幕間
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【後日談】初春:裏々山>理助くん
──つまりね、体が小さいということは、的が小さいと言うことなんだよ。加えていうなら体も軽いし、僕はそれが自分の利点だと思っているから、力よりも素早さや技術に重点を置いて鍛錬している。理助くんの刀の間合いに入らなければ僕が結構有利でしょ。まあ、裏を返せば間合いを詰められると形勢逆転するんだけどね。(翌年か翌々年か。とある春の初めの頃、たまたま忍術学園でばったり会った彼に時間があるなら手合わせしようと持ち掛けた。裏々山で行った勝負の行方はどうだっただろうか。細葉史士郎の優勢であったなら得意げに、栗栖理助の優勢であったなら悔し気に、また五分五分であったならすっきりとした表情で上記の台詞を告げただろう。ちなみに、お決まりの三人組の乱入で決着はお預けと相成った。山田伝蔵にデカいたんこぶをこさえられたうえで連れ帰された三人組の背中を見送ったのがつい先ほどの出来事。水筒を傾けて見上げた空は春の空気を感じさせるが、風はまだ冬の息吹を残している。はあ〜なんて気の抜けた溜息をついて、汗冷えしそうな体をほぐさんと、ぐっと背伸びをした。そうして、空を見つめたまま、)……そういえばさあ、夏の初めくらいにちょっと暇が出来そうなんだけど、理助くん暇?(切り出し方を迷ったせいで、なんだか含みを持っているように聞こえてしまったやも。そんなこと彼は気にしないだろうとも思っているが、一回偵察だ諜報だがバレた青年の方は気になってしまって。ぽりぽりと指先で頬を掻いて、視線を友人の方へと移ろわせ、眉を下げて笑った。)アカトキヤミに遊びに行こうかなって思ってるんだよ。理助くんに案内してもらえると嬉しいんだけど、どう?……ちなみに、本当に僕個人で遊びに行くだけだからね。だから、あなたも友人として返事をしてくれると嬉しいな。(わざわざ付け加えたことを彼は怒るだろうか。それでも別にいいと思っていた。友人の機嫌を取るためにごめんごめんと、軽い調子で謝る準備は出来ているもので。急がないからさ、なんて付け加えてもう一口水を食む。空も風も澄んでいた。)
* 12/28(Sun) 00:40 * No.70
…
(忍術学園に入学せずとも縁だけは確かに繋がれたまま、時折同じ場所に姿を現す二人。)――なるほどな。接近戦を得意とする私がお前に勝つには、まずはその身軽さを削いでやらねばならんということか。あるいは虚を突いて一瞬で間合いを詰めるか。(久しぶりの邂逅はある種の必然だったろう。申し出を快諾して行った勝負の行方は五分五分と言ったところ。剣技においてはそれなりの自負があるが、彼との戦いにおいては負けても悔しさを納得が上回る。そもそも決着をつける前に闖入者が現れたのでは踏む地団駄もなく、話を聞いてふむ、と頷きながら彼の伸びた身体を見つめた。――相変わらず小さいな、と懐かしさも込めて思う。怒られるので口に出さないが。ちなみに男はあれから3センチは背が伸びた。)…夏?(すると不意に話が未来に向く。彼の遠回しな言い方には慣れているので短い反応に留め、続きを促す。)……ああ、なんだ。(そして視線がかち合うと、同じようにやわく笑った。)…まあ、あまり暇とは言えないが、お前のためなら時間を作るぞ。(それが出来ないほどの立場ではないし、雑事と彼を秤にかけるまでもない。友人の来訪を喜ばないわけもなく、つまりはまあ色々と当たり前のことを聞くなと言いたかったが、今日ばかりは喜びがお小言を包んで宥めて腹に留めた。発足したばかりのアカトキヤミ忍軍。その安定を最優先事項として奔走して早一年。)ベンリナダケ城との同盟についてはまだ打診中の段階だからな、お前にその気があろうとなかろうと私の友人以外の肩書きでやって来てもらっちゃ困るというのが本音だが、……その肩書きで来るなら覚悟はしておけよ。(と呟いたのは、以前城に喜八郎を招いて以来、何かにつけて「で、お前の初めてのお友達とやらはいつ来るんだ?」と若様がおっしゃることを思い出して。どうやら体験入学期間に出来た”理助のお気に入り”全員と会いたいらしいのだ。きっと彼が城に来ると聞けば盛大な宴を催すに違いないし、彼は好奇心旺盛な若様の質問責めにあうだろうからと苦笑交じりに、けれどもどことなく浮かれた様子で話すのは、夏の訪れを誰より待ち望んでいるのが男自身だからだろう。うらうら。躍る春風が期待をはらんだ。)
* 12/28(Sun) 17:57 * No.75
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