着物も施したお化粧も穴掘りで汚れてしまっては申し訳ないので、次の時を楽しみに待つことにして。誉められたことに気を良くして、穴掘り小僧はふふんと胸を張る。)それとも理子さんが美しいから皆見てるのかも。僕もそんな理子さんのお供ができて光栄です。(自分の目には今この場にいる理子さんがとても可愛らしく見えるものだから、お似合いだと町行く人々に思われるのならばなんだか嬉しい。理子さんは髪飾りが似合う憧れの女性なのだから。)むむむ。恋仲の二人ってこういう風に見つめ合うものなのでしょうか。理子さん、今の僕が何を考えているかおわかりですか?(正解は「理子さんの瞳って凛々しくてかっこいいなあ」であるが、口には出さずただ念じてみる。はたして伝わるだろうか。)もぐもぐ。お団子美味しいですね。僕は今理子さんの恋人でもあり赤子でもあるのかもしれないです。(いつもの真顔と緩い声で、お団子の美味しさに暫し浸る。理子さんがなにやら悩まし気にしているので、やっぱり理子さんもお団子食べたいよねと脳内で結論付けて。まさかどんぐりくんと重ね合わされているとは気付かず。)フッ、理子さんってば照れちゃって。かわいい。(内心では恥じらっている様子の彼女にちょっぴりどきどきしながらも、周りの人々に見せつけるように気障な声色を出し微笑んでみた。これなら恋人の恥じらう様子に感じ入る少年、のように思われるだろうか。このどきどきはときめきなのか、自分ではよくわからないけれど。そうして無事理子さんもお団子を食べてくれたなら、残り一個となったお団子串を皿に戻して。お茶の入った茶碗を手に取り、ほうっと幸せそうに息を吐く。)美味しいものって、好きな人と一緒に食べるともっと美味しくなるんですね。理子さんも美味しいですか?(すん、といつもの声に戻って、のんびりと感想を聞いてみた。)
* 11/19(Wed) 20:12 * No.34

うつく、しい……?(思わずものの本で意味を確かめたくなったがやはり余計な口出しはせず、「ありがとう」と困ったような顔をしながら礼を紡ぐ。出会いがしらの褒め言葉は励ましも兼ねた演技なのかと思っていたが、もしかして。彼の美的センスを少し疑い始めた瞬間だった。)さあ……ただ、好きなものをずっと見つめていたい気持ちは恋人に限らず、そういうものかと思いますが。(若様の横顔が脳裏に浮かぶ。それから愛刀。父の剣技。最近は他にも色々あるけれど。好きだからこそ、よく見てつぶさにその全てを記憶しておきたくなるのだろう。)…喜八郎さんが考えていること?(だから今この瞬間の彼の姿もよく見ておきたい。はじめこそ試験のためにそれらしく振る舞った結果であったが、問われれば当ててやりたくなって真剣に。)……穴掘り、したいなあ?(結果、観察眼の無さを露呈することになったのだが。――穏やかに語らうことが出来たのはそこまでで、団子を食べさせるだけのことでこうも心が乱されるとは思わなかった。自分で始めたくせに緩やかな彼のペースに振り回されて、心拍数の手綱がとれないでいる。団子を美味しそうに食べる姿は実に平和で、穏やかな昼下がりのはずなのに。)…うッ、(甘い空気に耐性がない身体が反応する。やたら良い声で囁かれて微笑まれて、なんともすごい手管だ。さすがは忍術学園の四年生。立派なことだ。混乱する頭の中を謎の賛辞で埋め尽くすことで理性を保とうとするも、傍目には挙動不審。恋人の欲目を通せば大げさな照れ隠しにも見えるのかも。)……そうですね。(やがて波は収まり、彼が素に戻れば安堵して。)喜八郎さんと食べるお団子は、美味しいです。(今度は自らの串に残った団子を自らの口に運んで食べる。慣れないことはするもんじゃないなと独り言ちながら、お茶を飲み、ほっと一息。)…あ、喜八郎さん。口元が。(ふと目を上げると口の端が少し汚れて見えたのは、先ほどずいと団子を押し付けた名残だろうか。無意識のうちに伸ばした手をそのまま受け入れられたなら、無骨な男の指がぐいとその口元を拭うだろう。)
* 11/21(Fri) 00:34 * No.37

どういたしまして。(涼しい顔で応える心中では、ほら、やっぱり理子さんはおしとやかで愛らしいと感心していて。)そっか、そうですね。ずっと見てても飽きないとかありますもんね。自分で掘った穴とか。(完成した穴の色や形はつぶさに鑑賞したくなるもの。ならば恋した相手も凝視したくなるものなのだろうとじいっと理子さんを見つめながら納得する。)あ〜、残念、不正解で〜す。正解は「理子さんの瞳って凛々しくてかっこいいなあ」でした。不正解でした理子さんは、残念ながら景品は得られません。またの挑戦をお待ちしています。(景品はこの前裏山で穴掘りしていた時に拾ったどんぐりくんのおやつの木の実。残念だが不正解であったからには渡すことはできない。そうしているうちにお団子の食べさせあいの時間は過ぎて行き。)そういえば理子さん、瞳もお綺麗ですね。凛としていて清らかな感じ。(挙動の怪しい様子の理子さんを観察して、思ったことをそのまんま口に出す。甘い声を作るのも一瞬忘れて、ぼそりと独り言のように呟いて。)そっかぁ。良かったです。いつもの食堂のおばちゃんが作ってくれるご飯も美味しいけど、このお店で理子さんと食べるお団子も好きだなあ。良い思い出を作れました。(理子さんを口説き終わった後は、体の力を抜いてお茶を楽しむ。少し渋みのあるお茶が、お団子の甘みを洗い流してくれた。)え?わわ。(伸ばされた理子さんの手をきょとんとして目で追って、彼女の手が口元に触れたならば吃驚して声が出て。)ついて、ましたか。ありがとうござい、ます、理子さん。……理子さん、いつも今みたいなことを色んな方にされてらっしゃるんですか?(つっかえながらもなんとか礼を述べながら、むくむくと胸中にわいた疑問に複雑な気持ちになる。)むう。もしかしたら僕は今嫉妬しているのかもしれません。(眉間に皺を寄せて正直な内心を吐露する。こんなことを言っては理子さんが困るかもしれないと頭では分かっているが、今は忍術学園の四年生ではなく、好きな人の手が他人に触れることを厭うただの十三歳の少年が顔を出して。)
* 11/21(Fri) 15:41 * No.39

(今何を考えているのでしょうという問いに対し、じい、と見つめたところでその瞳に正解が映ることもなく。)は?(当たるとも思っていなかったが、正解を聞けば当たるかそんなもの!と内心叫んだ。「というか、いつの間に景品なんて」思わず心の声が漏れる。恋仲の二人を装うための戯れかと思いきや、知らぬ間に勝負に敗れていたと気づいて少し悔しい。そして気づく。「え、またの機会が…?」あるのだろうか。ならば今後は理助の時に再チャレンジしたいところだ。まさか彼がそこまで己の瞳を良く思っていてくれたとも知らず、「眼差しの強い女性が好みなのですね」と相槌を打てば、だからこの顔を好ましいと思うのだろうかと彼の審美眼に関する帰結を得て。)…そうですね。私も喜八郎さんと美味しい団子が食べられて嬉しかったです。(それは本音だ。共に町を歩いたことも、茶屋で休んだこともみな楽しかった。茶を飲めばそれが合図のように彼も色男の役を解き、)いえ。(此方も少し気を抜いていた。口調は変えずとも、無意識の行為は明らかに理助によるもので。)……? 今みたいなこと?(はて。礼を言われたはずが何やら声色は沈んで聞こえて、幻覚でなければ彼の表情はとても渋い。)いえ、色んな方にはしませんが、(きょとんと返すも、続けて耳に届いた「嫉妬」を紡ぐ声はやはり拗ねたもので、――え?)……まあ、前よりは、こういうことをするようになったかもしれません。しょっちゅう食べかすを口につけた奴の世話を、よく焼いているものですから。(正直戸惑いはあれど、その嫉妬とやらの対象を思い浮かべれば苦笑を浮かべるばかり。)喜八郎さんに似て、かわいい奴なので。(いい男が台無しなのも可愛らしいと思えばつい、悪戯心でそんな返事を。)
* 11/22(Sat) 01:01 * No.41

理子さん、戦場に出ればいつ勝負を挑まれるかわかりません。油断ならさず。(ついさっき唐突に思いついた勝負に理子さんを巻き込んでおきながら、勝手なことを言う。景品については先日拾ったものをたまたま袋に入れたままだったので、ちょうどいいという理由で今この場で口に出した。「僕、瞳フェチだったみたいです。知らなかったな〜」とのほほんと自分の嗜好を発見して。)いつかまた来れたらいいな。一緒に。(理子さんとも、理助さんとも。未来は分からないから、ただ希望を言葉にする。)こういうの、どんな方にするんですかぁ。(茶碗をそっと両手で持ち、足でつんつんと地面を突っつく。まるで駄々をこねる幼児のように拗ねた素振りを隠しもせずに表して。こんな厄介な感情を覚えたのはいつ以来だろう、いや初めてかもしれないとどこか冷静な自分が囁く。)しょっちゅう。誰ですかそれ〜……食べかすつけるってことは上級生の先輩方ではない?いや、もしかしたら食満先輩なんかがやってるかもしれない。あの人そういうところあるもの。それともまさか潮江先輩……?(視線を地面に向けてぶつぶつと理子さんに問いかけるというより、独り言のように呟き続ける。脳内では食べかすを理子さんにとってもらう六年の先輩方の姿が上映されており、それはそれで愉快な光景だなあとまたもや頭の片隅にいる冷静な自分が感想を述べて。)僕に似てかわいい?ええ〜、ますます混乱してしまいます。といいますか僕のどこがかわいいですか?(かわいいと言われて素直に嬉しく思いながらも、嫉妬の感情がひねくれた物言いをさせて。)……あのね、理子さん。僕、こんな気持ちになったの初めてです。それを覚えていてほしいな。(恋とは楽しい感情ばかりではないと初めて知った。きっと己は今日のことをいつまでも忘れないだろう。初恋にも似た記憶は色鮮やかに心に刻まれて、実習の時間は過ぎて行き。やがて実習を終えて共に忍術学園に帰る時には拗ねたことも忘れていつも通りの穴掘り小僧に戻っていただろうけれど、ときめきもどきどきもそして嫉妬すらも、実習を終えた後も己の胸中に残されているに違いない。)
* 11/22(Sat) 16:03 * No.42

……そうですね。いつかまた。(小さく頷く。補習授業でもない限り、理子の再登場はいつの日か。理助とてこうしてゆっくり彼と並んで町に出る機会など多くないだろう。体験入学の期間を終えたその先のことを、考えなければならない時期だ。)……はは。(拗ねた姿があまりに可愛い。平時はすんとすました顔が似合うくせ存外感情表現が豊かなことは知っていたが、それでもこのような顔は初めて見た。次々に連なるとんちんかんな推理は理論を欠いていて、淡々と呟く様は一見すると冷静に見えたが内心の乱れが透けて見える。それがまた可笑しい。)上級生の先輩方相手に、私がしょっちゅうこんな事をしているわけがないでしょう。畏れ多い。(まさか彼の脳内で上映された映像までもが見えたわけではないけれど、想像すればもはや笑いごとでなくてそっと青ざめる。上下関係に厳しい世界に身を置いてきた男にとって、こんな風に気軽に触れ合える相手はそう多くないのだから。)ええ。……そういうところが可愛いですよ。(隠さず感情を吐露する幼さと、)……はい。(潔いまでの正直さ。可愛らしい。それを愛おしいとも呼ぶのかもしれなかった。自覚すれば気恥ずかしくて首を縦に振ることしかできなかったけれど、もう少しこの可愛い男を眺めていたいと思ったことを、いつか伝える日が来るだろうか。そうして時が過ぎ、茶店を出たのち、帰路に向かう途中の店で土産を買った。色気のないただの手拭い。よい香りもしなければ素敵な模様もない、木綿の白い布を二枚。)喜八郎さんはすぐに汚れるから。(そう言って一枚は彼に贈った。もう一枚の行方を問われれば、「喜八郎さんみたいに汚れがちで手のかかる奴に」と笑うだろう。それが誰かは忍術学園につけば明らかとなる。その時彼はどんな顔をしただろう。)ただいま。(待ち構えていたリスにそう告げることが当たり前になった。そして理子は理助に戻る。彼と別れた後、どんぐりを連れて自室へと。)……随分と、賑やかになったものだな。(文机の上に飾られた赤い紐。ふわふわのウサ耳。カラフルなイースターエッグ。其処に加わる紫の匂い袋と、白い花。畳んだ手拭いも置いてやると、新たな寝床と喜んだリスが寝転んだ。)
* 11/24(Mon) 22:11 * No.46


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