肆、変姿のいろはの段
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【肆】18日目:地蔵前

(もとより男らしさというものがあまり見られない男であるので、女装の授業自体は逆に問題なくこなせた。よいのか悪いのかはさておいて。そうして本日の実習は、また違った形での合格基準があるらしい。ときめき。)…なるほど?(確かに、女性のそうと決めた時の力強さ、心に決めた相手とのここぞという時の胆力というものには目を見張るものがある。忍者には人をときめかせる才能が必要なのかもしれない、とは少しばかり納得する心地ではあったものの、何とはなしに彼をときめかせるのだと思えば不思議な気持ち。これまで半月程を忍術学園で過ごし、様々な形態の実習にも慣れてきたところ。いつもの籠目模様をあしらった若葉色の着物はそのままに、余所行きということを意識して前髪もまとめて結い上げた。その程度でしかない自分に比べ、彼は準備も大変だろう。そう思い、忍術学園から一番近いお地蔵様の前を待ち合わせ場所にして、彼の姿を待つ。)こんにちは、今日はよろしくお願いいたします。守一郎く……。ええと……、浜、さん?(守一郎くん、の呼びかけは、今となってはなれたもの。しかし町中に出ることを考えるとこの呼びかけは良くない気がする、と、ひとまず名字呼びに変えては見る、が、)…今になって名字呼びに戻るというのは、物寂しいものがございますね。何か、よい呼び名はないでしょうか?(名前を呼んで親しむ、ということにすっかり慣れてしまったせいで、名字を呼ぶことでできる距離が寂しくなってしまう。なんとも情けない話であるが、と、眉を下げて。)
* 11/9(Sun) 17:48 * No.4

(はじめこそ酷かった女装が及第点をもらえるようになったのは美意識の高い同室のおかげである。「私の同室のくせにそんな女装は許せない!」と言われ素材を生かすナチュラルメイクを学んで以来、見た目はそれなりになったのだけれど。)うーん、おれの場合、所作がまだまだ、なんだよなあ。(身のこなしは十三の男らしく、淑やかさに欠ける自覚がある。先日の授業で着たものと同じ衣装を身に纏い、とりあえず控えめな歩みを心がけてみるけれど、ゆっくり歩く。これが意外と難しい。何事も大げさになりがちな男なもので。)英哉!!(待ち合わせ場所に彼を見つければ大きく手を振り、嬉しそうに走り出すあたり、またしても「もう少し落ち着きましょう」という評価をいただいてしまうに違いなかった。)うん。こんにちは!(元気の良い挨拶をしたのち、彼の声では久しく聞いていなかった呼び名を耳にすればきょとんとして。)……ああ、なるほど。今おれお嬢さんなんだった!(今さらながら思い出した。)そうだなあ。英哉には浜さんって呼ばれるのはおれ…じゃなかった。わたしも寂しいし、うーん……(過去女装の授業はあったけれど、女性になりきって過ごすという経験は初めてなもので少し悩むも、)…じゃあ、マシュー、とか?(さほど間を置かずして思いついた名は何故か異国風の名前。以前得意武器の南蛮鉤に名前をつけた時もそうだったが。)いや、でもわたしはマシューっぽくないか、しら? そしたら守一郎だから、しゅ子? いち子の方が呼びやすいかな? それとも守一子…??(どれがいいだろう。主に呼ぶのは彼なのだし、最終的には彼に決めてもらうのがいいだろうと「英哉はどれがいい?」と首を傾げて。)
* 11/9(Sun) 21:28 * No.5

(走り出した彼に意味もなく手が前に伸びる。彼だということはわかっているが、しとやかな格好で走り出す彼に転びやしないかとでも思ったのか。元気のいいあいさつに穏やかに微笑んで。それから呼び名に迷っていれば、きょとんとした様子の彼にこちらも不思議そうに首をかしげて。)…はい、可愛らしいお嬢さんですよ。(穏やかに頷いて見せる。どうやら名字で呼ぶことに何となく寂しさを覚えるのはお互い同じようで、「そうですよね」と深く頷いて見せる。悩む彼の姿に無理にせかすことはなくゆったりと言葉を待って、)ましゅーさん、可愛らしいと思いますし…、いちばんに思いついたというなら、それが一番しっくりくるのではないのかと思います。あなたさえよろしければ、ましゅーさんとお呼びしても構いませんか?…僕は南蛮の言葉にはなれていなく、拙い発音になってしまうかもしれませんが、それでもよろしければ…。(聞き馴染みのない言葉の響きではあるが、そうした言葉だからこそ新鮮味を感じていいのかもしれない。考え込むようにしながら小首をかしげて見せる。もしも問題があるようならば「いち子さん」という呼び名を選ぶつもりで。そうこうして呼び名に関して決着がついたなら、片手を上にして彼に差し出す。)では、お手をどうぞ、お嬢さん……、で、どうでしょうか。(気障にふるまうことはどうにも向いていない。少し格好をつけはしたものの、結局気恥ずかしそうに眉を下げる。)
* 11/10(Mon) 23:51 * No.8

(可愛らしいお嬢さんですよ?)…わあ。(色男を演じたつもりもないのだろうさらりとした相槌にきゅんとした。あまりに自然なそれは一連の流れに溶け込んでいて、「ときめきました!」と声を上げる余地すらなかったので小さな感嘆だけを残して話題は移ろう。)ええ。ほんと?(けれども前肯定イケメンの追撃は止まない。ネタのつもりではなかったが思い付きで言ったそれを良しとされれば、戸惑いながらも「じゃあ、マシューで…」と思わず頷いてしまった。これが本物の潜入任務であったなら違和感しかない異国風な名前は忍びとして却下すべきなのだろうが、彼の思いやりが嬉しくて、それにぎこちない発音が可愛くて、もっと聞きたいな、と思ってしまった。)えへへ……英哉ってば、すごいなあ。おれ、もうどきどきしてるよ。(それでいてリードすべきところはきっちりと。差し出された手に手を重ね、ぎゅっと握る。お嬢さんらしい恥じらいとは異なる素の喜びをほんのりと赤らんだ頬に乗せ、ほわほわとした気分で笑う。)……それに、ずるいなあ。(視線を繋がれた手から上にずらせば、照れた様子の横顔にまたきゅんとした。)かっこいいのに、かわいい。(だが、長年山奥で過ごしてきた少年に恋のときめきは無縁であって、この擽ったいような温かな気持ちが件のときめきなのかは正直わからない。)うーん、こういう気持ちがときめきってやつなのかな? (彼の試験の合否は自らの心に委ねられていることを思い出せば、少し困ったように眉を下げて、)英哉は知ってる? ときめきってどんなものか。
* 11/12(Wed) 17:37 * No.13

はい、本当に。(元々嘘というものは得意ではない。彼の前であればなおのこと。穏やかにゆっくりと頷いて見せ、不慣れな発音での名前に決定する。)そう…でしょうか?そう言っていただけると嬉しいです。きちんとお役目を果たせているのでしたら、それに越したことはありませんし…折角のお出かけですから、ましゅーさんにもぜひ楽しんでいただきたいのです。(すごい、どきどきする、と、言われて驚いたように瞬きながら、安堵したように肩を緩める。可愛らしい頬の赤みにこちらもほわりとまったく忍者らしさのない微笑みで返して。町中のほうへと地蔵が見守る小道を進んでいく。)…そのように言ってくださるましゅーさんも、とても可愛らしくて、素敵な方だと思いますよ。(さほどいつもと変わったつもりもないけれど、彼が口にしてくれる言葉の数々が嬉しくて気恥ずかしい。つい、つられるようにして頬を赤らめて。)ときめきを感じていただけているなら、僕としてもうれしい限りですが……。(そういう試験だとも聞いている。人の心を動かすに足る存在であるというのは、きっとありがたいことであろう。自分への問いかけには、答え方を思案するように空に視線を投げて。)…旅をしているころ、恋をしているご夫婦とお会いしまして…。お二人は、食事をする姿や目線、立ち姿…僕からすれば何でもないことにも、ときめかれておいででした。お相手のどのような姿にもどきどきするのが恋、なのではないかと思いますが…、かといって、意図してときめきを与える、というのは難しいものでございますね。(痘痕もえくぼとはよく言ったもので、恋してしまえばどんなものでもときめきに通じる様子のお二方を思い返して微笑ましそうに笑って。しかし現在の自分たちに立ち返ってみれば応用するのも難しそうなお二人だった、と、苦笑交じり。)ときめきとは…魅力を見つけたり、再発見したりした時に得られるものではないか、と思うのですが。
* 11/14(Fri) 22:52 * No.17

(可愛らしいだとか、素敵だとか。)うん。本当にすごいよ英哉……。(息を吐くように紡がれる甘やかな響き。無理をしているふうでもなく、自然と心に浮かんだ言葉を口にしたようなそれが余計に胸をじんとさせるのだから困ったものだ。いっそ笑えるくらいの色男を演じてくれれば感心一辺倒ですむというのに、つられて恥じらう様にまた照れて、見守る地蔵の微笑みすら心なしか生ぬるく感じる始末。こうして互いに頬を染めている限り、延々とこのときめきが続く気がした。)……何気ないことに、ときめく。(それでもふいとその視線が空に向き、つられて此方も空を仰ぐと心なしかどきどきした気分は少し落ち着く。彼の語りに聞き入っていたからかもしれない。)…そっか。今おれは英哉の言葉とか、行動とかにどきどきしたけど、恋のときめき?っていうのはそういうのじゃないのかもね。うーん、難しいなあ。(例えば繋いだ手を離してみれば薄れるときめきなら、それは恋ではなく非日常に対する緊張なのかもしれないな、と思いつつ、でもあれ?そもそもこの試験って英哉に恋をしろっていう試験でもなかったな、とずれかけた思考を視線とともに戻して、)でもまあ、おれが女の子らしく頑張って、普段見れない可愛い一面?ってのを見せたらいいってことだよね。あ、魅力の再発見っていうなら何かいいとこ見せたらいいのかな。もう英哉にはときめいたから、あとはおれが頑張って英哉のことときめかせるね!(彼の良さに触れて心が高ぶったことをときめきと呼んでいいのなら、もう彼の試験は合格したも当然だ。ならばあとは自分が頑張るばかりと勢い込んで、ついつい言っている傍から一人称が崩れている事実にも気づぬまま瞳にやる気の火を灯して。)
* 11/16(Sun) 15:45 * No.21

そ、そのように、お褒めいただくほどのことでは……、(わたわたとばかりに首を振る。確かに普段直接にかわいらしいだとか素敵だとかを言うことは少ないかもしれないが、心に浮かんだ言葉を口にしているのは同じこと。しいて言うなら、普段は彼をお世話になっている先輩と認識しているせいで、河合らしいと浮かんでも言葉を飲み込んでいるのが、女性を演じているという一言で飲み込むこともなく穏やかな賞賛を口にしているにすぎない。ただ、少しだけ言葉にしやすいものがあるだけで。そんなさなかに浮かんでしまう恥じらいは、周りから見ればどう映っただろう。)ご夫婦ならではのことであるかもしれません。僕も、恋というものは未経験ですので、見ていた感想、というだけではございますが…どきどきしていただけましたか?(特に意気込んでいた、というのは手を差し出したときくらいのもの。それでもときめきを見出してくれたのなら有り難い限りで、柔らかく小首をかしげて。)僕も、格好いい、とか、どきどきする、とか、ましゅーさんがおっしゃってくださるたびにどきりとしております。ましゅーさんのお言葉には、人の心を動かす力がおありですね。(それは試験の成否に関する答え合わせのようでもあって。気兼ねないお出かけの楽しみもまた、得られたならいいな、と思ってのこと。)そう、ですね?とはいってもましゅーさんは普段から素敵な方ですので…再発見となると、どうしたらよいのか…。(優しく明るい彼のことだ。どのような可愛らしい場面を見たところで魅力の再発見を嬉しく思い、ときめくことに変わりはないだろう。うぅんと考えていると、次第に街も近くなってくる。)折角ですから、小物でも選びませんか?
* 11/17(Mon) 00:31 * No.23

したした! これとかも。(「なんだろう、しんべヱや喜三太、平太とかと繋ぐのとは全然違っててさ」と結ばれた手を軽く持ち上げて。ある意味当たり前と言えばそうなのだが。こうしてお喋りしていると忘れそうになるけれど、少し黙って歩いてみると手のひらから伝わる体温やいつもより近い彼の気配に昂揚する。)え、おれもどきどきさせられてた?(だからてっきり彼ばかり合格点を叩きだしているのかと思いきや、素直な言の葉が同じように彼をときめかせていたと知って瞬いた。その事実にきゅんとしたらもうエンドレスだからこれ以上は口に出さないでおくけれど、「わあ」と喜びを隠し切れない感嘆を相槌に。)……英哉、実は喜車の術使ってない?(段々甘酸っぱい気分と感心が変な感じで混ざり合って、でもちょっぴり前者が勝って頬を染め。行きでこんなにときめいてたら帰りまで持たないんじゃないかと恐ろしくすら思って軽口を叩いてみたが、実際これはそういう試験だったなと思い出す頃には町につく。賑わいが二人を包めば一気にお出かけ気分が高まった。)いいね! せっかくだしお揃いで何か買っていこうよ。(仲良しと言えばお揃いだ。さて、何がいいだろう。エスコートされるはずが前のめりな気持ちがその手を引いて、元気いっぱいのマシューが先を行く。)あ、これとかどう? (あちこち覗いた店先で、ふと目に入ったのは手のひらサイズの巾着袋。)これくらいなら懐に入れておくのに丁度良さそうじゃない?(色柄は様々あって、眺めるだけでも楽しそうだ。)
* 11/17(Mon) 22:59 * No.26

ふふ、しんべヱくんたちとはよく手をつなぐのですか?(委員会に入ってから、下級生の中でも彼らとはなじみが深い。微笑ましそうに目を細めながら、「皆様はまだお小さいですから」と続けてみる。先輩ではあるけれど、小さく守るべき子供たち。翻って言えば、彼に対する思いはどうなのか。)はい、とても。流石はましゅーさんです。(微笑みと共にしかと頷く。彼の性質はいつも快く思ってはいる。しかしそれでも、今回はやはりどきどきした。その素直な事実を微笑みと共に伝えるつもり。そんな中に覚えのある術の名前を耳にすればきょとんとばかりに首をかしげる。)いえ、そんなつもりは…。ですが、ましゅーさんに喜んでいただけるのはうれしく思います。(術を用いて彼に取り入ろうとしているつもりはないとはいえ、頬を染める彼の姿は可愛らしい。穏やかな微笑みと共に素直な喜びを表現する。どうやら回りも特にこちらを気に留める様子もなく、二人で歩く町というのは楽しいものだ。普段行く町とは違う町並みはどこか新鮮で。)いいですね。試験が終わった後も使えるものにしましょうか。(彼に贈るのは女性ものにするよりは、普段の彼に近いものがいいような気がした。女性ものを贈って、女装の授業の時にしか使ってもらえないよりはいつでも使ってもらえるもののほうがいいような気がする。穏やかに愛らしい彼の後をついていく。エスコートという形にこだわるつもりはなく、ただ彼とのお出かけを楽しんで。)ああ、いいですね。色合いもいいものばかりですし……うぅん、迷いますね…(しばらく迷い、蒲葡と空色の二つを手に取る。普段彼がまとっている服の色、それから、青空のような彼の色。仲間たちを愛する彼の象徴と普段よく見る彼の気持ち良い心根を想起させる色。どちらも捨てがたくて、両方を彼にかざしてみる。やはりどうしても決めかねた。)ましゅーさんは、どちらがお好みでしょうか?
* 11/18(Tue) 10:16 * No.29

よくってほどじゃないけど、一年生たちを連れて歩くときにつなぐこともあるかな?(なにしろしんべヱや喜三太はマイペースだし、平太はビビりだ。自然と手を取って歩くことも少なくない。「みんな可愛いよね」つまりは手を繋ぐと言っても後輩の引率に過ぎないのだからこの状況と比べるまでもない。小さな後輩たちの姿を思い出せば目を細めて。)……だよね。もし本当に術を使ってたとしても、言っちゃったら意味ないし。(照れ隠しに差し出した冗談すら優しく受け止められれば為すすべもなく、結局互いを褒め合い照れながらも穏やかに歩みを進めてゆけば町につく。流石に人目が増えれば着物の裾捌きなど多少は気にしなければと頭ではわかっていたけれど、)うん。こんなに種類があると迷っちゃうよね!(目にも賑やかな店々に気をとられ、ときどき守一郎が見え隠れ。もっとも元気のいいお嬢さんという設定のマシューと守一郎の差など初めから一人称以外になかったが。傍らで彼が悩む間、此方も目についた巾着を手に取ってみる。淡い柿色。暮れゆく秋の空のようにおだやかであたたかく、ほんのりと寂しい。そんな不思議な色だった。)え?(すると横から新たな色が飛び込んでくる。)わ、迷うなあ。どっちもすごくいい。(爽やかな青は好んでまとう色だし、紫は自分と学園をつなぐ大切な色だ。どちらも彼の意図が透けて見えるのが嬉しいからこそ眉を寄せて真剣に悩む。うーん、と唸り、けれどもやっぱり決めかねて、それからあ、と呟いた。)…英哉がさ、お……わたしのことを思い出す色はどっち? (問うてから、手にしていた夕暮れ色の巾着を掲げて、)ちなみにわたしはこれ、英哉っぽいなって思ったんだ。……で、さ。思いついちゃったんだけど、英哉がこれを買って、わたしがそれを買って、贈りっこしたらどうかなあって。(それぞれ今手にしている巾着を買えば早いがせっかくなら贈り合う方が特別感がある気がして。「どうかな?」と首を傾げるマシューの瞳は期待に満ちた。)
* 11/19(Wed) 00:45 * No.32

ふふ、みなさま個性的ですからね。(時に先輩たちすら振り回している彼らを思い返し、いつくしむようにくすくすと笑って。「はい」と子供たちの愛らしさについてはしかと頷いて同意を示してみせる。彼らとの日常と、現在。それらは違うようではあるけれど、暖かな気持ちになれることには変わらない。)それは、確かに……。喜車の術といえば僕はどうにも、怒車の術が苦手で。(そんな忍者らしい冗談を微笑みと共に返しながら、歩みは穏やかに。つないだ手の指先が程よく暖かく、気持ちは自然と穏やかになっていく。)ふふ、そうですね。(色とりどりの小物にまばゆそうに目を細める。普段ならば好んで立ち寄ることはない店ではあるけれど、彼がこうして素直に楽しむ様子を見せてくれるものだから、つい自分も楽しい気持ちになってきてしまう。浮足経つ気持ちをそのままに、彼とおそろいという目的があれば、彼を想像させるものをつい手に取ってしまっていた。)はい、どちらもましゅーさんによくお似合いになるでしょうから、迷ってしまって。(こくりと頷き、彼が悩む姿を固唾をのんで見守った。彼が気に入る砲があるならば迷いなくそちらを選ぶつもりだったものだから、彼のつぶやきと問いかけにきょとんと瞬いて。)…やはり、空色のほうでしょうか。よく澄んだ空を見上げていると、ましゅーさんのことをよく思い出しますので。(考えるようにしながらも、空色のほうを握りこむ。どちらも彼によく似合うが、彼をより思いだすというのならばこちらのほうかもしれない。柔らかく微笑みながらそう告げて、彼の提案に驚いたように目を丸くし、)とてもいいと思います。きっと、忘れられない思い出になりますね。…本当なら、立場的にも僕がお会計をすべて持つつもりだったのですが…。(このような提案は初めてで、とてもうれしいものらしい、というのも初めて知った。柔らかく笑って頷き、早速お会計に。)
* 11/20(Thu) 20:23 * No.36

(選ばれた空色とその理由を聞けば破顔した。)ほんと? わたしも夕焼け空を見ると、なんでかな、英哉のこと思い出すよ。(不思議な一致だ。互いに小さく空を切り取ったような巾着を握りしめたなら、)やった! じゃ、そうしよう。(それぞれ選んだものを交換して贈り合うため、手中の巾着を彼に手渡し、代わりに彼の巾着を受け取ろうか。会計に向かいながら、)うーん、恋仲の二人ってものがどんな風かはよく知らないけど、もしどっちかがしてあげる方、って決まってるんだとしたらちょっと嫌だな。(男役の彼が支払いを担うつもりのようだったが、果たして恋仲の二人とはそういうものなのだろうかと首を傾げて。)だってさ、好きな人が何かしてくれるのは嬉しいけど、その分こっちだってしてあげたいよ。好きな人なんだから。(だから彼が頷いてくれて嬉しかった。やはり一緒に訪れた男女が別々に会計をする様はなかなか不思議なこととして店員の目には映ったようだが、「これ、贈り合いっこするんです」と笑顔で告げると、「はあ、そりゃ仲のいいこって」と呆気にとられた様子で瞬いたものの、「恋仲の二人が巾着を贈り合う……これはいい宣伝文句になるかもしれないな」なんて商魂たくましく呟くものだからきり丸を思い出して笑ってしまった。どうやらみんな幸せになったよう。「ありがとうございました! ぜひまた!」と元気のいい声に見送られて会計を終えたなら、店から出てすぐ、)はい。早速だけど、マシューからのプレゼント。(買ったばかりの空色の巾着はすぐに彼の物となる。手渡すさなか、あ、と声を漏らしては、)…やっぱり、マシューと守一郎からの連名ってことでもいいかな? 英哉がそれを使う時、おれのことも思い出してほしいからさ。(今日の日の思い出にと言ったけれど、どうせなら日頃の自分のこともと欲張って。へへ、と笑えば、マシューと守一郎の境界があいまいになる。)
* 11/22(Sat) 00:01 * No.40

僕を?(驚いたように目を瞬かせ、彼の手にした巾着を見る。しばらく目を丸くしていたが、はっと我に返って「うれしいです」とはにかむようにして笑って見せた。彼の中に自分を思い出すものがあり、それが空であること。自分の中の彼を思い出すものも空であること。そのつながりが嬉しくて、彼の破顔も胸が暖かくなるようで。――思えば、こんな風に互いに選んだものを交換する、というのも初めてのことだ。くすくすと柔らかな笑みを浮かべて。)そうなのですか?僕はてっきり、力仕事やお金の類は男の仕事なのかと。(こちらもまたきょとんとしたように首をかしげる。)…ふふ、でも、そうですね。好きな人にして差し上げられることが多いのは、とてもいいことだと思いますから。男の仕事、女の仕事、というものにこだわることはないのかもしれません。(ぱちくりと目を瞬かせた後、彼の言葉を聞けば納得したように深くうなずき、嬉しそうに同意を示してみせる。彼のシンプルな言葉がとても暖かいもののように感じられて、胸にともるのはぬくもりだ。彼はマシューであるときも守一郎であるときも、胸にぬくもりを届けてくれる人なのだろうなあと穏やかに微笑む。彼が店員に説明をする傍ら、こちらもまた嬉しそうに微笑んで頷いているのだから恋仲の二人の睦まじさは店員にも伝わっただろうか。)はい、ありがとうございます。大切にしますね。(しっかりと手に握りしめて微笑む。)……ふふ、はい。もちろんです。ましゅーさんも、守一郎くんも、どちらも大切な方ですから。お二人から贈っていただけて、とてもうれしいです。……僕からは、二人分差し上げられないのが心苦しくはありますが…。(嬉しそうに頷いて、ますます大切にしなければいけないなと嬉しそうに懐に巾着をしまい込む。本来なら身一つでどこへでも行けるべきであるし、ものに執着してはいけないとも思うのだが、あまりに嬉しかったのだから、仕方がない。これから先にどこに行っても、何を手放しても、この優しい思い出を手放すことはないのだろう。それはひょっとしたら、お叱りを受けることかもしれないけれど――)ましゅーさん、次はどこに行きますか?(穏やかに笑って、彼に向けて手を差し出す。今はただ、もうしばらくこの時を楽しみたい。)
* 11/23(Sun) 12:12 * No.44

よかった。ありがとう!(大切な人に大切と言ってもらえる喜びと、差し出した熱き想いをそのまま受け入れてもらえる感動とが入り混じる。)あはは、別にいいよ。英哉からのプレゼントってところが大事なんだから。(みんなと仲良くなりたいとは常日頃思っているけれど、今は漠然とした”みんな”ではなく”英哉”との距離が縮まった実感が何より嬉しい。互いの想いごと交換するように受け渡された巾着をそっと仕舞いながら生真面目な言い分に笑ったものの、「ああでも。英哉の女装姿も可愛かったから、逆の立場でも出かけてみたかったなあ」なんて他愛のない感想をもらしてみたり、「英哉が女の子だったら英子かな?」ついでにもしものデートを想像してみたりしたけれど、)でも、あんまり変わらなかったかもしれないな。英哉はそのままでも可愛いし、やさしいし。(きっと姿形が変わっても、その本質が変わることはないだろうからと帰結する。此方に向けられた穏やかな笑顔も、差し出された手も、これからずっと傍にあればいいのにと思いながら手を繋ぐ。)そうだなあ、じゃあ甘いものでも食べに行く? ちょっとお腹がすいたかも。それにゆっくりとお喋りしたい気分だし。(そうして辿りついた茶屋にて、「忍術学園には慣れてきた?」「英哉が編入したら何年生からになるんだろう? え、乱太郎きり丸しんべヱと同じってことはないよね?」「そういえばこないだ――」お喋りは止まらない。時折思い出したギャグを披露してはひとり大笑いしてムードもへったくれもなくなって、試験のことを思い出しては反省して、二人顔を見合わせてまた笑って。賑やかで楽しい時を過ごした。よく晴れた空が、懐に大事に仕舞われたそれと同じ色になるまで。)
* 11/25(Tue) 00:39 * No.47


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