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1日目:風呂場>史士郎
(今なら湯が空いていると教えられ、近くで片付けをしていた友と連れ立った風呂場にて。)おお、二人で入るには贅沢な広さだな。(たまたま前に入っていた生徒と入れ違いになり、ひとときの貸切状態に機嫌よく呟いた。)それにしても、今日の演目は大成功だったな、史士郎。(そして体を洗うべく桶に湯を汲みながら、今日の成果を振り返る。個々の技が上手くいったのはもちろんのこと、二人の息がぴたりと合ったことがなにより嬉しかった。成功の喜びは演目を終えてすぐにも分かち合ったが、改めて噛み締めるよう微笑んで。)料理に宴に余興にと忙しかったが、おかげで充実した一日になった。正直忍者の学校などどうしたものかと不安もあったが、なんとかやっていけそうだ。……お前はどうだ?(生憎料理の班は別々、宴の合間もお世話係と話し込み、出し物が終わればほどなくして後片付け。宴には在校生が皆集まったこともあり、会う人会う人に自己紹介をしていたら彼とゆっくり話せなかった。ゆえに彼を誘ったのは一日の終わりを労うため。否、単に初めての友に今日の出来事を話して聞かせたいだけの幼心も少しだけ。)
* 9/29(Mon) 02:02 * No.5
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おぉ……そうだね、流石学校って感じだ。(誘ってくれた友人の背中からひょっこり顔を出すように浴室を眺め、独り言のように呟いた。なんやかんやとドタバタした一日を締めくくるに、これほどのものは他にない。湯桶を抱えてご機嫌に、掛け湯から始めよう。)そうだね。練習の時間も短かったけど、いいものができた。理助くんのおかげだよ。流鏑人のときは安定感抜群だったし、なんと言っても最後の一太刀!素晴らしかったね。(称賛は幾ら贈っても贈りたないくらいだ。温い湯に身体が解れ、口元も余計に柔く綻ぶだろう。)まあ、僕もぼちぼちやっていけそう、かな?同じ班になった忍たまさんも、同じ体験入学の人も、とてもいい人だったし。あなたのほうは、どんな人と一緒に料理をしたの?(楽しげな調子で振り返りを語り、ほほえましい様子で彼の言葉の先を問う。手拭を泡まみれにして身体を清めながら、そういえばともう一つ尋ねごとを。)なんか、ちらっと見かけた時に肩にリスが乗ってたのが見えたけど。あの子は学園で飼われてるの?それとも、理助くんの連れ、リス?(流鏑馬を人でやれば流鏑人。ならばリスの連れは連れリスなのだろうか。なんてぼんやり思ったことをそのまま口にして、首を傾げる。)
* 9/30(Tue) 10:01 * No.7
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ああ、しかし史士郎。お前があまりに軽いから驚いたぞ。(流鏑人の際に彼を担いだときの驚き。その理由を眼前の細い背に見れば再び「ちゃんと飯は食べているのか?」と気遣わしげに。実際他の生徒と比べて特別貧相というわけではないのだろうが、如何せん風呂場に裸の男は二人。自ずと比較対象は決まり、腹筋の数を比べてみたり。)そうか。そういえば喜八郎と同じ班だったらしいな。お前のことを器用で面白いと言っていたが、何をしたんだ?(それでも彼がしっかりとした青年であることも知っていて、半ば予想通りの応えに満足げに頷いた。控えめに見えて度胸のある彼のことだ、なんだかんだで仲間たちと課題をきちんとこなしたのだろう。)私は七松先輩という六年生と一緒にイモ粥を作ったぞ。明るくて気持ちのいい方だった。豪快に見えて視野も広い。流石は最上級生だな。(話しながら、手元で泡が肥大してゆく。背中を洗ってやろうかと言いかけて、タイミングを逸した分だけもこもこもこ。)……見てたのか?(もこもこと言えば奴の尻尾だ。途中で姿を消した闖入者の話題になれば眉根を寄せて。)連れリスではない。付きまといリスだ。……奴は忍術学園に来た時に偶然出会ったリスで、ビスコイトの欠片のクルミをやったら気に入ったのか、私の後をついてきてな。しかし散々遊んだ後は勝手に消えたぞ。……七松先輩はご存じなかったようだから、学園のリスではないのだろうが……うむ。やはり名など付けなくてよかった。(本当によかった。そのくせ呟きに滲むは幾ばくかの寂寥に似て。)
* 10/1(Wed) 15:40 * No.9
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武人のあなたと比べれば見劣りするだろうさ。……悪いことばかりじゃないよ、身軽だし。(小さく肩を竦めて何でもない調子で言うけれど、ちらりと引き締まった腹筋を見やって続けた言葉は少しだけ言い訳じみていた。腕や足はともかくとして、腹に関しちゃ彼に比べだいぶ貧相に見えてしまう。)ええ?綾部先輩の自己紹介じゃなくて?それ。僕はイノシシ肉を切ったくらいだよ。村で罠にかかったのを捌く手伝いをしたことがあったから。(声が上ずったのは、憤りを覚えているというよりは、可笑しくて堪えられなかったという調子で。彼が楽しそうでよかったとも思うし、こうして振り返っていれば自分も一日目なのに随分楽しんでいるものだと不思議な気持ちにもなる。)イモ粥すごく美味しかったよ。七松先輩とはお話しできなかったし、是非色々聞いてみたいなあ。最上級生って他にどんな人がいるんだろう。……え?リスのこと?そりゃしっかり見てたけど。(のんべんだらりと世間話を続ける中で言葉が詰まる様子を見れば首を傾げて。わしわしと腹を泡塗れにしながら話を聞いていく。別に、けして、腹筋を隠したいわけじゃないが、もこもこといつもより多めに念入りに泡を盛って。)……なるほど?(迷惑そうに見えたのは最初だけで、どうにも惜しむ様な調子に、笑いすぎないように気を付けて眉を下げた。)動物って自分を助けてくれそうな人を見つけるのが上手いんだよ。見る目があるというか、そういうのを見抜くのが上手いというか。野生動物だったら尚更だし、餌まであげちゃってるならまた集りに来ちゃうかもね。(わあ大変だ、とふざけた調子を装って知ったような言葉を吐く。慰めというには軽薄で、からかうというには優しい声色をしていただろう。)ほら、背中流したげるから向こう向いて。それとも、リスくんが来た時のためにクルミでも張り付けとく?次来たら名前つけようよ、そうしよう。
* 10/2(Thu) 22:30 * No.11
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なるほど。忍者の基本は隠密。つまり小柄で細身なことは理に適っているというわけか。(剣士の物差しで考えがちな己を反省。「まあ健康に支障がないならいいんだが」と、結局のところ気になっているのは友の見栄えではなく健康なわけで。)ああ。確かに喜八郎も面白い奴だったが。……ほお、イノシシを捌けるとは大したものだ。的当てといい、虫も殺せぬような顔をしてやはり侮れん。他にも特技を隠してはいないか?(彼には今日一日で何度驚かされたことだろう。もはや出会った当初に抱いた地味な印象など消え失せて、次はどんな意外性を出してくるのか半ば期待に満ちた目を向けて。)私も六年生のことはまだよく知らんが、七松先輩のご友人に菓子作りの上手い方が居ると聞いたぞ。ほら、ボーロも食べたか? 確かにあれはとてつもなく美味かった。近いうちに作り方を教えていただこうと思ったほどだ。(菓子作りに必要な根気なら自信がある。もこもこ。ひたすら泡が立っていく。)……そういうものか? まあ、食べ物を与えてしまったのは迂闊だった。(昔から小動物に好かれやすい自覚はあったが、もしかすると、自分にもまたそれらを愛でる心があったのだろうか。うっかり落としたつもりの欠片も無意識が為したことだったのか。考えてみてもすぐに答えは出ないけれど、無自覚の傷心を撫でるような軽い声の、その柔さが心地よくて。勢いなどまるでないのに、)ん。(流されるように彼に背を向けていた。)ふ…そんなことをしては、奴が服の下に潜ってきて大変なことになるだろう。(小さな笑気が吐息交じりに。膝の上に積み重なった泡の山を少し揺らした。)……そうだな。もしまた奴が現れたら、名前を付けて…根性がありそうなら忍リスにしてやるのもいいかもしれん。
* 10/3(Fri) 20:08 * No.12
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隠す様な特技はもうないかな。肉も捌けるとは言っても、解体からは流石に無理だし。そういう理助くんこそ、案外大事なこと隠したりしてない?(彼の目には己がどんな児子に見えているのやら。「僕はあなたがいい子過ぎてちょっと心配だよ」なんて、わざとらしいやれやれ顔でからかいを続けよう。風呂場でなければ頬でもつついていたかもしれない。そんな軽々しい口調だ。)食べた食べた。忍術学園って本当にいろんな人がいて面白いね。ボーロの作り方、僕も教わりたいな。村の子供たちが喜びそうだ。(どうやら彼は料理に覚えがあるらしい。だからというわけではないけれど、泡を立てるのもすこぶるうまいようだ。)知る限り、犬や猫はそうだね。リスは珍しいとは思うよ。そのリスがよほど人懐こいのか、それともあなたが特別動物に好かれやすいのか、……まあ、僕は後者を推しているわけだけれど。(いいこだもんなあと、湯気で視界が悪いのをいいことに、微笑まし気に緩む唇を隠そうともせずに。自分も大きな背中と向き合うように身体を動かし、泡立てた手拭いで壁のようなそれを泡塗れにしていく。服に潜り込んでくるリスを想像して、ちょっとだけ声を出して笑った。)はは、それは大変だね。あなたの手元が狂ったら大事だから、クルミを忍ばせるにしても刀を持っていない時にしよう。というか、人の服に忍び込むなんてもう忍リスの適性があるんじゃないかな?ヘムヘムの後輩として頑張ってほしいものだね。(冗談交じり、鼻歌交じりに背を流し、なんなら多めのもこもこで自分の背も洗って欲しいと頼んでみよう。そうして朗らかに過ぎた一日目。彼とリスが再会し、青年がリスと相対するのは、何日目になるだろうか。少なくともその日が来ないなんてことはないだろうと、細葉史士郎はそう思っている。)
* 10/6(Mon) 14:49 * No.13
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大事なこと? いや、隠しているつもりはないが…聞かれて困ることはないからな。気になることがあれば何でも聞いてくれ。(隠し事が苦手な男は身も心も晒すことを躊躇わない。揶揄うような響きすら気安さの証のようで悪い気はせず、「いい子過ぎ」という評価についても「まあ、もう少し人を疑えとは言われたことはあるが…」と素直に受け止め、「まさかお前から同じような指摘を受けるとは…観察眼もあるのだな」半ば感心したように呟いた。)おお、なら一緒に学ぶか? まずは私が彼の先輩に弟子入りして、それを史士郎に伝授するのもいいな。人に教えるとなれば一層気合が入るだろう。(菓子そのものもそうだが、それを作れる技術はいい土産になるだろう。村の子を気遣う彼の様子を微笑ましく思いながら頷いて。)……物好きなリスだったという可能性もあるが、動物を手懐けられるのも一つの才と思えばまあ、悪くないか。(実のところはあのリスに聞いてみないとわからないが、楽しそうに語る彼の言葉を、泡だらけの手拭いを大きな背で受け止めた。いつかの父や仲間たちの剛腕に比べれば優しすぎる手つきと感じたが、いつまでも背を預けたくなる快さは彼の腕の良さによるものか、あるいは。)確かにな。あの小ささとすばしっこい動きは忍びとして優れているのかもしれん。(かといって帯刀時以外も服に潜り込まれるのはごめんだと笑う声は泡とともに掛け湯に流され、)…もし名をつけるとしたら、何がいいと思う?(今度は此方が手拭いを手に取る番。よしきたと気合十分に積みあがった泡を掬って、小さな背中を擦りつつ、)私にはどうにもセンス?というものがないらしくてな。下手な名をつけるのも可哀そうだから、良ければ一緒に考えてくれないか。(痛がらないようにそっと力を込めたり、抜いたり。たとえリスとの再会が叶わずとも、こうした他愛ない友との会話にこそ価値があると思いながら。――果たして後日、彼の優れたセンスは光ったか。)
* 10/10(Fri) 14:49 * No.14
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