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【後日談】一月二日:忍術学園>守一郎くん

(参拝者であふれかえるということもなく、仏と向き合い、掃除をし、自分の心と向き合って、年明け。元旦こそ年始の挨拶やらなんやらと落ち着きなかった金楽寺も一日明けた後はいつもの落ち着きを取り戻す。朝餉を終え、朝のお勤めを終わらせ、指定の時間までは和尚様と二人ゆっくりと過ごして。昼過ぎに彼が訪れてくれたなら、しっかりと寺の門を閉めて三人、連れたって忍術学園へと向かうだろう。アルバイトに声をかけたり、休日に町で過ごす彼に声をかけたりとして時間を過ごすこともままあったが、こうして三人で金楽寺から忍術学園への道を歩くのは初めてのことだった。無事に金楽寺の和尚様を忍術学園の学園長先生のもとに送り届けたなら、後は何の憂いもなく彼のことを祝うだけ。)改めまして、守一郎くん。お誕生日おめでとうございます。この良き日にお招きいただき、誠に嬉しく思います。(深く頭を下げて祝意を示す言葉を贈る。こうしたお祝いにはなれなくて、どうしても形式ばった言葉になってしまった。一つ深呼吸をして。)…ええと、何か贈り物を、と思ったのですが…。(現在、忍術学園への学費をためるために節制している身であり、現在は冬。自然のものをとろうとしてもなかなか恵み自体が少ないし、金銭を投じるには難しい現状で。なので、)…よろしければ、こちらをお受け取りいただけませんか?(そういって差し出したのは日ごろ芸に使う扇子であった。長年使い続けたそれは丁寧な補修を繰り返しているために目立った損傷はない。)お渡しできるのは、僕が今持っているもの…になるのですが、価値が高いのは鞠ですが、お役に立つのはこちらの扇子かと思いまして。よろしければ、この扇子を使った手妻をいくつかご指南させていただくことを贈り物とさせていただけませんか。(祝いたい気持ち自体は曇りなくあり、さんざん考えた末に行きついたのが手品道具の譲渡である。忍たまである彼にとっては何かの役に立つだろうと思って。彼が生まれてきてくれて嬉しいから、彼に対して何かを惜しむつもりなどは毛頭なく。ただ、彼に笑っていてほしいから。その後も四年生たちと共に過ごし、彼への祝意を惜しみなく伝えた。このパーティもまた、かけがえのない財産だ。誕生日おめでとう、生まれてきてくれてありがとう、大切なあなた。)
* 12/29(Mon) 03:40 * No.78

(彼とともに見る寒晴の空の色は青く澄んでいて、冴えた空気のなか、どこまでも遠く見渡せた。そんな景色を二人きりで歩きたかったというのが本音だけれど、この際贅沢は言うまい。和尚様にもきちんと新年のご挨拶をして、無事に学園長先生の庵まで送り届けるまでは我慢。それゆえに、)うん、こちらこそ本日はお越しいただきありがとうございます! 今日英哉に会えるなんて夢みたいだよ。嬉しいな!!(お使いの忍たまとしてではなく浜守一郎として彼と対峙する頃には興奮を隠しきれず、満面の笑みとともに元気いっぱいのありがとうを何度も口にしただろう。彼が会いに来てくれたとき、お祝いを述べてくれたとき、それから、)え、いいの…?(きっと思い入れのあるだろう扇子を受け取ったときには流石に驚きと遠慮が先に来たけれど、それでも彼が悩んだ末に贈ってくれたものだとわかるから、最後にはぱっと顔を輝かせて、)すっごい贈り物だよ!ありがとう! 扇子だけでも嬉しいのに、英哉の芸まで教えてもらえるなんて…!!(これ以上ない付加価値を前に差し出された扇子ごと彼の両手をぎゅっと握った。)本当は英哉が来てくれるだけで十分プレゼントだったんだけど、…じゃあさ、習った手妻を上手にできるようになったら、今度は英哉の誕生日に披露してあげる!(そして紡ぐは半年以上も未来の約束。流石に本日の宴では四年生たちに見せびらかすことしかできなかったが、持ち前の根気強さと彼の教えがあればきっと上達するだろう。そうして五年生になった浜守一郎の武器は南蛮鉤と扇子、お笑い大好きな芸達者、なんて未来もあるのかも。想像するだけでちょっと楽しい。)…おれさ、マツホド忍者の末裔として生まれてからずっと、失ったものを取り戻すことばかり考えてきたけど……忍術学園に入ってからは、みんなに色々もらってばかりで、同じだけみんなにお返ししたいなって、そんな風に思ってばかりだよ。…あはは、うん。つまりさ、生まれてきて幸せってこと!(大切な君に、皆にありがとうと言えること。それこそが一番の喜びだ。)
* 12/30(Tue) 00:22 * No.79


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