昼神晴一&佐々礼笑子
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12/17(月):放課後 用務員室前 >昼神さん
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* No.59
おれだってもうアイリーンには気軽に甘えたりできないかも、だけど、……だいじょうぶ。笑ったりしないよ。(苦笑は拭いきれぬまま、けれど念押しには任せてくれと二つ返事で頷いた。理想の世界に現実が滲むこともあるだろうが、だからと言って生まれるのは気恥ずかしさであって気まずさではないはずだ。それだって嫌な気持ちではなく宝探しみたいな気分に違いない。彼女たちを繋ぐ根っこを見つけるのは、あるいは見つけられるのはきっと楽しい未来。穏やかに流れる時間はあっという間で、彼女の問いに忘れかけていた現実を思い出す。)あ、うん。実はさっき午後の仕事が一段落ついて、ちょうど休憩に入ったところだったんだ。(突然の再会に気をとられていたけれど、よくよく考えると室内に女子生徒と二人きりというのはまずい状況かもしれなかった。幸い今は誰も居ないがもう少ししたら事務長も戻ってくるかもしれない。壁にかかった時計の針に目を遣れば少し慌てて、)校内で話しかけてもらうのは全然問題ないんだけど、さすがにここでおれたち二人きりってのはまずいのかも。変な誤解されても困るし……って、そういうとこ気が回らなくてごめん。(名残惜しいが交友を深めるのは次の機会に託すとしよう。生徒とちょっとした立ち話くらい“普通”の範疇なのかもしれないが、万一のことがあってはなるまい。そうして出入り口の扉に手を伸ばすも、ふと大事なことを思い出す。)あ、でも帰る前に……よかったら、連絡先交換しない?(ポケットから取り出したのは最近頻繁に触れるようになったスマートフォン。)えみこちゃんさえよければ、これで連絡できたらうれしいなって。(彼女と再会できたら真っ先に頼もうと思っていたこと。以前なら文字を打つことも読むことも苦痛でしかなかったけれど、思い出が記録に残る喜びを知ってしまった今だから。)それで、できたらまた会えたらうれしい……んだけど、どうかな?
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やっぱりこのスレッドはどこかぎこちなさを纏っているんですけど、理想世界で紛れもなく築いた絆があるのを感じられてきっと現実でも大丈夫って思わせてくれるシーンで好き〜!この状況を宝探しみたいなって表現してくれるの最高すぎませんか??でもイサナが甘えてくれないのはアイリーンは寂しがっちゃうな…。
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* No.61
よかった……ありがとう。(感情が突っ走ったときの恥じらいは痛いほどわかるからこそ純粋なる感謝の微笑のみ湛え、余計なことは言わずに慣れた手つきでアプリを開いた。そうして『佐々礼笑子さんと友達になりました』とLINKSのお墨付きをもらえたならば、漢字変換もできなかった頃に登録したひらがな四文字が彼女の画面にも表れるだろう。──新たな海が横たわる。LINKSにおいては二人目の友達のトーク画面。最初のあいさつは何が良いだろう。真剣に画面を見つめる彼女もはじめの一歩を悩んでいるのかと思いきや、連ねられた気遣いにはっとする。)…えっと、ひらがなとカタカナならだいじょうぶ。でも、漢字があっても読み上げ機能使って聞けば結構わかるよ。あと、スタンプも絵だけならいいんだけど、文字が入ってるやつだと小さくて読めなかったり、読み上げに対応してなかったりするからかえって文字の方が助かったりする、かも……けど、個人的にはスタンプはかわいくて好きで、…あ、うん。おれ読むのも返事打つのも遅いから、長かったり急ぎだったりしたら電話の方がありがたいかな。(自らあれこれ口にすると面倒な注釈めいて躊躇ってしまうのに、一つ一つ教えてくれと言ってもらえるとひどく気が楽だった。と同時に、こんな風に伝えたらよかったのだと改めて知る。必死に隠して苦労するより、その方が彼との会話ももっと楽しかったに違いないと気づかされ、滲む画面に視線を落としたまま最後に「ありがとう」と静かに紡いだ。)……うん、(それから扉を隔て、生徒と用務員。傍目には正しい距離感に戻った二人。大きな瞳がこちらを見つめる。多くを語らないまっすぐな目は時に誤解を生むけれど、着実に友達への一歩を踏み出した今なら其処に浮かぶ光が未来だけを見つめていることがよくわかる。赤みを帯びたブラウンに映る自分もまた同じ顔をしているからだ。)またね。えみこちゃん。(だからさようならの代わりに約束の言葉を贈り、去り行く背が見えなくなるまでぎこちなくも手を振った。次に会う時はどちらの姿だろうかと期待しながら。)
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察して自己判断する、というのは佐々礼にとって苦手分野なので、直接全部聞き取りした場面をこういう想いで受け止めてくださるの有難いですね……そして昼神さんとのやり取りの中でちらほらと鵜飼くんの姿があったり、お二人のやり取りの中で佐々礼を思い出してくれるのも、その全部が大好きです。
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12/25(火):放課後 用務員室前 >昼神さん
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* No.112
(お土産なりプレゼントなり、自分では買わなかったであろう誰かの気配がするアイテムはそれだけで特別な気分にさせてくれると知っている。寂しかった家にまたひとつ増えた温もりを腕に抱きながらはにかんで。)…そう? …じゃあ、似合ってるところ、そのうち見せられたらいいな。(ぬいぐるみチックなふわもこルームシューズが似合うと言われたなら成人男性としては苦笑が先に来るべきところだろうが、真実これを気に入ったこともあり、好意を素直に受け取ることに。本当にいつか彼女を家に招くことがあるのなら、件の湯呑みを見せたいな、と朝晩の食卓の供を思い出しつつ。)……なら、よかった。(ドキドキの終わりは安堵にて。もしも気に入らなかったとしてあからさまに態度に出すとも思わなかったが、自然な表情の変化にほっと一息。作り笑顔が苦手なのはこちらも一緒。お互い嘘がつけない不器用さが真実の証左になるのが嬉しかった。クッキーに込めた意図も無事に伝わったなら「わかる? おれもそう思って選んだんだ。向こうで雪遊びとかしたかったな、と思って」と不思議な小部屋が現れなくなった世界の話を添えて。そしてやわらかな眼差しに宿るアイリーンの気配を見てふと思う。「ああ、でも」)…向こうでできなかったことは、こっちでしなさいってことなのかも。さすがに雪が降ってくれなきゃできないけど。(理想の世界で起こったことは皆現実の世界ではありえないことばかり。けれど今、それはもう“ありえない”ことではないのかも、と。)実はおれも、はじめて手帳買ってみたんだ。…おれもね、書きたいこといっぱいできたから。えみこちゃんとのことも、向こうの世界のことも、色々。……ちょっと前までは“書きたい”なんて絶対思わなかった。ペンを持つたびに手が震えて怖かった。……でも、今は、書けるようになりたいなって、思うから。(だからこっそり買ったのだ。彼女とは表紙違いのお揃いのダイアリー。海を模した青い表紙。ブリーチングするクジラが描かれた構図を気に入って。)忘れたくないから、全部残しておけるように。(下手くそでもいい。どれだけ時間がかかっても、まずは今夜、今日の日のことを書いてみるつもり。)……だからもっと書くことが増えたらうれしいな、って。……ので、その…これからも、末永く、よろしくお願いします。(年の瀬の挨拶ではないから来年も、とは言わなかった。それはいつか、もう一人の友人に言われて嬉しかった言葉だった。小さく下げた頭を上げれば、恥ずかしそうに視線を揺らしながらも最後にはブラウンの瞳をただただ見つめて。) |
柄のチョイスがかわいいし、デザイン違いだから露骨にならないお揃いがよすぎるし、昼神さんが前向きな想いで文字に書いて残そうとしてくれるのが嬉しいし、という三拍子の幸せの贈り物でした!
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2/14(木):朝 用務員室前 >昼神さん【2】
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* No.184
(2月14日という日付と彼女の来訪の理由とが結びついたのは、差し出されたきれいな包みを目にした時。無理やり視界に飛び込んでくる文字情報がないせいか、そんな文化を共有する相手が居ないせいか、街で見かけるチョコレート菓子の割合が増える時期、程度の認識だったのが去年までの話。そんなことより久しぶりに友人に会えると浮かれていたせいもある。そんなこんなで「ともちょこ」という単語は聞いたことはあるが変換に一拍を要した。ぱち、とまたたき、のち、)ありがとう。(贈り物をもらったら礼を言う、という反射の方が先に出た。もちろん嬉しい気持ちに嘘はないので受け取った包みを大事そうに両手にのせたなら、「もしかして手作り? すごい」と既製品とは異なる趣のラッピングをまじまじと眺めつつ、「おれ、女の子からチョコレートもらうのはじめてかも」と感慨深げに。もちろん「友」と名のつくそれは先日渡した親愛のクッキーと変わらぬものであるとわかっているので照れはなく、ただ彼女の手間暇と思いやりの具現に目を細め、大事に食べるね」と締めくくれば、)……そっか。いよいよだね。じゃあ、合格発表が終わって色々落ち着いたら……その時は、これのお礼も兼ねてお祝いさせてもらおうかな。(続く“これから”の話に対し、励ましの代わりに明るい未来の約束を。受験を知らない自分にはその苦難がどれほどのものか想像もつかないが、彼女という人を信じることならたやすくできた。新しい約束は忘れぬよう、さっそく手帳に記しておこう。そして卒業、という単語にもう一人の友人の存在が閃いて、)あ、ついで…って言ったらあれだけど、おれも笑子ちゃんに話したい事いっぱいあるんだ。なんだったら一緒にお祝いしたい相手が居てさ。その子も今年3年生で。(彼とも春休みに合格祝いをと話していたから、二人を引き合わせるならその時だろう。)前に話した、おれが、友達になれたらいいなって思ってた子。や、本当はもう友達だったんだけど、……あのあと、ちゃんと友達になれたから。笑子ちゃんに紹介していい? それで、笑子ちゃんのことも紹介したいな。(あの夜崩壊する塔で露になった現実は姿ばかり。こちらの世界での二人のお付き合いを知らぬが故に感動の再会をもくろみながら笑みを浮かべた。まさかの事実に自分の方が驚かされるとも知らず。──鏡の中に置いてきた相棒ならとっくに更新済みの事実に大騒ぎする春の日まであと少し。ちょっといい店の個室で改めて『自己紹介をしよう』なんてお題から始まる一幕もあるのかも。) |
鵜飼くん昼神さん佐々礼で三者三様に全貌を把握出来てないゆえのすれ違いが面白いのと(笑)同時に、交わした話題から未来へと繋げてくれるのが幸せな一幕でした。紹介したいと思ってくれるのもちゃんと友達になれた報告してくれるのもうれし〜!
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昼神晴一&鵜飼倫央
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7/25(水):放課後 生徒指導室前【10】
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* No.2
(制服と同じ色味の生地、アクセントカラー、それからロゴ。双鏡学園の関係者だと一目でわかるよう作られた作業着は不審者扱いされないためには大変有効である一方、小柄な青年には良いことばかりでもなかった。遠目から見た後ろ姿は小間使いにちょうどいい下級生に見えるらしく、教師に呼び止められることも多々。大抵振り向けば勘違いに気づいてくれるので抱えるのは少々の気まずさだけで済むものの、断り切れない性格ゆえに時たま面倒事に巻き込まれることも。用務員という名前からして、誤解が解けたところで雑用係として扱われることも少なくなかった。──用務員室へ向かう途中、2階の廊下で呼び止められたのは職員室にほど近い場所。嗚呼またかと理解は早く、自分以外に振り返る者の気配がないことを確認してのち、)えっと、おれですか?(今日は何を頼まれるのやら、と振り向いた先、予想外に瞬いた。)…え、迷子?(そこには学園案内のパンフレットから抜け出たような好青年。体格からして高学年のようだけれど、道に迷うということは意外と大きな1年生?)…や、進路、指導室……ってことは、やっぱり3年生?(驚きのあまり思考の続きが口からもれた。だったらだったで変な話だと思ったが、自分のように地図が読めない類の人間は少なくない。状況の整理がついたらついたで困ったように眉を下げて、)悪いけど、おれも行ったことなくて……(力になれないこと詫びるさなか、「あ、でも」と思い出す。)なんか、指導室って名前の部屋がいくつかあった気がする。ちょっと待って……(そして地図を探すより先に記憶をたどる。過日、校内を案内してくれた事務長の声を再現するようにぶつぶつと呟く姿は、お目当ての段を一発で思い出せなくて九九を一の段から数えだす子のように。)たしか2階…にもあったはずだけど、きみが此処で迷ってるってことは、この階のは違った? |
ここの描写におや?と思ったのですが、具体的な悩み内容にまでは考えが至らず、絶妙なぼかし具合に昼神さんPL様ってすごい!!!と思っていました。
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12/26(水):夕方 瑠璃浜鑑台駅付近 >うかいくん
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* No.85
へえ…うかいくんちいさい妹居るんだ。 でもわかる気がする。だからかな……面倒見がよくて、話し方が穏やかな感じなの。(一人ではなんてことない道中も友を傍らに置くだけでこんなにも楽しい道行きとなる。彼にも妹が居たと知れば些細な共通点ながら嬉しくなり、一方で微笑ましい兄妹仲とは縁遠い身では共感より憧れに似た感情を抱くばかり。「クリスマスにごちそう食べてプレゼントもらって、って仲良しで理想的な家族って感じだね」相槌に羨むような音が少し滲んだかもしれない。)…あ、そっか。(そしていまさらの事実を思い出す。)うかいくん、受験生だった……。そうだよね、そうだった…。(呟くさまは一度目は心底うっかりという風に。のちに恥じるように語尾が消えた。彼が3年生である事実もそれこそ出会いのきっかけも覚えていたが、それが受験と結びつかないあたり己の過去が浮き彫りになる。とはいえせっかくの気遣いをむげにすまいと「ごめん」をすんでのところで飲み込めば、)…うん。おれも海が好きだから、提案してもらえてうれしかった。ずっと行きたかったけど、一人じゃなかなか行けなかったし。(もう一つの楽しみを思い出す。彼と見る海は荒んだ心を慰め、この背を押してくれるだろうか。──辿りついた駅のバスターミナルにちょうどやって来たバスが一台。動く車体に光る文字に目は追いつかず、停留所の看板を見たとて一読で理解は難しい。)うかいくん、海浜公園に行くの、あのバスでいいのかな?(だが、今は独りではない。彼を頼ればいいのだと思えば勇気を出して問うてみる。『海浜公園行き』と明示されたそれが停車して数秒後、ようやく『海 行き』の部分だけ読み取れた。)
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来年からクリスマスは鵜飼家で過ごすのはどうですか?というか昼神さんのご事情全部把握してたら今年のクリスマスも家族団欒に混ざってもらえたのに…!!!とPLが地団駄を踏みました。
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* No.95
はは、本当に娘を持った父親みたい。(そんなものはフィクションの知識でしかないけれど、遠い未来を心配するさまは愛娘を溺愛する父親像みたいでおかしかった。そして今更ながら彼のファーストネームを知り、その事実にもまた驚く。「みちひさ、くん」思わず繰り返した音から想起したのは「道」。「ひさ」は何だろう。いつまで経っても覚えられない「鵜」の字より難しい漢字だろうか。)…おれ? ああ、うん。妹と弟が一人ずつ。(しかし疑問を呈す前に新たな問に答えれば、ひとつ前の話題は流れていった。兄弟の有無なんてよくある話題だ。事実の伝達に感情をのせる必要なんてなかったのに少しばかりトーンが落ちる。それだけで兄弟仲は彼とは真逆と伝わるだろう。だからと言って気を遣わせたいわけじゃない。ただ自分を教えることを躊躇いたくない。それは彼も同じなのだろうか、「不良受験生」の次は「好きな子」と来た。ぽんぽんと渡される新たなワードにまごつく心。反応が追いつかなくてえ、だのへ、だの相槌未満の音がこぼれて、)…そ、そっか。うかいくん、好きな子居るんだ。……彼女?(恋の話なんていかにも友人同士らしい話題に浮つく一方、縁遠い話題すぎてちょうどいい反応がわからない。慣れない単語を口にしただけで気恥ずかしさが頬に浮かんだ。そんな道中を経て、)え、…あれ、見逃したかも。(彼に導かれるままバスの中。未だ緊張はするけれど傍らの安心感ゆえ座席の背もたれに寄り掛かるくらいの余裕はあった。窓の外を示す指先には雑多なビル群。駅前の賑わいはもはやモザイクのようで一つ一つを判別することは難しい。レストランの看板とて言われればあんな色だったなと思い出せたが、幸福の文字を見つけることは叶わなかった。)おれは、イチゴ使ったデザートとか食べたいな……友達、が好きらしくて。(美味しかったら彼女を誘う口実になるだろうとまでは言わなかったが、呟きに混じる期待と思惑。)…その子、最近できた友達なんだけど、…いや、厳密には友達になり途中なんだけど、もっと仲良くなりたくて。……もし仲良くなれたら、いつか、うかいくんのことも紹介したいな、と思ってて……(どうかな、と問う代わりに彼を仰ぐ目があわく揺れる。)
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笑子さんと昼神さんと鵜飼の組み合わせ、穏やかに時が過ぎていきそうでとても良いです。ペア組の妙で三人でひとかたまりのような関係性が築けたことを大変嬉しく思っています。
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* No.105
(軽い気持ちで問うた「彼女?」に返ってきたのはイエス代わりの最上級の惚気だった。)…わあ、(思わずこぼれた感嘆を手のひらで受け止めたのち、)…大好きなんだね。その子のこと。(今度は赤い頬を両手で抑えた。こちらが恥ずかしくなるくらい真摯な言葉は愛にあふれ、恋に浮かれているようで、冬なのに彼の周りだけ春のよう。)うん、ぜひ。うかいくんが好きな子なら絶対すてきな人だろうから、おれもいつか会ってみたいな。(もちろんそれを揶揄する気持ちはなく、むしろ幸せのお裾分けをもらった気分で微笑んだ。まさかイチゴが好きな彼女と彼の恋人がイコールで繋がるとも知らぬまま、)いいね。そしたら3月の終わり頃かな。うかいくんの合格祝いにしよう。(口にしてからはっとする。受験の前から「合格」だなんて言葉を出すとかえって縁起が悪いのだろうか。その口調からどうやら進学に憂いはないようだが、念のため「卒業祝いかな」と言い換えた。そして「受験」「卒業」いずれも彼女に当てはまることと気づけば、)ありがとう。紹介したい子も今年3年生だから、卒業式が終わったら……春休みとかに集まれるといいのかも。(彼女も彼と同じく勤勉なようだから笑顔で二人の合格を祝うことができるだろうと想像すれば、楽しい予定がまた一つ。最近買ったダイアリーの活躍の気配に頬が、気が緩む。だからこそ、)……え、(本日の本題。その核心を突くような彼の問いに反応が遅れた。停車を告げるアナウンスが流れるなか、間の抜けたまたたきを繰り返す。)…えっと、(言い淀んだのは彼の好意を否定するためではなかったが、)…お、おります。(うまい言葉が見つからなくて、そのまま降車の波に乗るように立ち上がって先に降りた。人波に流されるままバス停の少し先まで歩き、その後ようやく振り返る。)実は、今日、うかいくんを誘ったのは、……その、…ちゃんとした友達、になりたくて。だから、うかいくんの思う友達ならもうなってるのかもしれないけど、おれのなりたい友達なら、…これから。(恐怖と期待を綯交ぜにした心臓がうるさくて、想像以上に近い波音が緊張に震える声を時折さらう。それでも傍に来てくれるなら辛うじてこの言葉は届くだろう。)…おれの話、聞いてくれる?
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そうなんです佐々礼笑子さんって本当にすてきでとっても大好きな人なんです。関係性が定まっていないので迂闊に彼女と言えないなと思っての返答だったのですが、惚気と取ってもらえて本当によかったです。最上級のという言葉がつくところがまたいい。頬を両手で抑える昼神さんが少女のようでこんなにかわいい成人男性がいるんだ!!!と思いました。
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* No.122
(後ろからついてくる声音が不思議そうに響く。けれど訝しむ音ではなかったことに安堵して、もう少し深度を上げて話してみようと砂に描いた三つの形。)うん。そう見えるよね。うかいくんはすぐこれが二重丸と三角と正方形ってわかるだろうけど、おれは毎回それを探り当てる感じ。……たとえばこれが「うかい」って音を示すとして、「うかい」って音をおれは知ってるし、君の名前だってちゃんとわかってる。でも、二重丸と三角と正方形がなかなか「うかい」に変換しない。(『◎』を指さす。)これを見ながら、うーん見たことあるけど、多分「う」かな? って感じでさ。で、次のこれを見て今度は「か」かな? じゃあ次は……なんてやってうちに最初の二重丸はなんだっけ? って、子供のころはひらがなですらそんな感じで。だから文章なんかになると今どこを読んでるのかわからなくなったり、漢字はほとんど読めないから全然意味がわからなかったり。(順に指を滑らせながら、幼い頃を再現してみる。障がいという言葉を使わずに、できるだけ自分の目から見た世界をわかりやすく伝えたかった。ただそれだけのつもりだったのに、降る声の硬さに気づいてはっとした。)……ち、(違う、と否定しかけて、しかし彼の問いに間違いはないことに気づいて口を閉ざした。)…うん。大変だったよ。(そして今度は肯定の言葉とともにゆっくりと立ち上がる。トートバッグについてしまった砂を払ったのち中からスマートフォンを取り出せば、もう慣れた動作を幾つか行ってからLINKSの画面を開いて見せた。音量ボタンを上げると「リンクス」と女性の声がする。二本指でのスクロール。ダブルタップ。煩雑で慣れない動きは疲れるし、今でもミスが多いけれど、)でも、きみが思ってるような苦労じゃないよ。今は便利な時代だよね。文字はこうして“聞く”こともできる。(吹き出しをタップすれば「楽しみがあるので勉強がはかどりそうです」と彼が送ってくれたメッセージが読み上げられる。)面倒だけど、面倒だな、嫌だなって気持ちよりも、いつも早く読みたくてうきうきした。きみが送ってくれた言葉の意味が知りたくて、知ったら今度は返事がしたくて、今までだったら絶対に諦めてたことができた。……それにこれなら字を書かなくて済むし、予測変換も便利だしね。…大変だけど、それ以上に自分の言葉を文字にするって楽しいな、すごいなって気持ちにもなれたんだ。(いちいち記憶の中から「う」の音を『◎』に変換して、その形を思い出しながら紙にのせる作業より一文字二文字打ったら勝手に続きを教えてくれるスマートフォンは偉大だった。もちろん打ち間違えれば誤字も脱字も多いけれど。)だからね、おれは今日までおれと話してくれたうかいくんにありがとうって言いたいし、これからもよろしくねって言いたいんだ。これからもずっと一緒に居たいから、ちゃんとおれのこと知ってほしくて。(だから今日は誘ったのだと、文字よりも多弁な口は想像以上にすんなりと自らを語ってくれた。)おれは字を読むのが苦手で、書くのはもっと苦手です。だからメッセージもいいけど、たくさん話したいとき、これからは電話してもいいかな? それで電話じゃ足りないときは、こうして会えたらうれしいな。
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識字障害という言葉を使わずにこんなにわかりやすく昼神さんの今までの苦労を描写できるPL様がすごいよ……。
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* No.132
(波間に届く素直な本音と気遣いと。その複雑な胸中を想えば可哀想なことをしたとも思う一方で、それは彼が自分を想うからこそ。その事実を嬉しく思うどうしようもない男がここにも一人。)…だいじょうぶだよ。…むしろ、うかいくんも、どうしようもない奴でよかった。(反省と後悔と喜びと自己嫌悪。いずれも馴染みある感情だったからちいさく笑いながら首を振る。)ありがとう。……うかいくんにね、こんな話したらどうなるかなって不安だった。やっぱりちょっと怖かったし、きみはやさしいからきっと色々悩んじゃうかな、とか……でも、不思議と、面倒くさいって思われたり、同情されたり…これで疎まれておしまいにはならないだろうな、とは思えたよ。(そして穏やかなまなざしを見つめ返した。文字が読めないのを“見えにくい”のだと思いこんだ幼少期の名残か、見たいと思ったものをじいと見つめるくせがある。)おれはこんな自分のことが大嫌いだったから、別に自信なんてなくて……でも、うかいくんの言葉は信じられたから。(彼が紡ぐ「これから」は希望があふれた明るい音だ。その瞳に映る己も自然と笑えているはず。)…ね、これもらってくれる?(そうしてずっと抱えていた重荷を下ろしたのち、紙袋を差し出した。中には細長い小箱がひとつ。深いグリーンのリボンを外せば、中には”スケルトンタイプの万年筆”が入っている。「遅くなったけど、湯呑みのお礼」と言いつつも、本当はクリスマスプレゼント兼気の早い進学祝いの気持ちも込めて。早く開けての気持ちで再び送った視線の意味を敏い彼なら気づくだろう。──ぼんやりと、こんなやりとりを前にもしたことがあると思った。しかし誰と? その答えを思い出したのは箱が開かれる前か後か。いずれにせよ、臆病な心が顔色をうかがうようなことはせず、)おれね、こないだ人生で初めて手帳とペンを買ったんだ。その時に見つけたやつでさ……すごくきれいだったし、…うかいくんとお揃いだって思ったら、使いたい気持ちになれそうだから。(今までペンは回すものだった自分が初めてほしいと思ったそれは、ガラス細工のような透明のパーツでできている。中にカラーインクを入れるのにおすすめと聞いて、サンプルと同じ海の色のインクも買ったのだと付け加える声は弾んだ。)
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昼神さんと鵜飼がこれまで育んできた信頼のかたちが見えてとっても好きなところです。こんなふうに思ってもらえるなんて本当にありがたいなあとしみじみ感じました。
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1/25(金):夜 自宅 >うかいくん【0】
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* No.154
(“いつか”が今日になったのは12月28日だった。決意の夜が明けた翌日。眠り続け、会話すら交わせなくなって久しい祖父が静かに逝った。商店街の皆は年を越せなかったことを悲しんでいたが、医者はこれでも持った方だと言っていた。まるで何かを待つように、今日という日を選んだようだとも。──本当ならすぐにでも友人たちに連絡をとりたかった。二人との浅からぬ縁について話したかった。けれども平穏が崩れ落ちたのは向こうの世界ばかりではなく、通夜に葬式、近所への挨拶や遺品整理だのなんだのと慌ただしく過ぎていく日常に流されるまま年が明け、十年近く会っていなかった両親と顔を合わせたことすら激流の一部として心を通り過ぎていった。今思えば彼らと会うのは恐ろしかったはずなのに、いちどきに多くのことがありすぎて呆気にとられてしまったのだろうか。ようやく一息つけるようになってはじめて実感がわく。『鯨臥』と書かれたこの表札も早く外さなければ。見慣れた文字の形から視線を外して扉を開ける。)ただいま。(しめ縄の代わりに玄関に貼られた紙の字は読めない。ただ、それが祖父の死を示すことだけを知っていた。だからといって悲嘆にくれて泣き暮らすこともせず仕事に復帰し、忙しない一月も終わりかけた頃。意図せずさぼってしまった日記代わりの手帳を開くと、真っ白なカレンダーに唯一目立つ丸印を見つけてあ、と思う。)…えっ、もう25日!?(それから慌ててスマートフォンを手に取った。長らく放置していたので充電はとっくに切れていて、もし誰かから連絡をもらっていても通知のランプは光らない。とはいえ家電ではなくこちらに連絡をくれる相手は限られていて、その唯一の可能性である二人は不義理を責めはしないだろうから、何かあれば正直に事の次第を伝えて謝ろう。時間が許すならば電話で直接。起動したそれの画面が以前と変わらぬようならそれはそれで。いずれにせよ、ゆっくりと文字を打つ。まずは一行。そして少し悩んでから、もう一行。その後思いついたように家を飛び出し、)──……じいちゃん、ばあちゃん。今日はね、おれの友達の誕生日なんだ。(ダイニングテーブルに並んだ写真の前に、買ってきたばかりの大福を置いて笑う。)その子、ばあちゃんと同じでいちご大福が好きなんだって。じいちゃんが好きな豆大福も。(手を合わせて拝んだりはしない。ただ、以前のように話し続けた。彼との出会いから今に至るまで。どんなふうに自分が彼に救われたか。それからもう一人の友の話も。)だからかな……おれ、じいちゃんまで居なくなったらどうしようってずっと怖くて不安だった……はずなんだけど、今、思ったより平気でおどろいてる。…もちろん寂しいし、今でも仕事終わりについ病院に行きそうになるけど、…でも、じいちゃんたちが死んじゃって悲しいって気持ちと同じくらい、…ううん、それ以上に考えることがいっぱいあってさ。仕事のことも、生活のことも、…友達のことも。……生きるの、前よりずっと忙しくて、楽しいよ。(死を悼み、生を慶ぶ。どちらも大切な人を想う、人生に必要な時間だと思えるようになったのはたった半年の夢のような時間のおかげ。もうすぐ春が来て、きっともっと楽しくなるだろう。もしかしたら鏡の世界で別れてしまった彼らとも再び会えるときが来るのかもしれない。淹れたての緑茶を啜りながら、湯呑みに描かれた塔を眺めて未来を想う。寂しさに寄り添うように穏やかに時が過ぎていく。二つの世界が一つになって、世界が広がった後のある夜の話。) |
昼神さんのお祖父様の容態がずっと気がかりで、退院してご自宅に戻られるのかな?と思っていたところにご逝去を知ったので昼神さんが独りぼっちになってしまったのではないかと冒頭に心を痛めたのですが、雑事やお仕事に流されるように日々を送る中で鵜飼の誕生日がある種の区切りのように機能していて、本当に良い文章を読ませていただいた気持ちになりました。自Cの誕生日をこんなふうに使っていただけるのがとてもとてもありがたいです。昼神さんが孤独になることはこの先絶対にないと思うので、これからも生を楽しんで一緒に生きていきましょう。昼神さんが幸福に過ごすことのお手伝いをこの先ずっとさせてください。
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