幕間
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14日目:食堂
うーん、どうしよう。(眼下に並べた二枚の紙きれはすっかり忘れ去られていた先日のご褒美。日々の授業やら委員会体験の準備やら何かに忙しい日々を終え、昨夜同室に「そういえば守一郎、あれはもう使ったのか?」と言われてようやく思い出したのだ。そしてまだだから一緒に行こうと茶屋に誘ったのだが明日の休みは照星さんのところに行くのだとあっさり断られ、ならばと今朝出会った滝夜叉丸やタカ丸さんにも声をかけてみたけれど、スターは忙しいだの髪結いの仕事があるだのと皆休日の予定は埋まっているらしかった。仕方なく食堂にやって来たものの、暇そうに朝食を食べていたのは乱太郎きり丸しんべヱだけ。三人を前に二枚しかない割引券の話は出せず、こうして食事を終えたあともぽつんと一人、机の上を眺めている。)いっそ誰かにあげちゃおうかな。でもせっかくならおれも行きたいし、けど今日に限って一人で暇そうにしている人が全然見つからないんだよなあ…。(期限は書いてなかったが、開店を祝うためのサービス券なら早く使った方がいいだろう。うんうん唸る後ろ姿がかえって人を寄せづらくしているとも思い至らず、)うーん。(また唸る。)
* 11/18(Tue) 00:11 * No.19
…
……おや、これは浜守一郎先輩。どうかなさいました……じゃないや、どうしたの?こんなところで悩まし気にして。(実は食堂の隅で気配を消して朝食後の茶をしばきながら読書に勤しんでいた細葉史士郎である。乱きりしん、そして忙しく朝食を食べているお寝坊さん数名が、唸る浜守一郎を遠巻きに気にしている。そんな空気に耐えられなくなって、空になった盆を手に立ち上がり、さも今気が付きましたと言わんばかりの調子で話しかけた、というのが真相である。本の続きはまた明日の朝食後にでもするとして。閑話休題。)その割引券は……この間のエッグダッシュの景品だったっけ?いいなあ、誰と行くかもう決めたの?二枚組だなんて、学園長先生も太っ腹だ。(そういえばそんな話も聞いた気がする、と言った体で気持ち声大きめに彼に話しかける。食堂にいた面々の心配だか好奇心だかもこれで解消されるだろう。余計なお世話かもしれないが、火種があれば大火事になりかねないのがこの忍術学園だ。変な誤解や勘違いの芽は摘んだ方がいいとこの二週間で充分に学んでいた。割引に反応したきり丸、甘味の匂いを嗅ぎつけたしんべヱが乱太郎に窘められ食堂を後にする。よく見る光景だった。)
* 11/21(Fri) 11:16 * No.20
…
(いつだって救世主は突如現れる。)あ、史士郎さん。(突然の出現のように思えたが、しかしその手にある空の盆を見るかぎり先ほどから居たらしい。三年は組三反田数馬もびっくりの気配の消しっぷりに驚きつつも、)いや、それが…。(話題が眼下の割引券に移れば己の苦悩を思い出して首を振る。いつになく彼が大きな声を出していることにも気づかぬまま、平素通りの声量で「実は!」と切り出せば、)……というわけなんです。(かくかくしかじか。フラれ続けた今に至るまでを説明して、)なので、本日お暇な一名様を探しているんだけど……その、史士郎さんは…(途中、勢いが失われたのは彼の手に本を見つけたため。図書委員会に所属する彼は読書家らしく、もしかするとせっかくの休日にはゆっくり本を読むつもりだったのかもしれないと思い至ればまたフラれるのかとしょんぼり顔で、)今なら学園長先生のブロマイドもついてくるけど、どうかな…?(交渉材料になり得ないと知りながらもそんなことを言うあたり、半ば自棄になっている。)
* 11/25(Tue) 00:52 * No.21
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