幕間
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2日目:食堂>細葉 史士郎

と、言うわけで、俺がお前のお世話係をすることになった五年い組の尾浜勘右衛門だ、よろしく!(お世話係は体験入学生に学園の案内をするように!ーーそんな一言を受け体験入学生と合流した二日目の午後。忍術学園の敷地は広い。その広大さから初めて訪れた人ならば何処に何があるかを把握するのも一苦労な上、彼方此方に落とし穴や塹壕掘りの跡があったりするものだから、慣れないうちは無事に目的地に辿り着くのさえ大変だろう。腹が減っては戦はできぬ、まずはどの忍たまもお世話になる食堂から案内しようと、罠の目印があれば地面を示し避けるように指示しながら向かった矢先、なにやらきょろきょろと辺りを見回していた事務員とぱちりと目が合えば、気の抜けた笑みを浮かべた彼に呼び止められたため足を止めて、)はい?どうかしたんですか?……卵の殻を割らずに中身を抜くアルバイト?いや、私たちこれから学園を見て回る予定で、……って、あぁ!小松田さーん!ちょっと!(「じゃ、よろしくねー!」と呑気な声が響く。一通り説明をした後、こちらの返事を聞くこともなく、あぁ忙しいんだから!と次の用事を済ませに駆けて行ってしまった後ろ姿を引き留めようと伸ばした手は届くことなく下ろされた。弱ったように眉を下げ、ぽりぽりと指先で頬を掻いたが悩む時間も勿体無い、頼まれ事を先に済ませた方が良いだろうと体験入学生へ顔を向け、)……ということなんだけど、いいか?悪いなぁ、でも食堂のおばちゃんに恩を売っておくのは悪いことじゃないんだ。覚えがめでたければおまけが貰えるようになるかもしれないし。(道すがら親交を深めようと思っていたため彼がこういうやり取りを面倒臭がる人間かどうかさえまだ知らないのだ、少しばかり申し訳なさそうに伝えながら食堂へ足を踏み入れれば、奥で作業をする食堂のおばちゃんと、机に置かれた大量の卵に大きなボウルがお出迎え。うっかりしている事務員にしては珍しく、アルバイトの内容自体は間違いなかったらしい。食堂のおばちゃんに一声掛けつつそれぞれ作業をしようかと普段食事をしている横長の机の片側に立ち、)おぉ、結構量があるな……まぁ二人でやればすぐだろう。やるか。
* 9/21(Sun) 09:16 * No.1

――尾浜先輩、ですね。改めまして、体験入学生の細葉史士郎、齢のところ14です。よろしくお願いします。(五年生ということは、一応同い年ということになるのだろうか。頭の中で歳を数えながら、ひとまずは当たり障りのない挨拶と微笑みを返そう。私服から黄蘗染の衣装に衣替えして、形ばかりは立派な忍者のたまごのような気持ち。背筋を伸ばして彼の後をついていく様はどちらかと言えばひよこのようであったかもしれないが。閑話休題。学び舎にはあるまじき、されど忍者の住処と言われれば納得できるような忠告を困り眉で聞きながら目的地に向かう途中だ、その罠があったのは。)……あの方、いつもあんな感じなんでしょうか?それともとんでもない量の仕事が小松田さんををそうさせているのか……?(初日に何かとお世話になった事務員さんの、小さくなっている背中を見つめ。そりゃもう同じように眉を下げていたことだろう。ほとんど独り言のような呟きを落として溜息を一つ。)まあ、元々食堂が目的地でしたし。構いませんよ。……というのは建前で。本音を言えば、僕も売れる恩は売っておきたい性分です。他にも恩の卸先をご存じであれば教えてもらいたいですね。(諦めの良さと切り替えの早さは美徳であると自負している。柔い笑みでついでに調子のいい尋ねごとも連ねつつ、歩みを再開させよう。忙しない事務員の実態を知らないが故、食堂についてから彼の向かいに落ち着くまで滞りなく。)これだけの殻を、しかも割らずに使うとは……謎は深まるばかりですが、覗き込んだところでどうにもなりませんしね。やりましょう。時に、手先は器用な方ですか?(手に取った卵は立派なもので、故に食す以外の用法がなかなか思い浮かばない。時間を掛ければ難しくはない作業であるが、学園案内がどうなるかは二人の器用さにかかってくるだろう。視線は手元に落としながら、言葉だけが彼へと向かう。)ちなみに僕は苦手というほどではないのですが、最初から難のあるものを手に取りがちです。運がよくないんですかね。(僅かひびが入っているようにも見えるたまごの尻を真剣につつきながら。)
* 9/22(Mon) 22:48 * No.2


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