肆、変姿のいろはの段
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【肆】18日目:町の物見やぐら下

(「せっかくですし、待ち合わせからやりましょうか。」昨日の夕方頃、実習相手たる彼にそう提案した。今回の課題は伝子さんもとい山田先生の納得するデートかつ、女性役の男性をときめかせるデート。随分と難しい忍務になりそうなので、ひとまず形から入ろうと言うわけだ。──さて、日は暮れ明けて課題日当日。予定よりも早めに町に到着した青年は、町中で所用を済ませてから課題に向かう。待ち合わせ場所に指定したのは町の入り口にある物見やぐらの下だ。約束の時間よりも早めに到着したつもりであるが、彼 もとい彼女はもう到着しているであろうか。ちなみに青年の装いは、薄藍に網代模様の着物に紺色の袴といった普段通りの私服であるが、髪型ほどは少しだけ変えてある。前髪を軽く作って、真ん中分けにした後左右に垂らし。後髪は低めの位置でひとつ結びにした。丸っこい幼顔が多少はマシになっていればいいが、はたして。)七松先輩のほうは……どんな装いかなぁ。隣に並んで姉弟ですか、なんて言われないといいけど……(独り言を落とし、辺りを見渡す。そろそろ約束の時間だろうか。)
* 11/9(Sun) 14:19 * No.3

(体験入学生の前で無様を晒すなよ、とは、同輩たる作法委員長に睨みつけるようにして言われた言葉だった。体験入学生と共に忍務にあたるなか、お前の腕前では心配だと頭を抱えられ、多少の手ほどきこそ受けたものの相変わらず女性の着物姿でも大股を開くしいけいけどんどんと突っ走りたがってしとやかさを置き忘れている。どこぞの姫君を任じられては実習が始まる前から白旗を上げるほかなかったが町娘としてのふるまいであれば多少はましか。準備を整え門扉をくぐるまでは良かったものの、ざかざかとガサツな移動をするせいで裾は早々に緩んでいる。彼の姿を見つけ、多いと手を振る前に作法委員長の姿を思い出し、慌てて身なりを整える。埃、払った。裾、整えた。髪の毛のハネ、直した。よし、と意気込んで)史士郎!……さま?(町娘だからと言って呼び捨てにするのはいかがなものか。お前はギャップを狙ったほうがいいのでは、という友人の勧めに従い、とりあえず丁寧な姿勢を示して両手を頬に当てて科を作って見せる。概ね先生方からはわざとらしすぎると減点を食らう仕草であった。あまりにも出来がいいのが同級にいすぎて、完成形と自分が縁遠いものになっている気もする。)今日はよろしくお願いしまぁす、小平子でぇす。(何とか高音を出し、科を作り、かわいさを醸し出そうという気持ちはある。それが実践できているかは別として。)
* 11/9(Sun) 22:00 * No.6

(向こうから凄いのが来てるなあとは正直思った。遠目でも分かる女装である。顔には出さなかった。何でもないフリには自信があるつもりであった。だから彼もとい彼女がこちらに気が付いてから身なりを整えたところで朗らかに手を振ってみせたのだ。)はい、史士郎です。先に到着できてよかった。かわいい……娘さんを、一人でお待たせするわけにはいきませんから。(1回目の科も耐えてみせた。予め用意していた課題用の台詞を紡いで、引きつりながらも笑って。 だがしかし、次の高音でもう駄目だった。ぐっと押し黙って一度は言葉を飲み込んだが、そのまま静かに悶え、耐えて、耐えて、)……っ、……!……いや流石に無理があるっ!!大人なデートってプランが間違ってた!!僕のミス!!(課題用に作ってきたスマートな彼氏像を放り投げて控えめに叫んだ。勢いそのままボリュームだけ絞った苦しげな声だっただろう。このキャラ無理がある。自分には到底演じきれない。到底女性にするそれではない勢いで彼の両肩を掴んで、ひそひそ声でも伝わる距離まで顔を寄せようとする。流石に課題そのものを台無しにするわけには行かない。)七松先輩、いや小平子さん。その仕草はなんというか……違和感、いや不自然!さすがに不自然さが目立ちます。化粧の濃さはともかく素材は悪くないはずなんですあなたは。肩の力を少し抜いてください。いいですか?あなたはそのままでかわいい。 落ち着いた穏やかな声で復唱して、はい、 「わたしはかわいい」(言葉を選びながら捲し立てる間、青年は自分が体験入学生で彼の後輩であるとすっかり忘れていた。彼とて課題を捨てているわけではないと理解できる。だって努力が見えるからだ。だったらこちらも本気で向き合おう。細葉史士郎は心のなかで誓った。絶対にこのデートであなたをかわいい町娘にしてみせる、と。)
* 11/11(Tue) 09:59 * No.9

(うふん、と言わんばかりに科を作る。過剰な女性らしさの演出は審査側からは落第を押されるようなものでもあるのだが、その自覚があるのかないのか。)いやぁん、史士郎さま、やさしい〜!(彼の思いもつゆ知らず、きゃあと黄色い――茶色い悲鳴を上げてみせる。)おぉ?なんだなんだ?(突然の彼の叫びにきょとんとしたように目を丸くして、無理に出していた高音からいつもの声色に自然に戻る。唐突に肩をつかまれても振りほどきもしなかったのは、ある種その勢いに圧倒されてのものであったかもしれない。普段の彼とは違った振る舞いにあっけにとられていたともいう。)違和感。(そんなにか?とつい首をかしげているあたり、どうやら自覚はなかったらしい。化粧もそんなに濃かっただろうか?とつい塗りたくった頬紅に指を伸ばす。)わたしはかわいいぞ!(とりあえず言われるがままに元気よく復唱する。いや、これは違うかもしれない。落ち着いても穏やかでもなければ、普段の自分と全く相違ない。口にしてから気づき、こほん、と、咳払いをしてから、同室の友人を思い返して、彼の声をなぞるように。)わたしはかわいい。(ゆっくりとした口調で復唱する。)…これだと声が低くはないか?女性というのはもっと声が高いものだろう?(彼は体験入学生であり後輩であるが、どうやら彼の指導は的確なものであるのかもしれない。半ば野生のカンじみたものでそう察知して、素直に教えを乞う姿勢に。)
* 11/12(Wed) 04:10 * No.11

(使命感に駆られた青年は、いけどん主義の彼が圧倒されている姿すら目に入っていない様子。元気いっぱいのかわいい宣言に「かわいいですがそれはいつもの七松先輩です!」と声を潜めながら声を荒らげるなんて器用なツッコミを入れ、再挑戦を待つ。最近委員会活動に邁進しているおかげか参考元がよく分かった。)そうですね。あの心地よい低音は中在家先輩の個性であるので、それをそのまま参考にすれば小平子さんには低すぎるかもしれません。でも、先ほどよりも娘さんらしくはあるかと。(否定されないことをいいことに自然と教鞭を執るような形に落ち着く。朗らかな笑みと眼差しは見守る者のそれによく似ていただろう。生来の生真面目さがおかしな方向に作用して、青年は至って真剣に、本気で、彼を合格に導くという使命感で、課題に全力で向き合っていた。)女装の目的は可愛らしく目立つことではなく、女性として日常風景に溶け込むことです。故に、喋る時は声の高さよりも声の出し方、話し方に重きを置くこと。……まあ、あくまで僕の考え方ではありますが。(背筋を伸ばして真摯に補足を重ね。改めて彼もとい彼女の姿を見つめれば、先ほど彼自身も気にしていた頬紅が気になった。自然な調子で手を伸ばし、頬に手を添えるようにして、親指でつけ過ぎの頬紅を掠め取ろうとする。抵抗されねば反対側も同じようにして薄めるだろうし、難色を示されれば手を引っ込めて。いずれにせよ言葉での説明も。)頬紅も、少し薄くすればもっとかわいいです。色選びがお上手なんですね。似合っていますよ、小平子さん。
* 11/13(Thu) 10:06 * No.15

(女装をしているせいか、普段とはまるで立場が変わっているような気がする。ぽかんとしながら素直に教えを受けているあたり、当の本人にも女装がうまくない認識はあったのか。)そ、そうか?これで娘らしいのか?しかし仙蔵はもっとこう…、(友人のまねをしようとしても、ついつい朗らかな声を上げることになってしまうのが困りもの。自分の声というのもなかなかピンとはこないものでもあるし、彼が言うのであれば正しいのかもしれない。同級の中でも最も女装のうまい彼の姿を思い浮かべればやはり疑問符を浮かべ戸惑った様子ではあるものの、彼の意見を聞くつもりはあるようだ。体力勝負ならともかくとして、事こういう勝負は鍛錬仲間二人と並んで周りから低評価をつけられていると自覚はある。)日常風景に溶け込む……ふぅむ、成程。農民や旅の者に変装するのとそういう意味では違いもない……のね。(声の出し方や話し方、行者などに変じて情報を集めるときに通じるものはあるのかもしれない。ただ、性別という違いが大きいものだから、ほかの変装の時とは違ってそれがつかみ切れていないだけで。ほほ紅を指で伸ばしていたのか、化粧の違和感に頬をぐにぐにと回そうとしたところで彼の手が伸びる。これは身をゆだねたほうがいいだろう、とそのまま化粧を直してもらうことにした。)…おお!…ん、んんっ、(ぱちりと目を瞬かせて普段の自分らしく声を上げ、コホンと咳払いをした。)いいな、堂に入ってるぞ。……化粧の選び方をほめられるのは、嬉しい。(すこしばかり関心が先輩としての評価になり。ゆったりとした言葉遣いで、明朗な普段の声から少し低く、穏やかに。快活な笑みから、はにかむように口元を上げるだけにしてみる。)
* 11/15(Sat) 01:56 * No.19

立花先輩は美人系です。七松先輩は可愛い系です。目指す場所が違います。人には人の女装像。(テンポよく畳みかける。もはや後輩らしさなど敬語くらいにしか残っておるまい。続いた彼の言葉にぱっと表情が華やぐ。伝えたい事がしかりと伝わったのが素直に嬉しくて。)そういうことです!基本の七方出しかり隠形の術しかり忍者とは読んて字の如くしのぶもの、なので。(嬉しさ故についつい口が回りすぎた。忍術学園の、しかも上級生に対して全くもって的外れな蛇足だっただろうが、当の本人は満足げに笑って。伸ばした手が避けられないのをいいことに、ほほ紅も余分なところは掠め取り、あとは薄くのばして整えてしまおか。)小平子さん(懐紙で指先を拭いつつ、普段通りの声色に小姑のようにたしなめる声を出し。)……、(続いた言葉にはちょっと目を見開いて押し黙ってしまった。)……今のは、とても可愛らしかったと思います。(素直な褒め言葉には困り眉のはにかみを添えて。ついでに少々正気に戻りかけて自分が恥ずかしくなったものだが、もう今日はこのまま押し通させてもらおうと思い言葉にはしなかった。さて、)前置きが長くなりましたが、行きましょうか。大人なデートは無しとして、何をすべきか……ひとまずその辺りのお店でも見ながら歩いてみましょう。(改めて本日の目的のおさらい──は、やめにして。新しいプランを立て直す時間稼ぎをしよう。所謂ウィンドウショッピングのはじまりだ。)先に今日の僕の目標をお伝えしておくと、小平子さんに似合う髪飾りを一つ選んで差し上げたく思います。なので、好みの色や形を教えていただけますか?(何の目標もなしに当て所なく歩くのも難しい。故に、ネタバレを一つヘラリと告げて、指針としようか。)
* 11/16(Sun) 20:12 * No.22

わたしは……かわいい…。(先ほどの復唱を思い返すかのように再び口にする。確かに仙蔵は美人だ。彼の言葉には不思議と納得が深まるばかりだった。今日は彼の言葉を何かと繰り返しがちで、まるで先輩と後輩が逆転してしまったかのよう。油断をすればなっはっは、と豪快な大笑いをして隠形の術の認識について肯定してしまいそうだったので、両手で口を押さえてこくこくと頷いて見せる。実際、六年生ともなれば彼の言葉に共感することは大いにあるわけで。たしなめる声に軽く肩をすくめて見せ。)本当か!…っ、と、なはは、いかんな。気をつけねば。(歓喜のあまりにぱっと顔を輝かせて声色も素に戻してしまったものだから、つい頭の後ろを書いてしまうなどという男そのものの動作を晒してしまって、なはは、と反省の色を示した。コホンと咳払いをして、改めて低く、落ち着いて、女性らしく。)大人なデートを、するつもりだったの…?…わかった、ゆっくり、考えられると……わたしも、うれしい。(今回ばかりはいけいけどんどんでは女性らしさは失われそうな気がする。心持ち、友人をまねしたゆっくりとした所作で。彼の演出する大人のデートというものも気にならないではないが、それはきっと今の自分には早い話。)髪飾り?(と、シンプルな結紐でまとめた毛先を軽く流し目で見る。)明るい色が好き…かな。形は……うぅん、どうだったか。ちょうちょ結び?(と、首をかしげてみせる。妹のしている髪飾りを思い返してのことだった。血のつながりがある以上、彼女たちの髪飾りは自分の顔で身に着けても不自然ではあるまい。)
* 11/17(Mon) 23:34 * No.28

(「ご要望であれば、帰宅後に披露しますよ」とは、大人なデートに対する返答である。課題を終えて学園に帰ったあとなら、茶のつまみに笑い話としてお出しするのも悪くない。捨てた計画に何時までも執着するべからずということで、今はなかったことにするので。)ならば、共に考えていただけますか。のんびり散歩をするだけになっても、あなたとあれやこれやと話しながら悩めるならそれも楽しいでしょう。……いや、課題としては赤点か……?(大人っぽさは捨てたので、人好きのする柔らかな笑みで告げてみたが。課題を思い出せば表情そのまま小さく小さく疑問を呟く。ついうっかり素を零すデート相手に対して、小癪で可愛げのない様だっただろう。)はい。装飾品は大事ですよ。どうしても目が行きますし、意識を持っていかれる分顔やその他の特徴がボケる。いざとなれば髪飾りを捨てて髪を解くだけでも大分印象が変わります。(別に積極的に捨ててほしい訳では無いが、いざというときは仕方ないものと割り切っている。ゆえにサラリとそこまで口にして柔く笑む。青年にとっては彼の右側を歩こうとすることと同じくらい自然なことであった。簡単に束ねられた髪を見るに櫛や香油をプレゼントするのもいいな、と考えつつ。)……はは、ずいぶんかわいらしい言い方をしますね。(馬鹿にしているつもりはなく、純粋に微笑ましげな表情を浮かべ。)ちょうちょ結びということは、髪紐のほうが扱いやすいですか?もしくは……ああ、こういう簪もお似合いかと。(丁度通りかかった商店に足を止める。簪や櫛を扱う店らしく、店頭にはシンプルな一本差しから玉飾りや紐で作った意匠がついた明るめの簪まで幅広く取り扱われている。ちょうど手に取ったのは、黄色の紐飾りのついた簪だ。向日葵とそれに止まる蝶々に見立てたちょうちょ結びがついている。)少し派手でしょうか。イメージはぴったりですが……(手に取ったそれを彼の方向に翳し、具合とピントを確かめるため片目を瞑る。)
* 11/18(Tue) 13:37 * No.30

(彼の返答に対してはにっこりと笑って頷いて見せる。その頷きの通りに、学園に戻った後に夕食の時間に彼を捕まえては大いに盛り上がりながら彼の大人なデートにワクワクしながら耳を傾けて見せるだろうことは想像に難くない。このデートでおとなしくしていた分、その時のテンションは高いものになるかもしれない。)わかった。あまり、のんびりすることがないから、少し新鮮でもある。…史士郎さまは、刺激があったほうがときめく?(普段の性質が性質であるので、ゆっくりと散歩するというのはそれはそれで。女性らしさのうかがえる柔らかさよりは、落ち着きと愛らしさのほうを優先するために言葉の栗方がどうしてもぎこちなくなっている。なんだかまるで年下にでもなったような気分だ。)確かに。目立つものがあるというのは、いい。ひとつ目印になるものを作っておくのも、いいかもしれないわ。…史士郎さまも、今日の髪形は少し新鮮ね。格好いいよ。(後輩からの厚意を無碍に打ち捨てるつもりこそないものの、彼の言は理解できる。まあ、その割り切りが嫌なら自分がその目印をうまく活用すればいいだけの話。後輩の柔い笑みに豪快に笑いたくなるのを抑えながら。)…妹が、そういう髪形を…よくするから。(普段微笑まし気な視線を受けることなど、せいぜいふとした時の教師の視線くらい。むずがゆそうに僅かに視線をそらしつつ、言い訳交じりの自己開示。)まとめる分には。簪を使うことはあまりない。(あのほそっこい簪は、たまに強く握りすぎて折ってしまいそうになるのではないかと心配になる。武器にもなるのだと教えてくれる仙蔵には悪いが、力加減というのは苦手なのだ。立ち止まった彼の一歩前に行ってから、彼の目線の先をのぞき込む。)派手なのは好きだ…わ。目立つし、イメージ通りなのでしょう?(軽く笑い、毛先をまとめただけの髪を軽くまとめて持ち上げる。髪をまとめるのならばおろしているより持ち上げたほうがイメージがつかめるのではないかと思って。)
* 11/20(Thu) 00:43 * No.35

僕はのんびりの方が好きですかね。でも、女性はサプライズがお好きでしょう?それに、小平子さんは刺激的な方がお好きかなぁとも思っていたので。新鮮さを楽しんでいただけているのなら幸いですが。(どうでしょう?と言わんばかりに、少し身を屈めるようにして彼もとい彼女の表情を窺う。屈まなくとも見上げられるだろうが、これはポーズの問題であって、女性として扱おうとする証左であって、強がりではない。けして。)確かにそうですね。迷子になってもすぐにあなたを見つけられるのはいい。其処に気付くとは流石です。(素直な感嘆は打って変わって後輩じみている。なんだか今日は立場がコロコロ変わるように感じる。それが可笑しくて、楽し気に笑みを零すんだろう。「わあ、本当ですか?並んだ時にきょうだいに見られるのは如何なものかと思って。頑張った甲斐があります。」楽しさが高じてときめき仕損じたのもどうかご愛敬。)妹さんがおられるんですね。道理で面倒見がいいわけだ。ご兄弟は妹さんお一人ですか?(くすぐったげな表情をこれまた微笑まし気に見守る。あえてト書きを入れるならそっかあおにいちゃんかあなんて言い出しそうなほわほわ笑顔である。青年は青年で甘やかすことに慣れていた。立ち止まった商店で簪を見立てながら、彼の妹は彼にいているのだろうと夢想する。きっと今日の彼のように可愛らしいのだろう。)ならば用途が被って埃をかぶることもなさそうだ。いやあ、贈り甲斐がありますね。……うん、よくお似合いだ。華やかで、なんだかどきどきしちゃうなあ。(色合いを確かめ、ピントを簪から彼の方に合わせる。そうしたなら、そこにあった笑みが今までのどれより自然に、美しく見えたものだから。つい青年も、敬語すら忘れて、ゆるりと瞳を眇める。自然零した台詞こそが課題の本分だと思い出したなら、苦笑と共に頬を掻くんだろうが。演技でもない、課題を意識してもいない、その一瞬は紛れもなく青年の本心であった。)
* 11/21(Fri) 10:51 * No.38

刺激的なのは好きだけど、今も楽しいよ。…しかし、サプライズ。(女装をする、という課題上、サプライズを喜ぶ女心、というのも持っていてよかったかもしれない。「楽しみ」といつもよりも小さく口角を上げる。彼が身をかがめるかのようにこちらを見上げてくることには少しばかり不思議そうにして見せた。)そう、いま、迷子になると困ってしまう。手でも、つないでおく?(彼の楽し気な笑みにつられたのか、冗談を口にしつつもきゃあきゃあと科を作るような女性らしさに固執しない程度の心の余裕は生まれてきたらしい。不慣れな様子はそのままではあるものの、ふとした時にもそうした過剰な不自然さがのぞかなくなったのは彼のおかげだ。「ああ、仙子さんの隣に立っても、違和感はないと思う……ん、…デート中に、ほかの女性の話を持ち出すのは違うな…?ごめん、内緒にしておいて」こくりと頷き、自分なりの称賛を口にしようとして、小平太としてはまだしも小平子としては良くないほめ方だったのでは、と気づいてもあせって小平太に戻るようなこともなく、彼の耳元でささやいて。)いや…妹は二人。とても、かわいい。史士郎さまは?兄弟、いるのか。(どちらかに分類するならば普段の様子からして兄のようではあるけれど、と、素朴な疑問を口にする。可愛い、と語る眼は後輩たちに向けるそれとはまた異なる愛情をたっぷりとたたえて。)うまく使えるように頑張る。教えてくれないか。……きれいか?(彼の言葉にきょとんとした顔をして、少し照れたように問いかける。わたしはかわいいと自己暗示のように繰り返しはしたものの、どきどきさせるようなきれいさを持てたならばそれはそれで、とてもうれしい。――そうこうして髪飾りを手に、折角なのだからおやつでも食べようと段小屋に立ち寄ってから学園へと帰っていくことになるだろう。心なしか裾を裁く足取りも、いつもの女装の時の粗雑なものよりおとなしい。)史士郎、今日はありがとう!…少しは良いところを見せられただろうか?私はお前の格好いいところをたくさん見られて楽しかったぞ!とてもときめいた!(一応、忍術学園の門をくぐってから。そんな風に朗らかな顔で笑いかけて見せるだろう。今回の補習は周りからも頭を抱えられたものだったが、彼がいてくれたから少しは何とかなった気がする。果たしてときめかせることができたか、はさておくとして。――ともかく、楽しかった。)
* 11/23(Sun) 10:45 * No.43

妹は、ということはもしかして弟さんも?僕は一人っ子ですよ。でもご近所に子供さんが多いので、あんまり一人って感じはしませんね。(属性をざっくり兄か弟かに分けるのであれば、恐らく彼も自分も兄の方に属するのであろう。どことなく似たものを感じる、と思いつつ口にせず。ただ「素敵なご家族なんですね」と素直な気持ちで。眦による笑い皺が、彼が妹に見せたそれと似た愛情を映す。)喜んで。とはいえ、僕も詳しいわけではないので、難しければ二人で斉藤先輩に聞きに行きましょう。(あえて髪結いの心得がある斉藤タカ丸の名前をあげたのは、多少なりとも他の男に聞きに行ってほしくないと思う気持ちがあったから。そう思わせてくれた彼女に、可愛らしい表情で尋ねられたなら、答えは決まっている。)ええ、とても綺麗です。……花も見惚れるくらいに。(返答としては最初の一言に詰まっていて。付け足すように続けた賛辞は蛇足じみていたかも。課題を思い出し、照れ臭そうに紡いだなら余計に。されど、彼女が嬉しそうにしてくれるならそんなことは些末なことだ。今日の会計は団子屋も含めて全て青年が持つ。「アルバイトのお手伝いしたので」と紹介してもらった人脈によるものだと笑えば、財布役を譲る気が全くないことも伺えよう。――なんだかんだと満喫して。いつもの調子に戻った彼に気の抜けた笑みを返す。勢いの良い口調も学園まで帰ってくればほっと安心できるものに変わるのだ。)こちらこそありがとうございました。最初はどうしてやろうかと……いや、どうすべきかと取り乱しましたが、お陰様でしっかり課題をこなせたと思います。(課題を乗り越えた戦友のような気持がうっかり口を滑らせて。それをがさつに誤魔化しながらわははと笑う。誤魔化しついでにもう一つ。いたずらな指先が簡素に括られた髪の先を掬い上げる。頑張り屋の髪を親指の腹で撫でつけて、)僕も、とてもときめしました。……簪、使ってくださいね。もしもの時にあなたを守れるなら本望だ。(瞳を眇めて笑う。平素の青年に比べれば、いくつか大人びた笑みであっただろう。ぱっと手を引く頃には青年の顔に戻っていて。ではまたと手を振って今日の課題はおしまいといたそう。楽しかった。――故に、長屋の一室にて。)普通に楽しんでしまった……難しいや、先輩とか後輩とか……僕もまだまだだなあ……(なんて反省する細葉史士郎がいたとか、いなかったとか。)
* 11/24(Mon) 21:17 * No.45


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